トップページに戻る


愛原様のたわごと(07年03月09日)



愛原「・・・ウチと似た世界観を持ついくつかの戦争SLGを色々プレイして、ふと思ったんだが・・・。」

逆沢「あーん、何馬鹿いってんの? そもそもウチと似た世界観のゲーム自体ないでしょうが!」

愛原「いや、俺が言いたいのは、いわゆる【中世以前の武器文化を中心とした戦争SLG】という意味でだ。」

鼎「そういうゲームなら、そこそこあるよね。【信長の野望】シリーズみたいな有名どころから、剣と魔法の世界のファンタジー戦争SLGまで含めれば、かなりあると思うよ!」

逆沢「あー、そういう意味か・・・。それならフリーのSRPGツクール95製ゲームでは、【エルディア大陸戦記リタニア編】あたりが超有名よねー!」

鼎「フリー版とシェア版の両方がある【教えてマイトレーヤ】シリーズは、世界観もかなりこってて本格的だよ!」

逆沢「いやはや、超えられない壁ばかりって感じねぇー!」

愛原「今更、分かりきっている事を言うな。ところで俺の担当する兵科は歩兵な訳だが、ウチ以外のゲームでは、歩兵の得物というのはどこも剣なんだな。」

逆沢「ってかそれに関しては、ウチのゲームの方がおかしいのよ。市販の有名ゲームの多くから【三国志大戦】のようなアーケードゲームに至るまで、【歩兵=剣兵】はむしろ基本なのよ! この手のゲーム界の常識って奴?」

鼎「そうそう。槍を持ってる兵は【槍兵】なんだよ。一般的には【騎兵キラー】になる兵科なんだよね。」

逆沢「ゲームバランスの観点の問題で、【三すくみ】の一方を形成する為に、代償として歩兵か弓兵に弱いのが、槍兵の一般的なパターンかな?」

鼎「ウチのゲームは、どうして歩兵が槍をもってるのかなー?」

逆沢「しかも槍の使い方が、根本からおかしいし!」

愛原「それは2005年11月25日のたわごとでもちょこっと触れたが、要するに素材の問題・・・。騎兵だけは素材をちょこっと加工して不自然さをそれなりに解消したつもりだが、槍兵を正規の動きに描き直すのは困難と判断し、無理を承知でそのまま押し切ったのだ。ちなみにリアルを追求すれば、勿論、兵科としての槍兵は、突きが圧倒的メインな用法なのは間違いない。ついでに言うと、【歩兵正規軍部隊=槍兵部隊】なのもリアルではほぼ常識。」

逆沢「まー、そらそうだ。まぁ、そんな事に突っ込み出すと、ゲーム的には激しくつまらない物になるんだけどね。」

鼎「じゃあ、今回のテーマは【兵士の武器】にしようよ!」

愛原「グフフフフ! そのテーマなら、歩兵担当指揮官でもある俺様の独壇場だな!」

逆沢「そんじゃ早速、質問! 何でリアル世界では、【歩兵=槍兵】なの?」

愛原「様々な理由がある。まず経済的観点からみれば、槍の方が安くつく場合が多いからだ。槍の場合は金属部分が穂先だけなのが普通だからな。対する剣は金属部分が大半で、特に製鉄技術が未発達な古代になる程、そうおいそれと数をそろえられないという背景があった。」

逆沢「まぁ、兵士の数だけ剣をそろえるとなると、半端じゃないコストがかかりそうね。とかいって、庶民が手軽に購入したり製造できるシロモノでもないしね。」

愛原「次に行軍上の問題。戦争において、実戦に費やす時間はほんのわずかでしかなく、実際には移動や駐留時に費やす時間が圧倒的割合となる。金属部分が大半を占める剣は単純に重たい。この行軍時の負担というのは実は非常に重大な問題で、兵站を語る上で軽視されがちだが、絶対に軽視してはいけない問題でもある。」

鼎「何十日も準備や移動に費やして、実際に敵軍と武器を交えるのは、ほんの数分という事もあるもんね!」

逆沢「でもその戦いに勝つ事が最重要課題なんだから、槍が武器としても優れていない事には、やっぱり困るんじゃないの? コストとか移動時の負担ばかり考えて、肝心の戦に負けたら本末転倒でしょ!」

愛原「移動時の負担が重かったり、あるいは逆にずさん過ぎると、肝心の戦闘時にも悪影響を及ぼす事があるんだが・・・。まぁそれを別に回したとしても、軍隊級の戦いにおいて、槍は、剣よりも何倍も強いぞ。誇張抜きで何倍も。」

鼎「槍の長所は、攻撃射程が長いのが一番だよね。」

逆沢「逆に攻め込まれると、脆い部分があるわね。」

愛原「軍隊組織における兵士集団は、決して武闘家の集まりではない。多少の訓練を施されてはいても、所詮は素人の集まりだ。そして連中の基本心理として【死にたくない】というのがある。そうでなくとも兵士の大半というのは、無理やりかき集められた者や、やむなくその職に従事しているものが殆どだから、(狂信徒とか度を超えた愛国者とか復讐の鬼とかでもない限り)普通は保身第一になるのは当然。でもって軍隊の指揮官というのは、その保身第一の兵士達を戦場という名の死地に置いて戦わせなければならない訳だが、その際に槍を兵士に持たせた場合と、剣を兵士に持たせた場合では、通常、雲泥の差が出る。なぜか分かるか?」

逆沢「剣は槍と比べて攻撃射程が短くて、敵兵のいる側により踏み込まないと、相手を攻撃する事すらできない。その代わり、【受け】に向いているから守りに長じている。となると兵士に剣を持たせた場合は、彼らはどうしても守り重視の保身を考えやすいかも知れないわね。」

鼎「槍は逆だよね。攻め込まれると不利な代わりに、先制攻撃がし易い武器だから、【殺られる前に殺れ】の精神で攻撃重視の保身に傾きやすいのかも知れないね。」


愛原「一般兵士は武闘家じゃないから、武器の扱い方自体もたかが知れている。槍の攻撃方法は比較的シンプルだから、迷いが少なくて済むという利点もある。剣は攻撃・防御両面で汎用性が高くて、かえって迷いが生じやすい。」

逆沢「近代戦では、が武器のメインになってるけど、これも思想としては重なる部分がありそうね。銃も【受け】には殆ど使えないけど、先制攻撃に最も向いているし、用法も比較的ワンパターンに近いから、シンプルに【殺られる前に殺れ】の武器だしね。」

愛原「非情な言い方になるが、軍隊組織というのは、直接的には敵を武力づくで排除する事を目的とした組織だからな。となると兵士には、【自分が死にたくなければ、相手を殺せ】と叩き込むのが、一番手っ取り早いんだ。条件が同じなら、躊躇した方が負け。とにかく先制攻撃。守りを度外視にしてでも、攻撃(特に先制攻撃)に力を発揮し、攻撃スタイルも迷いを生じさせないシンプルなものが望ましいという視点から、古代なら槍、近代なら銃が推奨されたのは、ある意味、当然の流れだ。」

鼎「あと、槍には、【槍衾】という集団戦闘に向いた戦い方があるよね。」

愛原「ってか、槍衾は歩兵の基本戦法そのものだな。近代戦でいう所の【弾幕】に似た効能もある。剣や斧中心の部隊ではまず不可能な有力戦法だ。当然ながら槍の長さは、部隊単位ではきっちり統一されているのが普通。きっちり陣形に沿った形で運用する事で、【歩兵=槍兵】部隊は最強の力を発揮する。素人集団を最強白兵戦闘集団に速やかに変えたいのなら、槍以外の武器はありえない。」

逆沢「なんか、剣士の集団がどうあがいても、槍兵部隊には勝てないという気すらして来たわね・・・。」

鼎「でも、山賊とか海賊とかは、刀剣中心の装備をしている事が多いよね。これはどうして?」

愛原「戦場となる地形や、戦うべき相手や、最終目的が全然違う。最初から何度も触れているが、剣は汎用性が非常に広い。槍兵部隊の基本戦法は、陣形にのっとった上の槍衾で前方の敵をザクッて感じだが、賊は逃げる相手を追いかけてザクッとかが基本だし、場合によっては人質を脅すのに使ったり、ロープを切ったりなどの道具としても使えるからな。そもそも賊の集団は、槍兵部隊のような統一した動きではなく、むしろ臨機応変に状況に対応できる事の方が重要度が高いから、その点で汎用性の高い剣系の武器は、当然の如く重宝するんだ。逆をいえば、盗賊集団が軍隊に喧嘩を売る事などは、余程奇襲に向いた好機でも発生しない限り、まずありえない。」

逆沢「あははは。まぁ、そりゃそうだ。賊というのは、軍隊以上に自分より弱い相手に向かっていくのが基本だしねぇー。」

鼎「とすると、部隊別にみれば、どういう部隊なら、剣が中心の武装でもそれっぽいという事になるのかなぁー?」

愛原「まず賊兵系。これは当然。次に船上の戦をイメージするなら、水軍兵も剣が理想。次に冒険者系の傭兵などかな?」

鼎「ウチのゲームでは、歩兵・人民歩兵・水軍兵・騎兵・装甲騎兵・親衛騎士・輜重兵が槍を装備していて、雑兵・傭兵・装甲兵・突撃兵が剣を装備しているよね。これはどういう理由なの?」

愛原「槍の使い方自体が既におかしいという事で、この辺はあまりリアルに基づいた配分はしていない。ただ【正規兵=槍兵】という基本認識から、正規兵系は槍装備。非正規兵系は剣とした。例外として突撃兵は武勇の達人の集団という観点で、冒険者風に剣と盾装備だ。突撃兵というからには、やはり離れた所からお行儀よく槍で応戦ではなく、一気に敵陣奥深く斬り込んで、そのまま敵軍を崩してしまう図の方が絵になるからな。ちなみに雑兵主体で訓練の行き届いていない槍兵軍団は、陣形を崩されると結構もろいから、十分訓練の行き届いた戦意旺盛な味方を突撃させれば、同規模の平凡な敵槍兵部隊くらいなら、一蹴できるケースも多いだろう。」

逆沢「そういや、ウチのゲームゲームの兵科で、もう1点気になる事があるんだけど。何で弓兵じゃなくて、弩兵なの?」

愛原「深い理由はない。ただリアルの視点で語れば、弓と弩は、全く用法の異なる兵器なのであしからずだ。」

鼎「ほえっ?」

愛原「数のそろった弓兵部隊は、通常の場合、ななめ頭上に向けて矢を放つ。つまり敵兵からみれば、ななめ頭上から矢の雨が降り注ぐ形になる。なぜななめ頭上に向けて矢を放つかというと、その方が射程が伸びるからだ。」

逆沢「弩は違うわね。」

愛原「弩は初速・命中精度の両方で弓よりも上だが、連射性に欠けて、いわゆる矢の雨を絶え間なく降らすのには向かない。反面、命中精度が弓よりもずっと高いから、半ば当てずっぽうにななめ頭上に放つよりも、直線向こうにいる敵兵を直接狙撃した方が効率がよい。性質的には、弩兵部隊は弓兵部隊よりもむしろ火縄銃部隊に近いかも知れんな。」

逆沢「ゲームの世界では、鉄砲部隊って弓兵の上級兵科みたいな感じな登場も多くて、後衛専属みたいなイメージもあるんだけどね。」

愛原「弓兵部隊は、前方にいる味方部隊を頭上から飛び越える形で敵兵を攻撃する事が可能だが、弩兵部隊や火縄銃部隊はリアルでは前衛型(但し敵に近づかれると終わりなのは弓兵と同じなので、敵に近づかれるまでにカタをつけるか、いつでも歩兵部隊などと交替出来るか、あるいは柵や城壁の向こう側から攻撃するなど、使用方法を考える必要はある)。某戦国ゲームの鉄砲部隊は珍しく前衛型で、そういう意味ではニヤリと来たもんだが・・・。ちなみにウチのゲームで弓兵隊ではなく弩兵隊にした最大の決め手は、射程を2ではなく、1〜2にしたから。他にはこれといった理由はない。」

逆沢「ふーん。色々リアルに考えると、色々あるもんねぇー。」

愛原「あまりリアルにゲームを近づけると、ゲームとしてはつまらなくなってしまうケースが殆どだけどな。あと、技術的な問題もあるし・・・。ゲーム的には三すくみの原則とかを適用した方が、戦術性が分かりやすく高まって、むしろ面白いと思わんか?」

鼎「三すくみで思い出したけど、リアルでは騎兵と槍兵の相性ってちょっと違うよね。」

愛原「通常の歩兵(=槍兵)では、騎兵に一方的に蹂躙されるだけ。大体、迫り来る騎兵を目の前にして、どれ程の兵士がその場で踏みとどまれると思うんだ? あと騎兵の方も馬鹿じゃないから、ノコノコと敵が刃先を突き出してる所にぶつかっては来ない。それにうまくカウンターを決められたとしても、それで騎兵の突撃速度が一気にゼロになる訳ではないから、歩兵の方もおじゃんになる危険も高い。ってな訳で結論からいえば、通常の歩兵と騎兵では、騎兵の方が相性的にははるかに上。」

逆沢「騎兵担当として、はっきり言わせてもらうけど、リアルの騎兵はめちゃくちゃ強いわよ〜! 騎兵の攻撃を効果的に止めたければ、あらかじめ馬防柵なり、専用の長槍部隊が必要になるし!」

愛原「ちなみにお前のいう専用の長槍というのは、長さが4m以上あるのもザラで、これを通常の歩兵(=槍兵)の通常武器とするのは、行軍面でも実戦面でもやや負担が重くなる。歩兵部隊と長槍部隊は、兵科としては別物と考えた方がいいかも知れない。よくあるゲームでの槍部隊とはリアルでの長槍部隊の事であり、ゲームでの剣兵部隊が、イコール通常槍部隊だと解釈すれば、一番綺麗にまとまるのかも知れんな。

逆沢「でも自分から、騎馬キラーの長槍部隊に安易に突っ込む騎兵はいないし、特に東洋の騎兵には殆ど通用しないわよ。」

鼎「西洋と東洋では、同じ騎兵でもかなりの差があるよね!」

愛原「モンゴル騎兵が一番象徴的な例だが、東洋の騎兵は馬上でも弓を使いこなせる者が多い。特にモンゴル騎兵は余程の事がない限り、白兵や突撃には持ち込まず、執拗に馬上弓攻撃メイン。対して中世の西洋の騎兵はランスを中心とした突撃メイン。あとアラブ騎兵はサーベルを中心としたすれ違いままの薙ぎメイン。」

逆沢「西洋と東洋では、防具に関する思想から、弓や攻城兵器に関する思想まで、結構差があるからねぇ。西洋では硬い鎧とそれを突破できるような強靭な武器というのが基本的な考え方だけど、東洋では機動性重視だし。」

愛原「特に日本の場合は、兵士は身軽。攻撃側は機敏重視という事で、大掛かりな攻城兵器なんかは殆ど発達しなかった。ちなみに攻城兵器に関しては中国が結構発達していて、あとアラブ圏もかなりのもの。モンゴル帝国軍は南宋軍の守る重要拠点の襄陽を、アラブ製の攻城兵器で撃破した事もある。」

鼎「私、魔砲兵担当なんだけど、砲兵がらみという事で、もっと攻城兵器とか築城の話をしてもいいよ!」

愛原「うーん、そこまでいくともはや、一般兵士の持つ武器の話じゃなくなるしな。」

逆沢「じゃあ、騎兵担当の私主宰による、一騎打ち向き武器講座の話なんかどう?」

愛原「一般兵士の持つ武器と、武将の持つ武器とでは、使用目的や用法自体が違うだろ! 際限がなくなりそうだから、今回はこれで終わりな!」








トップページに戻る