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愛原様のたわごと(08年11月7日)



愛原「新聞屋や報道屋が暇にならないくらい、不祥事というのは毎日のように起きるが、自衛隊とか防衛省がらみの不祥事コンボにはもうあきれ果てる。社保庁だけじゃなくて、防衛省や自衛隊も一度解体してやり直すくらいの方がいいんじゃないのか?」


逆沢「不祥事コンボって、田母神とかいうオッサンがらみの不祥事の他に何かあったっけ?」

愛原「・・・・お前の記憶力は、末期症状ものだな。ほんの2週間前に、広島県の海上自衛隊が、格闘訓練の名の元に15人がかりで1人に向かって撲殺した事件があったばかりだろ。」

逆沢「ああ、そうだったっけか? 時津風部屋を超える級のリンチ殺人事件の割には、ぜーんぜん話題にならなかったから、すっかり忘れてたわ。」

鼎「福知山の陸上自衛隊の不祥事の話とか、イージス艦で漁船沈めた話とかは、ここのコーナーでも取り上げた事があったよね。」

愛原「それだけか? おとついのニュースでもどでかいニュースがあっただろ?」

逆沢「おとつい? 何かあったっけ? ああ小室哲哉が詐欺でとっつかまった事件があったわね。」

愛原「小室哲哉は防衛省とは関係ねえっ! 小泉政権時代に長く君臨した守屋武昌前事務次官を忘れたのか? あいつが汚職がらみで実刑判決を受け、なおかつ即日控訴したニュースがあっただろ!??」

逆沢「そんなニュース、わたしゃ知らんわ。」

鼎「でも退職金を返そうとしてる分、守屋さんはまだマシかも知れないよ。社会保険庁の歴代トップの人とかもそうだけど、実際には返納を求められても返そうとしない人がほとんどだもんね。」

逆沢「田母神とかいうオッサンもそうだったっけ? まぁ守屋の方は罪を認めてるけど、田母神とかいうオッサンの方は、自らの正義を確信しているから、オッサンからしたら、そんな気は当然ないと思うけど。」

鼎「でもこうしてみると、本当に不祥事だらけだよね。機密漏洩問題とかの裁判も未だに続いているし、まだまだいっぱいあるかも知れないよね。」

愛原「・・・やっと気づいたか? 正直言って上から下まで、防衛省や自衛隊の規律には、少なからずの問題があるといって良い。だがなぜか日教組に対しては極めて厳しく判定する人間でも、田母神とかその他自衛官に対しては、愛国者だからとか、お国を守っているとか、漠然とし過ぎて何の事やら分からない理由で免罪する人が少なからずいるのには驚く。まぁ厳しい人も甘い人もどっちもいて良いが、一方に甘く一方に厳しくでは、ただの差別だと思うがどうだろうか?」


逆沢「あはは。でも結構、田母神とかいうオッサンが投稿した論文は、いいところも突いてない?」

愛原「論文の内容についてはまぁ是々非々だが、そういう論文を責任ある職務の者が規律違反を伴う形で出す事が大問題なのだ。麻生太郎にしても責任ある地位にある時には、相応の対応を心がけてるようだし、欲望のままに周りの迷惑も顧みず、暴れまくるのでは獣と一緒だ。それでは中山元国交相と同じだ。好き放題やってる本人は、正義漢を気取って満足かも知れんが、それで不当に迷惑を被る人が多く出る。その結果、敵ではなく味方により多くの損害を出す。あるいは忍びがたきを忍び、着実に打ち続けている味方の布石をぶち壊してしまう。まぁ戦記物でも、挑発に乗って単騎で飛び出す馬鹿武者とかはよく登場するが、それと同類の愚行だ。こういう奴が軍務を担当し続けていると、ここぞの場面で独断(独善?)行動に走って、全軍を敗走させかねない。それくらい危険なタイプだ。ってか大日本帝国が軍国主義化したのも、自らの正義を疑わない軍部の行動派が、2.26事件とかのクーデターを起こしたのが発端だしな。」

逆沢「でもそんな田母神さんとか中山元国交相に、ヤンヤ喝采している連中も少しはいそうだけどね。まぁ中山の方は、立候補がどうのこうのパニック起こして勝手に自滅したけど。」

愛原「冒頭に触れた通り、田母神発言の裏には、防衛省内部全体での規律の緩みが遠因としておそらくある。俺は束縛嫌いの超自由主義者なんで、規律規律言う奴は、本来苦手なんだが、だからといって迷惑行為をしながら、それを是正しようともせず、反省しようともせず、一昔のヤンキー漫画に登場するヤンキーキャラのごとく、自分達だけカッコつけて、周りの空気をよどませたり迷惑かけ続けているシチュエーションに喝采するのは、さすがにためらうからな。」

鼎「まぁサッカーにしても野球にしても、日本人は、選手の個人プレーよりも、チームプレーで勝ち抜くタイプの人種だから、ある程度は、組織の規律とかも強さを維持する上では大切なのかも知れないよね。」

逆沢「でも防衛省に関して言えば、田母神のような個人プレイヤーによる迷惑行為もあるかも知れないけど、15人リンチ事件に関しては、どう見ても組織的隠蔽だと思うけどね。警察組織なんかはもっとひどいけど、こういう組織プレーによる不祥事隠しも横行している分から逆算すると、勇気をもって内部告発するような、はみ出し者の個人プレイヤーは絶対必要なんじゃないかなぁ?」

愛原「お前は、田母神擁護派なのか?」

逆沢「まぁ、そうかもね。私達みたいな発言力のない人間がどんなに一生懸命主張しても誰も相手にしてくれないけど、普段から発言を制限されるような要人が、あえて沈黙を破る事の効果はやっぱり絶大だし、定年間近のオッサンだからできる勇気ある行動って気はしない?」

鼎「でも実は、田母神さんの所属していた部署出身の部下の多くも、同時に同じメディアに対して投稿していたんだよ。組織全体の不祥事じゃなくても、スタンドプレーでもないと私は思うよ。田母神さんが個人的に、部下に投稿するように命令していたなら個人プレーかも知れないけど、事実上、一部署全体による規律違反のような気が私はしちゃうよ。」

愛原「俺は田母神は支持しない。支持できない。その正義が仮に俺の胸に大きく響いても、それを安易に賞賛すれば、【独りよがりの正義】による鉄拳制裁を認めてしまう事になるからな。まぁ誤りを認められるような正義漢ならまだ支持できる余地は残るが、【大量破壊兵器を保有している疑いがある】との大義名分を元に、虐殺という名の究極の鉄拳制裁を断行し、それが間違いだと分かった後も、賠償も反省もせず、自らの正義をアピールし続けるような連中が多くいるのを知ってるだけに、【独りよがりの正義】には、やはり強い警戒感がある。田母神の場合は、武力を預かる職責の人間だっただけに余計にそう思う。」

鼎「私は、田母神さんの発言よりも、15人がかりの集団リンチ殺人の件が、闇に葬られつつある方が気になるよ。」

逆沢「しつけの名の元の子殺しとか、かわいがりの名の元の力士殺しだけじゃなくて、訓練の名の元の隊員殺しまで出てくるとは世も末だと思うわ。しかも田母神発言で即断強気の対処を決定した浜田防衛大臣も、この件に対しては、【一般論としてそういう訓練もある】みたいな事いって、事実上、擁護してたし。私、一個人の思想をどうこう騒ぐわりに、こういう組織的な殺人事件が隠蔽される方がムカつくんだけど。」

愛原「・・・まぁ、人一人、無惨に死んでるからな。しかも時津風部屋のケースと違い、相手は公職機関だ。にも関わらず、時津風部屋の時にあれ程騒いだマスコミが、この件はさらっとスルーしている。確かに得体の知れないものを感じなくはないな。」

逆沢「でしょでしょ。野党も田母神を国会に呼びつける暇があったら、こういう殺人事件にまで発展しそうな組織的隠蔽劇こそ追求すべきだと思うんだけど。」

愛原「鼎はどう思う?」

鼎「うーん。私は田母神さんの問題に関しては、規律違反とかそんなんよりも、やっぱり論文の中身が気になるかなぁ? 私は欧州列強も日本も、どっちも侵略国家だったと思うから、タイトルの部分であの投稿文はちょっとどうかなーって思うけど。それに中国の人とかが、今のイラクやアフガニスタンの人みたいに、当時の日本軍にひどい目に遭わされたのは事実だから、その部分に一切触れずに、ただ仕方ないと割り切って正当化したら、やっぱり被害者の関係者にしてみたら、気持ちは良くならないと思うよ。」

逆沢「うーん。でもまぁあの戦争に関しては、日本人が一方的な加害者ではなく、被害者としての側面はあったと思うし、それをもう少し主張したいという派の気持ちも、分かって欲しいんだけどねぇー。」

愛原「田母神の視点はタイトルからも想像できる通り、【帝国主義時代の欧州列強も同じ事をしてたじゃねえか。だからといって俺達は、今更、アメリカやイギリスを非難するつもりはない。だから俺達も非難すんな。】だと思う。論文の中にある出典の信憑性とか主張の論拠を無視して、おそらく結論としてこれが言いたいんだろうなぁという部分だけ抜き出せば。」

鼎「中国の人達の視点で言えば、【加害者が被害者に反省と賠償を要求するのは当然だ。】だと思うよ。アジアの人の中には【俺達は当然日本に賠償を要求するが、その代わり日本はアメリカに賠償を要求すればいい】って思想の人もいるよ。」

逆沢「でもアメリカ政府からすれば、【俺達は正義だ。俺達のおかげで日本はここまで復興する事ができた。俺達に感謝せよ。そして過去をひたすら反省せよ】って所みたいだけどね。」

愛原「従軍慰安婦問題でのアメリカの対応を見ても分かるとおり、アメリカは(現代ではなく)過去の日本に対しては、一貫して極めて厳しい姿勢だ。その一方で、自分達のおかげで今日の日本があるとも信じている。ブッシュはイラク戦関係で、よく日本を引き合いに出して、イラク戦を正当化もしている。【邪悪なフセイン政権を潰して、素晴らしい新生イラクを作る。邪悪な大日本帝国を倒して、彼らの心を入れ替え、素晴らしい新生日本を作ったように】みたいな感じでな。」

逆沢「西洋風テーブルトークファンタジー的というか、西部劇風というか、あきれるくらい自画自賛の正義の味方気取りね。」

愛原「アメリカの思惑で言えば、大日本帝国はどうしようもない程腐った巨悪という設定であり続けて欲しいし、それを破壊した事により、現代の日本人は拍手喝采してアメリカに感謝している設定であって欲しい。田母神理論は、そういう設定に対する一つのアンチテーゼだろう。だが田母神が特異なのは、【日本も悪いが、アメリカも悪い】ではなく、【アメリカは悪くない。日本も悪くない】という結論に導いてしまっている事。これでは被害者は、ただ単に泣き寝入りになってしまうし、侵略国家の正当化にしかならない。イラク戦争も非難できない。」

逆沢「日本はたとえるなら、中間管理職みたいな立場かもね。今までは上司(アメリカ?)にペコペコ、部下(アジア?)にもいい顔してたけど、それじゃストレスがたまるという事で、でも上司に逆らうと怖いと思った田母神さんは、上司の機嫌をできるだけ損ねないようにしつつも、それでも自分のプライドを守るために部下に全責任を背負わせる事にしたようなものかもね。」

鼎「そんなのひどいよ。上司が問題の黒幕と分かってるなら、今までひどい仕打ちをしてきた部下にはちゃんと謝って、黒幕の上司にガツンと言う方を選ばないと駄目だよ。」

愛原「そのたとえでは言えば、上司としては元々、中間管理職に全責任をなすりつけた上で、【部下にも俺様にもしっかり謝れ。そしたら心を入れ替えたという事で、お前をそれなりの待遇で置いてやる】という路線で行きたかったのが、突然田母神管理職がそんな情けない真似できるかと反旗を翻して、でも上司の怒りも買いたくないから、突然部下に対して、【上司は勿論悪くないが、俺も悪くない!】と開き直って、部下に泣き寝入りを強いるようなパターンだな。だが正義の味方を気取りたい上司としては、下々の部下に責任を押しつけて広くから恨みを買うよりは、中間管理職一人に責任を押しつけて、しかもそれを改心させた設定の方が美しいから、中間管理職の仕掛けた保身策に迎合する可能性は低いだろうな。一部の部下(東南アジア)などは、上司(欧米)に痛めつけられた歴史も長く、上司が黒幕である事もうすうす気づいているから、むしろ部下に謝るべき所は謝って、真の黒幕である上司に反旗を翻すのも一つの手かも知れんけどな。」

鼎「マルチ商法に騙されてその会員になって、さらに友人に勧めまわって被害を広げる一因になってしまうこともあるけど、もしそれが悪い事だと気づいたら、【自分が悪くない。騙される方が悪い。俺も勧誘されて騙された方かも知れないけど、俺に騙されたお前が悪い】と開き直って友人達を怒らせるよりも、友人達にちゃんと謝った上で警察に告訴するのが本当のあるべき姿だと思うよ。」

逆沢「そのマルチの例で言えば、田母神理論は完全に卑劣な自己正当化理論って事になっちゃうんだけど・・・。」

愛原「残念ながら、歴史をねつ造したがる人は多い。それぞれの国の人間、あるいはそれぞれの思想や立場の人間が、歴史を最も自分達にとって都合の良いように操ろうと動かしていく。そしてこの問題で深刻なのは、【自分が歴史を改ざんしていると自覚できている者】よりも、【自分にとって最も都合の良い歴史的解釈を正しいと確信して疑わない者】の方が多い事だ。本人には、騙している自覚がなく、それでいて自分にとって都合の悪い歴史的解釈に対しては、強い嫌悪感をむき出して敵対したりする。客観的に歴史を分析しようとする者も同様に多いし、誇らしい歴史も恥ずかしい歴史も謙虚に受け止められる者も多いが、恥ずかしい歴史を認めると即自虐史観とか、他国の歴史を賞賛すると愛国心に欠けるとか、特定の視点のみしか許さない人間も残念ながら多い。という訳で、今回のテーマだが、【正史】で行きたいと思う。

逆沢「正史っていうと、正しい歴史って意味かな?」

愛原「そうあって欲しいが、残念ながら少し違う。国家などの公認を得て編纂・流布される歴史のことだ。ちなみに正しい歴史は、単に【史実】とか【歴史的事実】と読んだ方がシンプルにあてはまると思う。もっとも何が最も正しい歴史と決めつける事は学術的にも困難な場合も多いので、うるさい人には【歴史的信憑性がより高い事象】みたいなオブラートをかぶせた表現に留めておいた方が無難だろう。」

逆沢「ワイドショーでは、毎日のように【衝撃の事実!】とやらが出てくるけどね。」

鼎「とすると正史が、信憑性の高い歴史的事実とは限らないって事だよね。」

逆沢「時の政権の都合によって、過去の歴史が美化されたり、否定されたりする事は当然ありうるわよね。」

愛原「残念ながらな。ただそれでも正史自体が存在しないよりは、存在する方が絶対に良い。例えば正史が編纂・流布されれば、それに対する反応が当然現れる。嘘の多い正史なら、それが嘘であると主張する野史(正史の反対)や注釈本が別に残る可能性が当然高くなる。時の政権が少々圧力をかけても、焚書を完全に行なう事は不可能だし、仮に書物として残らなくても、伝承として残る可能性は高い。そうなると後世になって、歴史を客観的に振り返る余裕が出てきた頃、野史や伝承自体が、有効な異論として機能してくる事がある。無論、正史の正しさをねじ曲げるような野史や伝承も多くあろうが、いずれにしろ判断材料が増える事自体は大きなメリットだ。中国・朝鮮・日本などの東アジア文化圏では、やたらこの正史が多く残っている事もあって、比較的歴史を振り返る上での判断材料が多いのはうれしいところだな。」

鼎「東アジア文化圏以外は、本当にそういうのが少ないよね。神話とかは多い所もあるけど。」

逆沢「アメリカやオーストラリアみたいに、侵略者が先住民を駆逐して成立した国はそもそも歴史の重みなんてクソ食らえな部分もあるし、植民地時代の長かった地方でも、歴史の記録が残りにくい傾向がありそうだしね。」

愛原「誇りにくい歴史は、どうしても記録にも残りにくいからな。」

逆沢「まー、正史なんて酔狂なもんを残したがるのは所詮権力者だし、権力者による自己宣伝の思惑もあるだろうけどねぇー。」

鼎「その意味では、次の王朝の代になって、初めて前の時代の正史をなるべく編纂しようとした中国は、かなり上手に歴史を残そうとしているような気がするよね。」

愛原「そうだな。ちなみにウチのゲームを含む架空世界でも、当然、歴史というのは存在する。勿論、架空世界の歴史なので薄っぺらくなるのは仕方ないが、そこにはやはり、設定された史実というのが存在する事がある。」

鼎「よくある本格RPGの世界では、年表のようなものが登場する事も多いよね。」

逆沢「それで冒険を進めていく内に、隠された歴史とか封印された歴史とかが明らかにされるのよね。」

愛原「ファンタジーの世界でも、やっぱり歴史はねつ造されて当然なのかと思うと、愕然とするな。」

鼎「でも、封印された歴史の正体は、実はハイテクノロジーとか失われた高度な魔術だったりするんだよね。」

逆沢「なぜか、古代の技術力に負ける現代!!!」

愛原「現実世界では、技術力の封印というのは、なかなか大変な事だ。王様の権限一つでそれができるという設定自体は全く否定しないが、スゴい事なのは間違いない。」

逆沢「軍事上の最高機密であるべき核兵器の製造技術でさえ、あっという間に主要国に広がっちゃったもんねー。」

愛原「一部の超大国らが圧力をかけてるから、一部の特権国しか核技術を実際に使おうとしないだけで、技術スキルという点だけで言えば、北朝鮮だろうがイランだろうがパキスタンだろうが、製造自体は可能だからな。技術の隠蔽というのはなかなか大変で、ましてや一度庶民レベルまで広がった技術を封印するなんてのは、極めて困難なのが実情だ。もっと便利な技術が現れた時点で、忘れられる技術とかはいくらでもあるが、ただ単に全体レベルで技術が衰退する事は人間の心理としてちょっと考えにくいな。」

鼎「でも私達の世代は、草履の編み方どころか、ミシンの使い方も分からないくらい人も多いだから、便利になる事で忘れられる事は多いよね。」

逆沢「でもそういう理屈で言えば、失われたハイテクノロジーというのも、設定次第ではうまくやれるような気がしなくもないわね。」

愛原「まぁそんなマクロレベルの歴史だけでなく、例えば【実はお前の本当の親は・・・?】的な個人的な歴史の真相が明らかになるシナリオの作品もなくはないし、ある意味、ねつ造された歴史を解き明かすというのは、有力なシナリオの柱の一つと言えるかも知れん。」

逆沢「でもエンディングの場面では、一度は解明された歴史の真相を、結局世間に公表することもなく、そのまま主人公達の胸に秘めるだけで終わるケースも多そうだけどね。」

鼎「ちょっともったいないよね。」

愛原「こういう歴史の真相をあばくシナリオの場合は、本当の歴史の記録を記した書物とか、賢者の記憶とかを頼って、やがて真相にたどり着く事が多いのだが、秘密を暴くだけ暴いて、結局そのまんま封印してしまうのは、確かにもったいないかもな。真の歴史をわざわざ記録や記憶に残した人は、おそらく誰かに見てもらいたい、知ってもらいたいから、記録に残したり語り部を引き受けたりする訳で、それを再度封印されたら、無念の思いは確かにあるかもしれんな。」

逆沢「現実世界でも、封印された歴史というのは、大抵恥ずかしい歴史とか、黒い歴史の事が多いから、再度封印したくなる気持ちも分からなくはないけどね。」

鼎「それでもそういうシナリオの主人公は、立派だと思うよ。凡人なら恥ずかしい歴史とか受け入れたくない歴史とかを仮に知る機会があっても、それを真面目に信用する事はないと思うけど、主人公達は、どんなに恐ろしい歴史の記録であっても、ちゃんと真っ正面から受け止めて問題を解決しようとするもん。これって誰でもできない事だよね。」


逆沢「都合の悪い歴史に対して、耳をふさいだり、頭から否定する人は多いからねぇー。まぁ隠蔽されている歴史なんてのは、少なくとも隠蔽しようとした者にとっては都合の悪い歴史に決まってるし、その筋に連なる人達なら、やっぱり同じように聞かなかった事にしてもおかしくないからね。」

愛原「せっかく隠された歴史をあばいても、それを見なかった事にするような奴は、主人公パーティーに所属する資格はないな。」

鼎「そういえば、隠されている本当の過去をあばくというのも、一つのシナリオだと思うけど、逆に未来を作るシナリオもあるよね。」

逆沢「未来?」

鼎「うん。例えば、ウチのゲームの場合は、正史ルートはどれなのって事なんだけど?」

逆沢「ああ、なる程ねー。確かに今時のAVGとかではエンディングが分岐する事くらいはよくある事だけど、その中に正史と呼ばれるルートが1つくらいあってもおかしくないわよね。特に【あれから○○年後】みたいな形で続編を作る場合は、どれか一つを正史に固定しないと、色々面倒なことになるもんねー。」

愛原「なる程。そういう意味か。そういや俺も、とある作品の続編が出たと聞いて内容を調べてみたら、【コイツが真ヒロインだったのか?】と、あぜんと言うか、激しくガッカリした事もある。いちいち具体名は出さないけどな。」

鼎「どれが正規エンディングが分からないようなシナリオの場合は、お気に入りのエンディングじゃない方のエンディングが正史ルートというか、正式なエンディングだと知ったら、ちょっとガッカリする事は確かにあるよね。」

逆沢「鬱なエンディングが真エンディングと判明した時とかもそうかな?」

愛原「まぁその辺は好みの問題だから、一概には言えないと思うけどな。」

鼎「で、ウチの場合は、結局どれが正史?」

愛原「正史ルートとか、そんなものはない。但し、各ルートがそれぞれ別作品という訳でもない。北狄編を除く8シナリオでは、とりあえず開始時の時間軸は、全く同じと見なして良い。北狄編の場合は、ヒデブ派が国外に逃亡した直後という設定の分だけ特殊だから、IF扱いになっているが、その一点を除けば他のシナリオと比べて、やはり特に差はない。」

鼎「ええ〜。結局、正史ルートはないのー?」

愛原「ない。大体そもそもどのルートを正史認定すれば、お前は満足なんだ?」

逆沢「そりゃあダントツ愛原編♪ 私の大活躍で黒藤軍の悪党どもを滅多斬り!!」

愛原「辰巳編や宮田編の立場で言えば、物語のしょっぱなに滅多斬りにされそうな立場だけどな。俺達は。」

鼎「別々の主人公で同じ世界をプレイできるシステムって意味では、ウチのゲームもザッピングシステムのゲームだとは思うけど、選ぶ主人公によってあまりにそれぞれのキャラクターや勢力の未来が変わりすぎて、本当に正史的な流れを推理するのが難しいよね。」

愛原「ザッピングシステムを採用した作品のゲームの場合は、色んな主人公の立場でプレイする事で、物語の全容を知ることができるという楽しみがある。勿論、それぞれの立場でプレイできるという意味では、間違いなくウチもザッピングシステムなんだが、物語の全容を知る事ができるなんてものじゃなくて、物語の中身自体がどんどん変わってしまってしまう点で、どう見てもザッピングの枠を超えてしまっているからな。まぁ正史ルートを定めない方が、無限の可能性を感じられていいんじゃねえのか? そうとでも解釈してくれ。」

逆沢「まぁ確かに、正史ルートを固定してしまうと、それ以外のルートは所詮IFなんだよなって感じにならない事もないもんね。」

鼎「IFはIFでいいところもあると思うんだけど。」

愛原「もしもあの時、こうしていたら・・・って奴だな。いわゆるIF戦記物のノベルなどでは、大日本帝国が連合国をブチのめしたり、特定の戦国大名が天下を取ったりみたいな内容のものもあるから、それはそれで楽しいものもある。」

鼎「NHKの大河ドラマとか、三国志演義みたいに、史実の流れを大きく変えない程度に、フィクションを混ぜて作品を面白い物に仕上げている物もあるよね。」

愛原「大河ドラマのように一定の信頼度を置かれているメディアが作る架空歴史ファンタジーは、史実とフィクションを勘違いさせないように、もう少し何らかの対処をして欲しいと思う。そうでないとフィクションの部分を史実と信じた視聴者が、ある時、史実の流れに気づいて、NHKに騙されたと騒いだり、あるいはNHKが歴史をねつ造したなんて事になりかねない。いや、フィクションの部分に気づけた人はまだマシな方で、それに最後まで気づかない者は、得意げになって歴史通になったつもりで、あれこれしゃべりかねない。それで誤ったイメージや情報が広がろうものなら、なお社会として悲劇だ。」

逆沢「噂というのは、必ずしも悪意に満ちた人がまき散らすだけじゃなくて、純粋に誤った情報を正しいと信じた人が広めたり、ちょっとした冗談がマジネタとして広まったりする事もあるからね。」

愛原「歴史教育の中身を見れば、その国の品位と未来が分かる。自称愛国者の中には、自画自賛すべき内容の歴史しか認めない者もいるが、その行き着く先は、北朝鮮のような究極の自画自賛の思想統制国家だ。それよりもむしろ歴史に学びたい。恥ずかしい過去、誤った過去、屈辱的な過去も正面から受け止め、乗り越えようとできる国の方が、将来的に伸びていくと思う。」

逆沢「でも過去に植民地だった国の人は、かつての宗主国に対して賠償を要求できるかも知れないけど、現在進行形で植民地の国の人が、宗主国に対して反旗を翻すのは勇気がいるからねぇー。日本もある意味では、アメリカを宗主国とした現在進行形の植民地のような気もするけど。」

愛原「それはそうかもな。ただ民族派と言われる日本国民の中には、【日本が欧米の植民地支配からアジアを解放した】と主張する一派もあるが、そういう連中は北朝鮮なり中国なりがもしも在日米軍を粉砕して、たとえ一時的にしても日本を武力統制したら(たとえそれがより過酷で残虐で資源強奪的な事をやっても)、日本人は【邪悪なアメリカによる植民地支配から日本を解放して下さってありがとう】と言うとでも思っているのかと本気で問いたい。相手の立場になって考えてみたら矛盾だらけの事を言って、歴史を都合よく解釈する奴は、一番問題だと思う。自分が被害者の立場になったら、きっと許せないと思うであろう事を、堂々と歴史や解釈をねじ曲げて喧伝する奴は、やっぱり好きになれないな。」













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