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愛原様のたわごと(10年1月23日)






愛原「シナリオ部分を進めていくと、当初の想定から外れたことが色々起きるものだな。当たり前の話だが」

逆沢「想定外の事が起きるのは、何をやってもつきものなんじゃない? 予定通りに進む方が、世の中では珍しいくらいだし。」

鼎「一切のトラブルなく、無事完成までたどり着ける事の方が珍しいと思うよ。」

逆沢「それで今回は、どんな想定外のことが起こったわけ?」

愛原「カッコよく言えば【キャラクターが自分の足で歩き出した】という事だ。逆に身も蓋もないテクニカルな表現をすれば、【既に固定されたキャラクターの各種設定の都合上、行動に制約が出てきた】という事になるのかも知れん。」

鼎「つまりシナリオの都合上、作者としては【ここで右に歩いて欲しい】と思ってても、キャラクターの性格を考慮すれば【彼らはきっと左に歩いていくだろう】みたいな事が起こってるって事かなぁ?」

愛原「まぁ分かりやすく言えばそうなるかな? さすがに作者の意図する方向と逆方向に歩くようなケースには至ってないが、こいつらやたら、道草が多すぎる。本題と関係ない話ばっかりしやがるし。」

鼎「それ。ここのコーナーと同じだよね。せっかくテーマを決めても、すぐに脱線して関係ない話も混じっちゃうし。」

逆沢「作者の混沌とした性格が無意識に反映しちゃってるだけじゃない? それ。」

愛原「まぁ、作者の魂が全く入らないシナリオは、さすがに作れないからな。」

鼎「けどもし、作者が考えているシナリオの流れと、キャラクターの意思が相反した場合は、ここの作者の場合は、どう処理する事が多いのかなぁ?」

愛原「キャラクターの意思を優先させる。つまり【ボトムアップ】優先の考え方だな。」

逆沢「【ボトムアップ】って何よ?」

愛原「【ボトムアップ】というのは、【下からの意見を積み上げて全体をまとめていく管理方法】。あるいは【個々の部品を組み合わせて全体を完成させる設計方法】の事を指す。ちなみに【トップダウン】が対義語だ。」

鼎「【トップダウン】というのは、【上意下達型の管理方法】とか【全体像をまず優先して定め、その全体像に沿うような部品を作り上げて完成させる設計方法】の事を指すんだよ。」

逆沢「つまり今回のテーマは、【トップダウンとボトムアップ】という事になる訳ね。」

愛原「先に言われてしまったな。という訳で今回のテーマは、【トップダウンとボトムアップ】だ。」

逆沢「上の定義によると、要は【全体設計→部品製作】の流れでゲームを作るスタイルならトップダウン型。【部品製作→全体構築】の流れでゲームを作るスタイルならボトムアップ型という事になる訳ね。」

鼎「絵描きさんでも、パーツごとに描き上げる人と、背景も含めた全体から構想していく人がいるよね。」

逆沢「ゲームの世界で言えば、まず最初に全体マップをおおよその範囲でクリエイトできる人なら【トップダウン型】。シナリオの進展に伴い、少しずつ全体マップを拡張させていくタイプなら【ボトムアップ型】という事になりそうね。」

愛原「無論、現実的には、100%トップダウンとか、その逆はあり得ないけどな。まぁどちらの比率を高めにするかとか、上と下がもし対立した場合、どちらを優先するかくらいに考えていただければありがたい。」

鼎「トップダウン型にもボトムアップ型にも、良い所と悪い所があるよね。」

愛原「今すべき作業を円滑に進めるのなら、ボトムアップ型の方がはるかに楽だ。但し、製作を進めていくと、後で色々困ることも出てきやすい欠点がある。例えば、内部の変数やスイッチの場所がでたらめな順序(大抵は、その変数やスイッチを必要とした順序)で並んでいる為、後々の作業に、極めて悪影響を及ぼす事がある。」

鼎「RPGとかなら、全体マップを作成していて、後で後悔する事も多いよね。マップの面積が思ったよりも狭すぎて、後でどんどん右下方向にばかり拡張しなくてはならなくなったり、あるいは逆に広大な設定にし過ぎて、空間が余りすぎたり。」

逆沢「オリジナルの戦闘システムを作っている人も、ボトムアップ型の人は、後で後悔しやすい事があるわね。後で追加のパラメータが欲しくなったり、逆にせっかく作ったけど意味ないパラメータが出てきたりすると。」

愛原「まぁ戦闘システムくらいなら、システム作りに慣れてる作者さんなら、すぐに適応させてしまえるだろうから、どっちにしても、そんなに苦労はしないだろうけどな。」

逆沢「厄介なのは、シナリオ部分。特にキャラクター関係でしみじみ感じるわ。」

鼎「週刊漫画とかでよくあるよね。うっかり殺してしまったキャラクターが、後でどうしても必要になって、結局、実は死んでなかった事にするとか。」

逆沢「ジャンプ系の少年誌では、特にありがちね。そんな簡単に生き返るなよみたいな超展開も珍しくないし。」

愛原「一説によると、人気投票で上位に来ると、蘇生率が上がるそうだ。」

鼎「逆に、主人公パーティーの一員であったはずの特定のキャラが、いつの間にか空気になってる事も多いよね。」

逆沢「空気になってるだけなら、まだマシなんじゃない? 下手するといなくなってる事すらあるし。」

愛原「作者的に扱いに困ったキャラは、何らかのイベントでむりやりパーティーから離脱させられたり、あるいは死亡させられたりする事があるよな。」

逆沢「見せ場があれば、それでもまだマシかも知れないけどね。いつの間にかモブキャラに降格されるよりは。」

愛原「残念ながらキャラクターの中でも、勝ち組と負け組が出てきてしまう事がある。もちろん初めから、端役と決めていたキャラが端役で終わっても、それは問題ないのだが、主力と決めていたキャラがいつの間にかモブ化したり、あるいはモブキャラとして生まれたはずのキャラがいつの間にか看板キャラの一員に昇格している事もあるから、不思議なものだ。」

鼎「ここの作者は、どちらかというと【トップダウン型】の製作方式を好みそうな雰囲気だけど、それでもやっぱりこういう部分で悩むことは多いの?」

愛原「キャラクターが勝手に歩き出すのは楽しみの一人でもあるので、不快さはないが、想定外の展開に困る事は意外と多い。ここの作者は、【トップダウン型】を好むと言っても、キャラクターの個性や一貫性まで潰すのは好まないので、この部分ではどうしても【ボトムアップ】型にならざるを得ない。当然ながら、シナリオの作成に関しては、ボトムアップ型にかなり近くなる。いきなり最終決戦部分から先に作るなんて事は、決してあり得ない。」

逆沢「つまりどういう形の最終決戦になるかは、作者でも全く予想がつかないと。」

愛原「ひな形は脳内に置いてあるが、その形で完成する保証は全くない。キャラクターがそのひな形を嫌がればそれまでだ。」

逆沢「まぁ、市販のゲームや漫画とかでも、主人公やヒロインがそれ以下の脇役に、出番を食われまくっている事は多いから、別に珍しい事ではないんだろけどね。」

愛原「当初の構想で、ヒロイン格であったはずのキャラが、シナリオを書き進めている内にいらない子になってる事は、プロの世界でもたまに起こる現象みたいだからな。」

鼎「でもそれはそれで、そのまま押し切ってしまう作者さんの方が多い気もするよね。」

逆沢「今のゲームは、漫画並にキャラクターの比重が高くなってるからね。たとえ予定されたシナリオの流れに逆らっても、キャラクターの個性や一貫性を優先させる作者さんの割合は、やっぱり自然と大きくなるような気はするし。」

愛原「俺も同感だ。予定されたシナリオの流れを優先させすぎて、キャラクターが支離滅裂な行動を取り始めたら、プレイヤーとしては興ざめもいいところだからな。」

逆沢「現実世界の政治の世界ては、予定された政治の流れを守る為に、首相や大臣がころころ主張を変えて、支離滅裂な事を言いまくる例の方が多いけどね。」

鼎「野党の時とか、平議員の時には大きな事を言っていたのに、責任ある立場になった途端に、急にトーンダウンしちゃう政治家さんは多いよね。」

逆沢「今の民主党政権のトーンダウン気味ぶりは当然として、定額給付金の時に意見を豹変させた麻生とか、あれだけ首相の靖国参拝を当然視していながら結局、自分が首相になった途端に参拝を完全に見送った安倍とか、この程度の公約違反は大したことないみたいな事を堂々と言った小泉とか、みんなそんな感じだしね。」

鼎「だったら、最初に言ってた事と正反対の、支離滅裂な行動を繰り返すキャラクターがゲーム内で登場しても、実は問題ないかも。どうかなー?」

愛原「確かに、リアルの世界では、平気で主義主張を変えまくる人も多い。そう考えると、当初の性格設定と正反対の行動を、ゲーム内のキャラクターが突然展開しても、確かにそれは一つのリアリティーかも知れない。けど十中八九のプレイヤーは、それをリアリティーとは認めずに、ただ単にあぜんとするだけのような気がする。」

逆沢「まぁ、現実世界でも、政治家の豹変ぶりにあぜんとする有権者は多そうだし、心境的には十分理解できるわ。」

愛原「そんな訳で、ゲーム内のキャラクターが突然、今までの性格設定や主義主張と異なる行動をする場合には、何らかの理由付けが必要だろう。でないとプレイヤーは、そのキャラクターに感情移入や同情ができなくなって、色々困ったことになる。」

鼎「それで普段はトップダウン方式であるここの作者ですら、キャラクターの行動に関しては、できるだけボトムアップ方式を採用しているんだね。」

愛原「まぁ狂信徒並に首尾一貫とした信念のキャラクターは一人もいないはずだが、人格が突然豹変しないようにという配慮くらいはしているようだな。そりゃあ人間だから、機嫌が悪い時もあるし、なまけたい時もあるし、その場その場で主張や判断の寛容さに差が付くことはあるだろう。だが正反対の主義主張を何の前触れもなく展開しないようにという点は、さすがに気をつけてるつもりだ。」

鼎「性格や主義の部分に関しては、人間が感情の生き物である以上、ブレてもおかしくはないと思うけど、絶対にブレてはいけない部分もあるよ。履歴的な部分とか。」

逆沢「ああ、最初は18歳と言ってたのに、別のどこかで25歳と主張したりみたいな感じね。」

鼎「最初は独身という設定だったのに、何の断りもなく実は何年も前から所帯持ちという設定に変わっていたり。」

愛原「とある設定資料では身長190センチ以上と書いてあったのに、別の設定資料を見たら、それより大幅に低かったりとか、そんな事もたまにあるわな。プロの世界でも。」

逆沢「ウルトラマンに出てくる怪獣の体重とかは、かなり現代科学の視点からみたら、常識から逸脱しているなんて話も聞くしね。」

愛原「科学的な検証に関しては、架空世界だからという事で、大目に見てやれ。太陽にほえろや西部警察に代表される刑事ドラマが、現実の警察像と逸脱していようが、水戸黄門や暴れん坊将軍が実際の歴史と逸脱していようが、そんな事にいちいち突っ込むのも、大人げないからやめておけ。だが年齢とか身長とか、そういう部分はできるだけ統一したいところだな。まぁプロの作者でも、よくやるミスではあるんだが・・・。」

鼎「その場のノリや思いつきだけで設定しちゃうと、作者自身が、ついそんな設定があった頃すら忘れちゃう事はありがちだもんね。」

逆沢「下手すると、既に死んでいるはずのキャラが、平然と再登場している事すらあるからねー。」

愛原「それは、ゲームの世界では普通に起こり得るから厄介だ。フラグ管理でミスすると、死亡済みキャラクターが、平然とイベントに登場して能弁を垂れることがあるからな。残念ながら、ここの作者も自信を持って、そんなミスは100%あり得ませんとは言い切れない。」

逆沢「まぁ、そういうケアレスミスは、まだすぐ直せるからいいとして、シナリオの展開だけは、後で簡単に修正できるって訳にはいかないからねー。」

愛原「ボトムアップ方式の場合は、【部品=今、作成中の部分】を綺麗に作成するには向いているが、部品を順番に作り上げていった結果、全体像がどうなるかが予測困難な欠点がある。だがキャラクターを動かすという部分に関してだけは、どうしてもボトムアップにせざるを得ない部分が多い。」

逆沢「作者としては、予定された舗装道路をキャラクターにまっすぐ歩いて欲しい気持ちもあるけど、キャラクターが寄り道しだして、初めて魂がこもったと感じる事も多いからねー。」

鼎「最近のAVGでは、キャラクター同士で漫才を始める事も多いけど、ああいうシーンが入ると、すごくキャラクターが生き生きして素敵な感じがするよね。」

愛原「ゲームの本筋からいうと、漫才シーンは寄り道でしかないのだが、ああいう場面が入る事で、キャラクターに吹き込まれた息吹を感じる事ができるからな。そしてこういう漫才シーンは、ボトムアップ方式の流れの中で自然と出てくるものだ。トップダウン方式でいきなり【さぁここで笑いを取れ】と命じても、それはプロのお笑い芸人でも簡単ではないと言わざるを得ない。」

逆沢「感情は、全体の流れの中で起きるものだからね。何の伏線もなく突然、怒り出したり、笑い出したりしたら、それはそれで不気味だし。」

愛原「キャラクターを大根役者にしたくなければ、全体の流れというのはやはり重要だ。全体の流れをうまく描ききろうと思えば、ボトムアップ方式の方が有効という側面は間違いなくある。確かにボトムアップ方式の結果、当初の想定と全く異なるシナリオ展開になってしまう事もあるが、まぁそれもドラマの一つだろうしな。」

鼎「という事は、シナリオ部分に関しては、トップダウン方式は不向きという事かなぁ?」

愛原「いや。それは断じて違う。キャラクターを動かすのならボトムアップ方式が有効だが、キャラクターを生み出すのなら、トップダウン方式の方がはるかに有効だ。特にキャラクターが行動する際の基本的な【動機】となる部分は、最初にきちんと設定しておいた方がいい。これを決めてないままシナリオを描き始めると、シナリオがふにゃふにゃになる危険性があるからな。巻き込み型なら主人公サイドに、巻き込まれ型なら仲間キャラなりライバルサイドに、それぞれ明確な行動哲学や行動規範がある事が望ましい。」

鼎「今、作っているゲームは、巻き込み型と巻き込まれ型のどっちになるのかなー?」

愛原「思いっきり巻き込まれ型。今作では、主人公は徹底して無個性型にこだわってみた。早い話、プレイヤーが自分の好きなように主人公を、脳内補完すればいいというスタンスだな。主人公の初期パラメータも自由に設定できる為、体育会系でも文化会系でも好きにすればいいというタイプだ。但し、パラメータの総量はほぼ決まっているので、極端な万能型や無能型は作れない。主人公の名前は、好きなように入力して決められる。」

逆沢「つまり今回は、主人公の魅力や個性で押し切るタイプではなく、周囲の環境や世界観を重視した設計になってる訳ね。」

愛原「そういう事になるな。色んなタイプの主人公を初期設定できる宿命として、主人公の個性は当然ながら、弱くなる。せっかく文化会系のキャラを作ったのに、主人公のノリや過去の経歴があまりに体育会系過ぎたりすると、具合が悪いからな。主人公はひたすら没個性。初期のドラクエ並に没個性路線だ。」

逆沢「おいおい。一応AVG(+SLG)のゲームなのに、主人公が没個性で、シナリオが前に進むのか?」

愛原「脇役に個性の強い奴がいるから、今ん所は問題ない。そいつらが勝手にシナリオを前に進めていく形式だからな。」

鼎「つまり主人公を無個性化した分、周囲のメインキャラクターの設定の方が肝心な形になってるわけだよね。」

愛原「うん。ここがキモだ。故にキャラクターの初期設計部分だけは、7lcw以上にこだわった。主要キャラの過去とかも、決して空白だらけにはしていない。この部分だけははっきりとトップダウン方式だ。でないと無個性な主人公を牽引し切れないからな。」

逆沢「なんか美少女ゲーム的な主人公ともいえそうね。ときめきメモリアルとか、純愛エロゲとかで割と見かける感じの。」

愛原「まぁ、それは多少言えるかも知れん。あの手のゲームは、主人公の個性が強すぎると、ゲーム的に具合が悪いからな。例えば、同じシチュエーションに巡り逢った時に、目的の女の子に応じた適切なセリフを選択する必要があるのに、特定のセリフしか似合わないキャラだと、全ヒロインとゴールできなくなっちまうからな。」

逆沢「な、何という八方美人・・・! というか相手の女の子によって、違う感想を平気で使い分けて、白々しく吐ける口先男ぶりが、なんかムカつくわ。」

愛原「俺に言わせれば、男の個性を無視して、自分好みの回答をしない度に容赦なく好感度を下げる女性キャラの方が、もっとタチが悪いと思うが。」

鼎「でも主人公の個性を際立たせすぎると、具合が悪いゲームが存在するという事だけは伝わったよ。」

愛原「うむ。そんな訳で、いわゆる牽引役となるキャラクターの基本設定は大事だ。仲間キャラなら、お節介である。強引であるなどの性格設定で。敵キャラなら命を狙う。放っておくと世界が滅ぶなど、とにかく何でもいいから理由をつけて、主人公を働かせる方向に連れて行かなくてはならない。こういうキャラクターの基本設定は、当然、トップダウン方式で最初に決めておくのが望ましい。」

逆沢「大した理由もなく、無個性な主人公を牽引させるのは難しいだろうからね。」

愛原「基本設定をうまく決める事に成功すれば、後はボトムアップ方式でシナリオ作成に専念しても、そんなには苦労せずにうまくシナリオは回るはずだ。」

逆沢「実際は、キャラクターが想定外の寄り道をしたりして、上手く行かない事も多いみたいだけどね。」

愛原「それは、最初の基本設定時の甘さも原因の一つだろうし、他にも理由があるかも知れんな。」










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