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愛原様のたわごと(08年12月5日)




愛原「今回のテーマは、【内部対立】だ。」

鼎「テーマが最初に出てくるなんてすごく珍しいよね。どうしたの?」

逆沢「下手すると、本編よりも前置きの方が長い時すらあるのにね。それにしてもテーマが【内部対立】って、またマニアックというか意味不明というか・・・。」

愛原「自民党内で、麻生陣営と距離を置く複数の陣営が、表立って行動するようになったようだ。その構図を見て、これはちょっと興味深いなと思ったのだ。」

鼎「でも実は、自民党内では内部抗争はむしろ当たり前だと聞いた事があるよ。元々色んな思想や支持層をバックに持つ人達の集まりだから、内部で政策とかを巡って対立するのは、実はおかしいって程でもないって事かなぁ?」

逆沢「いやあ、さすがは民主主義政党って感じね。色んな意見を戦わせながらカンカンガクガク、いいんじゃない?」

鼎「でも小泉政権が誕生するまででメインだった派閥争いとかは、単なる権力争いって見方をする人もあるよ。」

愛原「同じ自民党議員でも、全員が主流派となって挙党態勢を組めるケースは、実は歴史的にも決して多くはない。そうなると主流派と反主流派に別れる訳だが、この反主流派が【党内野党】として政権担当能力を持っているのが、実はミソなのだ。つまり現政権が国民に嫌われた場合、野党に政権を渡す前に【党内野党】に政権を委譲する事で、自民党は政権を引き続き担当できるという仕組みだ。安保重視の岸信介が60年安保で総スカンを食らった直後に、景気重視の池田勇人が首相となって世論を沈静化させたり、田中角栄が金権疑惑でやはり国民総スカンを食らった時には、クリーン三木が首相に就任して政治浄化に努める事で世論を収めたり、古い自民党体質の森喜朗がやはり総スカンが食らった時には、古い【自民党をぶっ壊す】事を期待して小泉純一郎が就任したりとかな。つまり反主流派の存在は、自民党が長期政権を守り続けた最大の武器でもある。そう馬鹿にしたものでもない。」

逆沢「なーるへそ。とすると麻生政権の支持率が伸び悩んでいるのを見て、そろそろ新しい【党内野党】が首を出し始めたって事ね。」

鼎「次の選挙で本物の野党が政権を取るか? あるいは自民党の【党内野党】が麻生さんの首を落とすのが先か? あるいは麻生さんが盛り返すか? そんな感じだよね。」

愛原「ただ【内部対立】は、利敵行為にしかならない事も多い。真の敵と戦う前に、味方同士がつぶし合って戦力を減らすのは愚の骨頂だし、真の敵に漁夫の利を得られる危険性もある。この手の計略は【敵中作敵】という呼び名で軍記物などでも登場する事があるが、味方同士の同士討ちをするのは、多くの場合は愚か者のする事なのだ。」

鼎「アメリカの民主党でも、オバマ陣営とクリントン陣営との対立が激化した時には、敗北した方の陣営の票が共和党陣営に流れてしまうかもなんて憶測が流れた事もあったよね。」

愛原「【内部対立】というのは、本来かなりリスキーな行為なのだ。ただ暗君や利権狂いの宰相などが自勢力を腐敗させていると感じた場合、それに黙って従うのが良いか否かは、なかなか難しい判断だ。黙ってみていれば自滅する可能性が高い。だが内部対立が激化したあげく、同士討ちで滅ぶのもやはり最悪のパターンだ。」

逆沢「そこ行くと、歴代の自民党政権は、かなり上手くやって来たといえそうね。内部抗争の度に、ピンチをチャンスに変えちゃうとこがスゴいと思うわ。」

愛原「内部抗争の結果、国民に愛想をつかされている側がうっかり勝ったり、あるいは本気で党を真っ二つに割ったら、自滅街道まっしぐらだが、その辺でうまくやって来たケースが多いからな。無論、失敗例も実はそこそこはあるんだが、成功例がそれ以上に多いのは特筆に値する。」

鼎「でも今回はどうなるか、分からないよねー。麻生陣営は、今ん所は道路族や守旧派ベテラン陣営に軸足を移しつつあるけど、それに対立する中川・小池ら清和会系小泉改革路線陣営、渡辺・塩崎ら若手改革路線陣営、与謝野ら財政規律重視陣営とかも一定の支持はあるみたいだし。泥沼化しても自民党にとって不幸だけど、国民に嫌われている陣営が勝ってもやっぱり自民党にとっては不幸だよね。」

愛原「まぁ何にしろ、政策をもって各陣営が議論を重ねられる内はよい。ただ内部対立というのは本来諸刃の剣で、やってはいけない内部対立というのが存在する点は是非とも抑えていきたい。」

鼎「それ、例えばどんなの?」

愛原「敵対陣営に【敵中作敵】という計略を仕掛ける立場から、想像してみたら分かる。」

逆沢「なるほどね。とするとベストなのは、敵対陣営の内部対立をあおった結果、敵陣営の有力幹部が始末されたり、敵陣営の主力が壊滅したり、敵陣営の内乱が長期化してこちらに対する効果的なアクションが取れにくくなったり、敵陣営が分裂したりみたいな感じになるかな?」

愛原「ま、そんな感じだな。中でも有能な敵対陣営の幹部を排除する為に、そのターゲットからみて無能な上司とか、嫉妬深い同僚とか、欲深い部下とかをあおって、ターゲットが左遷されたり誅殺される方にもっていくパターンは、最も有名だろう。」

鼎「どんなに知謀や能力が優れている人でも、その上司とか同僚とか部下の中にろくでもない人がいたら、その味方である人に足を引っ張られてしまうって事は、やっぱりあるって事かなぁ?」

逆沢「敵に対してはどんなに遠慮のない人でも、味方に対しては自由が効かない事は意外と多いからね。真の敵は、味方の中にあってもおかしくないって事かもね。」

鼎「でも有能無能って簡単に言うけど、仕事が出来るだけが有能とかとは次元が違うよね。」

愛原「ぜーんぜん違う。私腹を肥やしたり、仲間に責任転嫁して自分の地位を守る事だけに有能な人材もいれば、個人レベルで仕事はできても、仕事仲間のモチベーションを下げまくるような人材もいるからな。特に排他的な思考回路を持つ人材は、敵中作敵をしかける側からしては、またとないカモだ。」

逆沢「排他的な思考回路を持つ人材? ああ、要するに何かにつけて、【コイツ(ら)さえいなくなれば・・・】みたいな排除の論理で物事を考える人ね。」

鼎「すごく後ろ向きな思考回路だと思うけど、最近の日本人に増えているタイプのような気もするんだけど、気のせいかなぁ。」

愛原「ともかく【コイツがいなければ、今コイツが座っているポストには俺がすわれたはずなのに・・・】とか【コイツらが全部悪いんだ。俺は悪くない】とか、そういう排他思考の人間にとって住みよい環境さえ整えてやれば、その排他的な人間の暗躍によって、どんどんその組織は弱体化していくからな。排他的な思考自体を正しいと信じている者自身は、自分の気に入らない人間を排除していく度に【これで問題の根を一つ抜き取った】と思いこんでるかも知れないが、【お前の存在そのものが、問題の根そのものなんだよ!】とツッコミたくなるケースの方が実は大半だ。」

逆沢「まさしく計略の醍醐味そのものね。自勢力を弱体化させている張本人が、一番その事実に気づかないって構図は。」

鼎「歴代自民党の強さの秘密は、【排除の論理】を極力避けてきたってのもあるかも知れないよね。」

愛原「内部対立(政争)に敗れた結果、大臣などの要職を得られなくなるペナルティーくらいはあっても、それ以上はないから、組織的な離党などに発展しにくい。つまり人材が流出しにくい。人材が流出しなければ、その人材が持つ集金力も集票力も保たれるし、実質的に内部抗争によって戦力が下がらないからな。自民党という組織は、【嫌いな奴とも共存できる】共存思考の持ち主が多そうなのが、やはり大きい。反対にかつて小沢一郎が率いていた新進党は、元々【共存できない】思考の持ち主が多かった事もあって、簡単に空中分解してしまった。」

逆沢「まぁそれは、自民党の人材が我慢強いというよりは、単に自民党に居続けた方がおいしい部分が大きすぎるから、我慢できるってだけだと思うけどね。仮に自民党に所属する事によるうまみが無くなったら、彼らの大半は簡単に自民党を割ると私は思うし。」

愛原「動機はこの際、重要ではない。重要なのは【共存の論理者】【排除の論理者】で比較して、どっちがその組織で力を持っているかだ。【共存の論理者】で固まる組織は、敵対勢力からみればやはり手強い。どんなに内部対立をあおっても、最終的には結束してしまう可能性が高いし、同士討ちさせる隙が小さいからだ。逆に【排除の論理者】が大きな権力を持っている組織は、隙あらばどんどん気に入らない味方の人材を処分していくだろうから、敵中作敵を試みる側からすれば、格好の的だ。」

鼎「もしも自分が絶対権力を持つリーダーだったとして、二人の副リーダーがものすごく仲が悪くて、で、一人が共存主義者の派閥を率いていて、もう一人が排他主義者の派閥を率いていたとしたらどうする?」

愛原「可能なら、全員共存を試みる。そうすれば戦力を落とさなくて済む。だがそれが不可能なら、排他主義者の派閥を切る。そうすれば残るは共存主義者グループだけになって、これ以上の内部分裂は避けられる。」

逆沢「逆に共存主義者の派閥を切った場合は?」

愛原「例えば排他的な保守派が共存主義の保守派を駆逐したとしても、今度はその排他主義の保守派同志でドンパチを始めるだろうから意味はない。同じ保守でも親米保守もいれば反米保守もいるし、地方重視の大きな政府派もいれば中央集権志向の小さな政府派もいる。自分と100%同じ思想の人間などいる訳ないのだが、共存主義者が違いを認めて力を合わそうとするのに対し、排他主義者は逆だから、排他主義者を多く残せば残す程、ドンパチの種が増えるだけで悪循環だ。しかも人材層は切り捨ての一方になるから、薄くなるばかり。最終的には似た思考の者ばかりしか集まらなくなって、戦略や思考の幅も狭くなるし、ロクな事はない。だからもしも全員共存が不可能な程、味方の組織がこじれてしまったなら、排他主義者陣営を切った方がいい。どうせ他人を切り捨てる事に抵抗が薄いような連中なら、自分が切り捨てられる側に回っても本望だろ?」

逆沢「あははは! 【人を呪わば穴二つ】って奴ね。でも実際には、安易に人を攻撃したり、排他的な思考をする連中ほど、自分が切り捨てられる側に回ったら、激しく抵抗しそうな気はするけどね。」

鼎「でもそういう人程、どっちかというと正義を確信してるというか、自信まんまんな人が多いよね。」

愛原「前回の話でも触れた通り、今の世の中は情報量だけは多い。複数のマスコミの記事を比較する事で、より客観的な情報を得ることもできるが、そうする人は【異なる角度からの視点】を知る事で、自信をもって断定するのが苦手になりがちになる。ソクラテスの【無知の知】ではないが、知識や見聞が豊富な程、よくいえば寛大に、悪く言えば奥手になりやすい。逆に偏った情報しか持たない者や、【自分にとって都合の良い解釈=希望的観測=真実】と考える者は、自信をもって自分の信じる正義に突っ走りがちだ。視野の広い者は異なる角度からの意見を積極的に耳に入れ糧とするが、視野の狭い者は異なる角度からの意見の持ち主を敵とすぐに断定し、排除にかかろうとする。情報量が豊富な世の中という事は、自分にとって都合のいい情報(偽情報も含む)も豊富にある訳で、それを大量に浴びれば、狂信徒級の偏った正義の味方を量産するのも難しくないからな。田母神しかり、中山しかり。」

逆沢「そういや中山元大臣も、日教組や民主党に対して、徹底的な排他主義者だったわね。」

原「アメリカでオバマが勝った理由の一つに、ブッシュ政治への反発がある。つまり与党の政策や実績に応じて、審判を下すのが本来の民主主義だ。ブッシュや共和党にしても、民主党バッシングのような後ろ向きキャンペーンよりも、あくまでイラク戦争の正当性とか経済政策など政策披露に重点を置いた上で堂々と敗れており、この辺はさすが民主主義大国アメリカと素直に賞賛・感心できる。ところが日本の場合は、(特にネット界では)なぜか【民主党は売国政党だ】とか【民主党が政権を取ればこんな悪法が制定されるに違いない】みたいな奇天烈なネガティブキャンペーンだけが吹き荒れる。与党の政策や実績を語りアピールするのではなく、ひたすらライバル政党のこき下ろしだ。排他主義者は、自らの美徳を語らず、一方的に相手を蹴り落とす事で、優位性を見せつけようとする辺りが最高にえげつない。」

鼎「自分に誇れるものがあるなら自分をアピールすればそれで済むけど、それがない人程、他人を攻撃したり、馬鹿にしたり非難したり、排除しようとしたがるって事かも知れないよね。ライバルに勝つには、自分を磨いて相手を上回るか、相手を弱めて相手を上回るしかないわけだから。」

逆沢「RPGのノリでいえば、【自分の攻撃力をアップ】するか、【敵の防御力をダウン】させるかってノリね。自分に元々力があるか、自分を相手以上に磨く事ができるなら、その方法の方が確実だけど、それができないか、そこまで努力する気がない場合は、陰謀でも中傷でもいいから、とにかく相手を弱めるべしって感じで。まぁ共存主義を貫くには結構ガマンもいるけど、それができない人は排他主義に走りたがるって感じかな?」

愛原「仮に自分の方が総合的にロクでもない人間であり、相手の方が明らかに上等な人物だったとしても、完璧な人間などいない以上、相手を中傷する事自体は難しくない。その気になればウソホントも織り交ぜて、いくらでも中傷できる。中傷合戦になれば双方の品格が傷ついて終わりだが、相手があくまで正当派で中傷合戦に乗らなかったら、その時点で中傷する側による一方的攻撃が決まる事になる。その結果、客観性や良識に富んだ第三者なら中傷した側を軽蔑するだろうが、【火のないところに煙は立たぬ】論者とか【足して2で割る】論者などは、【中傷する側も少しは言い方はキツいかも知れないが、あそこまで激しく言うからには、まんざらウソっぱちでもないんだろう】とか推測するようになる。中傷攻撃の特色は、自分がたとえ実際にはどれだけ敵より劣っていたとしても、自分の本来の能力や実績に関わらず、相手に一定のダメージが与えられる事だ。だから劣等な人間ほどこの攻撃方法を好むし、そういう人程、排他主義になりやすいと思う。」

逆沢「まぁ政策とか実績でアピールしようとしたら、がっぷり4つの勝負になるから、劣っている側はどうやっても負けるわね。でも中傷攻撃なら、自分のウイークポイントには一切触れずに攻撃できるから、正々堂々戦ったら不利な側にとっては効率的な方法かもね。」

鼎「たとえるなら、実績や政策でアピールするのが白兵戦。中傷攻撃は砲撃って所かなぁ? 白兵戦をしたら不利な陣営は、自陣のウイークポイントを突かれないように距離を保ちつつひたすら砲撃。逆に白兵戦で有利な陣営は、できるだけ白兵戦に持ち込みたいけど、相手は白兵戦を嫌っていつまでも間合いを詰められないし、砲撃もどんどんしてくるし、とかいって砲撃合戦に応じたら双方が汚らしくボロボロになるだけで、いい事全然ないしって感じかなぁ?」

愛原「オバマが当選したのは、別に政策面や人格面でオバマが特に優秀と評価されたからではなく、ブッシュの実績と比較してオバマが最も反対のスタンスにいたからだけに過ぎない。つまりブッシュ(&共和党)政権に対する国民の審判の結果なのだが、なぜか日本の場合は、前回の衆議院選挙以来の与党の業績をふりかえった上で、与党がOKなら、自民党か公明党に。与党がNGなら民主党・共産党・社民党・国民新党などから最も信頼できる政党に入れるべきという、選挙の本来の目的である【国民の審判】機能がまともに機能していない。仮に【民主党は売国政党か?】みたいな訳分からない理由が重視されるなら、与党がどんな善政や悪政をしようと関係ない事になってしまう。そもそも今回、政権を担当できなかった野党側が政権批判をするのは当然として、政権を担当した側(及びその支持者)が、やってもいない(というか野党の為、実行できない)架空の実績を叩くなんて、無茶苦茶だ。まぁ前回の衆院選挙の時点で、改革の本丸が落城して以後の改革がどのように進み、わずか1年ずつの間に二人も首相が辞任するなどの未来を的中させたくらいの予知能力者なら、【民主党が政権を取ったら〜するに違いない】と叫んでも、少しは説得力はあるけどな。」

鼎「前向きな政策論争なら、その結果、勝者と敗者に別れても、まだ納得できる所はあるかもしれないよ。でも逆に誹謗中傷や数の暴力みたいな【排除の論理】による抗争は、確かにすごく不幸で理不尽かも知れないよね。」

愛原「心に余裕のあるとか、自分に自信のある人間とか、前向きな誇りのある人間なら、安易に排他主義に走る事はない。逆に心が狭く、しかも努力でコンプレックスを克服しようとも思わない人間は、すぐに他人のせいにする。それが排他主義とか差別主義に直結する。」

鼎「黒藤軍の場合は、どっちかというと排他主義者が多そうだよね。味方同士ですごく仲が悪い上に、隙あらば嫌いな同僚の足を引っ張ってやろうと考えてるメンバーが多いから、組織力自体はすごく弱いって感じになるのかなー?」

逆沢「逆に中原のメンバーは、ゲーム世界の主人公パーティーみたいに、基本仲良しって設計だったわね。」

愛原「ただそれでも、単なる【仲良しグループ】と【共存主義者の組織】とは、重みが全く違う。極端な話、排他主義者同士でも、共通の価値観をもっていたりする事で仲良くする事は可能だ(排除したいと思う仮想敵が同じなら、特に手を組みやすい)。しかしそれは、共通の趣味や利害が保たれていればの話であって、それが無くなればもろく崩れ去る可能性がある。一方、大門司軍や赤竜軍の場合は、思想が異なる人間同士で運営される【共存主義者の組織】だ。この手の組織は実はかなり強い。」

逆沢「自民党的な組織ともいえるかもね。時代が変わって、価値観が変わっても、組織全体として互いに【排除の論理】を極力避けたがる共存主義者で構成されてるから、何かにつけて意見は対立しても、行動の段階に移ったら一つにまとまって行動できるって意味では。」

鼎「最近の自民党は、行動の段階に入っても、別々の行動を取りっぱなしというか、スタンドプレーを好むような人が多いような気がするけど、これって自民党も組織として弱体化しているって事かなぁ?」

愛原「まぁそれでも、自称愛国者よりは千倍マシだ。あいつら愛国者といいながら、排他思考まっしぐらで、自分と合わない人間をすぐに非国民扱いして排除したり、攻撃したがるからな。」

逆沢「敵中作敵の計略をしかける側からしたら、最高のカモね。勝手に味方同士で亀裂を深めたり、戦略的な思考のできる人間や共存主義者を感情に任せて自動的に排除までしてくれるんだから。」

鼎「ブッシュさんの排他的な政治で【二つのアメリカ】と称されるまでに、アメリカの世論が二分してしまったけど、それに国民が嫌気が差したからこそ、【共和党のアメリカも民主党のアメリカも、白人のアメリカも黒人のアメリカもない。ただ(一つの)アメリカ合衆国があるだけだ】と唱えたオバマさんが、支持されたのかなぁ?」

愛原「別に共産主義的な一思想マンセーである必要はない。意見が表だって対立するくらい言論や思想の自由が保障された国は、単純に素晴らしいとも思う。冒頭で触れた通り、カンカンガクガクやる事はむしろ良いことだし、何もしないまま事情が悪化するよりは、少々内部抗争に発展しても昇華して良い結果を出す方が上という局面もあるものだ。だが排他主義者が増えると、今度はファシズムになってしまう。ブッシュや小泉が得意とした、敵を故意に作り、排除の論理をゴリ押しする事で鼓舞するファシズム的結束も一つの結束だが、共存を前提とした民主主義的な結束には、とても俺はかなわないと思う。」

鼎「でも小泉さんは、郵政選挙の時にも【排除の論理】で味方の反主流派を容赦なく切って、その代わり選挙に大勝したよね。ファシズム的な結束も、それなりには効果があるって事かなぁ?」

愛原「反作用も大きかったけどな。改革の痛みが現れて、ファシズム的な熱病が冷めると、今度はそれが足かせになっていく。安倍は一度追放した議員らを大量に復党させる手段に出たが、そうすると前の追放劇は何だったんだ?って事になるし、だからといって小泉改革路線が永久に支持される訳でもない。で、矛盾を解消できなかった結果、最終的に参議院の過半数を野党に取られるという大敗北だ。アメリカのブッシュ政権にしても、ファシズム的な熱気の支持を受けて1度は民主党のケリー陣営を粉砕するが、熱病が冷めて問題点が明らかになるにつれて、支持率は急降下。気がついたら戦後最低支持率の大統領となって、共和党陣営も大惨敗だ。ファシズム的な排除の論理は、短期の熱病的支持にはつながるかもしれないが、憎しみを多く生み、やがて大きな反動にまで直結する。うまい話ばかりでもない。」

逆沢「そういえば確か赤竜編のシナリオでは、黒藤軍は降伏派の象徴たるブラック隊長を成敗して、降伏派の世論を抑え込んでしまってたわね。気に入らない人間を排除の論理で消し去る事で、その陣営を恐怖によって沈黙させて、事実上、組織(国)を結束させるやり方は、すごくファシズム的だと思ったわ。」

鼎「共存主義と排除主義の対立といえば、親日派と反日派の関係とか、親中派と反中派の関係とかもそうだよね。」

愛原「日本と中国や韓国などが緊密に連携できれば、おそらくEUやNATOにも負けない超強力グループになる。価値観の相違を乗り越えるのはしんどいし、それを嫌う排他主義者も多くいるが、これを乗り越えられれば得られるものは大きい。EU諸国内でも、実際には過去の歴史的対立とか差別とかはあるが、それでも無理矢理【共存の論理】で1+1を3にも4にもしているように、やりようはあると思う。共存の論理で大きく飛躍するか、排除の論理で双方の戦力を浪費するか、どっちが良いかは冷静に考えれば分かりきっているのだが・・・。いずれにしろ漁夫の利を得んとばかりに暗躍するライバルや、敵中作敵を仕込もうとするライバルは、いつでもどこでもつきものなので、それに引っかからないようにはしたい。」

逆沢「でも排除主義者は、絶対になくならないと思うけどね。無理に仲良くしようとしても、利用されるだけでメリットはないし、それならさっさと排除した方がいいと考えるのが排除主義者の思考回路だから。排除主義者にとっては、内部対立を長引かせて敵を利するのは共存主義者の方だという視点だろうしねぇー。」

鼎「でもそういう思考回路をするのは、ゲームやファンタジーの世界では、悪役と相場が決まっているよね。」

愛原「味方を排除するシーンなんて、美しくないからな。歴史ゲームなどで、どうしても味方を切り捨てるイベントを挿入しなくてはならない場合には、【泣いて馬謖を斬る】シーンみたいに、あくまで徹底的に美化・正論化する。あるいは最初から腐った外道みたいな性格の味方という設定(しかも大半の味方からデフォルトで嫌われているみたいな設定になっている事が多い)で最初から登場させて、その上で頃合いを見てスパッと処分したりする。そうでもしない限り、鼎のいう通り、味方を殺したり、特定民族とか特定住民を差別したりする主人公側陣営というのは、全く絵にならないからな。まぁ商業ゲームやファンタジーは売れてナンボのもんだし、主人公陣営による味方殺しや差別礼賛シーンのない作品ばかりという事からも分かる通り、人間の良心に問えば、排他主義が良くないものというのは、おそらく万人に共通する心理なのだとは思いたい。」

逆沢「でも現実には、みんな仲良く大団円って訳にはなかなかいかないけどねー。」

愛原「そりゃ当然。マンガやゲームで登場する正義の味方にしても、一切のバトル抜きで物語を終わらせる事は極めて困難だ。こちらがいくら共存主義を唱えても、相手が攻撃してくる以上は、やられっぱなしになる訳にもいかないから、迎撃はやむを得ない。大量殺人をするような人間が死刑になってもやむを得ないように、あるいは人を不当に傷つける者を処罰しなくてはならないように、相手がこちらの生命や権利を排除しようとしてくる限りは、こちらも迎撃は当然だと思う。逆を言えば、排除の論理を正しいと確信するような人間は、自分が排除される側に回っても当然だという覚悟くらいは持っておくべきだ。」

鼎「そういえば最近は、派遣切りとかが話題になっているよね。でも派遣世代は一番、小泉改革の弱者切り捨て政治を支持していた世代でもあるから、そういう意味ではこのケースも自業自得なのかなぁ?」

愛原「集団をひとくくりにした【排除の論理】は、最も醜い差別行為だからやめた方が良い。ゆとり世代といっても色んな人がいるし、中国人といってもいろんな人がいるようにな。集団化した排他主義の行き着く先は、ナチスによるユダヤ人虐殺とか、関東大震災の時の在日朝鮮人虐殺と同類の歴史的愚行だ。派遣切りの問題に限らず、弱者切り捨て政治の是非については個人の解釈次第だが、人を排除してもよいと考えるからには、自分が排除される可能性にも敏感でなくてはならない。これは当然だと思う。そして仲間同士、味方同士、国民同士で切り捨て合う事のリスクも考えるべきだ。内部対立自体は善でも悪でもないし、意見対立も構わない。うまく昇華すればプラスだし、泥沼化したり切り捨てあえばマイナス。ただそれだけの事だとも思う。」








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