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愛原様のたわごと(09年3月29日)




愛原「今回のWBCは、大変満足いくものだった。やっぱり野球は面白いな。」

逆沢「アンタは、にわかファンか? にわかファンは勝ったり人気が出るとすぐにファンになったり面白いって言ったりするのよ。」

鼎「昔、マシンガン打線で横浜ベイスターズが強かった時も、バレンタインのロッテが優勝した時もそうだったけど、勝つといきなりファンが増えたりするよね。」

逆沢「その代わり、勝てなくなるとそういうにわかファンの大半は、潮が引いたみたいに去っていくけどね。今の横浜ファンの規模なんか酷いっちゅうかなんちゅうか・・・。」

鼎「でもにわかファンがたくさんいてくれるからこそ、勝利に向かって頑張っていけるんだと思うよ。どれだけ勝ってもファン層が増えなかったり、人気や売り上げが上がらなかったら、やっぱりモチベーションも上がらないって思うよ。」

愛原「・・・ってか、俺をにわかファンかと断定したかのような前提で話を進めるな。ここのコーナーを昔から見てる人なら大体分かると思うが、俺は昔からそれなりの野球ファンだ。プロ野球・高校野球問わずな。」

逆沢「あはは。確かゲーム内でもプロ野球チーム買ったり、お花見で野球ごっこするイベントがあるくらいの、野球好きだったしね。」

愛原「俺に野球を語らせたら、周りをうんざりさせるくらいのマシンガントークがついてくるぞ!」

逆沢「いらんいらん。周りをウンザリさせるようなトークなんか、絶対いらんわ。」

愛原「ともかくWBCに関しては、ただただ二冠達成おめでとうといった心境だな。正直かなりヤバいかなと思ったんだが、よくやってくれた。」

鼎「前回のWBCでも韓国相手には1勝しただけだったし、オリンピックでも惨敗だったし、今回のWBCでも序盤、韓国相手に1勝2敗だったから、かなり分が悪いと思ったけど、紙一重で王冠をつかんだって感じだよね。」

逆沢「誤算は韓国の強さってのが、私の印象だわ。まあ冷静にふり返れば、4年前の時点でも韓国はアメリカにも勝っているし、韓国は元々十分強かったはずなんだけど、なーんかイメージ操作されてたのか、韓国に対してどこか格下イメージがあったっちゅうか、その韓国に対しても分が悪い日本は大した事ないと思ってしまってたちゅうか・・・。」

愛原「イメージ操作されたって、そんな風に正当化するな。己の不見識を素直に恥だと思え。って、俺も勿論、長く恥じるべき一員だったのは間違いないが・・・。」

鼎「韓国チームが世界トップランクの野球チームだという前提で物事を考えれば、4年前もオリンピックも今回の結果も、ほとんど矛盾も番狂わせもなくまとまるよね。」

愛原「強きを強きと判別できない者は、戦いを指揮する者としては致命的な欠陥だと思う。その点でいえば、日本の原監督は勿論の事、韓国の監督も一流だったといえそうだ。韓国の監督は日本が最強のライバルチームとかなり早い内に明言していたが、確かに結果論でいえば、韓国から見て最大の強敵は、おそらくアメリカでもなく、アメリカに勝ち続けたベネズエラでもなく、強豪キューバでもなく、おそらく日本だっただろう。日本にしても、序盤から韓国と戦い続けてきたのでマヒ感覚はあるが、実際には最強のライバルと序盤から当たり続けてきただけの事といえそうだ。」

逆沢「日本や韓国の野球は、とにかくエラーが少なくてピッチャーがいいってのが効いたかな?」

鼎「もしかしたら予選で負けた中国や台湾も、もしも他のリーグだったら意外といいところまで行ってたかも知れないよね。」

愛原「個人的な好みでいえば、アメリカでもキューバでもベネズエラでもなく、やはり韓国と決勝で当たれば最高だなと思っていたので、大満足な結果だった。日本が途中で消えたらガッカリなのは勿論だが、その日本を最も苦しめた韓国が途中で消えたら最低だなと思っていたからな。」

逆沢「中には韓国の早期敗退を切望するような日本のファンも、いたかも知れないけどね。」

愛原「まぁ高校野球でも、(自分が応援するチームの事情によっては)強豪同士がつぶしあったりして、早く消えてくれたらいいのにと思う事はあるだろうし、少しでも弱い相手と直接対決できた方が優勝する上ではラクなのは事実だからな。だからそれはそれで、非難しようという気はさらさらない。だが韓国チームは最も日本野球の影響を受けたチームだし、であればこそ日本の次に勝って欲しいのは当然韓国というのが、俺の立場だ。」

逆沢「世の中にはアンチ巨人がいるように、アンチ日本やアンチ韓国がいてもおかしくはないけどね。」

愛原「まぁ、その通りだな。東京人の全てが巨人ファンで、関西人の全てが阪神ファンである訳がないように、日本人が日本チームを応援するのは当たり前という先入観も捨てた方がいいだろう。という訳で今回のテーマは、【愛郷心】だ。」

鼎「愛郷心? 愛国心じゃなくて?」

愛原「愛国心は、愛郷心の一部だ。だが愛国心の場合は、英語ではナショナリズムとなって、単なる望郷の念とか地元への愛着で留まらなくなってしまうからな。ある意味、国家主導の思想教育的な面も出てきて、かなり人工的に歪められる事があるのが問題だ。」

逆沢「ノーマルな愛郷心は、誰に強制されずとも自然に派生する感情だと思うけど、国策としての愛国心教育となると、権力から無理矢理教育されたり洗脳されたりして、それでも従わない者は強制収容所に放り込んだり、村八分にしたりみたいなイメージがあって、すごく嫌な感じになるわ。」

鼎「愛国心も愛郷心の一部のはずなのに、全然別物に感じちゃうのがちょっと不思議だよね。」

愛原「ノーマルな愛郷心の場合は、いわゆる先生役とか模範像がないからな。誰に教えてもらう訳でもない。誰に強制される訳でもない。どうあるべきかというテキストや方針が決められている訳でもない。一人の人間が生きている内に、それぞれの形で自然と身についてしまうものだ。だから愛郷心を持った結果、どういう心理になるか、どういう判断をするかは千差万別なのが特徴だ。」

鼎「ある意味、究極の宗教かも知れないよね。誰か特定の聖者や先生に教えられる訳でもないのに、自然にその人の心に染みついて心のよりどころになるかも知れないという点では。」

逆沢「東京が好き、大阪が好きと言っても、好きな理由は人それぞれだろうしね。勿論、巨人ファンや阪神ファンを他人に強制されるいわれもないし。」

愛原「関西でも特に大阪近郊に住んでいると、阪神ファンであるのが、一つのステレオタイプになっているのは間違いない。地元のテレビも新聞も、巨人など他チームに関する記事の数倍、阪神タイガースに関しては取り上げている。これは在京局や全国紙でも実は同じで、朝日系列だろうがフジ産経系列だろうが関係なく、阪神びいきのニュース記事になっているのが大きな特徴だ。だが現実には、阪神ファンでない関西人も実は意外といなくはない。」

逆沢「ってか、野球自体に関心のない人も多いし。」

鼎「それでも関西人=阪神ファンは、全国的にデフォルト的なイメージだよね。」

愛原「それを迷惑がる関西人。もしくは関西出身者も多いけどな。元巨人の清原は元々巨人寄りだったし、巨人しか行かないと物議をかもした元木大介も大阪人なんだが・・・。」

逆沢「前に【大阪】をテーマにした時も思ったけど、勘違いされる大阪というのは、意外とまだまだありそうね。」

愛原「んな訳で、【阪神タイガースを応援しない関西人は異常】呼ばわりされても困る。【横浜ベイスターズを応援しない横浜市民は異常だ】とか【東北楽天イーグルスを応援しない青森や秋田などの東北人は異常だ】と言ってるのと同じくらい困った発言だ。」

鼎「地元を名乗るチームだから絶対応援しなくてはいけないなんて、決まりはないよね。」

逆沢「地元どうこう以前に高校野球の世界では、よその都道府県から助っ人を呼びまくってるような高校も多いしね。」

鼎「男子マラソンの世界では、仙台育英とか青森山田とか、外国から助っ人を呼ぶのがデフォルトの所もあるよね。」

逆沢「お前の県の代表メンバーは、みーんなヨソモノはっかりじゃねえかみたいな所は、確かに割と見かけるわね。」

愛原「まぁ特待生制度や留学制度を大きく制限すれば、地元チームらしくはなるだろうが、その場合は北日本の道県あたりはかなり苦しくなるだろうな。」

鼎「どうせなら地元のチームを応援したいというのはあるだろうけど、実態がどう見ても地元とはいえないと複雑な思いはあるだろうし、難しいよね。」

逆沢「人によっては、地元を食い荒らすチームという評価をする事もあるしね。地元人が中心となって頑張って運営しているチームを、予選で次々と打ち負かしていくにっくき傭兵部隊チームみたいな感じで。」

鼎「仮に地元中心のチームといっても、地元をどの範囲で区切るか、どのチームに戦力を集中させるかによっても差が出るよね。例えば岐阜県の場合は、岐阜商業の一人勝ち状態(甲子園に過去52回出場。しかも2位は10回出場止まりなので差的にダントツ)だから、岐阜県の場合は、岐阜商業に戦力を集中させたら間違いないと思うし。」

愛原「熊本県にとっての熊本工業(甲子園に過去38回出場。しかも2位は9回出場止まり)や、長野県にとっての松商学園(甲子園に過去50回出場。しかも2位は11回出場止まり)も同様だな。ちなみに記録では京都府の平安(甲子園に過去65回出場)がトップだ。2強体制でもいいなら、宮城県の東北と仙台育英が合わせて68回。3位がドンと落ちてたった4回なので、宮城県の場合も、この両校に戦力を集中させれば間違いない。」

鼎「逆に地元の範囲をしぼりすぎて、戦力が分散しすぎると悲惨だよね。」

愛原「トップの出場回数が最も少ないのは新潟県でなんと8回。だが新潟県の場合は、元々野球に力が入っていないのか春の選抜に選ばれる事が殆どない為、分母自体も小さいので、戦力を集中してもどっちみち駄目かも知れない。分母が多い点で最も悲惨なのは、むしろ兵庫県の方だろう。」

鼎「兵庫県っていえば、大阪府に次ぐレベルのプロ野球選手排出県だし、甲子園所在地だし、すごく強豪ってイメージなんだけど。」

愛原「兵庫県は全国一甲子園出場校が多い県で、なんと41校が出場している(ちなみに大阪府も同着1位の41校だが、人口に差がある)。地元の枠が狭いのも特徴で、例えば全国優勝経験もある東洋大姫路の場合は、基本的に神戸以東の生徒はほぼ見られない。神戸以東の学生は西宮市の報徳や神戸市の育英などに行くからだ。」

鼎「地元の範囲を、どこで区切るかもポイントって事だよね。地方で区切るか、都道府県で区切るか、兵庫県みたいにもっと地域ごとに小さく区切るかみたいに。」

愛原「愛郷心という意味では、経済圏単位で区切るのが、俺的には分かり易いかなと思わなくもない。」

鼎「経済圏?」

愛原「うん。例えば関東の場合は、神奈川県・埼玉県全域及び、千葉県と茨城県の西部が全てまとめて東京経済圏だ。つまり東京23区に昼間人口が集中しすぎている反面、横浜市もさいたま市も皆、夜間人口の方が多いいわばベッドタウン状態になっている。この場合、例えばさいたま市民としては、さいたま市民・埼玉県民として愛郷心を持つというよりは、首都圏人として広めにアイデンティティーを持っている方が一般的かもと思ったって事。」

逆沢「まぁ愛郷心が発生する局面は様々だから、時には日本人として、時には埼玉県民として、時にはさいたま市民として、時には大宮区民として、時には○○中学出身としてみたいに、縮尺を変えながら色んな形で感じるだろうけどね。ただ他の地方の人と入り交じって地元意識を発揮するなら、最もメインとなるのは首都圏という形になるのかな?」

鼎「兵庫県民の場合は、帰属意識がどう見ても県単位じゃないよね。地元どこって聞かれたら【兵庫】じゃなくて、神戸・姫路・淡路島・但馬(もしくは【その近く】とか【○○と○○の間】とか)みたいな言い方をするよね。」

愛原「作者の後輩で、愛知県の豊橋市出身者がいたのだが、彼は地元を語るときに、名古屋と一緒にされるのを激しく嫌っていた。名古屋をイメージされると嫌だという事で愛知県出身とすら名乗りたがらなかったくらい徹底していて、結構印象に残っていたんだが・・・。ただ今更ながらにネットで色々調べてみると、東三河の人は確かに名古屋方面と同一視されるのを嫌うというか、名古屋のベッドタウン的なイメージで認識される事を嫌うような傾向の人がそれなりにいるらしく、なるほどなと思った事がある。つまり豊橋方面の人にとって、同じ愛知県でも名古屋方面は必ずしも同族意識(愛郷心)を共有できる地区とは限らないらしい。」

逆沢「福井県の人も、嶺北人と嶺南人では意識に差があるし、そんなものかな?」

愛原「関西は関東と異なり、経済圏が分散している事もあり、帰属意識の単位が総じて小さい。関西人という単位の帰属意識は、あくまで関東全体を比較的に意識した時によく使われるものに過ぎず、普段は京都・大阪・神戸・姫路・和歌山・南紀・近畿地方の日本海側・淡路島みたいな単位で自己紹介する事の方が多いはずだ。まぁ経済圏の話をすると、東日本全体と西日本全体の差という事にもなってしまうのだが・・・。」

鼎「東日本は、歴史が浅い分、拠点集中型だよね。東京は勿論だけど、札幌も仙台もその典型だし。」

逆沢「札幌は180万人都市だけど、北海道二位の旭川市は35万人都市でしかないしね。東北地方にしても、1位の仙台が100万人都市なのに対して、2位は福島県いわき市の35万人。」

鼎「東海3県でも、1位の名古屋市に次ぐ2位となると、いきなり岐阜市の40万人に落ちちゃうし、本当に東日本は一極集中型だよね。」

愛原「これが西日本になると全然違ってくる。九州1位は言うまでもなく福岡市(140万人)で、1位だけで比較すると確かに札幌市にも負ける。だが2位の北九州市は約100万人だし、他にも70万人都市の熊本市、65万人都市の鹿児島市、45万人都市の大分市と長崎市といったように、独立した大都市があちこちに割拠している。中国地方や四国地方でも、広島市の115万人は仙台とそう大差ないが、70万人都市の岡山市(隣に45万人都市の倉敷市があるが実態は岡山市の双子都市)、50万人都市の松山市、40万人都市の福山市や高松市などが割拠している。当然ながら、地元意識もそれぞれの地域単位に落ち着きやすい。」

逆沢「関西も、京都・神戸・姫路・和歌山などは、それぞれ昼間人口の方が多いだけあって、地元に密着しているから、必ずしも大阪、あるいは関西という単位で愛郷心を帰属させる必要性が乏しいという事かも知れないわね。」

愛原「ところが例えば、奈良県の西和地方とか、兵庫県の南東部の市域のような、隣県のベットダウンになってくると、少し愛郷心の扱いが複雑になってくる。特に移住してまだ歴史が浅い面々になると、なおその傾向は強くなりがちだ。関西人なのは間違いないが、市町村単位そのものに帰属させるべきアイデンティティーがやや弱くなる為、県あるいは関西という地域そのものに愛郷心の中心が映りやすい。」

逆沢「東京周辺のベッドタウンに住んでる人にも、それは当てはまりそうね。横浜くらい強いインパクトがあるとまだいいけど、そうでないと愛郷心のエリアを広くしないと駄目というか。千葉県の北西部に住んでる人は、より東京から見て遠い場所にある木更津や九十九里浜方面は勿論の事、県庁所在地である千葉市にすら帰属意識をもたない人も多いらしいし。ましてや同県の木更津や銚子の事情よりも、別の都道府県である東京のニュースの方がずっと関心度が高いみたいな部分もあるらしいし。」

鼎「三重県でも、四日市市を初めとする北勢地域の人は、県庁所在地のある津市方面よりも名古屋方面に視線が行ってるって聞いたことがあるよ。」

逆沢「三重県も、県単位で帰属意識がもちにくい地域かもね。新宮方面に帰属意識をもつ東紀伊地方と、大阪方面に帰属意識を持つ伊賀地方と、名古屋方面に帰属意識を持つ北勢地方と、その間に挟まれた津市周辺部とでは、向いてる目線が全然違うから。」

愛原「愛郷心は、自分の生活しているエリアに愛着を持つ事で発生する。生活圏に愛着を持つという性質がある以上、国家権力が勝手に都道府県という枠組みでくくっても、そんなものにはあまり左右されない。」

逆沢「とすると、転勤組のような生活圏がころころ変わる人の場合は、愛郷心自体が発生しにくいかも知れないわね。愛着を持てるようになれる程、その地域に長く住んだ事のない人の場合は特に。」

鼎「でも地元に長く住んでいても、地元に良い思い出のない人とか、そういう人もいるよね。」

愛原「【都会に憧れる人】とかも中にいるようだが、そういう感情が度を超えた場合も、愛郷心は育ちにくいかもな。上京組とか言われる人は、極力地元に留まり続けようと思う人よりは、相対的にふるさとに対する愛郷心が低い気もする。でもそういう移住組の人は、東京ではなく千葉でないとならない理由とか、千葉でなくて埼玉でなくてはならない理由などはそんなにないだろうから、やはり埼玉とか千葉という単位で、地元に強い愛郷心はやや芽生えにくいかも知れない。」

鼎「でも人間には帰属意識が必要という意見も聞いたことがあるよ。そういう人は何に帰属するのかなぁ?」

逆沢「宗教とかそんな特別なものでなければ、愛国心とかそういうのがここで出て来るんじゃない? ほら、アメリカなんかは典型的な移民国家だし、そのせいか先祖代々の土地みたいな考えがあまりなくて、その代わり愛国心とか信仰心とかにこだわりがある人が多そうだし。」

愛原「愛郷心は、教祖や教典がなくとも、普通は自然と身につけられるものだ。だがそれを身につけられなかった者は、無理矢理にでも何か別のもので代替したくなる時が出てくる可能性がある。アメリカのような移民国家の場合は、どうしても自然に愛郷心が身につきにくい為、人為的にでも愛国心なり信仰心なりを鼓舞しなくてはならないのかも知れない。」

鼎「でも人工的に愛郷心をつけようとすると、どうしても何らかの政治的な思惑とか、強制的な縛りがついてきちゃいやすいよね。」

逆沢「自称愛国者の人達も、自分が一番気持ち良くなれるような価値観を持つ自分こそが一番の愛国者と勝手に定義づけて、それに反抗的な人達を愛国者でないと決めつけて排除しようとする人がいるけど、もしもそれと同じ思考の権力者が現れると、一気に国全体がそういう具合に傾いちゃう事があるからね。」

愛原「確かに【巨人ファンぬかすような奴は、大阪人やない】的な、妄信的な愛郷心の持ち主もいなくはないが、そういう他人に価値観を強制するような愛郷心の持ち主はあくまで少数派。本来の愛郷心はもっと自由なものだ。愛国心にしても、この国をどんな国にしたいかというのは人それぞれなのだから、勝手に【我が国はこうあるべきだ】みたいな強制は好ましくないと思う。ところが愛郷心が愛国心に変化した途端、【こうあるべき】を主張する者が現れ、国によっては権力者がそれを強制するので、自由であるべき愛郷心が、どんどんおかしな事になってしまう。」

逆沢「そういやWBCで松坂投手が、【日頃愛国心をアピールしたがるアメリカ人の中に、WBC出場を辞退した人が多く出たのは残念だった】ってな談話をしたらしいけど、アメリカ人にとっての愛国心って結局何かなとも思ったんだけど。」

愛原「日本にとっての大相撲のようなもんだろ。」

鼎「大相撲は日本の国技だから、税金も投入して、国営放送が力を入れて放送もしてくれているのに、最近は力士になろうとする日本人も減ってるみたいだし、外国人力士に力量も負けてる印象があるし、とても残念だよね。」

愛原「愛国心教育と一緒で、強制してもそんなものが心に響いたりはしない。嫌いな異性をむりやり好きになれと国家に圧力をかけられたからといって、心の底からその異性を好きになれないのと同じ事だ。国技と名付けたから、無条件で国民が強い愛着を持つなんて事はありえない。同様に、国の代表として出場指名される事が必ず名誉という事にもならない。指名された所で誰も気にも止めてくれないなんて事もあるし、活躍できなかったらバッシングの嵐に遭うリスクもあるからな。」

逆沢「オリンピックの日本代表選手に選ばれても、種目や選手によっては誰も存在に気づかない事もあるし、気に止めてもらったからといって、必ず尊敬の対象になる保証もないからねー。」

鼎「代表選手に選ばれても、【お前よりいい選手は他にいるだろ。辞退しろよ】とか言われたりしたら、選ばれてもショックだよね。」

逆沢「WBCの時も、監督や選手を選ぶ段階では、非難の声もそれなりにあったからね。まぁ100人中100人が納得する人事なんかないだろうけど。」

鼎「そういえば選手を選ぶといえば、一つ思い出したんだけど、結局WBCのMVPも松坂投手だったんだよね。勿論、松坂投手もよくやったと思うけど、私は岩隈選手の方だと思ったんだけどなー。」

原「アメリカ人からしたら、アメリカを敗退させた松坂の方がインパクトあるからな。それに松坂は大リーグでも活躍しているし、日本国内リーグで岩隈がどんなに活躍してようが、アメリカでの知名度の差は歴然だからな。」

逆沢「知名度でMVPを選ぶな、という感じだけど。」

愛原「日本人の中に未だに韓国チームの実力を認めていない人がそれなりにいるように、アメリカ人の大半は、アメリカ以外はみんな格下という認識だろうから、岩隈がいくら韓国やキューバ相手に好投してようが、アメリカを破った松坂には及ばないという認識なんだろう。実際のアメリカはプエルトリコにコールド負けし、ベネズエラにも2連敗するなど、よくあそこまで勝ち残れたなという程度の実力でしかないのだが(アメリカ選手が一切出場辞退しなければ話は全く違うが、実際に出てきたメンバーからすれば、良くても実力相応の結果だろう。)。」

逆沢「まぁ人気で判断するのは、日本も似たようなものだけどね。最後にたまたま良い場面に恵まれただけで、最後はイチローフィーバーだったし。マスコミだけじゃくて、国民世論自体。」

愛原「イチローがヒットを打った場面の多くは、相手のピッチャーがガタガタだった時ばかりだ。だからイチローが打席に経つ前に、既にランナーはたまっていた。しかもイチローは1番バッターだから、イチローの前にピッチャーを打ち込んだバッターは下位打線だろう。無論、調子が悪いなりに最後に結果を出したイチローは立派だが、その前にもっとほめるべき選手は他にもっとたくさんいると思う。イチローがあれだけ長くガタガタ状態にあったにも関わらず、日本チームをここまで勝たせ続けた他の選手に、もっと祝福のスポットを当ててやれともな。」

鼎「そういえば松坂もイチローも、愛国心を割とアピールしてるタイプだったけど、原監督とか王前監督とはだいぶタイプが違うイメージだったよね。」

逆沢「イチローの場合は4年前に例の発言で韓国を激しく刺激させていたし、今年も韓国の力を認めるような発言は一切しなかったしね。原監督や韓国の監督が、互いにお互いのことを最大限尊重・賛辞してたのとはだいぶ差があったと感じたわ。」

愛原「原や王は、謙虚な人格者だ。イチローは楽天の野村監督に近い、人を食った側のタイプだろう。無論、イチローも野村監督も、それぞれ選手・指導者として一流だし、甲乙をつけるつもりはない。ただ本音はともかくとして、戦う人にも2種類いる。謙虚に闘志を燃やすタイプと、敵愾心を獰猛に発揮するタイプだ。ボクシングの亀田兄弟なんかは後者の典型で、相手を挑発したり、ナメた口を効いたりもお得意だが、あれはあれでその人流のリラックス方だろう。緊張すると力を出せないタイプなどは、相手を少し見下して心に余裕を作った方がいい場合もある。」

鼎「そういえば、イチロー選手は韓国との決勝戦の前に、【力を抜くポイントがなかったので、最後までこれでいこうと思います】って言ってたよね。一部からは、他の選手のよりも打撃不振のイチローばかりがニュースになって取り上げるから、イチローのプレッシャーがいつまで経ってもやわらがず、それで打撃不振が長引いたという声も聞いたことがあるよ。」

逆沢「まぁイチローにしてみれば、プレッシャーだらけの大会だったかもね。打撃不振が長かったから尚更。イチローが原監督みたいに、相手に敬意も払い適度に緊張した方が集中力が出るタイプならそれも良かったかもしれないけど、緊張しない方がいいタイプなら、その説は成り立つかもね。」

愛原「まぁただ、相手にナメた口を効くというのは、相手にしたら面白くないからな。リメンバー・パール・ハーバーの例を持ち出すまでもなく、無駄に相手を怒らせると、闘志に火をつけて逆効果になる可能性があるのは自覚するべきだ。また監督など冷静な判断が要求される者が、敵の実力を正確に把握できないと致命傷にもなりかねない。野村監督みたいに意識的にナメた口を効くのなら問題ないが、心の底から本気で相手を過小評価して、準備を怠るような人は、さすがに人の上に立たせてはいけない。」

鼎「そういえば愛郷心とか愛国心を持つ人の中には、ライバルの事をあからさまにバカにする人がいるよね。」

逆沢「自分がバカにされる側に経っても平気でいられるなら、まぁまだしもだけどね。自分がバカにされたら怒るくせに、人をバカにするのは痛快という人は最低だと思うわ。」

愛原「俺的には、まぁある程度は、風物詩というか付きものだと割り切ってもいいと思ってるけどな。巨人が強すぎるが故のアンチ巨人の存在は、対戦を盛り上げる大きな要素だ。ライパルは強いからこそ盛り上がる。ただそれでも一定のルールはある。特に人格攻撃の類は最低だ。」

逆沢「そういえば巨人の二岡が山本モナ問題の事を報道された時、甲子園では懸念されたはずの二岡バッシングが全くなかったどころか、むしろ励ましまであったって報道があったけど、マナーが悪いというレッテルで知られる阪神ファンにしては意外なエピソードだと思ったわ。」

愛原「阪神ファンは、暗黒時代でも応援し続けてきた古参が多い分、常連さんの比率も高い。常連さんが球場を出入り禁止になるような問題行為をする訳がないし、むしろ球界のルールを知った玄人も多い。ただ常連さんヅラして調子こいたり、おとなしい初心者ならまずしないようなあつかましい行為をする者も若干いる上、そいつらが目立つため、悪いイメージにみられがちな部分が多いのも事実だ。ただそれでも球界の常識に反する非常識な事は、玄人ゆえほぼしない。非常識な事をするのは、俺が見る限り、大体にわかファンの方だ。にわかファンは、一見すると傍若無人っぽい玄人ファンに負けられないと勘違いしてか、玄人もびっくりのドギツいトンデモ行為をやらかしてくれる事があるからな。」

逆沢「ところで地方別に愛郷心を見れば、やはり九州とか関西とか、西日本の方が地元に対する意識が高い人が多そうな気がするけど、これはどうかな? 逆に北日本の人は、上京すると出身を積極的にアピールしないみたいなイメージもあるし。」

愛原「実感としては、首都圏を除けば全国どこでもそう変わらないと思うが、自己主張の度合いの差じゃないのか? ただ首都圏に関しては、ヨソモノが多い土地柄というか、まぁ一種の移民国家的な土地柄という事もあってか、イマイチ伝わってこないな。彼らは地元の事を便利とか都会とはいうが、地元の文化とかを熱っぽく話す事はないというか、こだわりがあまり感じにくい。」

鼎「そういえば、京都の人なら、東京や大阪にライバル意識を持っている人は多いし、神戸の人も大阪や横浜にライバル意識を感じている人はいるけど、埼玉の人で東京にライバル意識を持ったり、【住むなら東京や横浜ではなく絶対埼玉】ってくらいこだわりのある人はどれくらいいるのかという疑問はあるよね。親の代からずっと埼玉に住んでて、田園風景だった頃の埼玉を知っているみたいなくらいの人なら、愛郷心も結構あるかも知れないけど。」

愛原「まぁ昔から東京一筋の江戸っ子とか、千葉でも南総の方とか、神奈川でも三浦半島以西であれば、割と独自の強い愛郷心を持っていそうだし、昔からの埼玉人なら、同様にこだわりがあっても自然だが。ただ移民が多すぎて伝わりにくいのかも知れんな。」

逆沢「東日本は、首都圏とか札幌とか仙台とか、特定の一極集中拠点に人が吸い寄せられやすいから、そういう地域に住んでる人は、若干愛郷心の質が薄く広い感じになりやすいかもね。」

鼎「地方ほど、愛郷心は強くなるのかなぁ?」

逆沢「とかいって、田舎過ぎると何もアピールできるものがなくなるから、やっぱ程度はあるんじゃない? 理想なのは、衛星ではなく独立した個性を持つ都市にちゃんと帰属している事だと思うけど。後、観光資源となるようなものがあればなお良しって感じで。」

鼎「観光資源といえば、山梨県民の武田信玄に関するこだわりはすごいって聞いた事があるよ。ああいう県民が一つとなって納得できる象徴みたいな物があると、すごく分かり易いのかも知れないよね。」

愛原「生き残った戦国大名家の大半は転封されたりして、地元と切り離される事も多いから、愛郷心を刺激する分には少し物足りなくなるケースも多いが、武田家の場合は、滅ぼされるまで拠点を動かさなかったからな。」

逆沢「でもそれは武田信玄が偉いのであって、山梨県民が偉いという事にはならないんだから、勘違いも大概にせえやってツッコミたくなる事もあるけどね。」

愛原「まぁ、あやかるくらいはいいだろう。別に俺達がWBCの連覇に何ら貢献した訳ではないが、応援するのは自由のようなもので。」

逆沢「中には、WBCの活躍だけで、日本人は素晴らしいとか、日本人で良かったとか、飛躍した感想を持つ人もいるだろうけどね。」

鼎「とすると日本選手団がひどく駄目な結果に終わったら、日本人は最低だとか、日本人として恥ずかしいという事になるのかなぁ?」

愛原「オリンピックの男子マラソンで、毎回メダルにほど遠い結果に終わっても、そんな嘆き方をする人は聞いた事はないし、都合の悪いことは気にしないだけだろう。星野ジャパンの時のように、散々勝手に期待しておきながら期待を大きく下回る結果に終わったなら、期待しすぎた自分が恥ずかしかったのか、八つ当たりまがいのバッシングしたりする人もいるだろうけどな。」

鼎「でも男子マラソンの方が、箱根駅伝とかの大イベントもあるし、環境的には恵まれていると思うのに、女子マラソンと比べて成績的にぱっとしないのは不思議だよね。」

逆沢「ハングリーさが足りないんじゃない? 相撲の世界と一緒で。ああ、そういえば最近はやりの言葉は、【草食男子】に【肉食女子】らしいわね。」

愛原「・・・・・。まぁ地元のチームを応援するというのは、愛郷心を刺激する上でも大きなイベントの一つだ。ただそれでも男子マラソンのように、どんなに選手の皆様が頑張っていても、成績として全くパッとしない事もあるだろう。また競技によっては、金メダル取っても記憶にも残してもらえない選手もいるだろう。逆にパッとしない成績でも、国の英雄、地元の英雄としてヒーロー扱いされる人もいるかも知れないし、その辺に理不尽さを感じない事もないが。」

逆沢「そういうあんただって、野球には強いこだわりがあるけど、地元のサッカーチームがどうなろうが全く知ったこっちゃないクチじゃないの?」

愛原「・・・まぁな。まぁ地元の名を冠するチームが大活躍したら、にわかファンになるかも知れんが、どっちみち選手のチームカラーも詳しいルールも知らないけど、とりあえず地元の名前が売れてニンマリくらいにはなるかも知れん。でもそれだけ。横浜ベイスターズのにわかファンのごとく、人気が下がれば、元々存在しないがごとき扱いになるだろうな。」

鼎「あきれるくらい、典型的なにわかファンの心理状態だよね。」

愛原「野球の方は違うけどな。勝っても負けても一喜一憂。もう愛郷心がどうのこうのレベルではない。どこに引っ越しても、野球自体に関心が無くならない限りは、おそらく変わらん。」

逆沢「強い愛郷心の持ち主は、地元を離れる事になっても、故郷を忘れないようなものなのかも知れないわね。」

鼎「愛郷心に理由はないって感じだよね。恋をしたら理由はないって感じなのかも知れないよね。」

愛原「それだけに便利だからとか、仕事があるからといった功利的な理由だけで居場所を変えた移民の場合は、真の意味での愛郷心が身につかない可能性があるかも知れんな。もしも東京やアメリカが何らかの理由で、豊かでなくなったら、あるいは住みにくくなったら、あるいは他の地方に移り住む事を条件によりよい職場や生活環境が与えられるなら。それでも彼らは東京やアメリカに住み続けるか? それとも何の未練もなく、さっさと別の豊かな場所に移住してしまうか? こういう部分でも愛郷心や愛国心は出てくると思う。」

逆沢「お金のために大リーグを行くか、あくまで日本球界の為に尽くすかみたいな感じってか?」

鼎「彼らはアスリートだから、お金のためじゃなくて、より大きな舞台で挑戦したいという純粋な気持ちもあったと思うから、人によりけりだと思うよ。新庄選手とかは日本の年俸よりもずっと安い条件でアメリカに渡ったし。」

愛原「もしも松坂やイチローが、引退後も拠点をアメリカに置き続けるなら、彼らにとってアメリカは、愛郷心を刺激するような素晴らしい土地でもあったという事だろう。しかし多くの大リーガーは、大体日本に帰っているし、彼らにとってのアメリカは、あくまで出稼ぎの場というか、夢への挑戦の場でしかなく、アメリカそのものに対する愛郷心とは少し違ったのだろうな。」

鼎「逆に大相撲で活躍した小錦関とか曙関とかは、引退後も日本に住んでるよね。彼らにとっての日本の地は、引退後の長い人生を過ごすに足る土地だったって事かなぁ。日本は。」

逆沢「同様に首都圏や札幌などの一極集中拠点に移住した人にとって、その都市は、どういう存在なのか? ちょっと興味があるわね。単なる出稼ぎの場でしかないのか、残る人生を託すに足る第二の故郷なのか? 神戸の人は阪神大震災に遭っても、地元に残った人が割といて、人口も震災前よりさらに増えてるけど、東京や横浜・埼玉・千葉に移住した人達にとっての今住んでる場所は、どういう存在なのか?」

鼎「武田信玄を熱く語る山梨県民とか、独自色満載で自信をもって故郷を語る大阪府民に負けないくらいの愛郷心を持てたら、結構楽しいかも知れないよね。」

愛原「ライバルをバカにして矜恃を保つのではなく、自分達に自信を持てるようになれればそれが一番だからな。原監督も王監督も寛大な人柄ではあったが、決して誰かに媚びている訳ではない。むしろ内心で自信があるからこそ、他人やライバルにも寛大になれる。王者の余裕という奴かも知れん。逆に自信のない人程、強がってみせたり、意地を張ったり、バカにしたがる。それでいえば、昔ながらの江戸っ子は愛郷心たっぷりの自信家だったが、コンプレックスのかけらもなく、地方からの来訪者にも人なつこく寛大だったと聞く。」

逆沢「愛郷心は、本人が大した努力をしないでも得られる特典的な誇りでもあるから、うまく身につけられたら、その分だけでも張りをもって有意義に生きられそうだしね。」

鼎「愛国心にこだわりがある人も、そういう感じなのかも知れないよね。日本人であるという事は、本人が努力しなくても得られる特典的な資格でもあるから。」

愛原「但し、アメリカ人にはアメリカ人の、韓国人には韓国人としての誇りがある。それを傷つけてはいけない。あくまで愛郷心とか愛国心というのは自己満足でしかなく、武田信玄の業績と山梨県民の資質が直接関係ないように、当人自体が立派である事を証明するものではないからな。」

鼎「愛郷心は、あくまで個人的に自己満足する事で、心に潤いとか張りをもたせる物であって、それを自分自身の立派さと勘違いしたら駄目だって事よね。」

愛原「中身のない人工的な愛郷心や愛国心に依存する者は、話している内にすぐにメッキがはがれる。内心で自信がないので、必死になって他人をこきおろしてでも、自尊心を保とうとするからな。本当に自信のある者は、布教の必要も他人に価値観を押し付ける必要もないのにな。」

鼎「過度の愛郷心も嫌われる原因にしかならないだろうけど、ちょっとした心のスパイス程度になったらいいよね。」

愛原「愛郷心を持っている側だけでなく、聞いてる側からしても、適度のご当地ネタは割と興味深い事があるからな。自分が知らない地方のエピソードが出てくる事で日本は広いなと改めて思うこともあるし、もしかしたら行ってみたくなる事もあるかも知れないしな。」









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