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愛原様のたわごと(11年12月30日)




愛原「今年も、もう終わりだ。いやあ、例年にないハードな一年であった。日本全体でも、個人レベルでも。」

逆沢「あん? 個人レベルで何かハードな事でもあったか?」

鼎「毎年、冬の時期は忙しくなることが多いけど、今年も更新が少ししんどくなったくらい忙しかったみたいだよ。」

愛原「うむ。ちなみに震災が起きて以降、作者も例年以上に仕事に追われるようになったらしくてだな。今年はプライベートに割ける時間が、例年よりもはるかに少なかったようだ。まぁ仕事がないよりはある方がマシだろうがな。」

鼎「そうそう。今年一年も無事に乗り越えられた事を感謝すべきだよ。」

逆沢「厳密には、あと1日ちょい残っているけどね。」

愛原「嫌なフラグ立てるな。まるで残り約1日の内に、何か良くない事が起きると言わんばかりではないか。」

逆沢「あはは。でも人ってのは、案外簡単に死んじゃったりする事もあるから、油断できないわよ。今日まで無事息災でいられた事が、明日以降も交通事故などに巻き込まれず、無事でいられる事の証明にはならないから♪」

鼎「どんな偉大な人でも、天命だけは逆らえないと思うよ。どんなにレベルの高いボディーガードを雇っても、どれだけ一流の医療体制を維持してても、必ず長生きできる保証もないし。」

逆沢「考えてみたら、キム・ジョンイル書記長もそんな類のような気がするわね。あれだけ独裁者として絶大な権力を持っていても、寿命だけはどうにもならないってのを、改めて感じさせられたわ。」

鼎「次の後継者も決まってるみたいだし、北朝鮮がこれからもっとよい国に変わってくれたらいいよね。」

逆沢「けど28歳の国家元首って、私が知ってる他の国ではちょっとありえないとも思ったわ。そんな若い指導者が次期独裁者ってのも、なんか怖いなとも思ったし。」

愛原「うーん。でもよく考えたら、独裁ってそもそもなんなんだろうな。よく北朝鮮という国は独裁国家だとか、キム・ジョンイルは独裁者だったとか言われてるが、今回の世襲劇をみて改めて疑問に思った。たとえば次期指導者として祭り上げられているキム・ジョンウンとかいう後継者にしても、生まれながらの独裁者では決してないわな。」

逆沢「ってか、先代のキム・ジョンイル自身が正式に後継指名しないまま亡くなったんでしょ。確か。」

鼎「あ、そっか。つまりキム・ジョンウンさんは本来、別の誰かに指導者として指名されるか、自力で指導者としての権力をもぎとるかしない限り、独裁者にはなれない微妙な立場だったんだよね。」

愛原「そう。独裁者は生まれながらにして独裁者ではない。独裁者になるには、董卓や織田信長らのように力ずくでそれにふさわしい権力基盤を手に入れるか、もしくは別の誰かに祭り上げてもらうしか方法はない。キム・ジョンイル書記長の場合は、豊臣秀頼や徳川秀忠のように先代から後継指名された事でその地位を手に入れた訳だから、後者に入るわな。」

鼎「けど、キム・ジョンウンさんは、結局、先代指導者だった父親からは正式に後継指名されてないままだし・・・、とかいってクーデターなどで無理矢理権力の椅子に座った訳でもないし、という事はキム・ジョンウンさんが北朝鮮の次期指導者という事に決めた黒幕は、一体誰なのかなぁ?」

逆沢「ちょっと待て。という事は、キム・ジョンウンのバックには、別の黒幕の権力者がいるという事? いわゆるキングメーカーになれる程の。」

愛原「まぁおそらく軍部及び、キム・ジョンイル体制を支えてきた先代の側近らが合議した上で、最終的に決められた事だとは思うけどな。つまり逆をいえば、もしもキム・ジョンウンが軍部や先代指導者側近らにとって都合の悪い政治を行なえば、いつそれらキングメーカーによって排除されてもおかしくないという事にもなる。」

逆沢「それ、独裁者でも何でもないじゃん。どっちかというと操り人形に過ぎないというか。」

愛原「という訳で、今回の今年最後のテーマは【独裁者】だ。」

逆沢「よりによって今年最後のテーマが【独裁者】かよ。今年は日本全体が大変な年だったけど、ウチのコーナーもえらいテーマがラストになったわねー。」

鼎「でも独裁者というのは、ファンタジー世界でもかなりメジャーな悪玉として登場するよね。私はこういうテーマもいいと思うよ。」

逆沢「ていうか【独裁者=悪玉】以外の何者でもないわね。独裁者が善玉として登場する作品なんか、ほとんど記憶にないし。もっとも現実世界でも、反橋下陣営が橋下徹の事を独裁者とレッテル貼って叩きまくってるくらいだから、【独裁者=悪玉】って図式は、日本人にとっての共通の価値観のような気もするけど。」

鼎「独裁者のイメージが強いのに、悪玉として描かれにくいのは織田信長さんくらいかなぁ。けど織田信長さんの場合は、改革者とか成功者してのイメージの方が強いから、それで救われている感じもするけど・・・。」

逆沢「織田信長の場合は、家臣であった秀吉が後を嗣いで天下を統一したり、信長の同盟相手であった家康が戦国の世を終わらせたから、それでプラスのイメージになってるんじゃない? 秀吉にしても家康にしても、自分の権力を正当化する為には信長を暴君扱いできない立場にあった訳だから。」

愛原「仮に武田なり毛利なりが秀吉や家康を滅ぼして天下統一してしまったなら、信長の扱いは董卓と同類になってた可能性すらありそうだな。寺社を焼いたり、一向門徒を過激に弾圧したり、将軍を追放したり、浅井父子に対する最後の対応ぶりとか、包囲網を敷かれる程諸国ににらまれてたり、謀反人が何人も出たりと、色々悪役にふさわしい要素が多すぎる。」

鼎「まさしく【勝者が歴史を作る】という感じだよね。同じ残虐な指導者でも、最終的に自分や後継者が勝ち残れば英雄扱いされて、逆に敗者側に回ったら暴君とか独裁者扱いで終わったり・・・。」

逆沢「そういえばファンタジーに登場する独裁者キャラクターは、大体、主人公らに倒される敗者側と相場が決まっているわね。という事は【独裁者=悪玉】というよりは、【独裁者=敗北を期待されている暴君系キャラクター】という方が正しいって事か。」

鼎「つまり北朝鮮を独裁国家と呼ぶ人は、内心で北朝鮮の事を快く思ってない人という事でもあるという事かなぁ?」

愛原「まぁ橋下徹の事を独裁者と呼んでる人程度には、北朝鮮に対して批判的な人ではあると思うな。独裁者という言葉自体が、ある意味、レッテルでしかないから。少なくとも中立〜好意的な人からみた独裁者は、強い指導者、もしくはワンマンくらいの表現に落ち着くと思われる。」

鼎「という事は、キム・ジョンウンさんはもしかしてワンマンタイプ?」

逆沢「将来的にワンマン指導者になる可能性はあるけど、現時点ではそこまでの力はとてもないでしょ。」

愛原「ていうかワンマンタイプの指導者なら、むしろ中小企業とかの方がいっぱいいそうな気がするよな。」

逆沢「ああ、分かる分かる。特に中小企業の創業者に多そうな気がするわ。部下の言うことに大して耳も傾けずに、なんでも独断で物事を決めるような人は。」

鼎「でもなんで、中小企業のトップさんには、いわゆる独裁者タイプの人が多いのかなぁ? もしかしたら偏見かも知れないけど。」

愛原「そりゃあ責任の重さが違うからだ。特に社員数10人未満の零細企業の場合、自宅や自分の土地を担保に入れて借金してる事も多いし、あるいは借金自体はなくとも、自分が過去に稼いだ貯蓄などを元手に起業している事も多い。つまり経営に失敗したら、経営者は最悪無一文or自己破産or夜逃げになるという事。社員を雇ったら雇ったで、その社員をちゃんと働かせなければならないし、給料も出してやらなければならないし、もし社員が事件でも起こしたら会社存亡の一大事になる事もある。」

鼎「あ、そうか。一従業員の立場からしたら、嫌なら会社を辞めたらそれで済む事も多いけど、中小企業の社長さんの場合はそうじゃないんだよね。廃業するのにもすごくコストがかかるし、負債抱えて倒産でもしようものなら世捨て人になっちゃう危険もあるし。」

愛原「心理学の実験で、面白いものがある。こういう中小企業のような組織構造にある場合、リーダーの方が慎重派になりやすく、下っ端の方が冒険的になりやすいそうだ。なぜならリーダーと下っ端では、事業に失敗した場合のデメリットが全然違うから。」

逆沢「まぁそれを言ったら、日本国民全体の政治に対する態度も似たようなものだけどね。失敗しても責任のない一般大衆ほど、過激な事をやれといいたがるとか。まぁ国会議員の中にも、野党の時だけピッグマウスとか、総理になる前までと総理を辞めた後だけビッグマウスとか、色んな奴がいるけど♪」

愛原「中小企業の社長さんにワンマンというか、独裁者タイプが多いとしても、それ自体は至って当然だ。従業員全員を会議室に集めて議論させたとしても、最終決断するのは責任者である自分でなくてはならない。安易に多数決で決めて、自分が心の中で納得できない方針を選んだ結果、会社が倒れたりしたら、悔やむに悔やみきれないからな。会社が倒れた所で、従業員は失業するだけで済むが、社長一家はそれで済まない訳だから。財産的に打撃であるのみならず、従業員家族から逆恨みされる可能性もあるし、社会的な評価も大きく下がる事も多いし、廃業時の後始末で色々面倒くさい事も多い。もちろん多数決に賛同した従業員が代わりに負債を肩代わりしてくれる事も、まずと言っていい程ありえない。」

逆沢「なるほど。中小企業の社長さんにワンマンタイプが多くても、それは責任の大きさからしたら当然って事か。会社が倒れても従業員は責任を取らないし(せいぜい失業するだけ)、失敗の責任は経営サイドがかぶらざるを得ない以上は。」

愛原「ついでにいうと、決断力に欠けたりリスクを負う覚悟のない人間は、そもそも起業なんていうハイリスクは犯したがらないからな。小さくとも一国一城の主になろうなんて考える時点で、その人はワンマンの素質十分と言わざるを得ない。」

鼎「私、ワンマンとか独裁者って、すごく嫌な人というイメージがあったけど、なんか少しイメージが変わったかも。」

愛原「権利と責任が一対になってるタイプのワンマンというのは、本当に大変だ。今年は、キム・ジョンイルが死去したのみならず、カダフィ大佐も殺されるなど世界的にも激動の一年だったが、独裁者というのは、時に死と背中合わせだからな。油断すれば殺される。ストレスもたまる。キム・ジョンイルの死因が仮に過労死とかストレス性の病気だったとしても、俺は別におかしいとまでは思わないからな。」

逆沢「おいおい。だからといって、独裁者の独裁を正当化はできないでしょ。現実に北朝鮮では飢餓に苦しんでいる人がたくさんいるし、思想の自由もない。そんな悪政を独断で行ない続けたから独裁者呼ばわりされる訳だし、私は彼らを擁護する気にもなれないんだけど。」

愛原「その通りだな。北朝鮮やカダフィ政権時のシリアなど、いわゆる独裁国家呼ばわりされる国の多くでは、国民が独裁者の施政を拒む方法が存在しない。ここが日本の中小企業との最大の相違点だ。」

鼎「あ、そうか。私達が入社した会社が仮にブラック企業であっても、余程特殊な環境に置かれない限りは、従業員側にも対抗手段があるよね。会社を辞めようと思えば辞める事も可能だし(意志が弱すぎて辞めるとすら言い出せないなどは論外だが)、給料が未払いでも労働基準監督署などに駆け込めば何とかなる事はも多いし(最低限の法律知識や社会常識もなければお手上げだが)。」

逆沢「つまり独裁というのは、独裁する側ではなく、独裁される側の置かれた状況から見極めるべきって事なのかな?」

愛原「俺はそう考える。そういう意味では、小泉純一郎や橋下徹は、独裁的(ワンマンタイプ)ではあっても独裁者ではない。なぜなら彼らを選んだのは有権者自身であり、その有権者の意思一つで彼らを蹴り落とす事も可能な訳だから。まぁもし任期がイタリアの首相みたいに7年もあったら少し判断に迷う部分もあるが、4年程度なら世界水準からみても普通だろうしな。」

鼎「でも前政権時の自民党などは菅さんの事を独裁者と呼んでたけど・・・。」

愛原「1年で退任に追い込まれるような独裁者なんかあり得ないだろ。まぁ【俺達の意見も聞かず、勝手に決めるな!】という抗議と批判の気持ちも込めて、独裁的だと言いたかったんだろうけどな。」

逆沢「独裁的な人も独裁者に含めるなら、そんな人は日本中の至る所にいそうな気もするけどね。中小企業の社長さんは言うに及ばず、学校の先生も生徒に対して常に独裁的だし、親は子に対して独裁(独善?)的なしつけをする事も多いし、部活や会社でもワンマンな先輩や上司はいくらでもいるし。」

愛原「正当な権限と責任に伴う独裁的行為なら、俺は必ずしも否定しないけどな。権限外であったり相応の責任を伴わないものなら、単なるパワハラというか虐待というか、抑圧行為でしかないが。」

逆沢「じゃあやっぱり、北朝鮮は独裁国家そのものなんじゃないの? 国民を飢えさせて思想も統制する以上の抑圧行為なんてないとも思うし。」

鼎「北朝鮮が、選挙とか何らかの方法で政権の責任者を罷免する事ができる国ならともかく、そうじゃない以上、独裁国家としての要件は満たせてしまうような気もするけどどうかなぁ?」

愛原「俺も北朝鮮が独裁国家かと問われたら、イエスだと思うな。ただタイプとしてはミャンマーなどと同じタイプの独裁国家だろう。キム・ジョンウン個人に独裁的な権限が集中できているようにはとても思えないしな。つまり一個人としての独裁者が支配する独裁国家ではなく、特定の支配層階級が国を支配するタイプの独裁国家といえそうだ。まぁそんな言い方をすると、日本も似たようなものかも知れんが。」

逆沢「はぁ? 日本が独裁国家? 総理が1年で交代するような国が独裁国家? むしろ世界一の民主国家なんじゃない? 菅レベルでも独裁者呼ばわりされるくらいだし、ましてブッシュ前アメリカ大統領のような強烈な強権が許されるはずもないし。」

愛原「今の日本と北朝鮮に共通しているのは、国家元首が操り人形に近い状態にあるという事だ。そして誰が国家元首を操ってるというか? もちろん国民ではない。国民が選挙などを通じて排除できない階層の人たち。北朝鮮でいえば軍部などがそれにあたるし、日本なら官僚などが第一に来るだろう。次に財界を始めとする利権団体あたり。」

逆沢「アメリカなどの場合は、政権が交替すると官僚の顔ぶれも交替するけど、日本の場合はそういうのが無くて、しかも官僚が政治家の言うことを聞かなくても、それで通用しちゃう部分がかなりあるって聞いた事があるわ。【公務員の身分保障】とかいう概念が、確か日本には色濃くあるのよね。」

鼎「下手な国会議員よりも、実は上位の官僚の方が実質年収も多いって聞いた事があるよ。」

愛原「選挙活動や政治活動費も含めて考えると、今の日本の国会議員の報酬は決して高くないからな。激安の公務員住宅などに住んでる官僚よりも、ずっと清貧な生活を余儀なくされている国会議員も意外といるし、何より政治家には落選という概念があるから、生活の安定性も低い。軽い気持ちで政治家を目指すと、クレジットカード一つ作れず、本気でひもじい思いをする事になる。それでいて休日もロクにない。森喜朗や小沢一郎クラスの大物ならいざ知らず、当選3回以内の議員なんか、かなりヤバいぞ。」

逆沢「おいおい。世間では政治家の給料は高すぎるという声ばかりなのに、お前は一体何を言ってんのだ?」

愛原「経費が全部、税金などで落とせて、将来の安定性ももう少しくらいマシなら、世間の評価は正しいんだけどな。まぁ諸悪の根源は、選挙にカネと手間がかかりすぎる所にあるから、そこを改めるだけでもかなり改善されるとは思うが。というか今の選挙制度だと、利権団体による人員・資金のバックアップがないと、ポスターもロクに張れない。だから政治家のバックに利権団体がつきやすくなるデメリットも生じる。」

逆沢「つまり日本の政治家というのは独裁者どころか、実際には利権団体の操り人形に過ぎないという事か?」

愛原「官僚の操り人形にもなりがちだな。日本の政治家はとにかく多忙で、しかも大臣級ほど政局にも時間を取られる為、肝心の政策の勉強に割く時間がなくなりがちだ。その結果、官僚が書いたペーパーを棒読みするだけの官僚の操り人形になりやすい。しかも官僚達は自分達に都合の悪い大臣が就任すると、大臣に不利な情報などを平気でマスコミにリークするからな。田中真紀子が外務大臣だった時になんかは最悪で、故意に外国の要人と会う公務を大臣に伝えず、それで公務をすっぽかしたらその部分だけマスコミに強調してリークとか、色々ひどかった。それでも事務次官一人更迭できない。民間企業ではありえない主従逆転ぶりだ。」

鼎「一従業員が社長に対してちゃんと報告もせず、言われた通りの仕事もせず、それでいて社長の悪い所をご近所さんに吹聴し回って、怒った社長が懲罰人事を発動しようとしてもそれもできないみたいな状態だよね。」

逆沢「仕事もせず、社長の悪口ばかり吹聴して、クビにも減給にも出来ない従業員って、どんな疫病神やねん。」

愛原「でも地方公務員などでは、ヤミ専従といって、組合活動だけをして本来の業務を一切しない公務員とかも現実にかなりいるようだからな。日本の政治の世界は、市長などが病気で1年以上休んでも業務が普通に進む利点もある反面、政治家が公務員を思い通りに操れない程、役人が強すぎるという問題点を抱える。」

逆沢「要するに、日本の政治を実質的に運営しているのは官僚を始めとする公務員連中であって、政治家などはお飾りに過ぎないって事か?」

鼎「もしかしたら官僚さんからみたら大臣さんらは決して城主ではなく、せいぜい客将という印象でしかないのかなぁ。だから客将が自分達のお城を好き放題にかき回そうとすると、全力で抵抗するのかも。」

逆沢「ああ、なるほど。中小企業では、最も長く所属し続けて内部の事情にも精通しているのは経営者自身でほぼ間違いないけど、役所では逆ってか。内部事情に精通しているのも、長く所属しているのも役人の方だから、1年後、いるかどうかも分からない大臣ごときに、自分の大切なお城の中をかき回されたくないってか。」

愛原「大臣や知事・市長といった政治家が、役人より内部事情に精通している事なんて、(役人出身でもない限り)まずありえない。だが逆を言えば、しがらみがない為、役人達が長年積み重ねてきた利権基盤を根底から破壊できる可能性もある。そう。あるっ・・・はずなのだが、現実ではそれをやろうとすると、様々な方面から圧力やリークの嵐が吹き荒れて、田中真紀子や阿久根市の前市長や菅のように、あっさり転覆させられてばかりだからな。」

逆沢「圧力は強い意思で跳ね返せるかも知れないけど、リークの嵐の方は、対処の仕様もないからどうしようもないわ。」

愛原「法的な解釈でいえば、1ヶ月前、ナベツネにクビにされた清武前読売巨人軍オーナーのような守秘義務違反をした従業員は、上から罰せられても仕方ない。だが今のマスコミは情報源を絶対に公表しないし、役所関係のスキャンダルはそうでなくても大好きだから、官僚らがその気になったら、大臣のスキャンダルなんかいくらでもマスコミに流せるからな。」

鼎「こわい〜。という事は、橋下徹新市長も、このままだと潰されるの〜?」

愛原「橋下は、俺が見る限り、よくある平凡な新首長と比較して、3点ばかり強みがあるから、その辺次第だろうけどな。」

逆沢「何? その3点って。」

愛原「まず1点目。知事としての経験がある事。橋下自身、市長就任直後のコメントで【知事に当選した時の心境は、大海原の中にゴムボート一つで放り出されたような感じだったが、今はタンカーの艦長になった感じ】という趣旨の発言をしている。この意味が分かるか?」

逆沢「首長として何をしたら分からないズブの素人だった頃と比べて、既に経験値もあるし、自信もつけているという事かな?」

愛原「正解。それに付け加えると、今の橋下は【大阪維新の会】のトップであり、議会に相当の勢力を持っている。橋下が東京に乗り込むだけで、民主党も自民党も平身低頭して率先して出迎える程の、政治的基盤が既にあるわけだ。ゴムボートの中にいるのは自分一人だけ状態だった頃とは違い、現在の橋下タンカーには、多くの部下が既に乗り込んでいる。これは大きい。」

逆沢「なるほど。じゃあ2点目は?」

愛原「掲げる旗が巧み。ずるいといっても良い。橋下が知事時代に何をやったかというと、実は他の都道府県と比較した上で特筆すべき事はイメージほど多くやってなくて、特に府職員が反発するような政策は結果からいうと目に見えた進捗はあまりない。これは今の国会で公務員の人件費削減問題や東電の賠償問題と同じ類で、やるやるといいながら、うやむやになっている状況と同様のパターンと思われる。」

鼎「でも橋下さんは、常に飽きられないように、常に大きな花火をあげていたよね。府庁と市庁を統合してWTCに移転しようとか、道州制を導入しようとか、伊丹空港を廃止しようとか。」

愛原「これらは全て、知事の権限単独では実行不可能なものだ。つまりうまくいかなくても、自分の責任にはならない。あと反対者が出るのは分かっているので、その反対者に全責任を押し付けて、自分だけは正義の味方でいられるというシチュエーションでもある。仮にうまくいけば言い出しっぺの自分の功績。うまくいかなくても【あの市長が反対したからだ】とか【あの知事が反対したからだ】とか【国がいつまでも法律を変えないからだ】といえば、自分だけは常にクリーンな正義の味方でいられるからな。」

逆沢「おいおい。お前はアンチ橋下なのか?」

愛原「二者択一で選べと言われたら困るが、もし今、平松と橋下のどちらに一票を投じると問われたら橋下に一票を入れるという程度には、期待しているけどな。今、俺が言ってるのは、あくまで橋下の政治手法の話。つまり橋下は、常に自分が責任をかぶらないように配慮しながら、花火を上げ続けているという形になる。普天間問題でガタガタになった鳩山とは正反対だ。」

逆沢「鳩山も、本気でアメリカで交渉していたら、仮にうまくいかなくても世論は【アメリカ憎し。鳩山はよくやっている】になってただろうにね。なーるほど。常に橋下は、自分以外の誰かを悪役にしてそいつに責任と憎しみがいくような方向で、うまく政策を選択して、世論を誘導しているって事か。なんか【抵抗勢力】とか【自己責任】を流行語にした小泉純一郎によく似てると思ったわ。」

愛原「橋下は市長選に立候補する少し前に、【WTCは耐震性に疑問がある】とかいって、府庁移転を土壇場であっさり翻すなどのペテンを平気でやるから、正直信用しきれないものがある。反対勢力が強大な時は反対者を派手に攻撃する事で民意を煽るが、反対勢力を押しのけて実際に勝てそうになると、政策を実行してしまった事によるデメリットを避ける為に急にトーンダウンする傾向があるからな。」

逆沢「なんか国会の野党がよくやる手口ねー。普段は与党に反対反対ばかりいうくせに、菅直人が自民党の掲げた政策を丸呑みして消費税増税案とかをブチ上げた途端、【抱きつき戦術】だとか逆ギレした頃を思い出したわ。まぁ野党案を与党が丸呑みした時点で、野党も連帯責任になるから、気持ちは分からなくもないけどね。」

愛原「そうそう。言い忘れていたが、最後の3点目。それは人気だ。まぁこの点も、小泉純一郎と同じだけどな。ドイツのヒトラーなんかもそうだが、独裁者は最初から独裁者じゃない。独裁者を祭り上げる人間がするから、独裁者たれるという事を忘れてはいけない。」

鼎「ようやくスタートに戻って来れた感じかな?」

逆沢「要するに、独裁者を産み出すのは、国民であり、官僚であり、軍部であり、財界であり、まぁ色んな層がいるけど、とにかく黒幕が常にいるって事ね。」

愛原「もっとも国民の自由意思で選ばれたリーダーまで、独裁者と呼びたくはないけどな。俺からみると、ヒトラーは本当に独裁者だったのかと思う事もあるし。もっともカダフィー大佐のように、最初は国民に支持されてリーダーになったかも知れないけど、その後、国民の意思ではどうやっても引きずり下ろせないような本物の独裁者に変貌してしまう事もあるので、境界線を引くのは困難だが。」

逆沢「あくまで独裁者か否かの境界線は、その独裁者を国民の自由意思で引きずり下ろせるかという事になりそうね。これも上の方で一度言った事だけど。」

鼎「そう考えると、今の日本に必要なのは、むしろ国民に約束した事を忠実に実行しようとできる強い意志をもったリーダーと思ったかも。ほら、日本の国会議員の人とかは、すぐに官僚とか財界とかアメリカとかに脅されて言いなりになって、それで国民の意思が政治に反映されない国になってるでしょ。このままだと北朝鮮みたいに、特定の権力層の操り人形の政権が量産されるだけになって、国民の声が届かない独裁国家になりかねないし。」

逆沢「それは言えるわ。今の選挙はいわゆる就活の一次試験のような扱いになってて、仮に選挙という名の一次試験に受かっても、財界や官界といった二次試験の担当者がノーを突きつけたら、簡単に引きずり下ろされるみたいな所があるし。しかもその後に登場する二次試験面接者オススメの後継者は、麻生や野田のような選挙の洗礼も受けてない(つまり一次試験を免除された)、当時の公約と真逆の政策を推進しようとする政治家ばかりだし。」

愛原「かなり危険な物言いになるが、俺はヒトラー政権時のドイツは、意外と正常な民主国家だったのかなと思う事もある。なぜなら権利と責任が一致しているから。ヒトラーは国民の民意と真逆の政策を推進して国民をあぜんとさせた程でもないし、むしろ公約も派手に形にした。そしてその結果、無惨な敗戦をし、ヒトラーは歴史的悪人としての汚名をかぶるという形の責任を、ドイツ国民も国家分裂を始めとする大きな苦難という責任を被った。それに比べて、日本はどうか? 責任者がどこにいる? そんな状況になっていると言わざるを得ない。」


逆沢「中小企業のワンマン社長さんと比べても、今の政財官のトップ達の責任感の無さは異常だと思うわ。東電やオリンパスの経営陣を見てても、彼らが責任を痛感しているようにはとても感じないし、総理もいかにも操り人形って感じだし、野党も責任を共有しようという意志は皆無みたいだし、役人は責任を感じるどころか既得権益を守るのに必死だし。」

愛原「おそらく北朝鮮の軍部なども、国民を飢えさせている事に対して、責任をほとんど感じていないだろう。ギリシャの公務員達もだ。どんなに国がボロボロになっても、責任を取るどころか、自分達の既得権益を守ることが最優先。日本の官僚や東電の幹部達も、これからますます貧しくなっていく国民を横目で見ながら、それでも財産の一部を貧しい人に差しだそうなどとは思わず、むしろ自分達の生活だけは守りたいとばかりに、既得権益の保持により執念を燃やしそうで嫌になる。」

鼎「権利と責任が一致しているなら私達も納得できなくはないけど、責任を回避する為に権力を行使する人は、私はやはり好きになれないかも。」

愛原「うーん。今回、色んな角度から独裁者を産み出す構造を見てきたが、もしかしたら操り人形型の独裁者の方がタチが悪いかも知れんな。織田信長やカダフィー大佐や董卓のようなタイプは、独裁者自身を直接ぬっ殺せばそれで世の中が激変する可能性もあるが、操り人形をぬっ殺しても、根本的な解決にはならないからな。キム・ジョンイルが亡くなろうが、野田佳彦が失脚しようが、東電の社長が一人辞任しようが、その背後にある黒幕グループ自体を何とかしない事には、世の中は何も変わらないのかも知れん・・・。」

鼎「幸い、日本の政治家には官界や財界を掣肘する法的権限が全くない訳でもないから、そういう人たちに取り込まれないような本当の意味で力のある為政者が現われるのに期待したいよね。」

逆沢「でもそういう力のある為政者が現われると、ワンマンとか独裁者と呼ばれて非難するのも日本だから、色々笑えないけどね。野田が公約と真逆の政策を断行しようとしても誰も独裁者とは言わないけど、菅が何か新しい事をやろうとする度に独裁者扱いされたり、独裁の基準も分からないし。」

愛原「ごめん。俺もしゃべればしゃべる程、独裁の基準がよく分からなくなってきたわ・・・。」













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