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愛原様のたわごと(08年5月3日)




愛原「最近、硫化水素で自殺するという悪い流行があるらしい。」

鼎「どうしてそんなのが、はやっちゃうのかなぁ? すごく嫌だなと思うよ。」

逆沢「私が推理するに、この事件の動機は通常の質のものとは異なるわね。被害者の多くは、おそらくインターネットとかで自殺する方法を調べているくらいだし、車や自宅が犯行現場のケースも多いから、深刻な生活苦とは違うパターンがメインっぽいし。」

愛原「なぜ、いきなりサスペンスドラマ調になる? しかもお節介で首突っ込みたがりの、ヒロインの役柄そのまんまではないか?」

鼎「でも自殺ってすごく勇気がいるし、その勇気をもっと生きる方向に使ったらいいのにと、私は思ったりするけど、さみしいよね。」

逆沢「私が推理するに、コイツは将来を漠然と悲観しての犯行の気がするわね。」

愛原「だから犯行じゃないだろ。自殺に見せかけた他殺なら知らんけどな。それとガラでもない探偵キャラはやめろ。」

逆沢「ちぃっ、残念。でも案外いい推理だったとは思わない?」

愛原「否定はせん。人を殺して刑務所に入りたいとかいう短絡な動機で大事件を起こす若者とかもいるが、年代といい、根っこは確かに同じかも知れん。口先だけ再チャレンジをアピールした前首相が退陣して、今も国民的大人気を誇る前々総理が敷いた格差社会路線が、格差を固定化させる方向で固まりつつあるからな。」

鼎「格差が固定化する社会なんておかしいよ。それだったら下で固定された人は、それこそ生きるモチベーションがわいて来なくなっちゃうかも知れないよ。」

逆沢「だけど実は、肝心の若者にも、その責任の一端はあるんじゃない? 小泉フィーバーに踊ったり、あるいは今でも小泉に再び首相になってもらいたいと考えている人も多そうだし。」

愛原「それは肯定も否定もできん。ただ昨年今年に、新社会人にアンケートをとった所、年功序列を始めとした安定志向を志望する者が多くを占めたらしい。安定志向といえば聞こえはいいが、この思考回路もまた、格差の固定化に一役買っている訳だから、この点はもっと熟考して欲しかったとは思う。」

鼎「ほえっ? 何で?」

愛原「年功序列制度や終身雇用制度は、戦後昭和の日本の根幹を成したシステムだが、このシステムは転職せずに済む程度の小さな格差の社会でないと効果が薄い。格差が大きいまま終身雇用なんて事になったら、入社時点で人生が決まってしまう。また会社の業績によって人生が左右されかねない。例えば戦後昭和は今と違い、世界で最も成功した社会主義国といわれたくらい格差が小さかったから、最初の職を離職して次の職を探しても、そんなに致命的なハンデになるとは限らなかった。転職の余地も大きかった。つまりレールから外れても、再チャレンジの余地が大きかったから、うまく機能したんだ。再チャレンジの余地がなく、それどころか格差が広がっているのに、年功序列なんて言い出したら、レールから外れる勇気も持てないし、また一度レールから外れた人にとって、大きな精神的・経済的負担になっちまう。それじゃサービス残業させまくりの悪徳経営者の思うつぼだ。」

逆沢「まぁ確かに、経営者側はフリーターとか派遣とかの比重を高めてるし、正社員にもサービス残業させまくったりしてる所は、昔よりも増えたかもねぇ。」

愛原「こんな世の中だから安定を好むのは分かるが、結果的にますます不安定な世の中を助長するような発想は感心しない。今は昔と違って、今いる会社が10年後も安泰な保証はないし、10年後自分が残っている保証もないからな。発想を転換しろといいたい。」

逆沢「まぁ小売業界とかでは、3年後には同期の数が10分1以下になるってところもザラだからねぇー。」

鼎「管理職といっても、残業代を浮かせるだけの【名ばかり管理職】ってけっこう多いらしいよ。」

逆沢「そら、就職1年で、店長の肩書きがついてくるとこもあるらしいからねぇー。」

愛原「人生や未来をよりよくするには、相応の発想も必要だ。安定を指向してるつもりでも、実はその逆に走っているなんて事になってはナンセンスだ。と言うわけで今回のテーマは、【生き残る事と勝ち残る事】だ。」

逆沢「おお、何やら哲学的なテーマねぇー。」

愛原「ウチはおまけ的ながら、一応戦国史のシナリオも公開している訳だが、実は戦国史は、【勝ち残る=統一者となる】だけでなく、【生き残る=いずれかの勢力に従属して、その勢力に統一してもらう】という遊び方もある。人生もそれと同じで、成功者としての人生もあれば、誰かの奴隷としての人生もある。」

逆沢「私的には、誰かの奴隷という人生は、認められないわ。別に天下を取らないと成功者といえないとか、そんな大それた思考はしないけど、それなりに満足感のある生き方ってのはあると思うからねぇ。」

鼎「勝ち組負け組って言葉があるけど、自分の生き方とか信念に照らして、まず良しと思えるような生き方ができれば、勝ち組なんだと私は思うよ。」

愛原「政治の世界では、大きく保守と革新という2つの陣営があるが、保守というのは現状の良い部分をできるだけ残したい層(たまに過去をいたずらに美化したい人も含まれる)。革新は現状の悪い部分をできるだけ変えたい層だ。当然ながら既得権益を持っている人は、相対的に保守になる。政治家でも与党の世襲議員とかには保守派が多い。つまり【勝ち残る】と一口に言っても、【守り勝ちたい】陣営と【攻め勝たないとならない】陣営に大別できる事になる。」

逆沢「守る余裕のある方は、まだマシね。」

鼎「それだったら、今の状況に満足している人は守りの発想で良いけど、今の状況に不満や不安のある人はどんどん攻めていかないと勝てないという事だよね。」

逆沢「だったら今の社会に不満を持っている人が、守りの発想をするなんてのは、あまり感心できる事ではないって事ね。」

愛原「まぁ、保守陣営もより自分たちの地位を強固にするための、逆の改革を進めてくるだろうから、守りの視点自体は必要だけどな。大企業にしても超大国にしても、ただボーッと世の中を眺めているだけじゃなくて、隙あらばさらに力を増大すべく手を打ってくるのは間違いないのだから、それに対する抵抗は必要だ。だがそれに加えて攻めの視点も持たないと、なかなか上には上がれない。ただ【生き残る】だけならともかく、【勝ち残りたい】ならプラスアルファが必要だ。ゲームの世界でも、1位の勢力と同じ事をしていたら、2位や3位の勢力は上に上がる事はできないだろう?」


鼎「順位の低い勢力が、順位の高い勢力に勝とうとしたら、どうすればいいのかな?」

愛原「例を出そう。例えば、最大勢力の『甲』、第2位勢力の『乙』、第3位勢力の『丙』の3勢力が存在して、互いに天下を狙っているとする。それぞれの勢力は、どういう戦略を取るのがベストだろうか?」

逆沢「そりゃ一方と同盟を結んで、2対1の形成に持ち込むのが基本でしょ。」

愛原「じゃあ、どの組み合わせがベストだ?」

鼎「普通に考えたら乙と丙が同盟を結んで、最大勢力の甲に対抗するのがベストだよね。」

愛原「諸葛亮の三国鼎立論と同じだな。まぁ一番、模範解答なのは間違いない。甲が最大勢力である以上、乙と丙が組んで対抗しなければ、乙も丙も甲の手で各個撃破されかねないからな。だが現実はなかなかこうはならない事も多い。7lcwの世界では、中原7勢力に関しては、最強の黒藤軍に対して残る6勢力が全て敵対する構図で均衡を保っているが、北原では第1位勢力の黒藤軍と第3位勢力の北狄が結んで、第2勢力の北華に対抗する形になっている。これはどうしてだろうか?」

鼎「あ、そうか。でも何でだろうね。」

逆沢「北狄の連中が、アホなだけじゃない?」

愛原「・・・外交戦略は大きく分けて【合従】と【連衡】がある。合従は最強勢力に対して包囲網をしくタイプで、まぁ普通に考えれば最も理想的な構図。だが現実には、甲は甲で最強勢力にふさわしい知将・猛将を抱え、それなりの策を持っている。丙に利権を保証したり、丙だけは確実に潰すぞと脅したり。1対1で戦えば、丙は甲に対して最も不利だ。乙なら甲の攻撃に対して、時間切れ引き分けとかに持ち込める可能性がそれなりにあっても、丙は乙よりもさらに弱い訳だから、より条件は悪い。乙なら丙が援軍に駆けつけるまで持ちこたえられるかも知れないが、丙が乙が援軍に駆けつけるまで持つかどうか分からないと言うことになればどうか? 【連衡】とは、そういう最弱勢力の弱みを突く事で、相手の【合従】を切り崩す外交戦略でもある。」

逆沢「なーるへそ。そうやって1枚ずつ包囲網を切り崩されたりしたら、合従陣営もヤバいわね。」

愛原「最弱勢力である丙の立場としては、乙と同盟を結んで独立を保てれば一番ベストだ。乙だって甲よりは弱い立場なのだし、丙に甲へ走られてはたまったものではないから、それなりの厚遇は示すだろう。だが甲に滅亡させられるよりはマシと考えて、丙が甲に媚びる可能性もある。」

鼎「もう独立を保つ事とか勝ち残ることは諦めて、生き残る事を優先したら、そういう判断になるのかなぁ?」

逆沢「甲が乙を滅ぼした後、丙を滅ぼさない保証はどこにもないけどね。もう完全に他力本願な戦略というか・・・」

鼎「そういや、甲と乙が同盟を結ぶケースってのはないのかなぁ?」

愛原「あるぞ。例えば戦国時代の武田・北条・今川の三国同盟は、一種の強国同盟だろう。強大な勢力同士が同盟を結んで、後顧の憂いを断った上で確実に弱者を潰していく戦略というのはある。ウチのゲームの愛原編でも、黒藤軍の池田が、大門司軍と赤竜軍とウチの4勢力で同盟を結んで、4強で世界を食い物にしようと提案してくるイベントはあったりする。まぁ強国同士の同盟ってのは、基本的に強国同士で力が均衡していたり、まだ将来に大きな流動性がある時に発生しやすいもので、甲と乙の戦力差が小さく、丙の他にもたくさんの弱小勢力があるとかでないと、滅多に発生しないけどな。ああ、もう1つ。丙が乙を追い抜く勢いで力をつけつつある場合にも、甲乙同盟は発生する余地はある。」

逆沢「人間は格下と思っている相手に追い抜かれるのは、大嫌いだからねぇ。」

愛原「北狄が北華と結ばず対立する路線を選んだのは、かつて自分達の方が北華より格上だったからと言う意識が災いしてるのか、あるいは3勢力中3位で留まるよりは、たとえ第1位勢力の従属的境遇でも2位の方がいいという心情が影響してるのか、まぁそういう要素があるのかも知れんな。」

鼎「でもそういうのは、全然戦略的じゃないよね。」

愛原「勝ち残る事と、生き残る事は少し違う。【勝ち残る】事は【より有意義に生き残る】ことでもあるのだが、勝ち残れなくても、生き残れればマシという考え方もなくはないからな。」

逆沢「わたしゃ、もっと上に上がるチャンスがあるのにそれを放棄して、ビリでなきゃそれでいいというのは好きになれないけどね。」

愛原「もっとも戦略的に考えた結果、勝ち残るチャンスを失う事もある。例として【囚人のジレンマ】という有名なゲーム理論がある。」

逆沢「また訳の分からん用語が出た・・・。もっと分かりやすい例は出せないのかって。」

愛原「【囚人のジレンマ】でネットで検索してもらったら、すごく分かりやすく説明してあるページが見つかるから機会があれば読んでみろ。まぁ要するに、こういう司法取引を持ちかけられたらどうするかという事だ。」

鼎「どんな司法取引?」

原「共同で犯罪を行ったAとBが捕まった。そして警官は別々の部屋にいるAとBに対して、こういう司法取引を持ちかける。2人とも黙秘したら懲役2年。2人とも自白したら懲役10年。一方だけが自白したら、自白した方は捜査に協力したという事で懲役1年、自白しなかった方は懲役15年。さぁAである貴方は、どうするか?  そんな感じ。」

逆沢「うへぇー。まさしくジレンマね。」

愛原「戦略的に考えれば、Bが黙秘した場合、Aは自白すれば刑は最も軽くなる。逆にBが自白した場合、Aは自白した方が自白しないよりは、5年分やはり刑は軽くなる。Bの動向に関わらず自白する方がAにとって有利な訳だが、相手も同じ事を考えていれば懲役10年だ。そして相手も馬鹿でなければ、同じ計算をしている可能性が高い。」

鼎「お互いに相手を信頼すれば共に2年で済むのに、戦略的に考えたら悪い結果になっちゃうんだね。」

愛原「選挙を巡るジレンマもあるぞ。例えばこんな場合、お前はどうする?」

逆沢「ほいほい、どんな?」

愛原「利権誘導型の悪徳政党と、クリーンな善良政党の2つの政党がある。選挙は小選挙区制度で、選挙区ごとにいずれか1人しか通らない。善良政党が政権を取れば善政を敷いて、みんなに少しずつ幸せを与える。逆に悪徳政党が政権を取れば、悪徳政党の政治家を当選させなかった選挙区を徹底的に干しあげて、悪徳政党の政治家を当選させた選挙区のみに利権を配る。さあどっちに入れる?」

逆沢「なんじゃ、そのたとえはーっ!! それどこの国の事やねん?!」

鼎「悪徳政党の地元政治家を当選させても、悪徳政党が勝ったら利権だけは確保できるし、善良政党が勝っても少しずつ幸せは分けてもらえる。逆に善良政党の地元政治家を当選させて、善良政党が勝っても悪徳政党の政治家を当選させた地域と幸せは同じだけで、逆に悪徳政党が政権を取ったら悲惨になる・・・。これってすごく嫌なジレンマだよね。」

逆沢「・・・与党の大物道路族の地元に重点的に公共事業が回って、野党のクリーン政治家を当選させても地元への還元はほとんど無くて、でもだからといってみんなが利権政治家を当選させたら、この国はもっと駄目になる・・・。たとえで済まない現実味があるジレンマなだけに、これは・・・・。」

愛原「・・・目先だけの視点で、戦略的に考えても、長い目で見れば決して良い結果にはならないという一例として参考していただければと思う。何度も言うが、生き残る事と勝ち残る事は違う。去年今年に社会人になったばかりの新人さんで、しかもそれなりの社会的地位とか収入が確保された職業に就いた若者の中には、保守の視点で年功序列だの考えている者もあるようだが、それはレールから外れたらよりつらい人生が待っている事を意味し、またそれを脅しに、よりつらい労働条件で働かし使い捨てようとする資本家の思惑に乗ることでしかないという側面も知っておいていただければと思う。高級官僚といわれる人達も、公務員試験に合格したというだけで生活の安定を約束され、それ故に既得権益を守ることばかりを優先し、それが政治腐敗や財政危機を招いている。そういう側面もあるんだという事を。」










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