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愛原様のたわごと(11年6月21日)




逆沢「更新どうした?」

愛原「すまん。リアル生活の方で、予定外の超多忙になってだな。本当にどうしようもなかったのだ。申し訳ない。」

鼎「せっかく神が降臨して下さったのに、しっかりお礼言わないとダメだよ。」

逆沢「三顧の礼を尽くしてもいないのに、いきなりスーパー軍師が自分から仕官してきたみたいな超ラッキーイベントが確変で発生したのに。」

愛原「いや、こちらは君主気取れるような偉そうな身分じゃないから。ダメな学生のふがいなさぶりに見かねたスーパー家庭教師が臨時でついて下さったとたとえた方が正解だろうな。」

逆沢「ってかあんたも、いきなり指導されてるし。【こじつける】とか何? 頭おかしいの?」

愛原「うーん。確かに文章で書くと明らかにおかしいのだが、口語としては気にせず使い続けていた気がするな。実はここの作者は、こういうミスが非常に多い。たとえば【体育】と入力したい時、【たいいく】ではなく【たいく】と入力してしまったりするようなノリでだな。らぬき言葉なんかもそうだが、日常会話で使ってる間違った言葉をそのまま文章で使ってしまう事も多いみたいなのだ。」

鼎「でもこういうミスは、指摘されるまで永遠に気付かないことも多いから、すんごく有りがたいよね。」

愛原「イエス。その通り。ミスには2種類あって、本人の不注意による【うっかりミス】と、本人は正しいと思いこんでる【根本的な勘違い】に分けられる。で、本人自身は正しいと思いこんでるミスの場合は、10回推敲しようが100回推敲しようが、それがミスである事に永遠に気付かない。こういうミスは、他者に指摘されるまで永遠に気付かない為、本当に千金に値すると思っていい。」

逆沢「一人でできる仕事の質には限界があると、改めて思い知らされた感じね。確かに本人は正しいと思いこんでるミスに関しては、別の誰かに指摘されるまでは永久に気付かないだろうからねー。何百回推敲し直そうとも。」

愛原「ゲーム作りにおける操作性も同じだな。作者自身が不便に思ってない仕様に関しては、第三者に不便さを指摘されるまでは、これまた永久に気付かない事も珍しくないからな。」

鼎「現実世界では、自分の間違いを分かりやすく指摘してくれるような親切な第三者というのは、意外と多くない気がするから、そういう人に恵まれた事自体すごく幸福な事だよね。」

逆沢「イエスマンタイプの部下ばかり欲しがる上司タイプの人間も世の中には多そうだけど、私はお互いに相手に対して気遣いあったり、忠告しあったりできる人間関係の方が好きだわ。」

愛原「同感だ。特にここの作者は、何回も推敲を繰り返す暇があるなら、その分イベントを多く作る方に労力を傾けるようなズボラ特攻タイプだから、率直に大感謝以外の何者でもないな。」

逆沢「で、今回のテーマは? やっぱりデバッグ関係か?」

愛原「いや、今回は久々に東日本大震災関係のネタをやりたい。」

逆沢「うーん、またか。まぁあれから、色々と変化した事も無くはないからねー。なかなか前に進んでないものも多いけど。」

鼎「そういえば今までの高速料金割引がなくなる代わりに、被災者を対象にした新しい高速道路割引がスタートしたそうだよね。」

逆沢「早速というか案の定というか、ネットオークションで被災証明書が売りに出されていたそうね。それを持ってれば、高速道路がタダになるという事で。1枚5000円だったかな?」

鼎「被災証明書というのは、自治体によっては簡単に手に入れられるものだそうだよね。中には1日か2日ほど停電しただけの地域に住んでる人も、被災者という扱いにして被災証明書を出している所も結構あると聞くよ。」

逆沢「うーん。そりゃあ震災による停電も、被災と言えば被災かも知れないけど、なんか微妙ねー。それを言いだしたら、関東で計画停電の対象になった地域の人も、みんな被災証明書をもらえて当然みたいな気もするし。」

愛原「中には死亡者も行方不明者も全半壊家屋も全てゼロの自治体まで、東北地方にあるというだけで、被災証明書を発行してる自治体もあると聞くが・・・。」

逆沢「うへぇー。それって本当の深刻な被災者からすれば、何とも微妙ねー。というか深刻な被災者の人が、どれほど高速道路を利用するのかもよく分からないけど。」

愛原「津波の被害を大きく受けた岩手県の沿岸部から東北自動車道のある場所までは、直線距離で60km。走行距離にして100km近くかかる事もあるらしいしな。」

逆沢「100km!! 東北地方って広すぎる! それって新宿から千葉や横須賀までより、ずっと遠いんじゃない? ていうか関西でいえば神戸から日本海まで突き抜けてしまいかねない程の距離なんだけど・・・。」

鼎「そんな地域に住んでる人が、どれだけ高速道路を利用するのかという気もするんだけど・・・。」

逆沢「それ以前に、深刻な被災者の人は、車もなくしてる人が多そうな気もするしね。」

愛原「本当の意味でどれだけ被災者支援になっているのかという疑念も、正直無くはない。いや、もちろんその恩恵に正当に携われる人も多いとは思うが、その新料金システムを運営するのに必要な事務コスト及び、本来その恩恵を得るべきでない不正(?)なドライバーの想定割合を考えるとだな。」

鼎「うーん。私としては、ネガティブな発想ばかりして、【あれもダメ、これもダメ】というのも、やはりどうかなぁとも思ったけど・・・。」

逆沢「でも被災者支援と一口に言っても、なかなか難しいとは思ったわ。義援金もたくさん集まったみたいだけど、その配分が全く追いついていないという話も聞くし。」

愛原「配分を巡って難航してるんだ。一度ばらまいた後でやっぱりお金を返してと言えない以上、【誰にどれだけのお金を配るか】と【どういう手段で受け渡しをするか】を決める作業は、口で言うよりずっと大変だからな。」

逆沢「ああー、なるほど。世の中には悪い人もいるから、被災者やその遺族を名乗って不正にお金を受け取りに来る人もたくさん出かねないし、たとえもらえる資格自体あったとしても、場所や時間や受取人を変えて何度も受け取りに来る人も出る可能性もあるし。」

鼎「そういえば初期の義援金配分の時も、配分方法を巡って不満の声もあったそうだよね。もらえる対象を【世帯】にしたから、大家族と親兄弟がみんな一人暮らしかの差でも、実質的に受け取れる額が何倍も違ってくるとか。」

愛原「仮に身内に死者や行方不明者が出たとして、その場合、どの範囲までの遺族に受け取り資格があるかを巡っても、自治体によって差があるのが実態だしな。部外者は【日本政府は何やってんだ!】と安易に怒るが、これをやるのは本当に大変なんだ。阪神大震災の時なんか、もっとひどい例もあったんだぞ。」

逆沢「ひどい例って例えば?」

愛原「義援金の内、かなりの割合が事務担当者の人件費に消えた自治体もあったらしくてだな。まぁ大金を扱う業務までボランティアに任すわけにもいかないし、とかいって公務員に(義援金処理などで)余分な時間外業務をさせると、当然のように彼らに時間外手当を出さないといけないわけだが、これを別途再計算してみたら、【うへえーっ!】と言いたくなるような所もあったらしい。税金と義援金とでは直接的な出どこは違うが、元を辿れば共に国民・市民の身銭という事で、結局は同じ事だからな。」

逆沢「なんという嫌な裏話・・・。ってか公務員もそれくらいタダで働けよ。」

愛原「無理を言うな。地方公務員も自衛隊員も、ボランティアじゃない以上、ちゃんとゼニは取ってるぞ。民間企業と違って、彼らにはサービス残業という考えが、あまりないようだからな。」

鼎「とかいっていつまでも義援金の支払いが滞っているままだと、それも問題だよね。」

逆沢「東電関係の賠償金の方も、イマイチ動きが鈍いみたいだしね。本当に政府は何をやってんだか?」

愛原「民事の損害賠償の本来のあり方としては、あくまで当事者間での話し合い(もしくは裁判)で賠償条件や金額を決めるのが正当だ。100人以上が死亡した福知山線脱線事故の時も、賠償範囲と賠償額はJR西日本と被害者との間で決められたように、こういう問題で政府が首を突っ込む事など普通ありえない。その原則で言えば東電と被害者による話し合いで決めるのが本来の姿なのだが、なぜかその一番ややこしい部分を、政府が肩代わりしてしまっているのが問題だ。」

逆沢「あ、そっか。言われてみれば、そりゃそうだわ。東電がやるべき業務を政府が全て代行してしまってるから、余計にややこしくなってしまってんだわ。」

愛原「前回の話の続きみたいな表現になるが、東電側は面倒な作業を全て政府の責任に押し付けようとしているみたいだからな。東電が自社の判断で、賠償金の支払い対象の線引きや額を全部一方的に決めてしまったら、もっとややこしくなるのが見えてるというのもあるからだろうが。」

鼎「でも、賠償額の算定を巡っても、すごくもめそうだよね。バラマキ同然の大盤振る舞いをすると財源がいくらあっても足りないし、とかいってどこぞの古本屋みたいな厳しい査定をして賠償額を抑えすぎると、その批判をまともに政府が受ける事になるし。」

逆沢「でも民主党政権の場合は、宮崎県の口蹄疫の時も、結局ほぼ全額補償同然の大盤振る舞いをした前例があるからねー。ネトウヨの圧力もあって、それで押しきられた感じもあるけど。」

愛原「セーフティーネットの薄すぎる社会は困るが、全額補償はいくら何でもやり過ぎだろと思ったな。それが認められるなら、地震保険も損害保険もいらなくなる。」

鼎「でも平等の観点で言うなら、岩手県や宮城県で資産を失った人に対しても、やっぱり全額補償してあげないとおかしな事になるよね。」

逆沢「こらっ。そんな事したら、財源がいくらあっても足りないわ。ってか、そんな世論もほとんど聞かないし。」

愛原「宮崎県の人と東北地方の人とで、こんなに扱いが違う理由が俺には理解できんな。これは何も政府の対応だけではなく、ネット世論も含めて。なんで口蹄疫の時は畜産家が可哀想とかいって【もっともっと政府のお金で補償してやれ】の流れが出来ていたのに、岩手県や宮城県の人に対してはそういう優しい世論にならないのだ? 福島県の人に対しては【東電のお金で補償してやれ】という流れになってる分、少しだけマシかも知れんが。」

逆沢「宮崎県の畜産家にいくらお金をばらまいても財源はビクともしないけど、東北地方の被災者全員にお金をばらまいたら、さすがに国自体が倒れかねないと、ネット住民も空気を読んだんじゃない?」

愛原「宮崎県の口蹄疫処理に費やした金額も、結構でかかったんだけどな・・・。あの時、安易に騒いでた連中が知らないだけで。あの時の損害賠償の額の大きさが財務省や菅直人に増税をより強く決意させたといっても過言でない程度には。」

鼎「けど被災者の二重ローン対策として、借金の棒引きも一部で検討されてるそうだけど、これはどうかなぁ?」

逆沢「現代版【徳政令】の発動って奴ね。いいんじゃない? この際、やってみたら。江戸時代でも何度かやってるみたいだし。」

愛原「まぁ【徳政令】は通常禁じ手とされる財政再建策の中では、比較的マシな方だとは思うが、禁じ手は禁じ手だからな。」

逆沢「うん。でもかつて舛添要一がテレビで言ってた【お札を大量に刷って、ハイパーインフレを起こして財政を再建させる】案よりは、ずっとマシなんじゃない?」

愛原「まぁハイパーインフレ策よりは、徳政令の方がずっとマシだろうけどな。」

鼎「ほえっ? なんか難しい話になってるみたいだけど、どうしてハイパーインフレの方がまずいの?」

愛原「お札を大量に刷ってハイパーインフレが起きた場合、貨幣を介した形の物々交換が意味を成さなくなる。つまり貨幣を支払う代わりに物品を取得するという経済行為が成り立たなくなる為、経済活動自体が大きく制限される。もちろん銀行に預けてある貯金がいくらあっても、そんなものは何の役にも立たない。信頼できるのは物々交換に応じてもらえるような商品だけになるが、そんな商品なんてそう多くはないからな。」

逆沢「そういう社会になった場合、一番役に立つのは食料品になりそうねー。今の日本で一番不足しているものだけど。」

鼎「つまり札束をたくさん刷れば刷るほど、札束一枚あたりの価値が下がって、それが加速すると、いつか札束がただの紙切れにしかならなくなるって事だよね。」

愛原「うん。国際社会化した現代では、特にその辺はシビアだ。もしもそういう真似をすれば、円の価値がみるみる下がる事になる。最近の日本は円高なので、円安の方がマシと思えるかも知れんが、株価と同じで、一度下降線で雪崩を打つと、とんでもない事になるからな。」

逆沢「東電の株価も、ほとんど紙くず同然まで下がって、経団連が大あわてしているみたいだけどね。」

愛原「俺個人の思いとは真逆だが、政府には東電を潰す気はなさそうだから、今の内に東電株を買っておけば、将来おいしい事になる可能性もありそうだけどな。」

鼎「じゃあ徳政令を出した場合は、どういう利点と欠点が見込まれるかなぁぅ?」

愛原「徳政令の規模にもよるが、たとえば東日本大震災で深刻な被害を受けた被災者限定で、徳政令を実行した場合をシミュレートしてみようか。」

逆沢「お、それは興味深いわね。そうするととりあえずどうなるのかな? 被災者自身は喜ぶだろうけど。」

愛原「うん。被災者は喜ぶ。だがこのままだと被災者にお金を貸していた金融機関が、少し余分に泣く事になる。本来、返してもらえるはずのお金が、返してもらえなくなるからだ。江戸時代の徳政令も、金貸し商人を泣かせるタイプだったから、このタイプみたいだったようだけどな。」

逆沢「あれ? ちょっと気になる発言部分があったんだけど。【少し余分に泣く事になる】って表現何? 貸した金を踏み倒されたら、普通思いっきり号泣するんじゃないの? なんか表現が弱くない?」

鼎「私、【金融機関からも二重ローン対策の要請が出ている】という報道も聞いた事があるよ。なんで金融機関自身が、徳政令を望んでいるかがよく分からないんだけど。」

愛原「二人とも良いところに気付いたな。これには2点ばかり裏がある。まず1点目。被災者の多くは、既に担保価値のある資産を保有していない場合が多い事。つまり通常の住宅ローンの場合、もしも借金を払えなくなった場合、金融機関はその住宅等を取り上げる契約になっている場合が多いが、その住宅自体が消失している場合、金融機関側としては【借り手が破産宣告を受けたり、ドロンしたり、あるいは単純に無い袖は振れぬとばかりに開き直ってしまった場合、もうお手上げ】になってしまうという点だ。」

逆沢「あっそっか。人によっては、一文無しになってる人も多そうだから。住宅ローンに限らず、車のローンとかでも、もしもその人が車も仕事もまとめて失ったりしたら、金融機関としたらその人から借金を回収するのが困難になるわけだから。」

愛原「車のローンくらいなら、その人が震災で失業でもしない限りは、その気になったらちゃんと回収できるだろうけどな。家や土地、あるいは連帯保証人が無事ならなお固い。」

鼎「2点ばかりと言ってた、もう一つの事情は何?」

愛原「それは【税金投入による金融機関への支援】が、前提になっているという事だ。つまり単純に言えば、【被災者の借金を、税金で肩代わりする】形の徳政令を金融機関側が望んでいるという事。こうすれば、借金を肩代わりしてもらえた被災者も喜ぶだろうが、金融機関も本来回収不能になった貸し金が苦労なく手元に戻ってくる訳だから、大万歳という訳だな。」

逆沢「あ、そっか。それで銀行とかがやたら二重ローン対策を望んでいる訳ね。」

鼎「人に貸したお金を返してもらうというのは、実はヤのつく人ですら簡単じゃないと聞いたことがあるけど、税金で面倒みてもらえたら、こんなにラクチンな事はないよね。」

愛原「無い袖の持ち主に無理矢理袖を振らそうとしても普通は無謀だが、それを税金という他人の袖で肩代わりしてもらえば、金融機関としてはこんなにおいしいものはない。銀行の狙いはまさにそれだ。」

逆沢「うーん。なんかムカつく。東電も銀行も経団連も、みーんな税金で俺達を救えと言ってきてる訳ね。」

鼎「でも国のお金も無限じゃないよね。紙幣を大量に刷るという方法が使えないなら、やっぱり増税するか、借金するかのどっちかしかないような気がするけど・・・。」

逆沢「国会でも、国民世論でも、増税には反対という世論が、今の所は大きそうだけどね。」

愛原「けど子供達の将来のことを第一に考えて子供手当まで創設した民主党が、もしも【子供達に大量のツケを背負わせる】国債の大量発行なんかに踏み切ったら、それはそれで問題だとも思うけどな。10年後、20年後を考えて手を打つのが政治の最大の役目なのに、未来より今を優先して安易な国債発行に踏み切るというのは、さすがに賛同しがたい。」

逆沢「けど国債発行容認派の主張は、いつも【今を乗り切るために国債発行は不可欠だ。今を乗り切らずに未来も何もない】って主張だけどね。いつもいつもいつも・・・。」

鼎「現状維持派の人達は、【未来の為に今を我慢する】という発想があまりなさそうだよね。【未来のことは未来の人が考えればいい】みたいな感じで。」

逆沢「けど国債の大量発行による復興支援案は、元々は自民党のアイデアらしいし、大連立を視野に入れてる民主党が自民党案に乗っかろうとしている気配もすんごく感じなくもないけどね。」

鼎「海江田経産大臣が急に【浜岡以外の原発は安全だ】とか言って、いきなり原発の再稼働を強く求めだしたのも、もしかしたら自民党や経団連の歓心を買いたいからという思惑もあるのかなぁ?」

逆沢「まだ具体的な安全対策が何か施された訳でもないのに、いきなり一方的に安全宣言を出す神経の図太さが私には理解できんわ。」

愛原「まぁ本音を言えば、このままだと電力不足(or電気代の急騰)は避けられないから、安全だろうが危険だろうが、再稼働すべきだという事なんだろうけどな。原発が近くにない東京の政治家の考えそうな発想だと思ったわ。」

逆沢「それを言われたら、キツいわねー。将来の課題は別にして、いきなり原発の全面停止はいくら何でも節電でなんとかできる我慢の限度を超えている気もするし。」

愛原「理想を言えば【当面できる限りの安全対策を施した上で、原発の一時的な再稼働を認める。但し、一刻も早く他の方法による発電でまかなえるよう設備と研究を急ぐ】と形になるのかも知れない。だが現実にその方針でやると、たいていの場合【原発の再稼働を認めて、そのまま現状維持】で終わってしまう可能性の方が高そうだからな。」

逆沢「ありうる。それは十分ありうる・・・。」

愛原「これは沖縄米軍の問題でも同じだ。例えば【明日、いきなり米軍基地を県外に撤退させる】と言ってもそれは無謀だ。だが【当面は我慢する】を繰り返していても、逆にずっと居座られてしまう可能性の方が高いようなものだな。」

鼎「原発も、一度建ててしまえばこちらのものと言わんばかりに、廃炉になるまでずっと居座られる可能性が大だよね。原発利権とかもばらまかれて、地元の人も次々懐柔されて、反対派の肩身は日を増して狭くなる一方みたいな感じになって・・・。」

逆沢「本当に沖縄の普天間基地問題と同じ構図ねー。特に辺野古移転を認めたら、さらに何十年も沖縄に居座られてしまう。とかいってすぐに県外に移転してくれるメドも立たない。それで容認派と反対派の間を取って、危険な普天間基地で現状維持しかなくなってる感じもするけど。」

鼎「言われてみたら原発問題も、似たような岐路に立たされてしまっているといえそうだよね。特に福井県敦賀の原発は、現在稼働中の原発の中で日本一古いだけあって、既に40年以上になるんだけど、廃炉にするのも建て替えるのも現状維持なのも、全て何らかの問題がありそうで。」

逆沢「もしも立て替えを認めてしまったら、さらに40年以上も原発と付き合わなくてはならなくなる。とかいって現状維持でいけば老朽化により、そのリスクは増すばかり。廃炉にしたら、原発利権を享受していた推進派が黙っていない・・・。」

愛原「原発利権というのは、麻薬そのものだ。一度その利権でおいしい思いをしてしまうと、二度とそれなしの生活には戻れない。(かなり嫌な言い方になるが)福島県の双葉町なども原発利権にどっぷり浸かり、色んなハコモノを建設しまくったようだ。だが固定資産税が年々減っていくのは当然だし、建設したハコモノにも多額の維持費がかかるという事で、かなり財政的に危なくなった時期もあるらしい。で、その財政危機を救う為に、追加の原発をどんどん誘致して増設しまくって・・・ついに6号機まで作ってしまうみたいな状態にあったようだしな。」

逆沢「本当に麻薬そのものねー。最初にちょっと気持ちいい思いをした代わりに、原発誘致を止めたら、破綻まっしぐらってあたり。」

鼎「その辺で言えば、原発の再稼働を認めないと決定した福井県の人は、すごく勇気があるよね。」

愛原「それはカラクリがあるからだ。特に【福井県議会の構造】と、【嶺北(福井県北部)と嶺南(福井県南部)の違い】が理解できてないと、このカラクリは絶対に理解できない。」

逆沢「なんか思わせぶりな言い方ねー。嶺北人と嶺南人の対立はよく聞くけど、それと原発がどういう関係があるのよ? 確かに原発があるのは全部嶺南だけど。」

愛原「まず第一に、嶺南が関西電力の管轄にあるのに対し、嶺北は北陸電力管轄だ。つまり福井県の原発を全て止めたとしても、嶺北人は実は大して痛くもかゆくもない。次に原発立地の距離の問題。たとえば福井県4原発立地の中で今回最も影響が大きい高浜電力は、福井県のどこにある?」

鼎「ええと。高浜町は、福井県の南西の端っこだよね。舞鶴市のすぐお隣というか。」

愛原「そう。つまり舞鶴市は高浜原発からみて最短5キロ圏内。対して福井県の県庁所在地のある福井市中心部までは80kmも離れている。もっと端的に言うと、高浜原発からみて、福井市は京都市よりもはるかに遠い。それくらいの他人事で済みそうな場所なのだ。」

逆沢「つまり高浜原発は、住所上は福井県にあるけど、実質京都府の影響下にあるような場所って事ね。京都市の方が近いくらいだし。」

愛原「逆に福井市からみて一番近い敦賀原発にしても、琵琶湖がほぼ20〜30km圏内にある完全な関西圏。逆に福井市は敦賀からみても約40kmは離れている。それくらい嶺北と嶺南は別物。もし原発事故が起きた場合を想定した時、嶺北人より、滋賀県民・京都府民・大阪府民の方が敏感に反応するのは、ある意味当然だ。」

逆沢「万が一琵琶湖が汚染されたら、それを生活用水にしている大阪もヤバいし、それで大阪府知事もあれだけ過激に原発反対を叫んでいるのかも知れないわね。」

愛原「そして厄介な事に、嶺北は嶺南の約4倍の人口を持っている。つまり福井県議会自体も、嶺北人主導にならざるを得ない。つまり原発とあまり関係のない生活をしている嶺北人の論理で、福井県議会も動いているのだ。」


逆沢「ああ、それで原発推進派の市長が敦賀で勝ったりしてるのに、福井県議会では逆の風が吹いてるわけね。」

鼎「でも原発を止めたら、福井県自体も税収が下がっちゃうよね。それはどう思っているのかなぁ?」

愛原「福井県は、燃料関係の税金を関西電力から年あたり100億円近く取ってたそうだ。だが原発を止めたら、当然、燃料税も取れなくなる。なので立地税関係の税金を新たに設置して、そこに原発が立地している限り、稼働していようと稼働していまいと定額で税金を取れるような形の新税を制定すべく、福井県議会が動き出したようだ。」

逆沢「きったねー。ってか、そんな税金を認められるなら、舞鶴市や京都府も、関西電力から何らかの税金をとってやればいいのに。立地的には福井市よりもはるかに近い場所にある訳だから。」

愛原「県が違うから、京都府や舞鶴市は、福井県にある原発がどう扱われようが、基本的には黙って見ているしかない。たとえ実質的な関わりが嶺北よりもはるかに近くても。あと原発が仮に全部止まっても、嶺北人で遠い原発まで通勤している人はほとんどいないだろうから、そういう要因も少しはあるかも知れないな。あとこれは邪推の部類になるが、もしかしたらゴネてより多くの利権をせしめた所で、原発再稼働の流れになるのを見越している可能性もありそうだ。もしも原発が事故を起こしたら大変な事になる嶺南や関西と異なり、嶺北はそれほどじゃないので、もしも福井県側により多くの利権を補償してやると日本政府側が発言したら、(仮に安全対策が不十分なままでも)福井県議会が突然ゴーサインを出す可能性もあるかも知れない。海江田経産大臣が今、何やら福井県知事と折衝しているようだが、もしも海江田大臣が何か取引材料を持ってきたり、それに福井県側が乗っかる動きを見せたならば、俺はかなり臭いと思う。」

鼎「実際の原発のリスクと背中合わせに生きている嶺南の人を無視した駆け引きが、経産大臣と嶺北の政治家の間で行なわれているとしたら、こういうのはすごく残念だよね。」

愛原「福井県の原発事情が特殊なのは、権益とそれに伴うリスクが一致してない事にある。原発から遠く離れた所に本拠地がある嶺北がその権益を大きく握っている一方、舞鶴や琵琶湖水源使用地域は、ただ危険と背中合わせの位置に住んでるだけ。この構造が理解できないと、福井県知事や大阪府知事の主張の本質や、嶺南・嶺北の対立の図式はとても分からないだろうなとも思われる。なぜ嶺南人の中に【嶺南の原発で落ちてきたお金が、嶺北の公共事業にどんどん消えていく】と愚痴る人がいるのかという理由も含めてな。」

逆沢「ああ、なるほど。なんくせ同然のいちゃもんをつけてまで原発自体に反対姿勢の橋下大阪府知事と、【地元を納得させるような説明を政府や関電がしない限り再稼働は認めない】と主張する西川福井県知事の本音の差が、なんか見えてきた感じだわ。」

鼎「つまり大阪府知事側は、琵琶湖の水が汚染される事を最も恐れているのに対し、福井県知事側は原発を廃炉にする気までは別にないけど、あわよくば条件をつり上げたいと画策している気配があるという事かなぁ?」

愛原「今、俺が言ってるのは、あくまで邪推の類だ。もしかしたら俺は今、とんでもなく失礼な事を言ってるのではという危惧もある。なので海江田大臣側の動きや福井県議会側の動きを見ながら、その辺はちゃんと見極めないとダメだとも思っている。」

逆沢「あーあ。けど本当にこの国、大丈夫なのか?って気になってきたわ。財政危機の危険性があってもまだ借金で切り抜けようとしたり、原発の危険性が明らかになってもまた何の根拠もない安全宣言で切り抜けようとしたり、沖縄問題もそうだけど、みーんな変えるリスクを背負おうとせず、事を荒立てない方法ばかり選んだりして。」

鼎「今後も研究開発を進めてさらに安全性と効率性を高めた原子力政策を明示するのでもなく、新エネルギーの開発に真剣に取り組んで廃炉を目指す方向を明示するのでもなく、原発利権を断つ動きを見せるのでもなく、とにかく現状維持がベストと世論が考えているとしたら怖いことだよね。原発自体も老朽化していく一方だし、放射性廃棄物の処理方法ももっと真剣に考える必要もあるだろうし。」

愛原「今回の震災は、俺を含め、多くの日本人の目を覚まさせてくれた。根拠のない安全神話の妄想からも目を覚まさせてくれたし、色んな形のズブズブな利権の闇にも気付かさせてくれた。けど最近再び、日本人に催眠をかけようとしている連中が闊歩し始めた気もする。【日本経済はまだまだ大丈夫だ。日本の原発は安全だ。利権の事なんて気にするな。】みたいな感じでな。」

鼎「【自分達はきっと大丈夫だ】とか思いこんで、日本人の大半が妄想の殻に閉じこもるようになると、後でとんでもない事になりかねないよね。真面目に将来の危険性や現状の誤りを説く少数派の諫言を、多数派の妄想家が無視したり、うっとおしがるような世の中になると。」

逆沢「どんな形であれ、【間違っていた自分】に気付くチャンスに恵まれたなら、それを活かせるようにしないとダメね。」

愛原「うまくオチ部分が、最初の部分とつながったな。」












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