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愛原様のたわごと(10年8月8日)




愛原「最近、妙に仕事が忙しい。夏の暑さも重なって、なかなかゲーム作りに時間が割けなくて困っている。」

鼎「そろそろ、クーラーを部屋につけたらどうかな? 暑さでパソコンも時々、悲鳴を上げてるし、下手するとハードディスクが飛んで恐ろしい事になっちゃうかも知れないよ。」

愛原「一応、外付けハードディスクと別ドライブの内蔵ハードティスクの両方に、パックアップを取る習慣はつけてるけどな。去年一回、本気でデータがクラッシュしてエラい目にあったから、それなりには気をつけている。」

逆沢「クーラーはつけんのか?」

愛原「将来、体力が落ちてきてクーラーがないと持たなくなれば考えるが、今の所はそんな予定はないな。【地球温暖化に歯止めをかけようぜ!】という高尚な決意の表れだと思ってくれ。」

逆沢「嘘こけ。単にクーラーが嫌いなだけでしょうが?」

愛原「涼しい空間自体は、嫌いじゃないぞ。炎天下に何時間もいた後に、冷房の良く効いたお店の中に入ると、すごく幸せな気分になれるしな。ただああいう贅沢を、各家庭レベルでやっていいのかという素朴な疑問はある。」

鼎「それじゃゲーム作りの方は、ちょっと停滞気味って事かなぁ?」

愛原「時間の確保という意味でちょっとツラくなっているが、スランプとかそういう傾向は一切ないから、その点は心配するな。例えるなら、思い浮かぶネタに、実務処理が全く追いつかないような感じ。ただ長期的視野に立って考えて見る限り、どうもいきなり完成版を出すのは無謀という事にはなりそうだ。」

鼎「つまり前編とか、暫定版とか、そんな感じになるって事かなぁ?」

愛原「まぁ、そんな感じ。たとえるなら7lcw+2の状態でいきなり出したいのは山々だが、それはさすがにキツ過ぎるのでとりあえず、登場人物やイベント数をしぼった7lcw状態で出すようなものだな。」

逆沢「なんで? 腰をすえて完成版にはできないわけ?」

愛原「風呂敷が広がりすぎた。あと時事ネタの賞味期限の問題もある。大体、7lcw状態を7lcw+2状態に増強するだけでも、1年は余分にかかるんだぞ。ゲーム作成というのは、想像以上に大変なんだ。」

逆沢「風呂敷が広がりすぎたなら、適当に枝の部分は切り落として、スマートにしちゃえばいいのに。」

愛原「だからスマートバージョンで出す。但し、今作はAVG主体であり、中途半端にイベントを切り落とすと何のことが分からなくなってしまう為、前編・後編と分けて、その内、【前編に必要なイベント】及び【寄り道イベント】に特化した感じで、うまく抽出していきたいと考えている。つまり後編にならないと伏線が回収できない部分に関しては、伏線を広げたままの状態になってしまうが、これはやむを得ない。」

逆沢「今更、後には退けないって事ね。ってか、何で事前に全体像をもっとよく考えなかったわけ?」

愛原「いやあ、AVG主体という事もあり、その場のノリで作ってたら、無駄に伏線が広がってしまったらしい。たとえるなら、最初は単行本5巻分でエンドになるはずの連載漫画が、新しい登場人物が続々加入したり、当初の予定にはなかったエピソードが加えられたりして、終わりが見えなくなったような感じだな。」

逆沢「それ、一歩間違えたら、突如【俺達の戦いはこれからだ!】で終わりそうな危険な状況そのものね。無駄に引き延ばしたあげく、そうなったら最悪だわ。」

鼎「でも漫画の世界では、最終回が迎えられないまま作者が亡くなったりする事も多いよね。」

逆沢「小説家でも、探せば何人もいるわね。特に田中芳樹とか、未完のシリーズだらけだし。」

鼎「そもそもオチを考えて作品を世に出したのか? それすら怪しい作品も、世の中には結構多いよね?」

愛原「という訳で今回のテーマは、【長編のオチのつけ方】だ。」

鼎「漫画でも小説でもゲームでも同じ事だけど、シナリオ要素がある作品である以上、オチは普通、欠かせないよね。」

逆沢「その欠かせないはずのオチをつけないまま、野ざらしになってる漫画や小説も、世の中には結構多いんだけどね。」

鼎「作者が病気になったり亡くなられた結果、未完成で終わるのは仕方ないと思うけど、世の中そうじゃないケースも多いよね。」

逆沢「漫画の世界で一番、多いのは、やはり編集者の都合による打ち切りね。人気がないと判断されたら、オチがつかないまま、勝手に連載を打ち切られる事も珍しくないし。」

鼎「作者がその作品に対する情熱を失って、そのまま野ざらしになっちゃう事もあるよね。」

愛原「まぁ打ち切りになるケースに関しては、去年の6月にテーマとして取り上げたから、この辺にしておこうか? 今回は打ち切りが決定していない段階を前提に話を進めたいと思う。この場合、作者のタイプとしては【既に最初からオチが決定されているタイプ】【実はまだオチが決まっていないタイプ】に分けられるような気がする。」

逆沢「って、ちょっと待て? オチも決めてないのに、作品を世に送り出すような作者なんてあっていいわけ?」

鼎「でも実際、そういうタイプの作者さんもいると思うよ。その場の雰囲気だけで物語を進めるから、死んだはずのキャラを生き返らさざるを得なくなったり、特定のキャラの出身地や年齢や過去や、下手すると名前まで、突然変化したりする事もあるだろうし。」


逆沢「随分、いい加減な作者もいたもんねー。まぁ週刊誌に連載してる漫画の作者とかなら、意外といそうな気もするけど。」

鼎「その場その場の雰囲気を重視しすぎると、オチをどうつけたらいいか、分からなくなっちゃう危険性もあるよね?」

愛原「少年漫画の場合は、ひたすら【強敵登場→しばき倒す】の繰り返しパターンでシナリオが進んでいく事が多いから、オチのつけ方は比較的簡単そうだけどな。まだ読者からの人気が高いうちは、新たな敵幹部を新登場させるなりして、主人公達がラスボスまでなかなかたどり着けないようにすればいい。それでも引き延ばせそうにないなら、そのラスボスとの決戦をとりあえず終わらせた上で、新たな新ラスボスを再設定し直せばいいだけだからな。」

逆沢「バトルがメインの少年漫画は、ほとんどそのパターンばかりね。」

鼎「ドラゴンボールとかが、そのパターンでまさに王道って感じだよね。」

逆沢「漫画の世界だけじゃなくて、ゲームの世界でも悪の大魔王とか、事前に設定されたラスボスをしばきあげたらエンディングってパターンが、一番多いしね。」

愛原「この【強敵登場→しばき倒す】という王道パターンによるオチづけの場合は、そのラスボスが悪い奴であればあるほど、オチがきれいにまとまり、そのラスボスの信念や事情次第では、より感動的になりやすいんだろうな。」

逆沢「まぁ別にラスボスが悪党である必要はないと思うけどね。甲子園を目指す高校野球児の漫画のように、【かつて対等に戦えると思ってもいなかった強豪チームを、激戦の末に倒す】ってのも、立派なオチのつけ方の一つだと思うし。」

鼎「つまり実際の所は、そのラスボスが悪い奴であろうがなかろうが、要は【強い奴をしばきあげる】というシチュエーション自体が、オチとしてそのまま通用するという事かなぁ?」

逆沢「つまりバトルものの漫画やゲームの場合は、とにかく強い奴を出して、そいつを主人公が倒せる形にまで持っていければ、それでシナリオは成立しちゃうって事ね。あ、いい事、思いついたわ。今作ってるゲームも、さっさとラスボスを登場させて、いきなりラストバトルにしちゃえばいいんじゃない? そしたらゲーム作りも無事完了って事で。」

愛原「おいおい。何の脈略もなく、いきなりラスボスを主人公の前に連れていく訳にもいかないだろ?」

逆沢「そんな事ないって。例えば7lcwシリーズでも、桶狭間イベントでも作ったら面白いんじゃない? 一定の確率で黒藤がいきなり主人公の都市に攻め込んできて、それでうまく黒藤本隊を撃破できたら、黒藤が戦死した扱いになって、いきなりエンディングとか♪」

愛原「感動のかけらもないエンディングだな。大体、伏線の回収はどうすんだ?」

逆沢「でも現実世界では、謎が謎のままで終わるって事も、全然珍しくないんじゃない? 政治家や暴力団がらみでは、秘書や替え玉だけがとりあえず自首したり自殺するだけで、結局、真相は闇のままって事も多いし。」

鼎「そういえばそうだよね。現実世界では、伏線が永久に回収されないままの方が多いくらいだよね。」

逆沢「2時間サスペンスドラマのように、犯人を岸壁に立たせたら、あらゆる謎や伏線が回収される世界観なら、私達も助かるんだけどねー。」

愛原「まぁ広げた伏線を100%回収する必要はないと思うが、それでも伏線を全然回収しないままエンティングっても、なんか味気ないとは思わないか?」

逆沢「あー、めんどくさい! あっそうか。現実世界と違って漫画や小説の世界では、【伏線を回収しないままオチをつけると、読者にモヤモヤを残す事になるので、それはあまり好ましくはない。】という特別ルールがあるのよねー。」

鼎「主人公には、単に強敵を倒すとか犯人を逮捕するだけじゃなくて、【与えられた謎の真相を解明する】というもう一つの任務がある事も多いよね。」

逆沢「敵が謎の必殺技を使ってきたなら、その必殺技の謎や弱点を先に暴く必要があったりする事も多いわね。中にはイヤボーン的な力業で、押しきっちゃうケースも多いけど。」

愛原「たとえばラスボスの腹臣として、新たな敵幹部であるAが主人公の前に登場したとする。このAというキャラの素性に主人公達が何の興味も示さなければ、Aはただの悪の手先で終わるだろう。だがもし主人公達が、【なぜAは、ラスボス側の陣営に付いたんだ?】と疑問を持ってしまった場合、主人公達にはその疑問を解き明かすという、もう一つの任務というか伏線が発生してしまうからな。」

鼎「つまり物語を複雑にしたくなければ、主人公はなるべく疑問を持たないようにすればいいって事かなぁ?」

逆沢「敵の素性や過去に興味を持たなければ、その敵キャラの過去をいちいち詮索する必要もないし、敵の必殺技の特徴に興味を持たなければ、そのまま力技で押しきっちゃっても、誰も気にならないだろうにね。」

鼎「つまり主人公は、なるだけ物事に無関心なバトルマニアである方が、望ましいって事かなぁ?」

愛原「まぁ【主人公が疑問を持たない展開の方が、シナリオを書き進める上では簡単】というのは、バトルものの漫画に限らず、例えば恋愛ものとかでも当てはまると思う。例えば一人の無口キャラBがいるとしよう。主人公が【なぜBが無口になったのか?】に何の深い疑問も持たなければ、Bはただの【無口という属性をもったキャラ】で終わってしまう事になる。だが主人公が、Bが無口になった理由に強い疑問を持ったり、それを直してやろうと考え始めた場合は、話は別だ。Bのキャラの過去を設定したり、色んな伏線回収の手段が必要になってきてしまうからな。」

鼎「主人公が【なぜ?】と疑問を持つ度に、伏線はどんどん広がってきちゃうって事かなぁ?」

愛原「そう。主人公が何の疑問も持たず、【魔王は悪い奴だ】と決めつけていれば、魔王を倒す事で即、エンディングに直行できる事になるだろう。だが【魔王はなぜ、こんな悪い事をするようになったのだろう?】とか【魔王は本当に悪い奴なのか?】と、主人公が疑問を持ってしまった場合は話は別だ。その疑問を解決しないままエンディングを迎えると、少しだけ後味が悪くなってしまう。」

逆沢「つまり主人公や読者の抱いた疑問の数だけ、伏線の数もできてしまうって事ね。」

鼎「すぐに悩むタイプの主人公は、シナリオを進行させる上では、ちょっと難しいという事かもしれないよね。」

逆沢「そのせいか、赤レンジャー型というか、熱血型とか直情型の主人公の方が、数もずっと多い印象もあるわね。」

愛原「疑問を持たず、ぐいぐい目的に向かって突き進んでくれた方が、シナリオ作成の担当者としては、やはり扱いやすいというのはあるな。いちいち戦う動機を説明してやらないとならないタイプは、やっぱりどっちかというと扱いにくい。」

鼎「【高校野球児は、なぜ甲子園を目指すか?】とか、そんな事はあまりテーマにならないようなものだよね。」

逆沢「そりゃあ【将来、プロ野球選手になりたいから】とか、【人気者になりたいから】とか、【周りが本気で甲子園を意識しだしたから何となく】とか、【部活に入ってた方が内申点もよくなりそうだし、それなら甲子園常連校である野球部を選んだ方がハクもつくかなと思ったから入部しただけで、実は受験勉強をおろそかにしてまで甲子園を目指す気はさらさらない】とか、【部活に入ったからには、大会で勝ちたいと思うのは当然。理由を聞く事自体が野暮だ。ちなみに大会が終わった後のことは、何も考えていない。】とか、【生き別れの妹に、自分が元気にしている姿を見せるため】とか、部員一人一人に色んな動機はあるだろうけどね。」

愛原「【生き別れの妹に、自分が元気にしている姿を見せるため】なんて動機で、高校野球をやってる学生なんて、千人に一人もいないと思うけどな。」

逆沢「あはは。私も実は、【後の事は何も考えていない】的な人が大半のような気はするわ。将来、プロ野球選手になる事を前提に野球部員になってる人も、全体からすればほんの一握りだと思うしね。まぁ【プロ野球選手になれるまでに活躍できる可能性は低いと思うけど、他の部活やっててもその他大勢で終わる可能性が高いのは一緒だし、それならとりあえず好きな野球でもやるか】的な人なら、かなり多い気もするけどね。」

鼎「そんな生臭い動機なんか、聞きたくないよ。やっぱり高校野球児は【甲子園をとりあえず目指して当たり前】でいいんじゃないかなぁ?」

逆沢「勇者は魔王を倒して当たり前。理由なんかいちいち聞くなって事ね。」

愛原「爽やかすぎる動機だな。まぁそういう物事に疑問も打算も持たず、ひたすら純粋でいられる主人公が扱いやすいのは確かだが。」

鼎「って事は、伏線が広がりまくっている作品というのは、爽やかでない主人公や仲間やライバルが、たくさんいる世界観って事にもなるって事かなぁ?」

逆沢「それは当たっていると思うわ。たとえば【ヒャッハー!】とか叫びながら農民を虐殺しているモヒカンの悪党がいれば、主人公は安心してそいつを斬れるけど、いかにも訳ありっぽい顔をしたイケメンが農民を虐殺していれば、とりあえず主人公としては理由を聞きたくなるじゃない? で、素直にその理由を話してくれたならまだいいけど、もったいぶって思わせぶりな事しか言わなければ、もっともっと動機が気になっちゃってしまうし。」

鼎「つまり裏表のない爽やかで分かり易い悪党と、裏や影や事情のありそうな悪党とでは、シナリオライターの負担も変わってくるという事かなぁ?」

愛原「【謎のキャラクター】というのは、伏線回収という意味では本当に困る。現実世界では【ただの怪しい人】で済ませられるはずのキャラも、漫画や小説になると、【気になる人】に上位置換されてしまう事が多いからな。」

逆沢「つまり長編シナリオを完成させるのに気をつけなくてはならない事の一つとして、【むやみに怪しい人を多く登場させて、伏線だらけにしない】事があげられるのかもね。」

愛原「ただのイロモノキャラなら構わんが、主人公がそいつの過去や言動にむやみに興味を持たないようには配慮した方がいいかも知れんな。その新キャラが【構ってちゃん】になりそうだと思ったら、深入りしないよう気をつけた方がいいかも知れない。」

逆沢「で、伏線があらかた回収できるメドがついたら、後は適当に強敵をぶつければ、無事オチがつくって事ね。」

愛原「バトルものならな。恋愛ものとかなら、主要キャラとの人間関係を決定づけるような強力なイベントがオチの直前に一つくらいは欲しい。」

鼎「オチが最初からないか、オチにつながるまでのルートが全く構想できてなかったら・・・。」

愛原「一部のキャラゲ型の作者に多そうなパターンだな。オチはキャラに聞けってばかりに、その場のノリを重視しづけるとそんな感じになりやすい気がする。まぁ、俺自身もキャラがどういう未来を歩むか、余計な手を加えずに見守りたい気持ちは分かるから、それを非難する姿勢を取る気はないのだが。」

逆沢「実際、続きが気になるのに、一向に作者が続編を出そうとしない小説とかもなくもないもんね。」

愛原「キャラを魂の入らない操り人形にしない為にも、無理にオチに近づけようと思わず、キャラに自由に行動させるという視点はすごく大事だ。だがその結果、作者にとってオチのつけようのない複雑な展開になってしまう事も多い。【続きが気になるくらい面白いのに、作者が続編を出せない。(もしくはいつまでもダラダラ物語が続いて、いつオチがつくか全く見えない)】作品というのは、キャラが本気で立ってるが故のジレンマだと思う。」

鼎「現実世界の人間の場合は、寿命が尽きるまで人生のエンディングに到達する事は決してないけど、それと同じようにキャラ自身も、強制的にオチがついてエンディングにたどり着いちゃうのを恐れているのかも知れないよね。」

逆沢「そういうキャラには、せめてハッピーエンドをあてがってやりたいわね。で、今作のキャラは、多少なりとも魅力的なキャラはいるかな?」

愛原「ここの作者に、燃えや萌えを期待する方が間違っているとは思わないのか? 特に今回の作品は、凡人に比重を置いているから、魅力的なキャラという意味では、マイナス効果の方が強いかも知れない。」

鼎「どういう部分で凡人なの? 例えば年金を不正受給する為に死亡届を出さないような発想をしたりするようなキャラが多い感じかなぁ?」

逆沢「そ、それは凡人というよりは、低俗な俗物って感じがするんだけど・・・。」

愛原「今回のキャラは、7lcwシリーズでいえば甑や西関のポジションに少しだけ近い。つまり一庶民だったはずの者が、それなりの社会的責任の伴うポジションにクラスチェンジしていくパターンだ。で、そうすると今まで見えなかった部分が、色々見えてくる事も多くなる。例えば口蹄疫問題にしても、無責任な庶民と対策責任者とでは、当然ながら考え方が全く違うだろう?」

逆沢「あー、口蹄疫に関しては、ようやく収束宣言が出されたわね。でも庶民の感想としては、【もっと早期に対応していれば、被害はこんなに大きくならずに済んだはずだ】って事になるんだろうけど。」

愛原「これが宮崎県知事や農林水産省の立場だと、見解が全く異なる事になる。たとえば感染区域内に100頭の牛がいて、3頭の牛の感染が明らかになったとしたら、責任者としてはどう対応する事になる?」

鼎「うーんと可哀想だけど、残り97頭の牛も含めて全100頭の牛を処分せざるを得ないよね。他の地域への感染拡大を防ぐためにも。」

愛原「じゃあ早期発見に成功して、1頭の牛が感染してすぐに対応した場合は?」

鼎「残り99頭の牛を含めて全100頭の牛を処分せざるを得ない・・・って事は、結局、処分しなくてはならない牛の総数としては変わらないんだよね。」

愛原「そういう事。新型インフルエンザの時のように他の都道府県にも感染が次々と拡大していったならば、対応の遅れを非難されてもやむを得ないが、そうでなければ結局、殺す牛の総数は同じなのだ。」

逆沢「宮崎県知事は、種牛の一部を殺さないで済むよう、国に色々働きかけてもいたけど、これはどうかな?」

愛原「その是非は、俺には全く分からん。例えるなら、感染区域内の100頭の牛の全てを殺す必要があったのかという話になってしまうからな。もしかしたらもっと感染区域を狭く絞って、10頭だけ殺して終わりにしても良かったかも知れない。逆に100頭全てを殺したから、間一髪で他県への感染拡大を防げたのかも知れない。何頭殺すのが妥当だったのか、それは俺にも分からないし、きっとプロでも分からないだろう。ただ何十年前から、法律でそうする事になってるのだけは事実だ。これは鳥インフルエンザなど、過去の類似災害に当てはめても全く同じ事。ただ一つ言えるのは、【初動対応がもっと早かったならば、被害規模はもっと小さく抑えられた】との主張は、論理的に矛盾があるというだけの話。対応がより早かったら、その分だけ殺害される牛の処分時期が早まって、その分だけ、埋め立て地の確保がより困難になって渋滞がより発生しただろうというだけの話。あるいはマスコミがもっと大げさに報道して、風評被害がより拡大していた可能性もある。そうなると鹿児島県や熊本県の農家にも、風評被害が及んでいたかも知れないというだけの話だ。」

鼎「でも私達の庶民感覚では、【対応が遅れたから被害が拡大した】という認識でいた方がしっくり来るよね。」

逆沢「一昨年以降の新型インフルエンザ騒動の時は、対応自体は早かったけど、結局感染拡大は防げなかったけどね。」

愛原「本気で入国制限を加えるなら、空港のみならず全ての港および在日米軍基地で入国制限を加えないとならないが、そんな事は初めから不可能に決まっている。そもそも連日、東京湾や神戸港などにどれだけのタンカーや貨物コンテナが日本国内に入っていると思っているんだ? あと大きく騒ぎ過ぎたせいで、不要なワクチンまで高額で生産・購入する事になり、数がそろった頃には沈静化。今数えてみれば、通常のインフルエンザと比べて、死者数が突出して多かったわけでもない。煽られた者が大騒ぎしただけといえば、さすがに言い過ぎかも知れんが、無意味な入国制限も含めて、ピントがずれていたとは言わざるを得ない。」

鼎「庶民の視点と、関係者の視点では、結構差があるという事かも知れないよね。」

逆沢「麻生は、北朝鮮による人工衛星問題の時もそうだったけど、やたら庶民目線で国民を煽りまくった感じがするけどね。」

愛原「庶民目線は必要だ。だが我々庶民は毎日の生活で忙しく、無知なのはやむを得ないのだから、そこは専門家や関係者がしっかりフォローしなければならない。だが麻生の場合は、専門家や関係者の冷静な指摘を無視して、庶民をますます煽った。悪い意味での庶民目線そのものだ。」

逆沢「そういう悪い部分では庶民目線なのに、高級バーで飲みふけったり、ハローワークで職探しをする人を説教したりするところは全然、庶民的じゃなかったけどね。」

愛原「権力者の地位に立つと、庶民のつらさや叫びや不公平感に気付きにくくなる事がある。庶民目線ばかりだと、お上は万能だと思っているのか、何かある度に政権のせいにしてしまう事がある。今回のキャラ達は、その間のスタンスに立っている。といってもいわゆる愛国者気どりとか、そういう奴はほとんどいない。いやいや巻き込まれた者もいるし、私利私欲とまではいかなくても十分身勝手な言動をする者もいるし、その場の雰囲気に流されがちな者もいる。」

鼎「でもそういう人達を主人公にすると、すごくオチをつけにくくないかなー? 特定の悪を滅ぼす為に情熱を燃やすとか、好きな異性のハートをゲットするとか、そういう目的意識のあるキャラクターを中心にした方が、スムーズにエンディングに入れる気がするんだけど。」

愛原「それは認める。実際、それで苦労している。庶民気質の人間の多くは、エンディングを意識して毎日生活している訳じゃないからな。ある意味、だらだらと生活しているキャラクターにオチをつけてあげるのは並大抵の作業じゃない。まして魔王に匹敵するような、明確かつ巨大な悪が存在する世界観でもないからな。」









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