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愛原様のたわごと(11年1月7日)




愛原「事実上の制作後記が続いてるわけだが、今回もその続きをやりたいと思う。」

逆沢「は? その前に言わないと駄目な事があるでしょうが?」

鼎「【明けましておめでとう】と言うのを忘れてるよ。」

愛原「とっくにお正月なんか過ぎてるじゃないか? 今、そんなことを言ったら、まだ正月ボケが続いているのか?とか言われかねないぞ。少なくとも作者にとっては平常モード。製作活動も平常モード。もっとも新規イベント作成と、誤字・脱字潰しを平行してやってるのが現状だが。」

逆沢「ところでこっそりver1.081になってる上、更新履歴が空白なんだけど、これは新手のバグなの?」

愛原「一部の誤字・脱字などを含めたテキスト改変処理のみなので、ver1.09ではなくver1.081という形にした。一応、該当のページの冒頭にも触れているが、誤字脱字の類は常にあちこちで更新してるから、いちいち触れない事にしている。ちなみに今回のように千分の1の単位のバージョンアップは、こういった小さなバージョンアップのみの際に使用する事にした。よってプレイヤーの皆様からすれば、余程神経質な人を除けば、いちいち急いでバージョンアップする必要もない。その程度のバージョンアップな。」

鼎「またバグが増えてたりはしないかなー?」

愛原「うーん。常識的に考えれば一部のテキストが変更されているだけなので、バージョンアップに伴う新たなバグはないと思ってはいるが。」

鼎「下手に仕様変更すると、バージョンアップしているつもりが事実上のバージョンダウンになってる事も多いから、油断できないよね。」

愛原「まったくだな。色々痛恨の極み。穴があったら入りたいような、恥ずかしい心境でもある。ついでにいうと、誤字脱字は、まだまだたくさん残ってるはずだ。見つけ次第どんどん潰す方針だが、こればかりはローラー作戦になってしまうので、まぁぼちぼちという事でご了承願いたい。」

鼎「新たなイベントも作っているという事だけど、それは反映予定はないの?」

愛原「ver2.00になったら、その時にまとめてどかーんと追加する。それ未満のバージョンでシナリオの追加予定はないぞ。どの程度のボリュームや方向性になるかは、アンケートや掲示板から頂いたご意見にかなり左右されるとは思うが。」

鼎「素晴らしいアイデアのご意見もあるけど、いくつかは放置モードになってる気もするんだけど。」

愛原「技術的に不可能とまでは行かなくても、手間がかかるものに関しては、ご意見の数や要望の具体性などを勘案しながら、優先順位をつけて処理せざるを得ないのだ。政治の世界でいうところの、【予算に限りがある以上、一度に全ての要望を満たせない】のと同じ道理だな。俺達の場合は、予算以上に時間と人手に限りがありすぎるので、そういう意味で優先順位をつけざるを得ない部分はある。」

逆沢「でも難易度とか、根幹部分に関して言えば、今の所はそんなにいじる必要はあまりなさそうね。アンケートの結果を見る限り、現状では。」

愛原「トータルでは平均か、それよりやや簡単めくらいに収まっているみたいだな。もっともバランス型かそうでないか、最後までプレイしたかまだ途中かなどで、少しブレがありそうなので、もう少し母数を多くした上で最終判断したいというのが本音だが。」

鼎「キャラクターに関する感想でも、徐々に幅が出だした部分もありそうだよね。」

愛原「中にはかなり長文の感想を送って下さる方もいて、まことに感謝感激だ。文字数制限があるアンケートで、すごく手間をかけられたんだろうなという感動もののコメントもあったが、そういった肝いりの長文から、核心部分を見事に一行に凝縮して突いてみせたような一言コメントに至るまで、全て大切に読ませていただいている。中でも最も【おっ!】と思ったのは、鈴木さんに関する感想でだな。」

逆沢「鈴木さん。そんなにメインタイプのキャラじゃないのに、結構長文コメントでとりあげられる比率が高いみたいね。」

愛原「研修施設編では、かなりマイナーキャラだったんだがな。」

鼎「でも本人の目立ちたくない性格とは裏腹に、本編では徐々に存在感を発揮しだした感じのあるキャラだよね。」

逆沢「逆の意味で、存在感は確かにありそうね。普通は積極的な性格のキャラほど目立つんだけど、鈴木さんの場合は数少ない消極的性格の持ち主として。まぁ流されそうな性格にみえて、必ずしもそうじゃないあたりは、結構油断できないなぁとも思ったけど。」

愛原「いいところに気付いたな。通常の場合、消極的な性格とか、臆病な性格とか、そういうメンタルの持ち主は、たいていの場合、周囲の雰囲気にのまれやすい。ていうか鈴木もまた、ゲーム開始当初はまさにそんな性格で、それであるが故に気がついたら、服部らに誘われるがままに、本人も想像していないような展開に巻き込まれてしまっている。」

鼎「でもそんな巻き込まれ型キャラクターである鈴木さんも、徐々に自分の意思を明確にするように変わってきているような気はするよね。」

逆沢「現実世界では、鈴木さんのようなメンタルの持ち主は多数派のような気もするけど、支部の中では少数派そのものだからね。多数派に所属している時なら目立たずにおとなしくしていても良かったんだろうけど、自分がとんでもない少数派になってしまった以上、黙って周りに合わせていたら、大変なことになると思い始めたんじゃない?」

愛原「という訳で今回のテーマは、【異世界に飛ばされた凡人】だ。」

逆沢「おいおい。大阪は異世界かよ♪」

愛原「そういう意味じゃない。もっと広義にとらえてほしい。たとえばファンタジーの世界では、現代社会で生活していたはずの高校生あたりの若者の主人公が、突然中世ファンタジーの世界とか、あるいは過去の時代とか、今までと全然違う世界に飛ばされるタイプの物語がいくつもあるだろう。」

逆沢「ああ、あるある。本当に数え切れないくらいあるわね。何もオタク好みのファンタジー系だけじゃなく、例えば十五少年漂流記とかも今までの平穏な生活から無人島という異世界に飛ばされたと解釈すれば同じようなものだし、戦国自衛隊みたいなとんでもない映画などもあるし、色んなパターンが考えられるわね。」

鼎「でもどんな作品でも大抵、主人公達は、異世界でもたくましく生き抜けたりするよね。」

逆沢「生き抜けるだけじゃなくて、その異世界で救世主扱いされたりして、気がついたらヒーローになってるパターンが多数派の気もするわね。」

愛原「まぁそれを言ったら、ダメな小学生ののび太君ですら、大長編で異世界に飛ばされる度にヒーローに早変わりするからな。」

逆沢「どんなダメな小学生でも、どんなつまんない高校生でも、異世界ではみんなヒーローになれてうらやましいわぁ♪ 私達も中世ヨーロッパあたりにタイムスリップしたら、英雄として奉られるんじゃない。ライターで火を付けてみせるだけでも、神様扱いされたりして。」

愛原「そんな事したら、魔女狩りの対象になって、速攻で拷問されたあげく、処刑されそうな気がするのは俺だけか?」

鼎「風土と衛生環境の違いから、ペストとかにかかってすぐに死んじゃう可能性も否定できないよ。」

逆沢「トイレの概念すら、全然違うからね。ていうか水の重要性自体、全然違うし。」

鼎「異世界に飛ばされたら、どんな凡人でも大活躍できるなんてのは、もしかしたらとんでもない妄想かも知れなかったって事かなぁ?」

逆沢「まぁ無人島で生き延びる事すら、口で言うほど簡単じゃないしね。そもそも食用キノコと毒キノコの区別すらつかないかも知れないし、火をおこす事自体、実は結構大変だから。」

愛原「個人的には、戦国時代にタイムスリップして武将として大活躍したいとか、織田信長と顔見知りになってみたいとか、そんな事を妄想したりもするのだが、もし現実に戦国時代にタイムスリップしたら、高確率で飢え死にするか、変人扱いされて悲惨な末路を辿るか、まぁ少なくとも凡人では生き延びる事すら困難な気もするな。」

鼎「異世界とまで言わなくても、生活環境が変わるだけでも結構、苦労する事って意外とあるよね。」

愛原「鈴木さんのポジションは、ちょうどこの【異世界に飛ばされた凡人】そのものだともいえる。まず超素質者として覚醒した事で、本来の平穏な人生設計が狂わされ、さらに服部らに引っ張られて第二公安課に配属される事で、またもやとんでもない方向に人生を曲げられた人間とも言えなくはない。」

鼎「でもそれを言ったら、鈴木さんだけじゃなくて、服部さんも宮本君も他のメンバーも、みーんな超素質者に覚醒した時点で、同じ条件だよね。」

逆沢「確かにそうね。ある意味では鈴木さんだけが、一種の適応障害に陥ってしまってるだけかも知れないって事かな?」

愛原「人生。思い通りにいくことの方が少ない。プロ野球選手になりたい、国会議員になりたい、アイドルとして大成功したい、玉の輿に乗りたい、年収一億円くらい稼ぎたいなど、妄想するのは自由だが、その通りになる人などほとんどいない。それどころか【高望みはしないから、とりあえずそこそこの大学を無事卒業したい】【欲は出さないから、とりあえずそこそこの会社に就職したい】【選り好みはしないから、とりあえず結婚したい】と思っても、それすら思い通りにならないくらい、今の世の中は思い通りにならない事だらけだ。人生設計が狂う事くらいは、むしろ当たり前なんだけどな。」

逆沢「確かに、それはいえるわね。とすると、鈴木さんの場合は、ただのワガママなのかな?」

鼎「でもそう責めきれない部分もあると思うよ。鈴木さんの立場からしたら、【自分は何も悪いことはしてないのに、何でこんな大変な目に遭うのか】とか思っても、不思議はないと思うし。」

逆沢「他力本願で生きてきた罰とも、私は思うけどね。悠久院にしろ服部さんにしろ、彼らは与えられた条件内で自分の意思と積極性をもって自分の生き方を選んでみせたけど、鈴木さんはあまりそういう感じはなさそうだし。」

愛原「物語序盤の鈴木は、【他人に依存して生きる】タイプの人間として登場する。吉岡のセリフではないが、困った事があったりすると、まず哀願光線を出して、誰かに何とかしてもらおうと考えるタイプだな。」

逆沢「で、面倒見のいい服部さんあたりなら、そういう目ですがられると、何とか一肌脱ぎたいとか思うわけね。宮本とかなら、もっとてきめんに、鈴木さんのために張り切りそうな気がするけど。」

愛原「かつて小泉純一郎が総理だった時に、【涙は女性の最大の武器だ】と言ってた事があるが、実際に女の人が瞳をうるうるさせてお願いポーズを取ったりしようものなら、それにクラッと来る男は多いかも知れない。女でも服部のような姉御肌の持ち主には、それなりに効果的かも知れないな。」

鼎「あれ? でもその割りには、物語が進むにつれて、鈴木さんはいつの間にか哀願光線を使わなくなってきてるよね。これはどうしてかな?」

逆沢「ってか、大阪支部に哀願光線がまともに効きそうな人間自体、ほとんどいないような気がするし、それでじゃない? あえて効きそうなのは、服部さんと宮本君と悠久院くらいだけど、服部さんは自分を第二公安課に引っ張り込んだ張本人だけあって、暴走する危険があるし、宮本や悠久院に関しては、変に色目を使うと脈有りと勘違いされて、後でうっとおしくなりそうと思った気もするし。」

愛原「そして大阪支部で最も力のある監督とコーチが、二人そろって哀願光線を無効化できるタイプというのが、大きいかも知れんな。」

逆沢「特にコーチに関しては、伊丹の本部の特別訓練場で【お前は内心で人を差別するタイプなのか?】と、ずばり鈴木の本質部分に斬り込んできたくらいだしね。」

愛原「コーチは、ああ見えても、相手の性格を把握する能力が非常に高い。鈴木の必殺技をレベルアップするイベントなどでも、鈴木が【すぐに錯乱気味になる臆病な性格だが、自信さえもたせれば才能的には十分】な事を正確に把握した上で、適切な訓練方法を提示してるしな。そんなコーチに、哀願光線なんて小手先の技が通用するはずがない。」

逆沢「監督も穏和そうにみえて、駄目なものは駄目とはっきりいうタイプだしね。」

鼎「そういえば、吉岡さんも哀願光線をはっきりと嫌っていたし、そう考えると、大阪支部内では哀願光線が全く役に立たない特別な空間だったと言えるかもしれないよね。」

愛原「そう。つまり今まで哀願光線を武器にして人生を乗り切ってきた鈴木にしてみれば、突然にして哀願光線が全く効かない異世界に飛ばされた感じになるわけだ。」

逆沢「うっ、これはキツい。自分の得意技が一切効かない世界に、いきなり飛ばされるなんて。」

愛原「今までの価値観が通用しない世界に飛ばされるというのは、結構つらいものだ。ちなみに百戦錬磨の三方監督ですら、そういうシチュエーションを過去に体験済みのようだぞ。」

逆沢「へ? そんなイベントあったっけ?」

愛原「三方監督が第二公安課で最初に配属されたのは、関東管区の相模原支部だ。ここは愚連隊の異名を持つ支部で、ネタバレになるから、これ以上は言わないが、お前達なら言いたい事は分かるな。」

逆沢「あー、はいはい。分かった分かった。確かに相模原支部のあの雰囲気は、真面目な三方監督とは、明らかにソリが合いそうにないわね。」

愛原「価値観の合わない異世界に飛ばされた時、人はどうすべきか? これは非常に大きな問題だ。もちろんどんな環境にでもうまく適応できる者なら、それに越した事はない。だが適応できない。もしくは適応したくないという事も世の中にはあるわけだ。」

鼎「もし上司に犯罪をやるよう勧められたらどうするか?みたいなノリだよね。」

逆沢「そういえば、北陸管区の福井支部でも、それに近いシチュエーションはあったわね。テロに荷担すべきか否か? 福井支部の佐藤君の場合は確か、自分が参加しなかった場合、保谷ひばりあたりが何をしでかすか分からないと理由で、やむなく参加してたみたいだけど。」

鼎「自分の置かれた環境が突然変わって、しかもそれに適応できなかった場合、すごく困っちゃうよね。」

逆沢「最悪の場合は、相模原支部のメガネさんみたいになっちゃう事もあるしね。」

鼎「鈴木さんの場合は、大阪支部のどういう部分が気に入らないのかなぁ?」

愛原「単純に危険な労働環境が嫌みたいだな。それと【自分は無理矢理ここに連れてこられた】という一種の被害者感情を根底に持っているみたいなので、仮に労働環境がどれだけ改善されても、もしかしたら不満はどうやっても解消されない可能性もある。被害者感情と言うのは結構厄介で、一度深く根付いてしまうと、そう簡単には払拭できないからな。」

逆沢「それじゃ研修施設に送り返すしかないって事か?」

愛原「まぁ、時間が解決するんじゃないか? 何の根拠もないけど、俺はそう思ってるけどな。少なくとも相模原支部のメガネさんみたいに、脱走したいとまでは鈴木さんも思ってないようだし、支部のメンバーも基本的にはそんなに嫌ってはいないようだし(一部除く)。」

鼎「鈴木さんは、結構、ミーハーな所があるから、もしも鈴木さん好みの悪っぽいイケメンが大阪支部に加入したなら、すぐに不満は解消しそうな気はするけどどうかなぁ?」

逆沢「おおっ。それはいい! すぐにでもチョイワルのイケメンを、大阪支部に加入させろ。これで問題は解決だ。」

愛原「ないない。そんな予定は一切ない。まぁそんな事はしなくても、鈴木さんは見た目よりもたくましいから、心配はいらん。」

逆沢「は? たくましい? あんなに臆病者なのに。」

愛原「鈴木さんは、一見すると哀願光線をすぐに出す他人依存系だが、哀願光線が全く効かない環境に置かれた途端、彼女はどういう行動に出たか? それをちょっと考えてみて欲しい。少なくとも他のメンバーの言いなりになって、ただいい子ちゃんにはしてないぞ。」

逆沢「ああー、言われてみたら確かに。始めの頃は宮本にも【真面目】と評されてたけど、いつの頃からか、嫌なことは嫌とはっきり口にするように変化してるわね。みんなが手を上げてる時に一人だけ手を上げないシーンもあるし、見た目よりも雰囲気に流されないタイプって思ったわ。」

鼎「雰囲気に流されないって、意外と難しいよね。みんなが【カラスが白い】と言えば、嫌われたり浮いたりしないようにとりあえずそれに同調する人も、世の中には多いのに。」

愛原「鈴木は、本来は他人依存型だけあって、元々は他人に流されやすい性格だった。だが他人に振り回される生き方を、本人も無意識の内に改めていった可能性がある。このまま他人に依存して流され続けていては、命がいくらあっても足りないと思ったのかも知れない。」

鼎「つまり鈴木さん以外の仲間が、みんな大なり小なり冒険者タイプなのに対して、鈴木さんだけはあくまで小市民タイプとして生きていく気持ちを優先したって事かなぁ?」

逆沢「まぁよくよく考えたら、研修施設にいた頃から、鈴木さんは元々保身主義者だった気もしてきたわ。服部さんが宮本に制裁を加えようとしていた時も、【え・・・。私、今回もセコンドつくんですか?】とか【わたしは本当に、何も知らないですよ・・・。】とか、結構、面倒な事に首を突っ込みたがらないような、友達甲斐のないセリフを吐き回っていたし。」

鼎「あ、そういえばそうだよね。とすると鈴木さんの本当の性格は、あくまで無難主義とか保身主義とか非冒険主義みたいなのが根底にあって、他人依存型というのも、他人に依存して他人を矢面に立たせる事で、自分が火の粉をかぶること避けようという意図がこめられてたって事かも知れないよね。」

逆沢「でも大阪支部に配属されてからは、他人依存型のスタイルのままでは自分の身を守りきれないと判断して、それで徐々にチェンジしたというかも知れないわね。」

鼎「もし鈴木さんの思想の根底が非冒険主義なら、冒険好きな他のメンバーとは、まさしく水と油って気がするけど、これはどうかなぁ?」

愛原「暴走を食い止められる可能性を考えたら、ブレーキ役がいる事自体は意味があると思うけどな。ただ現時点では鈴木の力を借りるまでもなく、三方監督がバランスよく組織を制御している状態だから、鈴木の存在は意味もなくブレーキばかりかけまわる存在にしかなっていない所が少し痛そうだ。」

逆沢「まぁそれを言ったら、悠久院の場合は、意味もなくアクセルばかりふかしまくって、いらんトラブルを引き起こしているから、おあいことも言えそうだけどね。」

鼎「もしも悠久院さんと鈴木さんの二人がいなかった場合、大阪支部は三方監督の完璧な制御の元、かなり模範的な支部になってた気もするよね。」

愛原「ただ三方監督の思想は、ポートアイランドのイベントでも触れた通り【誰かの言いなりになって馬車馬のように働きたくないのなら、ちゃんと自分の意見を持て】というタイプだからな。三方監督自身は、軍隊の兵士みたいな、ただ忠実なだけの部下は、元々欲しがってない所がミソだ。」

逆沢「あー、そういえば、三方監督は軍隊教育風の指導方針を、はっきりと嫌っていたわね。確か。」

鼎「それで三方監督は、悠久院さんや鈴木さんが少々のワガママを言っても、それなりには寛容だったって事かなぁ?」

愛原「鈴木さんにとってみれば、大阪支部の環境は、今までの(彼女にとっての)常識が通用しない異世界なのは間違いない。が、そこを仕切る三方監督自身が、鈴木の主義主張や立場をそれなりに尊重している点は、それなりに重大だとは思う。これが福井支部や相模原支部なら、とてもそう単純ではなかっただろうからな。」

逆沢「確かにね。服部さんですら、相模原支部の環境を聞かされた時には、露骨に嫌な反応をしていた程だし。」

鼎「モチベーションが元々すごく高い吉岡さんですら、相模原支部の環境を聞かされた時には、置かれた環境の重要性を再認識したと改めて言ってたくらいだよね。」

愛原「元々、やる気満点の吉岡でも、もし最初に配属されたのが相模原支部だったなら、モチベーションをいきなりくじかれていた可能性は高かっただろう。相模原支部出身でもある三方監督はそれを知ってるから、鈴木のモチベーションが低くても、それを理解してあげられたという事かも知れない。」

鼎「確か本編序盤の青イベントで、吉岡君が【自分から希望して入った職場に、やる気を感じるのは当然ではないのですか?】と言ったのに対して、三方監督が【意外と、当然ではないのですよ】と返してたシーンも確かあったよね。理由もつけて。」

愛原「入った職場が、必ずしも予想通り、理想通りのものとは限らない。そこが自分の予想を超える、不快な異世界だったという事もあるだろう。そういう状況に置かれた時、どうするか? その人その人の人間性が問われる場面だ。」

鼎「鈴木さんの場合は、とりあえず周りからどんな風に見られようと、とにかく生き残る事を優先したって感じだよね。」

逆沢「昔の鈴木さんなら、周りの目を気にし過ぎるくらい他人依存型だったのに、えらい吹っ切れ方ね。」

愛原「別に吹っ切れたわけではない。前にも触れたが、例えば鈴木の必殺技強化イベントでは、相変わらず、他人の目を気にする臆病な自分が前面に出ている。ただ気が動転すると、自分のことで精一杯になって周りのことが何も見えなくなってしまうだけの話だ。普段は周りの目を気にしていい子ちゃんを演じるような性格だが、自分の身が危険な状態にさらされると、周りのことが逆にどうでもよくなる。そんな感じ。」

逆沢「でも自分さえ生き残ればいいと考えているなら、それはそれで問題な気もするけどね。」

愛原「そこは本人の視野の狭さと経験不足もあるだろうな。あと鈴木は服部以外のメンバーとは、基本的に何の接点もない。つまり服部以外のメンバー全員が、ある意味【赤の他人】であり、赤の他人を簡単に信用できるはずもないという一種の警戒感もありそうだ。」

鼎「あ、そうか。主人公の場合は、リーグ戦を通じて2年生のみんなとも仲良くなっているし、徳田さんや宮本さんや金村君や服部さんらとも元々仲間とかライバル関係で親しい状態のまま、支部に配属されているからいいけど、鈴木さんはそうじゃないから。」

逆沢「あ、そうか。今まで全然気付かなかったけど、そういやそうだわ。2年生のメンバーは、鈴木さんからしたら、完全に赤の他人そのものだし。宮本の事も好きでないみたいだし、主人公や徳田さんの事も、その宮本の仲良しルームメイトでしかないわけだから。」

愛原「そういう事。服部の場合は、元々情報通である上、誰とでもすぐに仲良く(?)なれるような性格だから、そんな事は気にならないようだが、鈴木は服部と比べると、はるかに人見知りもしやすい性格だしな。」

逆沢「それは比べる相手が、悪すぎるわ。服部さんは、初対面の国会議員相手でも、平気でタメ口利いてデュエットやるような強者だし♪」

愛原「ちなみに鈴木さんに対する感想だが、実はプレイヤーの皆様ごとにかなり差があってだな。自分の身さえ良ければという部分が嫌いだというご意見もあった。その一方で、共感できて好きだというご意見もあった。」

逆沢「鈴木さん一人だけ、大阪支部独特の雰囲気に染まらず、正常を保っているご意見もあったわね。」

愛原「何が正常かは、これは人それぞれだろう。今までの価値観が通用しないような異世界に放り込まれた時に、その地の郷に従うのが当然ともいえそうだし、逆にそれでもあくまで自分の価値観や誇りを守り通せる事が大事ともいえそうだ。また三方監督が率いる大阪支部と、タバコ支部長が率いる相模原支部とでも、置かれた状況は全然違うと思う。」

逆沢「確かにね。【郷に入りては郷に従え】と言われたら、それはその通りだとも思うけど、その郷が自分にとってどうしても馴染めないものであるなら、それはそれで自分なりの保身を考えなくてはならなくなる時もあるしね。」

鼎「鈴木さんは、自分なりに必死に生き残ろうとしているのかも知れないよね。他の冒険者メンバーが3メートルの川を堂々と飛び越えられても、自分がそれをいい子ぶって真似したら、川に落ちて溺死する可能性もあるわけだし。」

逆沢「運動音痴の宮本君や、トラブルメーカーの悠久院ですら乗り越えられるような困難なら、鈴木さんに乗り越えられないはずもない気もするんだけどね。ましてディテクトハザードは、ある意味、最強の能力でもあるし。」

愛原「ディテクトハザードは、本人さえ自信を持って制御すれば、とんでもない高性能ものだしな。」

逆沢「悠久院のあの根拠のない自信を、少し鈴木さんにも分けてあげたい気分だわ。」

鼎「私は、もう少し仲間を信用できるようになったり、他の人のために役に立ちたいという気持ちを持って欲しいなーとも思ったかも。」

逆沢「あるいは、カッコいい自分をみんなに見せたいという気持ちとかをね。」

愛原「【カッコいい自分をみせたい】というのは、ある意味、最強のモチベーションの鼓舞方法だよな。悠久院なんか常にそう思ってそうだし、宮本なんかも鈴木さんなどにカッコ良いところを見せたいと思ってそうだし、小谷なども己の才幹を発揮したがっている面はありそうだ。あるいは三方監督・金村・吉岡のように、己の道徳観に基づいて社会のために積極的に貢献したいというのも、いいモチベーションの高め方だと思う。また今を楽しむ余裕を持つのも良い方法で、徳田・山野・服部あたりはそんな感じだな。」

逆沢「うーん。やっぱり鈴木さんをやる気にさせるには、チョイワルのイケメンが必要って事か。今は生き残るのに必死そうだから今を楽しむ余裕なんかとてもなさそうだし、奉仕精神もそんなに強くはなさそうなタイプみたいだから。」

鼎「でもきれいな観光地に連れていってあげれば素直に喜んでくれるし、おいしい食べ物も好きそうだし、そういう形で鼓舞してあげられたらいいなと思うよ。」

愛原「鈴木さんは、ほめられたら素直に喜ぶ性格でもある。多くのクエストをこなす事で、市民達から感謝される機会が増えていくに連れて、徐々に前向きに変わっていってるような気もするけどな。」

逆沢「なるほどね。それで三方監督は、なるだけ色んな所に遊びに連れて行ったり、寄り道もしてみたり、ささいな事でも褒めてみせたり、色々気を使ってるのかも知れないわね。」

愛原「我々の多くは凡人だ。異世界に飛ばされたら、混乱もするだろう。だがその異世界の住民がどんな感じなのか? それを偏見抜きで把握する余裕があっても良いと思う。その異世界の住民がとんでもない悪人どもと感じたら、身を守ることを最優先に行動しなければならない。だが逆にその異世界の住民が親切であったり、ヨソモノの自分に対しても心を開いてくれるような人であったなら、少しずつ心を許してみてもいいかも知れない。やがてその異世界の住人は、ヨソモノの自分を本気で守ってくれたり、支えてくれる大切な仲間になってくれる可能性もあるわけだから。」












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