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愛原様のたわごと(08年11月22日)



愛原「今日も俺様は、少数派の味方だ。」


逆沢「今日もあまのじゃくモードって訳ね。で、今回は何のネタから?」

愛原「またもや大阪で数キロ飲酒ひき逃げ事件があった訳だが、まぁ当然の事ながら、ひき逃げ犯に対する憎悪むき出しの反響が大きくあったわな。」

鼎「それはすごく当然だと思うよ。」

逆沢「そういや、梅田周辺で起きた3kmひき逃げ事件の方も、犯人が捕まって良かったわね。」

鼎「これで今年の大阪府警の死亡ひき逃げ事件は、12件中12件全て逮捕までこぎつけたって事になるんだよね。」

愛原「確かに全国トータルでいえば、ひき逃げ事件の解決率は低い。実は40%を割っていて、つまりひき逃げを試みた場合、無事逃げ切れる方が高いという残念無念な統計がある。それに加えて、危険運転致死傷罪が導入されて以降、飲酒運転に対するペナルティーがはねあがった為、加害者心理として、すぐに警察や救急車を呼ぶよりも、ひき逃げを選択したくなる可能性まで跳ね上がってしまった。今回の舞台は、たまたま死亡ひき逃げ事件の解決率がめっぽう高い大阪府警の管轄下だったから、スムーズな解決につながったが、それでも全国平均から逆算すると、今後もひき逃げ事件自体は、そう簡単には減らないと思われる。」

逆沢「それにしても何キロも引きずるって、明らかにひき逃げの中身自体、凶悪化してない?」

愛原「それは単に、車高が低くなってるせいだろ。ひき逃げ犯人は、そもそも逃げる事で頭いっぱいなんだから、ひき逃げ中にそんな事を考える余裕はない。まさか一昔のひき逃げ犯は、性格が優しかったから何キロも引きずらず、テクニカルに逃げ切ったなんてトンデモ理論を信じてるのではあるまいな?」

鼎「でも被害者感情とか、犯罪の抑止力を期待して、せっかく罪を重くしたのに、それが原因でかえってひき逃げが増えてるとしたら、すごく残念だよね。」

逆沢「でも罪が重くなる程、何としても逃げ切ろうと思うのは当たり前だと思わない?」

愛原「・・・まぁ倫理的にどうこうの問題ではなく、ごくストレートに推測すれば、当たり前だろうな。最近は厳罰化の流れが主流だが、罰が重くなればなる程、自首したりするには勇気がいるのは当然だ。最近は特に、本来ならただの強盗事件や傷害事件で終わるはずの事件が、【顔を見られたら殺せ】的な感覚で、すぐに殺人事件に発展しがちな気がする。そりゃ逃げ切ろうと企んだ場合は、目撃者は皆殺しにしないと危険なのは分かるが・・・・。

鼎「厳罰化って、いい事ばかりじゃないって事かなぁ?」

逆沢「でも贈収賄とか詐欺とか、お金がらみの罪は今でも世界トップクラスの罪の甘さだし、そのせいか外国人がらみの犯罪とか、公務員がらみの汚職とかは全然なくならないしね。それに今まで被害者に厳しく、加害者に甘すぎる時代が長かったから、厳罰主義は当然と私的には考えるんだけどね。」

愛原「まぁ飲酒運転は、どう解釈しても悪い。危険運転致死傷罪という罪が設立されたのも当然だと思うし、罪の重さも妥当性を欠く程ではないだろう。となると問題なのは、むしろ逃げた場合のペナルティーの方だ。逃げたり証拠隠滅したりすると、数倍罪を重くするとかいうのも、検討しないと駄目かも知れない。」

鼎「でも振り込め詐欺とかと違って、ひき逃げ事件というのは、あらかじめ加害者が計画して起こした事件じゃないよね。つまり加害者にとっても想定外の事件だから、気が動転して、理性が働かなくなるって事はあるんじゃないかなぁ?」

愛原「あくまで私的な分類になるが、犯罪は大きく分けて故意犯・衝動(情緒)犯・過失犯の3つに分けられると思う。ちなみに故意犯というのは、確信犯という呼ばれ方をされる事もあるが(誤用だけど)、要するに振り込め詐欺などのように、始めから犯罪を起こす気マンマンな者が、確信をもって起こすケースと解釈してもらいたい。こいつらの場合は、捕まらない確率とか、捕まった際の罰則とか、その犯罪をする事によって得られる利益などを、あたかもビジネスをする如く、計算して行なう場合が多いと思われる。こいつらによる犯罪を減らすには、その犯罪を行なっても割が合わないような社会システムに変えていくしかない。振り込め詐欺が増える一方なのは、簡単に金銭を稼げるメリットの大きさの割に、捕まるリスクや捕まった際のペナルティーが低過ぎる(あるいはそう思われている)事があるんだと思う。

逆沢「衝動犯ってのは?」

愛原「正確な分類としてとりあげるのは微妙だが、ここでは故意犯と過失犯の間に挟まったような、感情とか衝動とかに動かされた犯罪行為としてとらえて欲しい。例えばキレやすい人が起こしやすい犯罪。あと信念や欲望に忠実な人達による犯罪も、広義でいえば含まれる。この前起きた、元厚生次官の殺人事件も、犯人がもしも特定の信念や怨恨を動機としていたならば、これに含めてもいいだろう。麻薬を吸ったり、性犯罪を起こす輩も、欲望に忠実に従った結果という意味では、このカテゴリーに入れてよい。ちなみにこのタイプの犯罪者に対して、厳罰化はあまり効果はない。例えばカッとなって人を傷つけるような人間が、カッとなったタイミングの度に、いちいち罪の重さを再自覚するはずがないし、罪の重さよりも、恨みの大きさとか信念や欲望の強さが勝れば、やはり犯罪を起こそうと試みるだろうからだ。ビジネス感覚で犯罪をやる人間と違い、理性の結果じゃないので、厳罰は、被害者感情をやわらげる以外の効果はイマイチ弱いと思う。

鼎「過失犯ってのは、ひき逃げ犯とかだよね。」

愛原「故意にひき逃げをしたら、ただの殺傷だからな。あと先にキレやすい人を例に取り上げたが、場合によってはこっちに含めた方がいい事もあるだろう。この過失犯になる確率は、誰にでもある。車を運転する者は、誰もが加害者になる可能性があるし、自転車でも場合によっては、とりかえしのつかない惨劇になる事はあるからな。そして自分自身が不幸にも交通事故を起こした瞬間に、【ひき逃げ】という選択肢を選ぶ可能性は、自分自身が思っているよりも高いと思った方がいい。特に財布を路上で拾っておきながら、それを警察に届けず着服するような人間なら、その可能性はかなり高いと俺は思う。」

鼎「小銭とかむき出しの札1枚くらいなら、着服する人は結構いるかも知れないけど、カードとか名刺とかも入ってるような財布を丸ごと着服したり、現金だけ抜き取ろうとするような人は、私は信用したくないと思うよ。」

逆沢「でも意外といたりして。」

愛原「日本人の善良性を甘く見ない方がいい。例えば自動販売機に代表される無人購買機は、日本が最も普及率が高いのは、知ってるか? つまり外国で無人購買機を置こうものなら、直ちに購買機を破壊されるなどして中身を持ち去られる可能性も高いからだ。逆を言えば、日本の治安は相当良い。同様に、財布を落としたら警察に速やかに届けるべきだ。ちゃんと財布の中身や落とした場所がある程度特定できるならば、それなりには見つかる事もあったりするのだ。」

鼎「作者の身の回りでも、拾った人とか落とした人とか色々いるけど、警察に相談したらしばらくして見つかってる例も割と聞くよ。」

逆沢「逆をいえば、財布を拾っておきながら中身を着服するような人間は、どんなに普段はいい子ぶってても、いざ人を車ではね飛ばしたら、凡人以上にひき逃げをやる可能性が高そうな気もするわね。何となくだけど。」

愛原「ともかく人間はミスをする生き物な以上、事件の加害者になる可能性は当然誰にでもある。つまり罪人というのは、イコール悪人とは限らない。というか生まれもって悪人という人はいないだろう。ある瞬間の時点で、道を踏み外して、あるいはちょっとしたきっかけが原因で悪事にクビを突っ込むケースも多いと思われる。という訳で、今回のテーマは【悪人とも言い切れない罪人】だ。」

逆沢「うーん。ちょっと微妙な存在がテーマなのね。悪人だったら普通に、戦闘RPGでは欠かせない存在なんだけど。」

鼎「悪役が罪深い事をするからこそ、正義の味方は大活躍できるって見方はできるよね。」

逆沢「つまり正義の味方が正義をアピールするには、裁くべき罪人が必要って事ね。【光ある限り影もまたあり】というよりは、【影がないと光もありえない】という方が正確かも。」

愛原「勧善懲悪ものの場合は、悪人と罪人はイコールだし、正義の味方が罪人を思い存分たたきのめせば、それで終わりだ。上の例で言えば、振り込め詐欺犯みたいな故意犯なら、一番裁きやすい。だが過失犯や衝動犯に対して、正義の味方が活躍するのは、ちょっとだけ難しいかも知れない。根っからの悪人とは限らないからだ。」


逆沢「性犯罪者とかなら、根っからの悪人に含めてもいいんじゃない?」

愛原「世間的にはそうかも知れないが、俗に言う精神鑑定を必要とするようなグループとかも含めて、特定の感情を抑えきれない罪人に関しては、ちょっと悪人判定が難しい場合があるからな。例えば飲酒運転は紛れもない犯罪だが、アルコール依存症の人にとって酒抜きの生活はなかなか大変なのだ。タバコを1時間吸わないだけで我慢できないようなヘビースモーカーもいるように、それが習慣となっている者を、その習慣から辞めさせるのは簡単な事ではない。一度痛い目に遭えば辞めるきっかけにもなるだろうが・・・。」

鼎「麻薬中毒の人を、麻薬から解放するというのも難しいと聞くよ。周りの人が必死に支えてやっと何とかなるかもというレベルで、中毒者本人に強い意志がないと、いつかまた麻薬の売人の元に戻ってしまうケースも多いと聞くし、再犯率もすごく高いらしいよ。」

愛原「性犯罪にしろ麻薬がらみにしろ飲酒運転がらみにしろ、この手の前科者は、何度でも同じ犯罪を繰り返す可能性が極めて高い。このグループには重罰化が殆ど効果ないのも問題だ。勿論、長期拘留する事で社会の中で再び悪さをする可能性は減るが、こういう人間を長期拘留するのは、税金もたくさんかかるし、問題点も多いのだ。」

鼎「でも重度のアル中でも知られた赤塚不二夫さんは、特定の分野では超一流の天才作家でもあったよね。もしも赤塚さんに特定の才とかが全然なくて、経済的にも困窮してたりしたら、いずれどこかでお酒がらみの不祥事を起こす可能性もあったりしたのかなぁ?」

逆沢「よくよく考えたら、性犯罪者並の特定の強い性癖を持つ人でも、その人がそれなりに異性にモテたり、お金を沢山持ってたりして、異性あさりに困らない環境にあったなら、その人は犯罪者にならずに済む可能性はあるわけね。」

愛原「欲求さえ満たしてやれば、このタイプは基本的に無害だからな。キレやすい人にしても、欲求さえ満たし続けてやれば簡単にはキレたりはしない。酒飲みにしても、飲酒運転せずに済むような環境とか、酒を買うお金に困らない環境などを整えてやれば、まだ事件にはなりにくいだろう。このタイプは罪人になる可能性は高くとも、本質的に邪悪ではない。その代わり、倫理道徳を説こうが、鉄拳制裁なり重刑なりを施そうが、それだけで改心させたり矯正するのは困難なので、まさしく正義の味方泣かせのタイプだと思う。」

鼎「思想犯とかも、ある意味、このグループだよね?」

愛原「自らを正義と確信してる狂信徒なり過激派なりも、改心させたり矯正するのは困難だ。もっとも制裁を加える側と、制裁を加えられる側のどっちが本当の正義と呼ぶにふさわしいかという、根本的な問題もあるが・・・・。」

鼎「アメリカは、イラクで捕まえた思想犯とかを、グアンタナモとかの拠点に連れ込んで、拷問したり制裁したり矯正を試みたりしてるよね。」

愛原「正義の味方が、本当に正義の味方と呼ぶにふさわしい徳をそなえているかは、永遠のテーマだろうな。まぁ今回のテーマは【何が正義か?】ではなく、あくまで一般論として、悪人と呼ぶには微妙な罪人について、絞って考えてみたい。」

逆沢「過失犯については、事件を起こした後の対応によって、差がつくような気がするけど、どうかな?」

鼎「仮に交通事故を起こしたとして、その後、すぐに救急車を呼ぶか、逃げてしまうかの差は大きいよね。」

愛原「被害者やその身内からすれば、特別な感情がわき出てくるのはこれはやむを得ない。だが被害者でもない第三者が正義の味方を気取る場合は、ただ感情に任せて加害者を責めるのは野暮だと思う。過失犯は、誰でも成り得る可能性があるものだからな。」

逆沢「まぁ感情に任せてとにかく叩くのが好きな人とかは、被害者側に落ち度があると、逆に被害者叩きに熱を入れる事もあるし、そういう連中はどっちにしろ私は嫌いだけどね。」

鼎「最近は、シロとクロに人間を分けて見る人が多い気がするよね。とにかく最初にシロとクロの二種類にふるい分けて、クロ側に属したと判断すれば、その人の過去や全人格を否定するような勢いで徹底的に叩く人とかが多いよね。」

愛原「そういう人は【罪を憎んで人を憎まず】の意味が理解できてないんだろうな。だからクロと判断された罪人を、まるで過去の人生のありようや未来も含めて、一切救いようのない悪人のごとく忌み嫌い叩く。でもそういう人間に限って、いざ自分が話題の渦中に立たされた時には、暴言を吐いたり開き直ったりしそうな気がするのは俺だけか?」

逆沢「さぁ、人それぞれじゃない? でも大抵の人は、罪を犯さずに人生を送るんだし、案外どーでもいいかも。」

愛原「・・・お前は、そんな事を本気で思っているのか?」

逆沢「でもその通りでしょ?」

愛原「冗談ではない。お前は、食品メーカーの産地偽造とか賞味期限偽造とか、自動車メーカーのリコール隠しとか、製紙メーカーの古紙配合率偽造とか、小売の労働基準法違反とか、建設業界の談合とか手抜き工事問題とかリフォーム詐欺とか、公務員のプール金とか、あんなのが特殊な例外だとでも思っているのか? 」

鼎「確か、古紙配合率問題とか談合問題では、業界の主要メーカーの殆どが荷担していた事もあったよね。まともな会社の方が少数派だったというか・・・。それってもしかして、罪のない企業よりも罪のある企業の方が多数派って事??」

逆沢「・・・うーん、従業員の殆どが悪事に荷担しているような職場も、そういえば結構あるかも。労働基準法違反とか、公務員のプール金問題とかは、その組織に所属している者なら殆ど知ってる公然の秘密状態という所も多いって話だし・・・。」

愛原「確かに最近は、年功序列制度が崩れた事によって、辞める覚悟ができた従業員とか元従業員とかによる内部告発が増えた。だが公務員とか大企業のような、辞めるには勇気がいるレベルの厚遇が保証された職場では、内部告発はまだまだ殆ど行なわれていないのが実情だ。サービス残業を改めるべく労働基準監督署に駆け込むにしろ、これもなかなか勇気のいる話で、簡単にはできない。イジメを見て見ぬふりする構図と似たようなもので、職場の違法行為を、職員全員で隠蔽しているケースも残念ながらかなり多い。ミートホープとかの問題行為も、従業員なら殆ど誰でも知ってる組織的犯罪同然の内容だったしな。」

逆沢「まぁ見て見ぬふりをするのも犯罪に含めるのなら、確かに組織の構成員全員が犯罪者という企業とかは、結構あるかも知れないけどね。」

愛原「悪事に荷担したり、見て見ぬふりする人間は意外と多い。ていうか、何十人(役所の場合は何百人というケースもアリ)の組織メンバーの内、たった1人が内部告発するだけで解決する問題が、何十年も放置されている事もある。特に役所の場合は、正義の味方が百人に一人もおらんのか?というくらいの確率だ。」

鼎「さっき日本人の善良性を甘く見てはいけないと言ったばかりなのに、別の角度から見ると、日本人ほど邪悪な存在はないみたいに聞こえちゃうよー。これって一体どうなっちゃってんの〜??」

逆沢「単に責任を取りたくないだけなんじゃないの? 財布を着服してバレたら、言い訳無用でその人は恥ずかしい犯罪者としてチャンチャンだけど、組織的な犯罪に関しては、【赤信号、みんなで渡れば怖くない】みたいな感じで〜。」

鼎「私としては、もう少し性善説で日本人を解釈してみたいんだけど・・・。」

愛原「しかし、逆沢の解釈は残念ながら一理くらいはある。多くの日本人は、良くも悪くも波風を立てるのを嫌うから、自分から進んで悪事をやろうとする冒険者(?)も少なめかも知れないが、他人の悪事を見て見ぬふりする者も多いという事なんだろう。特にカミナリオヤジが絶滅寸前と言われる今時の日本では・・・。」


逆沢「正義の味方にとっては、一番厄介な存在かもね。そういうシロクロつけにくい中途半端な存在は。」

愛原「汚染米を食用として売るのが悪でないはずがない。税金をプールして送別会とか官官接待のイベントの度に飲み食いに使用していいはずもない。つまり悪事なのは分かりきっている事だし、しかもそれらは全て、過失でも衝動でもなく、れっきとした故意犯だ。にも関わらず、そこで働いている者は、皆それを見て見ぬふりをする。下手すると見て見ぬふりどころか、送別会などの名の元に公金で飲み食いするメンツの中に誘われれば、ちゃっかり自分も収まってたりもする。勿論、彼らが振り込め詐欺犯のような犯罪目的で、始めから入社・入庁しているかといえば、決してそうではない。いつの間にか取り込まれてしまうのだ。ここが実に恐ろしい。」

逆沢「時代劇だったら、悪代官の【出会え!出会え!】のかけ声で集まってくる雑魚兵どもは、無情に斬られて終わりだし、いつの間にか組織的犯罪に取り込まれてしまうような軟弱者は、容赦なく成敗してやればいいんじゃない?」

鼎「それだったら、公務員の殆どの人は、みんな正義の味方に成敗されるべき犯罪者って事になっちゃうよー。それはやっぱり、やり過ぎだよ〜。」

愛原「犯罪者なり加害者なりが、社会全体から見て極めて少数派なら、悪人認定して成敗するのは比較的たやすいかもしれない。だが多数派とまではいかなくても、一斉に成敗するには大人数過ぎると、かなり厄介だ。特に取り込まれただけで、始めから悪意を持って悪事を行なっていた人間でなければ、その扱いはなかなか難しい。お前らだって、知らず知らずの内に、加害者になってたりはしないか?」

逆沢「そんな事、いちいち気にして生きてられないわ。そんな事言ったら、アメリカ人は二酸化炭素まき散らしまくり、無実の国の国民虐殺しまくりの、超犯罪者集団という事になっちゃうし、日本人も十分その片棒くらいは担いでるしね。」

鼎「私がちょっと記憶に残ってるのは、2年前に話題になった必修科目の未履修問題かなぁ? あれもちゃんと真面目に必修科目を履修した上で真面目に大学受験に臨んだ人からしたら、未履修のまま受験向きの科目を集中して勉強した人はズルしてるようにしか見えないよね。真面目に頑張ってる人が馬鹿をみて、ズルをした人が得をしたって点では、善良な被害者と卑怯な加害者の構図と一緒だよね。でも加害者の数が多すぎて、とても被害者が納得するような対策が打たれたとは思えないよね。」

愛原「随分、厄介な所から厄介な例題を持ちだしたな。だが今回のテーマの例題としては、なかなか悪くはないぞ。実際問題、2年前の時点で学生だった人は元より、そうでない人でも、そう遠くない世代なら被害者か加害者のどちらかの立場になってた頃があってもおかしくないから、他人事ではない、リアル視点で今回のテーマについて振り替えれるんじゃないかな?」

逆沢「仕方ないで済ませたら、被害者は報われないというか、ズルした者勝ちの世の中を認めてしまう事になってしまう。でもズルを許さないとするなら、どう裁くのがベストなのか? 結構悩みどころね。」

愛原「ちなみに処分が甘いとどうなるかを考えてみて欲しい。例えば兵庫県の長田高校の例で言うと、ここは2006年の不祥事発覚で236人もの未履修者を出し、しかもその未履修単位数は70時間に及ぶ。だが実はこの高校は、2000年の時点で一度未履修問題が発覚して、県教委に指導されている。にも関わらず、それから2.3年も立たぬ間にすぐに元のズル態勢に戻し、2006年にまたもやバレるという喜劇を演じているのだ。つまり罰則らしい罰則がないと、ほとぼりが冷めるやすぐに元の木阿弥になるという事だ。」

逆沢「まぁ長田高校ってのは、偏差値70クラスの超エリート公立校だから、受験第一なのは分かるけどね。私立に優秀な人材が流れがちな今の世の中にしては、珍しくデキる公立ではあるし。」

鼎「でもズルしたら、台無しだよ。」

逆沢「私的には、スポーツができる子はスポーツ重視。芸術センスのある子は芸術重視。働く上で有利な資格やスキルを身につけたい子は技能重視で教育したらいいって思想だから、受験重視の学校は受験重視の履修科目で固めても無問題と思ってんだけどねぇー。文部省の横並び教育なんか、クソ食らえというか・・・。」

鼎「でも受験ってのは公平が大前提でないとまずいと思うよ。それなら始めから必修科目とかのルールを決めなければ良かったと思うし、ルールがある以上、ルール違反してまで勝負に勝とうとするのは、やっぱり良くない事だと思うよ。」

愛原「ルールを守った側が馬鹿を見るようなルールは、始めから必要ないと思う。ともかく馬鹿を見た被害者がいるのは事実なのだから、誰かがその償いをしなくてはならないのは、ある意味当然だ。ただ問題はどう償うか? その中身なのだ。無論、罰が軽すぎれば、いずれまた再犯という事になるのは、他の犯罪事件と変わりない。だが何でも厳罰化がいいのかという問題もあるし、誰を罰するかという根本的な問題もある。2006年の不祥事では、3月に未履修科目を名目上集中して授業する事で履修済みとするという解決方法で事を収めたが、こんなものが果たして妥当だったのか? 俺はそう思う。これじゃただの(ズルを主導した教師側ではなく生徒側への)罰ゲームでしかないだろう。ってか罰ゲームすら、ちゃんと行なわれたのか? 罰ゲームすら行なったフリだけして、実はズルしてた所もあるんじゃないのか?」

逆沢「だからといって、誰もが納得するような妙案もないと思うけどね。」

鼎「でもルールを守った側が馬鹿を見るようなルールを作るのが悪いって論理は、すごく分かるよ。年金問題でもそうだよね。」

愛原「年金問題に関しては、昔のたわごとコーナーでそこそこ長文で触れたから、いちいち多くは蒸し返さないが結論だけ言えば、貧乏人ほど、色んな面で損をするシステムだからな。公務員など豊かな者なら、真面目に年金を納めても(もらえる額が直接支払った額に比べて、かなり優遇されているため)損はあまりないだろう。だが国民年金のみに加入扱いで所得も低い貧乏人が、真面目に収めようとするとかなり馬鹿を見る。【悪法も法なり】の論理で言えば、それでも払うべきという結論になるんだろうが、でなければ抵抗を試みるのはごく自然だ。年金を収めない者がズルなのか、官僚や政治家や経団連の大物が官僚や政治家や経団連の大物にとって有利な年金制度を作る方がもっとズルなのか、このケースの場合は、加害者と被害者の関係がかなりあいまいなので、論評はもっと難しいけどな。」

鼎「元厚生事務次官の人達が殺傷された事件も、天誅だという人もいるよね。」

逆沢「まぁ評価できる部分よりも評価できない業績の部分の方が、ダントツに多そうな気はするけどね。問題を先送りしたり隠蔽したりして被害を拡大させるわ、貧乏人切り捨て&金持ち優遇の収支制度も放置して事実上加速させるわ、そのくせ天下りの渡り鳥繰り返して、そのヨメとかも旅行三昧で、年金問題が大きく騒がれても、それに対しては何らリアクションを起こさないわとか、まぁ恨みを買う要素はてんこもりだからねぇ。」

愛原「俺は独りよがりの正義による鉄拳制裁には断固Noの立場だから、天誅の概念自体を支持する事は決してないけどな。ただ必殺仕事人の世界ではないが、法や公権の手で裁けない厄介な悪党が存在するというのも、やはり事実だ。法を変えて、公権を清くして、あるいは捜査能力を高めて、裁かれるべき人を裁ける世の中に変えるのが王道なのだが、それを妨害しようとする輩も多いので、なかなか世の中は理想通りにはいかない。社会の構成員であるからにはルールを守るべきというのは常識なのだが、そのルールがあまりにおかしい。あるいはルールを守れば守る程、馬鹿を見る事が明らかな場合、それでもルールを守らなければならないのか? これは非常に難問だ。」

鼎「正義の味方にとって、【悪法は正義か?】という課題は重いよね。ファンタジーの世界では、己の私腹のために民に重税を課すような悪い権力者は成敗されて終わりなんだけど、法治国家のルールに従えば、逆に正義の味方は権力者が制定した悪法に従って、重税から逃れようとする民衆を成敗しなくてはならなくなっちゃうし、それって問題だよね。」

逆沢「だからといって、独りよがりの正義を信じて突っ走れば、行き着くところはオウム真理教が起こしたサリン事件みたいなものになっちゃうしね。」

愛原「何が正義か?という哲学を語り出すと、また本題から大きくずれるから、とりあえず話は戻す。だがここまで語れば、【罪人=悪人】とひとくくりするのが、なかなか難しいという事は伝わったと思う。俺自身の思想で言えば【罪を憎んで人を憎まず】論者だから、被害者に泣き寝入りを強いるような【罪も憎まず】論には賛同できないが、事件が報道される度にその容疑者や加害者の過去や全人格を否定するような【人まで憎む】論にも荷担したくないというのが本音だ。」

逆沢「まぁ何が正義か?を語るのはしんどいけど、世間の常識に照らして明らかに悪である行為に対しては、対処の方法はあるんじゃない? 振り込め詐欺とか、公金流用とかは、もう100%悪といってもいいくらいだし。」

鼎「その誰が見ても100%悪い行為ですら、組織のメンバーになってしまったらいつの間にか知らず知らずの内に荷担していたりして、評価が難しい場面も多いよね。」

愛原「長距離トラックの運送屋が交通ルールを遵守していたら商売にならないと言われているし、残業代を真面目に払い続けてたら経営が持たないと主張する企業もある。勿論、そんな違法行為が積み重なった結果、重大な交通事故が発生したり、過労死やうつ病の被害者を増やしたり、社会全体でいえば格差社会の助長につながる訳だから、やはり悪い事なのは分かっている。だけど悪いと知ってやめられない、そんな局面は誰にでもどこにでもある。」


鼎「でも貧しい人が生活に困ってやってる悪事と、セレブがセレブで有り続けたい為にやってる悪事では、やっぱり質とかが違うと思うよ。サービス残業を強要しているのは何も零細企業だけじゃなくて、1部上場しているような大企業でも珍しくはないよね。天下り官僚の人達とか公務員の人達なんかも、決して安月給でもないのに、軽い気持ちで公金を流用したり、法律を自分達にとって都合のいいように作り替えたりしてる人もいるよね。振り込め詐欺でも、生活苦の人が通帳や携帯電話を売るのと、経済ヤクザが他人名義の通帳や携帯を使って荒稼ぎするのとでは、やっぱり中身に差があると思うよ。」

逆沢「ああー、イライラする! 私的には悪人はみーんなバッサリ斬り殺して、気持ちもスッキリさせたいんだけどねー。シロにもクロにも徹しきれないグレーどもがうじゃうじゃいるのには、イライラするわ。」

愛原「被害者の側にとっては、グレーもブラックも自分を傷つけた存在という点で何ら差はない。それにグレーを放置すると、そいつらはブラックそのものとまではいかなくとも、ますます調子に乗ってクロに近いグレーに変質していくので、やはり一定の歯止めは必要だ。悪事を繰り返しても、何ら良心の呵責を感じないような真のクロになる前の段階で食い止める為にも、グレーにはきっちり制裁しておいた方がいいと思う。刑罰には制裁目的の他に矯正目的もあるんだが、クロよりはグレーの方が、まだ矯正効果は高いだろうからな。」

鼎「あと正直者が報われる世の中にしないと駄目だよね。今の世の中は、内部告発した人とかにあまり優しくないから、それで義憤を持っている人までが、いつの間にかグレーに変質したりし易いけど、そういう流れを断たないと駄目だよね。」

逆沢「真面目な人が馬鹿をみる世の中では、ますます人間が卑劣になっても仕方ないからね。」

愛原「性善説を信じるとすれば、自動販売機や財布紛失のエピソードなどをとっても、日本人の善性は世界的に見てもかなりハイレベルだと思う。治安と人々のモラルは当然比例するし、治安が良ければ治安維持や警備のコストも下がるし、社会としてもいいことずくめだ。だが最近、その良き習慣が目に見えて崩れていっているような気がする。本来ならシロに近い人間が、真面目にやってきた結果、馬鹿をみて追い詰められて、いつの間にか犯罪に手を染める事になる。セレブはセレブで、法を変え貧乏人を切り捨てる事で、自分達の利益だけは守ろうとする。正義の味方としては、クロをきっちり成敗したいところだが、増えていくのはグレーばかりだ。全体に流されたり追い詰められたりする事で、シロからグレーに変わる者。あるいは法律の壁を盾にクロからグレーに変わる者・・・。いくら完全なクロシロ人間は始めからいないと言っても、シロに近い人間がそうでなくなり、クロに近かった人間までさりげなくグレーの中に紛れ込むというのは面白くない。」

逆沢「本当に【赤信号、みんなで渡れば怖くない】の世界ね。シロの人間もクロの人間も、みんな混ぜて共有しちゃえばグレーだもんね。公金も一個人が私用で使ったら完全な犯罪だけど、いったんプールして一緒に飲み食いしたら、共犯も増えて責任が分散しちゃうし。」

鼎「裁判員制度も、責任の分散が目的なのかなぁ?」

愛原「そう言われても仕方がないだろうな。どうせ対象事件は、殺人・強盗・誘拐・放火などに限られている。要するに刑が重くて、もしもえん罪だったらヤバい案件ばかりだ。逆に政治家や官僚や利権業者が深く関与しがちな汚職事件とか、薬害エイズ事件のような公権相手の訴訟とかは、一切、民間からは裁判員は選ばれないシステムになっている。権力者達にとっておいしい部分は決して手放さず、面倒な部分は責任を分散させてグレー化してしまう。そう取られても仕方がない。」

逆沢「責任の分散ってのも、正義の味方泣かせのパターンの一つね。よくマスコミのコメンテーターとかが【社会全体の問題として考えていかねばならない】とかいうけど、これって事実上の加害者不在と一緒だしね。」

鼎「そんな風潮に国民も嫌気が差しているのか、最近は事件の度に、やり玉に挙げられた容疑者とか政治家とか特定団体とかをチョイスして、その者だけを全人格・全存在意義を否定するかのように徹底的に叩く風潮も強まってるような気がするよね。特にネットの世界では。」

愛原「社会全体の責任にしてしまった所で、全く問題の解決にならない。だからコイツが全て悪いというスケープゴートを設定して、そいつに全責任を押しつけようという事かも知れんな。ただ年金不祥事にしても、何も2人の元厚生事務次官だけが悪い訳でもない。しかし国民に何の罪がある訳でもない。いくら国民に投票権があっても、ずさんな年金管理をする小役人まで監視・監督できないからな。社会全体の責任というには無茶があるが、誰か一人・二人だけの責任として集約するにも無茶がある。これが、今の日本のグレー犯罪者社会の現状なのだ。」

逆沢「正義の味方も、仕事がしにくい時代になったわね。」












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