トップページに戻る


愛原様のたわごと(10年12月25日)





逆沢「今週、何回バージョンアップした? ちょっと多すぎない?」

愛原「うん。確かにあわただしい一週間であった。何しろ掲示板にてご報告のあったバグを潰してver1.05を公開して、アンケートを覗いてみたら、そこでもバグのご報告があってver1.06を公開してみたいな感じでだな。」

鼎「で、その後は、改めて新機能もつけたver1.07も公開してたりするよね。」

逆沢「どうせ新機能はいずれつけるつもりだったんだろうし、まとめて公開すれば良かったのに。」

愛原「うーん。それはそうかも知れんが、やはり不具合だけは、一刻も早い解消をしておきたかったからな。さして重要度の高くないバグなら後回しにしても良かったが、物語のしょっぱな部分に関わるバグとか、オプション関係の基本的なバグはさすがにまずいと判断させていただいた。」

逆沢「で、一通りバグを潰して、ようやく新機能搭載と。」

鼎「でも、新機能を搭載する度に、新しいバグが増えたりもするから、まだまだ油断できないよね。」

愛原「公開した時点では、これでバグは全部潰したと思いこんではいるんだがな。」

鼎「でも安易な思いこみは、すごく危険だよね。」

愛原「でも新機能をつける度に、一からテストプレーする訳にもいかないからな。それに作者が1週間かけてテストプレーするよりも、皆様からの温かいご報告をいただいた方が、はるかに迅速にバグ潰しが可能という実務的な側面もある。」

逆沢「まぁ確かにね。皆様のお力を借りたら、早ければたった1日でバグが見つかってしまう事も多いしね。」

愛原「プレイヤーの皆様の存在は、本当に偉大だな。全くもってありがたい限りだ。そして幸いにして、皆様からのご報告が非常に丁寧なものばかりという事もあって、バグを探したり潰すのに、何日もかかったというケースが今まで全くなく済んでいる点に関しても改めて感謝だ。」

鼎「そういえばアンケートの中には、他にもとても参考になる貴重なご意見が何件もあったよね。」

愛原「アンケートのご意見は、掲示板と違って匿名さがウリだから、俺の意思で勝手に内容をそのまま転載するのはさすがにまずいと思うが、色々うなづかされるご意見が何件もあって、本当に感謝している。」

逆沢「私から見たらここに転載してまずいようなご意見は、一件もなかったような気がするんだけど、それでも取り上げるのはまずいかな?」

愛原「内容的には本当に素晴らしいご意見ばかりで、俺も個人的には無問題と思うが、安易にそれをやってしまったら、【ここの管理人は、非公開メッセージまで無断で公開するような奴だ】って事で、それはそれで具合が悪くなってしまいかねないからな。なので【こういう趣旨のご意見があった】と触れる事はあっても、そのままコピペして転載するような真似は、さすがにしない事にしている。ああ、でもバグ報告を受けて直ちに対処したように、書き込まれた内容自体は丁寧に読ませていただいているし、可能な限り、色々反映したりもしているぞ。本当に感謝感激だ。」

鼎「早速、おまけのデータの結果も、投稿して下さった方もおられたよね。」

逆沢「各キャラクターの感想も丁寧に書き込んで下さったりとか、本当にうれしい悲鳴をあげたくなる思いね。」

愛原「プレイヤーによって色んな角度の感想がある事を改めて認識できたり、おまけが正常に表示されているか確認できたり、本当にためになっている。それ関係のネタも近い内にやりたいくらいだ。あと非公開メッセージ欄の中には、すごくためになるような、知的な指摘を下さってた方もいたぞ。」

逆沢「ああ、放射性物質関連のアドバイスとかも、あったあった。この豚に理解できるとは思えないけど。」

愛原「失礼な事を言うな。俺にも分かるような簡潔で分かり易い指摘だったから、多分だが大丈夫だ。ver1.071以降で誤字修正扱いで反映予定だ。」

逆沢「なんか非公開メッセージ欄の中身を、全部、このコーナーに流出させたくなってきたわ。某海上保安官みたいに。」

愛原「それだけはやめろ! いくらお前が【こんな素晴らしいご意見・ご感想は、公開することにこそ意義がある】と個人的に感じたとしても、それだけはやめろ! その為に掲示板と機能を使い分けているんだからな。非公開と約束したからには絶対に非公開! 信義の問題! いいか、絶対に勝手にネットに流出させたらダメだぞ。」

逆沢「あー、へいへい。でも今の発言で、多分、何割かの日本人を敵に回したわよ。」

愛原「俺の場合は、別にやましいから隠しているのではない。さっきから何度も言っている通り、それぞれのメッセージは全てちゃんと読ませていただいているし、参考にもさせていただいているし、それ以上に作者や俺達にとっても大変な励ましにもなっている。俺達の場合は、あくまで信義の問題。でも引用にならないちょいレベルで、ここでネタにする事は今後もありうるので、それもNGなら、その旨を一緒に書いていただければOKだ。」

鼎「ところで肝心のアンケートの統計部分からも、ある程度は傾向みたいなものが出だしてる感じみたいね。」

愛原「うん。今回の作品を公開するにあたって最も不安だったのは、悠久院を始めとするイタイ系のキャラを、プレイヤーの皆様がどう受け止めるかだったんだが。」

逆沢「イタイ系と言っても、今作のイタイ系は、単に変人奇人の類じゃなくて、プレイヤー自身にも直接刺さりかねない、ある種の皮肉めいた痛さがあるからねー。」

鼎「でもアンケートの傾向からしたら、プレイヤーの皆様は、悠久院さんのようなキャラクターに対しても、おおむね肯定的な感じだよね。【こういうキャラも、案外面白い存在であると思う】という評価にチェックを下さっている方も、すっごく多いし。」

逆沢「ムカつくキャラだけど、キャラとしての存在価値までは否定されていない感じみたいね。ただ、それにしても、何でまたこんなキツいキャラクターをあえて前面に出す事をしたわけ?」

愛原「どうしても凡人を前面に出したかったのだ。鬱ゲーにならない範囲で。」

逆沢「はぁ? 凡人? 悠久院なんかどう見ても、変人奇人そのものじゃない? まさかああいうキャラが、凡人キャラだとでも言いたいわけ?」

愛原「確かに悠久院は、他人の目を気にしない図太さと行動力に関しては、非凡人だ。だが【後ろ向きな嫉妬心の持ち主】という、既存のゲームキャラにはあまりないような性格設定が含まれている。」

鼎「ほえ? 後ろ向きな嫉妬心?」

愛原「そう。嫉妬心というのは、大きく分けて2種類に分けられる。英語で言うところのjealousy(ジェラシー)envy(エンビー)だ。」

逆沢「は? ジェラシーというのはよく聞くけど、エンビーって何よ?」

愛原「まぁ現実的な運用として、そんなに厳格な区別があるとも限らないみたいだが、ジェラシーというのは主に対抗心に基づくねたみ。エンビーというのは主に憎悪に基づくねたみだ。もう少し分かりやすく言うと、ジェラシーは【あんな奴に負けてたまるか】【いつか追い抜いてやる】といったライバル心・向上心を刺激するようなねたみ。羨望と言い換えてもいいかも知れん。対するエンビーは【あんな奴、地獄に堕ちればいいのに】【あいつはどうせ卑怯な奴だから】みたいな感情。自分の方が本当は立派とか正しいとか価値があるとか偉いと思いこむだけで、自分が努力して相手より上に立とうとする事なく、相手の悪口を言って相手の価値をおとしめたり、相手の不幸を喜んだりする感情。」

逆沢「ああ、なるほど。まさしく前向きな嫉妬と、後ろ向きな嫉妬の違いね。」

愛原「もちろんジェラシーとエンビーのどっちかしかない人間なんて、現実には存在しない。嫉妬の対象となる相手に対して、憎しみのかけらも抱かない人間などありえないし、逆に向上心のかけらもない人間もいないだろう。自分より成績のいいライバルを前にして、【俺ももう少し余分に勉強しなければ】と思いながらも、【コイツ、風邪でも引いてダウンすればいいのに】とも思ったりする人間も多いはずだ。」

逆沢「ああ、そう言ってもらえると、何となく分かり易いわ。」

鼎「でもゲームや小説や漫画の世界では、優秀な味方に嫉妬して、味方の足を引っ張ったりするような役割は、大体悪役で固定されているよね。」

愛原「でも現実世界では、エンビーの要素が全くない人間などまず存在しないと言ってよい。優秀なライバルが自分の前に立ちふさがれば、【そいつが事故にでも巻き込まれたら助かるのに】とか【仕事で大きなミスでもしてくれたらいいのに】とか【タチの悪い異性に引っかかってくれればいいのに】とか思う事も大なり小なりあるはずだ。」

鼎「そう考えると、ファンタジー世界の主人公側の人間は、本当に綺麗な心の人ばかりという感じがするよね。」

逆沢「逆に悠久院は、どう見てもエンビーの比重が高そうね。野々村コーチに何度も補習漬けにさせられる程、サボリの常習犯で、努力家タイプともいえなさそうだけど、それでも自分が愛国者だからという理由で、自分が偉いとすごく思いこみたがっているようなフシがあるし。」

鼎「確かに、他人を悪く言ったり、自分より相手を低い扱いにする事で、自分の優越心を満たそうとするような所はありそうかも・・・。」

逆沢「自分より上位の人には弱気なくせに、その分だけ、自分より下位そうな人にだけはやたら強気な所もあるしね。」

鼎「訓練でも、自分よりも運動神経の良くない人と一緒に訓練したがる所があるみたいだけど、これもそうする事で、自分の優越心を満足させられるからかなぁ?」

逆沢「野々村コーチは、逆に金村とかと一緒に訓練させる事で、そんな悠久院の慢心を打ち砕こうとし続けているみたいだけどね。」

愛原「悠久院のように、エンビーの割合がやたら高いキャラは、本来は悪役向きだ。だが現実世界の人間は、じゃあ悪人ばかりなのか? 俺はそうは思いたくない。確かに現実世界の人間は悠久院ほどには極端ではないにしても、十分エンビーな嫉妬心を持っている。特に今の日本人は、その傾向が強すぎるような気もする。かつて格下国家のように思われていた韓国や中国が躍進し、しかも努力だけで中国や韓国に完勝できるだけの戦略も目算も立たない以上、ジェラシーよりエンビーに気持ちが偏りがちな気持ちも十分よく分かる。チビは努力してもまず高身長にはなれないし、運動音痴が努力してプロスポーツ選手になれる可能性もまず無さそうだし、ブサメンが努力してもなかなかイケメンにはなれないし、貧乏人の家に生まれたものがセレブな生活をするのも極めて困難だ。努力しても(少なくとも並の努力では並にもなれない程度に)どうにもならない部分も多いのが現実世界である以上、人がエンビーな感情を否定する事もまず無理だと思う。」

逆沢「でも【努力してできない事は何もない】が少年漫画系の作品の定番である以上、向上心のあるジェラシーを抱くキャラクターが尊ばれ、他人の悪口を言ったり足を引っ張ることしか考えていないエンビー系のキャラがたたきのめされるのも、当たり前の気もするけどね。」

鼎「確かに努力だけで解決できる程、現実は甘くないけど、だからといって悪意で他人の足を引っ張る人が評価されていいはずがないよね。」

愛原「その通りだな。悪意で人の足を引っ張っていいはずがない。だが能力の足りない人、社会的評価の低い人、モテない人などが、全て本人の努力不足なのかといえば、それも違うと俺は思うんだ。悪意で人の足を引っ張って喜ぶような人間も下劣かもしれんが、自分より何かで劣る人を、その人自身の努力不足のせいにして見下すような人も、同様に下劣だと思う。人は残念ながら、生まれながらにして平等ではない。身体的特徴から家庭環境に至るまで、容易には埋めがたい大きな格差がある。平均的なアフリカ人が、平均的な日本人の暮らしをするのは、並の努力では極めて困難なようにな。」

鼎「そういえば新作の世界では、超能力という、決して努力で埋められない程の大きな大きな才能と運の格差があるよね。」

愛原「そう。主人公がどんなに努力しても、宮本や悠久院の能力を身につける事はできない。一生、超素質者として覚醒しないままの一般人も非常に多いだろう。新作の世界は、現実世界よりもはるかに、努力で埋められない格差が多くある世界観なのだ。」

鼎「それ、【努力してできない事は何もない】が定番の普通のファンタジー世界とは、ある意味、真逆の世界観だよね。」

愛原「うん。だからこそエンビー系の嫉妬心が、この世界観では当たり前のように幅を効かせる。超素質者は少数派である為、多数派である一般人からはどうしても厳しい扱いを受け易い。在日外国人や部落出身者が差別されやすいような構図でな。」

鼎「とすると、もし今後も超素質者に覚醒する者が増え続けて、超素質者の方が多数派になればどうなるのかなぁ?」

逆沢「逆に超素質者として覚醒し損なった一般人の事を、劣等遺伝子を持つ旧日本人として差別するような世の中に変わるかもね。」

愛原「京都市の場合はその伝統的な土地柄からヨソモノがやや低く見られがちな所があるが、、逆に東京都や神奈川県などは、ヨソモノの方が多数派になってしまってそれ相応の文化になってしまっている。それと同じような形で、適当に収まる可能性もあるけどな。」

逆沢「それは江戸っ子が東京都内に流入する移民を迫害しなかったからであって、もし江戸っ子がかつて移民達につらく当たり続けていたなら、今時、江戸っ子達は移民達によって、都外に追放されてるかも知れないわよ。人は迫害された恨みは、そう簡単には忘れないからね。」

鼎「でもエンビーな嫉妬心があるからこそ、人は人を見下そうとするし、それで差別がなくならないという事なのかも知れないよね。」

愛原「しかし人類の歴史で言えば、差別は間違いなく縮小している。人種差別。身分差別。男女差別。専制国家はより民主的な国家によって次々と打倒され、先進国の多くもより格差の少ない民主的な国の方が、そうでない国よりもはるかに多い。人類の歴史は、長い目で見れば間違いなく平等に向けて進んでいる。人類の良識も、そう馬鹿にしたものではないぞ。」

逆沢「けど差別は縮小しても、無くなる事は決してないと思うけどね。」

愛原「それは仕方がない。人間が人間である限り、エンビーな嫉妬心は決してなくならない。ブサメンにもモテたい欲求があるしモテる権利もある以上、イケメンを引きずり下ろしてやりたいと思っても、それ自体は何もおかしくない。まして【成功者は努力したから成功者なのだ。お前達は努力しないから失敗者なのだ。】的な論理を堂々と吐く人がなくならない限り、そうでない者によるエンビーな嫉妬心も絶対になくならないと俺は思う。」

逆沢「そう言えば悠久院君は、【地方が衰退しているのは、地方が努力しないからだ。自己責任だ。】的な論理も、どこかで言ってた気がするわね。」

鼎「テレビ番組でも成功者をゲストに招いて特集する事があるけど、大体、【彼は人一倍、こんなに努力したから成功した】って論調だよね。」

愛原「確かに努力の要素が全くないとは言わんが、世の中には努力はしても報われないワーキングプアもたくさんいるんだけどな。逆に鳩山や麻生は総理まで登りつめたが、俺にはとても彼らが、人一倍努力してたり、人一倍知力や判断力やリーダーシップに秀でた側の人間には見えないのだが。」

逆沢「本当に、人は生まれつき平等でないと思い知らされる思いね。」

愛原「それでも公平なものの考え方を尊ぶ三方監督とは異なり、悠久院の場合は始めから差別肯定論者だ。公平とか平等を尊ぶという考え方を共産主義的とはなから否定し、人は平等でないからこそ、【俺は負け組にはなりたくない。少しでも上を目指し勝ち組になってみせる】という思想を、彼は強く持っているのだろう。」

鼎「三方監督だったら、どちらかというと勝ち組も負け組もない、公平な世の中を目指しそうな気がするよね。」

逆沢「悠久院君は正反対ね。他人を押しのけても、勝ち組になってみせるという野心がギンギンだしね。その割りには努力したがらない性格というか、他人を差別したり、見下したり、引きずり下ろす事しか考えてなさそうな所が問題だけど。」

愛原「逆に差別されたり、見下されたり、引きずり下ろされるのは、大嫌いみたいだけどな。」

逆沢「アハハ。そりゃ人に謝罪させるのは大好きでも、自分が謝罪するのは大嫌いな性格みたいだしね。あと他人を働かすのは好きでも、自分が働くのは嫌いなところとか。あと目下に礼儀を強要したがる割に、目上に対する礼儀が全くなっていなかったり、色々ダブルスタンダードが酷すぎるというか。」

鼎「そのせいか、アンケートの結果でも、【キャラとしては面白いけど、人間としては好きになれないとか、友達にしたくもないタイプ】みたいな総評になりそうな感じだよね。」

逆沢「エンビーな嫉妬心が全開のキャラは、結局、悪玉キャラ要員にしかなれないって事なのかもね。」

鼎「幸い、悠久院さん以外の主要メンバーは、普通のファンタジー作品的というか、あまりエンビーなタイプのキャラはいないみたいだよね。」

逆沢「でも普通のファンタジーと比べると、心が綺麗なキャラの割合は低そうな気もするけどね。鈴木さんにしても小谷さんにしても、なんか腹に一物くらいは持ってそうだし。」

愛原「もちろん鈴木や小谷はおろか、服部や宮本らにしても、エンビーな嫉妬心は普通に持っている。ただ悠久院が良くも悪くも反面教師として目立ちすぎているため、その影に隠れてしまっているだけだ。」

逆沢「【こんな人間にだけはなりたくない】という分かり易い見本がいるから、自制心が無意識の内に働いてしまってるだけのような気もするけどね。」

愛原「うーん。言われてみれば、そうかも知れないな。悠久院は悠久院で他の仲間を見下して自尊心を保っているが、他の仲間は他の仲間で、日頃から問題行為ばかり繰り返す悠久院を見下せる事で、内心で安心しているかも知れない。例えば服部も悠久院同様、かなり無礼なキャラであるが、悠久院の方が輪をかけて無礼なキャラの為、その欠点が目立たずに済んでいるし、【悠久院の無礼な態度が許されるなら、自分も少しくらいくつろいでも問題ないだろう】くらいには、思っているかも知れないしな。」

鼎「鈴木さんも、【悠久院先輩も一度戦場から無断で逃げ出したし、自分も一度くらい構わないだろう】と思った可能性はあるよね。」

逆沢「他のメンバーも、どちらかというと慎重よりは大胆なタイプが多いけど、それも【仮に調子に乗りすぎて任務に失敗しても、自分の評判が悠久院より下がることは無いだろうから】という安心感があっての事かも知れないしね。少々無茶をして周りに迷惑をかけても、【もっと無茶で迷惑な奴がいるから安心】という心の油断があるかも知れないし。」

愛原「悠久院の存在が、組織の緊張感をユルユルなものにしてしまってる可能性があるな・・・。良くも悪くも、すさまじいムードメーカーぶりだとは改めて思ったな。」

逆沢「ただこうしてみると悠久院って、単純に奇人変人タイプとはいえない気もしてきたわね。」

鼎「むしろ綺麗な心を持ったファンタジー世界の主人公の仲間達よりも、ずっと生々しいくらいの凡人だったのかも知れないよね。」

愛原「エンビーな発想というのは、今の日本人を語る上で絶対に切り離せない要素だと思う。そして他人をいたずらに馬鹿にしたり非難したりして見下す行為が良いとも思えないが、だからといってそれを全面否定もできないのが、今の日本の現状だとも思う。変に自信喪失して諦め根性になって、みんなが自暴自棄になったり、逆にうつ病になってしまっても困るしな。あと努力至上主義というか、変な精神論者が再び闊歩して、また無謀な戦いを仕掛けて一億玉砕するような国に戻っても困る。」

逆沢「取り扱いが難しい感情ね。エンビーな嫉妬心というのは。」

愛原「実は悠久院とは、その後ろ向きの嫉妬心を象徴としたキャラなのかも知れない。彼が奇人変人に見えるとすれば、それはむしろ人並み外れた行動力と、他人の目を気にしない性格の方が原因だろう。」

逆沢「あー。なるほどね。今の日本人は、表向きは【いい人】系も多そうだもんね。草食男子とか。」

鼎「昔、KYって言葉もはやったよね。空気を読めない人を馬鹿にして、空気を読める事が大事という風潮もあったから、それで他人に迎合するというか、事を荒立てないような影の薄い人が余計に増えてしまった感じもありそうだよね。」

逆沢「悠久院に限って言えば、まさしくKYそのものね。空気の読み方が根本的におかしいというか、かなりヤバいし。」

愛原「琴引浜でのイベントで、服部が悠久院の事を【ネット右翼】呼ばわりして、悠久院がそれに怒るシーンがあったが、彼は確かにネット右翼そのものではないと思う。ネット右翼がネットの中だけ強気で、現実世界ではそのそぶりも見せたがらないのと異なり、悠久院は自分のイデオロギーを普段から全く隠そうとしないからな。むしろ堂々と布教活動までするくらいだし。」

逆沢「確かに悠久院は、いわゆるネット弁慶ではないわね。その点だけは、ちょっと尊敬しなくもないわ。はっきり言ってウザイけど。」

愛原「うーん。それにしてもやはり、唯我独尊系の男キャラは駄目なのかな? 美少女キャラなら、突然空から降ってきて、人の家に勝手に居候を始めるくらいの厚かましさががあっても、OKらしいのに。涼宮ハルヒから今年ミリオンセラーになった【もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら】のヒロインに至るまで、強引な女性キャラが周囲をやりたい放題でかき回すような展開は、大抵萌えの対象になるはずなのに。」

逆沢「あはは。まさか悠久院が萌えキャラになるとでも。冗談は顔だけにしとけって感じだわ。」

愛原「強引で迷惑な性格の女はOKなのに、同じ性格の男は駄目なのか?」

逆沢「じゃあアンタは、悠久院が空から降ってきて、勝手に人の家に住み着いて、言いたい放題したい放題、ついでに布教活動と異教徒の弾圧活動などのワガママぶりを始めても、それでOKなわけ?」

愛原「うっ・・・それはっ!!」

鼎「ハルヒやもしドラのヒロイン達も悠久院さんも、積極的な布教活動(勧誘から啓蒙活動まで含む)を好む宣教師タイプという点では同じタイプの気がするけど、なんか評判の差が歴然すぎる気はするよね。」

逆沢「邪教だからじゃないの? エンビーな嫉妬心が根底にあるような汚い信教に同調できるのは、岸和田の山本さんみたいな、元々同じようなメンタルを持ってる人間だけだと思うし。」

愛原「何度も言ってるが、エンビーな嫉妬心自体は、どんな人間も持っている。一人の人間が【あいつ、調子に乗ってムカつくよな】と言えば、それに同調する人間も、実は結構いるはずだ。もちろん俺自身も含めて。」

鼎「つまり悠久院さんの唱える思想に同調したくなる人も、実は意外ともっといてもおかしくないって事かなぁ?」

逆沢「ただ悠久院の場合は、せっかく勧誘に成功しそうな人まで、見下して馬鹿にする傾向があるから、それで嫌われやすい気もするけどね。」

愛原「まぁそれでも、イケメン系の脇役キャラが登場する度に宮本と歩調を合わせてエンビー丸出しのセリフを吐き回ったり、シーンによってはハイタッチまでし合うなど、弱者間で連合を組んでる時は、それなりにうまく協調してるみたいだけどな。」

逆沢「ああ、そういえば、細田先生とか野々村コーチとか、苦手な上役のいる部屋に行く時は、必ずと言っていいほど、主人公や宮本達を一緒に引き連れていきたがる所もあったわね。日頃は、横の連帯を否定するようなイデオロギーを持ってるくせに、実際の行動が全く一致していないというか。」

愛原「嫉妬心とは、【相手の方が内心で上だと自覚し、うらやましいと思うから発生する】感情だ。だがエンビーな嫉妬心になると、【それでも本当は、自分の方が偉いんだ】と思いこみたがるという別の心理状態が同時に付随する形になる。つまり【自分の方が本当は上だと思いこむ】心理と、【相手の方が上だと認めざるを得ない】という矛盾した2つの心理が根底に共存した状態という事になる。」

逆沢「悠久院の思想と行動が、何かにつけて矛盾だらけなのは、もしかしたらそれが原因かも知れないって事ね。」

愛原「自分の方が上だと思いこめば、格下の者が連合を組んで上の足を引っ張る光景が醜く映る。格下の者は努力をしない怠け者だとも言いたくなる。だが実際には自分の方が下なので、【格下にいるべき者が上にいる】光景を目にする度にすごく腹が立ってしまう。何とかそいつらの足を引っ張りたくなってしまう。」

鼎「そういう人間は、自分より強い人間に逆らって報復されてもいやだから、自分より弱い人間に八つ当たりする事で、自分が偉いと思いこむ場合もあるよね。」

愛原「うん。そういう傾向もあるな。本当なら自分をいじめる上の奴を懲らしめたいのだが、それだけの戦略も勇気もない。しかし【自分は本当は偉い】という気持ちも守りたい。そんな時に自分より弱そうな相手を見つけて、【俺が不当な地位にいるのは、こいつらのせいなんだ】と思いこんで、自分より下位の者に冷たく当たる。エンビーな嫉妬心の持ち主は、こういう思考方法も非常に好む。努力して上をギャフンと言わせる事ができない以上、上には適当におべっかを使ってやり過ごし、そのストレスを下の者にぶつける事で晴らそうとする。本当は自分より上の者が努力だけで成功した訳ではない事を知っているが、あえて努力至上主義を肯定する事で、上の歓心を買い、下を攻撃する材料にもする。努力至上主義を肯定すれば、【ムカつく目上に抵抗できない情けない自分】を【あの人は本当は自分より努力してるから】と納得させられるし、逆に目下の者に対しては【あいつは努力もしないクズだから】と理由を付けて迫害して、ストレス発散の道具にする事もできるからだ。」

逆沢「うわぁー、嫌な感じ。性根の腐った情けない奴の典型例ねー。そういうの。」

鼎「正統派の少年漫画などでは当たり前の【努力してできない事は何もない】主義の裏側を見てしまった感じだよね。」

愛原「【あいつは努力しないからだ】という論理で、弱者を容赦なく切り捨てる世の中というのは怖いものだ。人は元々平等ではないのに。」

鼎「でも人を見下すには絶好の理由だよね。努力のせいにするのは。」

逆沢「逆に【あいつは大した努力もしていないのに、親の財力だけであんなに出世をしやがった】という風に、ねたみ見下す理由にも使えるわね。」

愛原「悠久院の場合、親がそこそこお金を持っていたり、大都会出身であったり、回復能力者特権を持っていたりと、人より恵まれた部分もかなりある。その一方で、それだけ恵まれたスタート条件にありながら、その割りにはみんなに好かれていなかったり、ヘマばかりしてカッコの悪すぎる自分も知っている。恵まれたスタートを切りながら、それにふさわしいだけの結果を残せていない。そんな自分に対する焦りも、少しはあると思う。」

逆沢「ああ、それがエンビーな嫉妬心につながっちゃうわけね。本当なら成功して当たり前のはずの自分が、なぜか上手くいかない。それはきっと足を引っ張る他人や社会風潮のせいに違いないと。」

愛原「自分より下位にいたと思われる存在に、どんどん追い抜かれるのは本当に悔しいことだ。国単位でみても、今の日本はまさにそんな感じだ。経済力からスポーツのメダルの数まで、日本の相対的地位はどんどん落ち込む一方だし。しかも自分一人の努力だけで、その屈辱的な状況が改善できるような気配もないのが、また悔しい。」

逆沢「でも誇りだけは失いたくない。その気持ちがエンビーな嫉妬心につながるわけね。」

愛原「エンビーな嫉妬心自体は、悠久院だけのオリジナルだけではなく、俺自身も含めて、おそらくどんな人間にも備わっていると思うし、彼の心境が全く理解不能という人も少ないだろう。だが後ろ向きな感情である事には変わりなく、【自分が偉い】と思いこんでもそれだけで実際に偉くなれる事なんかまずないし、人を馬鹿にしたり見下せば、その分余計に嫌われるだけで、おそらくいいことはほとんどない。それ故か、少年漫画などではこの手のキャラは(一部の悪役を除いて)そんなに多く登場する事もない。正直、戦々恐々のキャラだったが、寛大なプレイヤーに恵まれて本当に感謝する思いでいっぱいだ。」











トップページに戻る