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愛原様のたわごと(12年1月22日)




愛原「リーマンショックの時は割とヒマな時期もあったが、ここ1年は非常に忙しい。同じ不景気でも、色々あるもんだなと思う。」

鼎「あー。もしかして、製作遅れを言い訳する為に、先に防御線を貼ってるつもりなのかな?」

逆沢「私からみても、ここ数ヶ月の停滞ぶりは目に余る感じだけど、案外図星?」

愛原「・・・むっ。仕方ないだろ。リアル生活はやっぱり犠牲にできん。このご時世だけに、なおのこと・・・。」

鼎「いつになったら多忙な状況から落ち着きそう?」

愛原「さぁなぁ・・・。一時的なものと思っていたら、結構長びいているのが現状だしな。まぁ失業するよりはマシだと思うしかあるまい。好景気で多忙ならまだ良いが、不景気でペイラインの確保も困難なご時世では、悠長な事ばかり言ってられない。」

逆沢「んな辛気くさい話は、聞きたくないわ。もっと景気のいいネタ話とかはないのか?」

愛原「悪いな。民主党のロクデナシ連中が、【衆議院の小選挙区枠を5だけ削減+衆議院の比例枠を80も削減】なんていう超我田引水案を平気でまとめてきやがったから、予定を変更した。てめえら本物の悪党だと思ったわ。」

鼎「小選挙区の比率がかなり高くなって、ますます二大政党だけが有利になる案だよね。」

逆沢「ちょっと待て。年始間もない内から、そういうディープなネタは、マジパスなんだけど。もっとゲーム関連ネタでやれんのか?」

愛原「心配するな。今回のテーマは、多くのファンタジー作品で登場するメジャーシチュエーションを取り扱う予定だ。」

逆沢「だったらいきなり胸くそ悪くなるようなネタを、先にぶつけるな。で、今回のテーマとなるメジャーシチュエーションというのは何だ?」

愛原「うむ。今回のテーマは【ラスボス(天敵)の処断方法】だ。要するに主人公達がラスボスを撃破した後、主人公達はラスボスに対して、どういう裁きを下すかという部分にスポットを当ててみようという試みだな。」

逆沢「そんなの、撃破した時点で、既に殺し終わってるパターンがほとんどでしょうが。裁くどうこう以前に、既にラスボスは戦死してしまってるから、裁きようがないというか。」

愛原「ではさらに聞こう。主人公はラスボスを戦死させてしまったとして、これは意図した結果なのか? 要するに【始めから殺すつもり】でバトルして殺しているのか、それとも【殺すつもりはなかった】のに、戦闘の成り行きで殺してしまったのか?」

逆沢「うーん・・・。まぁ多くのご都合ファンタジーの世界では、主人公にラスボスを殺す意志までなかった場合は、戦闘後にラスボスとの会話シーンくらいはつきものだしねー。大した会話のシーンもなく(あっても断末魔や負け惜しみや反省後悔のセリフ程度までなら)ラスボスが死亡するような作品の場合は、始めからラスボスを殺す事が前提になってるんじゃない? 戦闘後に主人公達が、ラスボスを殺してしまった事を、本気で後悔するような描写も滅多にないし。」

鼎「つまりそういう作品の場合は、ラスボスの処断方法は、事実上、死刑という形になってる訳だよね。実際、そういう作品では、【これで世界は救われた】という感じで、ラスボスは殺されて当然みたいなノリで終わる事も珍しくないし。」

愛原「特に【封印が解けて復活した魔王を倒す】的なシナリオの場合は、かなりの割合で【魔王は(主人公らの活躍によって)、今度こそ封印などといった中途半端な解決方法ではなく、完全に消滅させられる】気もするな。」

逆沢「ってか、封印ってそもそも何よ? 封印するくらいの余裕があるなら、なんでその時にさっさと殺しておかないのかという気にもなるんだけど。」

鼎「そういうシナリオの作品の場合は、十中八九【当時の勇者達の力では封印するのが精一杯で、完全消滅させるのは不可能だった】という設定になってるような気がするよ。だから何らかの魔法的な力で封印するか、遠い遠い世界に飛ばすか、牢屋などに閉じこめて無力化とか・・・。」

逆沢「しかし数年から数千年の時を経て、かつて破れた魔王なりが復讐の為に再び復活して、世界を不幸に陥れて、それで主人公達が今度こそ復活を許さない勢いで、ラスボスを完全に殺しきってしまう訳ね。」

鼎「つまりこの手のシナリオの教訓としては、【天敵に対しては、中途半端に情けをかけたりせず、二度と復活しないように完全に殺しきれ】って事になるのかなぁ?」

逆沢「なんかそういう解釈をされると、少年向け古典的RPGなどが、ものすごく残忍なものに感じられてしまうんだけど・・・。なんかいかにも死刑制度マンセー的というか、憎たらしい悪い奴は殺されて当然的というか。」

愛原「まぁ勧善懲悪的な作品なら、それでも俺はOKというスタンスだけどな。時代劇で登場する悪役が正義の主人公にバッサリ斬られてこそ、爽快感が味わえるというのはやっぱりあるし。」

鼎「ただリアル路線だったり、シリアス路線で、こういうオチはちょっと疑問を感じなくもないけど・・・。」

逆沢「そもそも現実世界では、正義を気取っている側が、本当に正義の味方を名乗るに値するか?という根本的な疑問もあるしね。」

愛原「実にいいことに気付いたな。そうなのだ。つまり【殺人は悪】という大原則に染まりきっている俺を含む現代日本人にとって、殺人を肯定する方法はたった一つしかない。それは【あいつは殺されて当然】と思わせるという大前提だ。」

逆沢「まさしく死刑肯定派の根拠となる基本理論そのものね。」

鼎「だから最後に滅ぼされるようなラスボスは、とんでもない罪を犯した大悪人だったり、(生きているだけで)とんでもない災厄をまき散らす存在だったりするんだよね。」

愛原「うむ。そういう意味でも勧善懲悪ものは、分かり易くて実に良い。」

逆沢「でも逆をいえば、リアルにこだわり過ぎるほど、殺されて当然の大悪人なんて、そう多くはいない気もするわね。まぁ死刑に積極的な人と、否定的な人でも見解にはかなりの差が出るだろうけど。」

鼎「ヨーロッパなどでは、死刑制度自体が存在しない地域もあるよね。日本は死刑制度自体はあるけど、刑法の軽重でいえば欧米よりもずっと甘いという話も聞いたことがあるよ。」

愛原「強姦罪だけは、下手すると人一人殺すよりも重い刑期期間になる場合があるから例外だけど、それ以外は相対的には軽いだろうな。特に経済関係の罪に関する甘さは、さすがの俺からみても目に余る。日本人一人の平均生涯収入の数割に及ぶカネを着服しても、下手すると執行猶予で済む事もあるからな。人一人が10年働いても稼げない程の財産を盗んで人一人の人生を破壊しても、不注意で車で人をはねた場合より罪が軽いのか?と思う事もあるし。」

逆沢「まぁ、それはいえるかもねー。傷害罪や業務上過失致死傷罪の場合は、つい頭に血が昇ってとか、つい不注意でってケースも多いだろうけど、スリにしろひったくりにしろ詐欺にしろ贈収賄にしろ、経済関連の罪の場合は、ほぼ100%故意なんだから、もっと悪質性を問題視してもいいと思うんだけど。」

鼎「経済関係の罪を重くすると、政治家や、政治家を支えているお金持ち階級の人が困るから、それでなかなか手をつけられないのかも知れないよ。2ちゃんねるの前の責任者の人も、事実上、裁判所に命じられた損害賠償(慰謝料など)を踏み倒したままでも、それでも世間で通用していると聞いた事があるし。」

逆沢「そのうっぷんもあったせいかも知れないけど、時代劇では悪徳商人と、それに結びついた悪代官などの役人が、最もメジャーな大悪人として、斬られ役になってるわね。現代の日本の方では、どれだけ賄賂を渡しても受け取っても、それで死刑になる事は絶対にないから、せめて時代劇の中くらい死刑にしやがれって事で。」

愛原「賄賂を渡したり受け取る事が、現代日本で本来、どのくらいの罪に相当すべきなのかは俺には分からない。だが勧善懲悪もののファンタジーでは、恒常的に贈収賄を行ない続けているという一点をもって、【もしもこいつを野放しにしておいたら、これからも彼らはどんどん悪事を積み重ねる事だろう】という暗黙の了解もあるから、そういう意味で悪代官や悪徳商人を切り捨てる事は理にかなうともいえる。」

鼎「現実世界では、そこがちょっと難しいよね。【悪い事をした奴は、生かしておいたらこれからも悪い事を繰り返すだろうから、ただちに死刑】というのも飛躍が過ぎると思うし。」

逆沢「それ以前に、えん罪の問題とか、色々難しい概念もあるからねー。ファンタジーの世界なら、主人公が真の悪認定した敵キャラクターは、100%悪人だから、えん罪の心配も恐れず、ずばっと処刑しちゃえばいいんだろうけど。」

愛原「逆沢の指摘は、現実世界とファンタジー世界の最大の差の一つだな。ファンタジーの世界では、主人公が正義と認めたら、その行い自体が正義になる事は珍しくない。逆もしかり。だから主人公がラスボスの事を巨悪認定したならば、遠慮無くその敵キャラクターをズバっとやれる。ところが現実世界では、なかなかそうはいかない。現実世界でそんなファンタジーみたいな夢のシチュエーションを実現したいならば、おそらく一つしか方法はない。」

逆沢「何、その一つの方法って?」

愛原「いわゆる真の意味での独裁者になる事だ。ちなみにこれは、菅直人や橋下徹のような独裁者呼ばわりされている人間は絶対に含まれない。たとえるならば北朝鮮内のキム・ジョンイルや読売新聞社内でのナベツネのような存在。もしも彼らに対して【お前は独裁者だ!】と言い放ったとしたら、ほぼ間違いなくその独裁者自身の意志によって処断されるような存在と言えばいいかな?」

逆沢「ああー、そのたとえは納得だわ。つまり【お前は独裁者だ!】と当人に向かって言えるくらいの余裕があるなら、そいつは少なくとも独裁者に支配下にはないと。私がもしも北朝鮮の住人だったら、将軍様を讃えるしかなさそうだし、そういう褒め称える以外の評価をしようがない相手こそ、真の独裁者なのかもと、今更ながらに気付いたわ。」

愛原「自分が独裁者の場合のみ、自分が信じた正義に従って、気に入らない相手を自由に処断する事ができる。」

逆沢「でも、ちょっと待った。独裁者なら、正義もクソもないんじゃない。正義感に基づいてだろうが、単なる欲望のままにであろうが、自分の好き放題に気に入らない相手を処断できる訳だから。」

愛原「それが実は違うんだな。実は人間というのは、行動するにあたって自分なりの正義(自己正当化)が大抵、必要なのだ。全ての人間には大なり小なり良心が備わっている為、罪悪感を背負ったまま生きていくのは、なかなかどうして難しい。罪悪感の程度が重くなればなるほど、うつ病なども発症しやすくなり、下手すると自殺や発狂にもつながる。だからこじつけであろうが詭弁であろうが、気に入らない奴を処断する際には【あいつは悪い奴だから】と思いこむようになる。自分が正しいと思いこめば、罪悪感に悩まされる事もないからな。ちなみにこれは独裁者に従わされている住民も同じ。独裁者が流布した【あいつが悪い奴だから】に賛同する事で、独裁者に従う情けない自分自身も正当化できるからな。」

逆沢「あー、なるほど。それは小泉政権の時代にイラク戦争に賛同した時の日本政府の論調と同じね。【アメリカの方が悪いけど、怖いから支持します】ではなく、【アメリカの方が正しいから、アメリカを支持します】という論調だったし。【全く大量破壊兵器がないと断定して言えるか。説明責任はイラクが果たさないといけないとか悪魔の証明理論まで持ちだして、当時の小泉はアメリカの正当性を主張してたしねー。」

鼎「イジメをする人とか、嫌韓とかの人も、素直にあいつが嫌いだから攻撃しているという人はあまりいない気がするよね。何か自分を正当化する理由を無理矢理にでも探し出して、【生意気だから】とか【暗いから】とか【変わっているから】とか【みんなもそう言っているから】とか色んな理由を付けて、それで【あいつは攻撃されて当然だ】という自分なりの大義名分(正義)を掲げて攻撃したがる傾向があるよね。」

逆沢「大義名分もないのに相手を攻撃したり処断するのは後ろめたいけど、大義名分さえあれば、人はどこまでも残忍になれるって事かも知れないわね。なるほど。それでブッシュ大統領なんかも、【我々は圧倒的だから、どんな悪い事をしてもOKなのだ】みたいなセリフは言わずに、とにかく自己正当化だけは怠らない訳ね。」

鼎「という事は、【悪い奴だから攻撃したり処断する】のではなく、まずやっつけたいという結論が先にあって、その理論武装として正義(大義名分)が後付けされるケースの方が実は多いのかなぁ?」

愛原「これは俺のような架空ワールドを創作している人間にもつきまとう、実は重い重い(ある意味では罪深い)問題なのだ。戦闘という概念を伴う作品を創作しようとした場合、【やっつける敵】がどうしても必要になる。でもって、読者なりプレイヤーなりが罪悪感やストレスをためずに作品を楽しんでもらう為に、敵をやっつけてもいい理由を創作する必要にも迫られがちだ。」

逆沢「そう考えると、アンタもイジメっ子の人と大して変わらない立派なワルねー。わざわざ悪を作るなんて。」

愛原「まぁそう責めるな。俺自身、そういう自覚もあるせいか、悪役にもどうしても熱が入って、その結果、悪役の方が主人公よりも登場シーンが多くなるという本末転倒ぶりをさらけ出す事も多い。悪役は悪役として大成して欲しい為、嫌われているキャラナンバー1になって欲しいくらいの勢いで描ききりたいし、今作の助演男優賞はコイツだなと思うのは、大抵悪役側だ。」

鼎「ファンタジーの場合は配役の上での【悪役】だからいいけど、現実世界はそうじゃないから、安易に特定の人間やグループに悪のレッテルを貼って、一方的に攻撃や処断の対象にしたくはないよね。」

逆沢「まぁ、自分に変なレッテル貼られて処断される側に回る可能性も考えたら、そういう世の中は嫌ね。世の中には憎らしい人もムカつく人も多いけど、だからといってそれらを皆殺しにすればいいみたいな世の中は勘弁だわ。」

鼎「じゃあ、これからのファンタジー作品は、ラスボスをできるだけ殺さないような不殺系の作品が増えればいい感じもするよね。」

逆沢「不殺系か。バトルものの作品でも、そういう漫画とかは見なくもないわね。敵が怪物とか魔物とか異星人だと容赦がない作品も多いけど、相手が人間(あるいは人間味のある別種)なら殺さずに済ませる作品もそこそこはある気もするわ。」

愛原「天敵を殺さないなら、共存するか互いに不干渉に徹するしかないな。主人公達のコミニュティーにラスボスらが入ってきて、仲良くわいわいやれるように努力していくか、それができないなら旅に出てもらうなり、別宇宙に帰ってもらうなりして、関わり自体を断つようにし向けなければならない。」

逆沢「中には【戦闘後に心を入れ替えた満身創痍のラスボスが、自ら命を絶ってくれる】とか【別の悪玉キャラが現われて、満身創痍の敵キャラを殺してくれる】みたいな超ご都合展開もあるけどね。勝手に自殺してくれたり、別の誰かがラスボス(?)を殺してくれたら、主人公一行はヨゴレ役を引き受けなくて済むし♪」

鼎「最初の方に述べた【封印】って方法はどうかなぁ?」

愛原「封印という方法は、今風の言い方で言えば、牢屋に閉じこめるのとほぼ同義だからな。封印を施している期間中に更正なり教育なりできれば良いが、そうでなければ単なる時間稼ぎにしかならない。というか大抵の場合は【よくも今まで閉じこめたくれたな】とばかりに、より深い恨みを買う可能性の方が高い。そいつを封印中に更正させられる見込みがある(二度と再犯を起こしたくなくなる程の苦痛を与えるのも方法の一つではあるが・・・)か、いつでも再封印できる状況にある(要するに再犯を起こしたらすぐに対応できる環境にある)か、もしくは死刑にしたいけどそれは不可能な場合の非常措置と考えた方が良いだろうな。」

逆沢「なるほど。現代日本の場合は、犯罪を起こしたら罰せられる可能性が高い(逃げ切れる確率が低い)という大前提もあるから、それで刑が軽い(封印が緩い)という解釈もできるかもね。」

鼎「どんな微罪も不注意も起こさないなんて人間はいないし、誰でもつい魔が差したり車で人をはねたりする可能性もある以上、無闇に厳しい処断方法をとりたがる国は私は嫌だなぁと思うよ。」

逆沢「偏った正義感とか、えん罪で処断されるのだけは、私も勘弁ね。」

鼎「けど日本の場合は、偏った正義感で戦争に突入して国を傾けたり、被疑者が真犯人で無さそうな時ほど、かえって強攻策を強めて、戦争反対派を激しく弾圧したり、無理矢理自白を強制して起訴にもちこんだりするケースもありそうだけど・・・。」

逆沢「あーなるほど。自らの正義を確信している時もそれなりに残酷になれるけど、この正義のメッキがはがれそうになった時の方が、もっと残酷になる可能性もあるってか。そうしないと自分が逆に処断される側になりかねないから。」

鼎「いわゆる佞臣系のキャラクターがよく選ぶ手法だよね。自分が正しいと信じてやった事が裏目に出た時に、自分の保身のために別の誰かを悪玉に仕立て上げようというやり方は。」

愛原「それらはいわゆる恐怖政治の手法にもつながる手法だな。処断しようとしている側が処断される側に回らないようにする為には、権力づく武力づくで、自分に対する反撃を企む輩を無力化するしかない。ここで手心を加えてしまったら、先の例で言う戦争反対派や潔白な被疑者の反撃によって、自分達の身を危うくされる可能性があるからだ。」

鼎「恐怖政治というのは、処断する権限を持つ権力者自身が権力を失う事で、処断される側に回ってしまう可能性を回避する為に、過激な粛正という弾圧行為をもって、自分達に敵対する側の人間を次々消していって、恐怖で人を支配しようという政治手法の事だよね。」

逆沢「まさに目的のためなら手段を選ばないという感じね。本人は【正義の実現のために必要な措置】とか【いずれ民衆も分かってくれるはず】と思っているのかも知れないけど。」

鼎「反対派を粛清し続けたら、残るのは賛成派と諦めて黙っている人だけになっちゃうから、表向きは【民衆も分かってくれるようになった】みたいな状況に変わるかも知れないけど、こうゆうのは邪道だと私は思ったけど・・・。」

愛原「俺は共産主義自体を全否定する事はないスタンスなんだが、いわゆる現在共産主義国と呼ばれる国で最大の問題点なのは【正義】が前面に突き出すぎて、反対派に対する寛大さが全くない事だと思う。自分達の掲げる正義を絶対視している為、思想の異なる野党の存在など論外という立場で、【正義に反発する者は苛烈に処断すべき悪】になってしまっている事だろう。」

鼎「独裁者が支配している国の多くは、独裁者が掲げる正義に反発する者に対して、全く容赦がない気がするよね。」

逆沢「【悪は滅ぼされても当然】を率直に実現した結果が、恐怖政治ってか。なんか正義を盲信している方がよっぽど悪なんじゃないかという気がしてきたわ。」

愛原「といっても、俺は【正義をバカにする社会】の方がより無責任で危険だとも思っているから、正義の価値そのものは否定しないけどな。重要なのはむしろ寛大さの方だろうとも思っている。」

逆沢「寛大? 要するに悪い奴に対しても大目にみろって事か?」

愛原「うん。正義が先鋭化しすぎると、ナチスドイツによるユダヤ人虐殺みたいなものになってしまう。たとえば国民の多数決で【B型の九州人】弾圧法案が提出されたとしよう。【財政の危機に対応する為、遺伝子的に劣悪なB型の九州人限定で財産を没収して、強制労働にあたらせる】とかな。」

逆沢「はん。そんなアホな法案が通るはずがないわけないじゃない?」

愛原「果たしてそうかな? 人は追い詰められると何をするか分からないぞ。このままでは国が滅びるみたいな状況であおられたら、ユダヤ人虐殺のような少数派の弾圧行為くらい平気で起こると、俺は思っているぞ。今でも在日朝鮮人に対して極めて厳しい態度を取る人が少なからずいるように、多数派が【あいつらが諸悪の根源だ】と言いだしたら、どんな民主主義国でも俺は起こり得ると思っているけどな。」


逆沢「な、なんという多数派の横暴・・・。」

愛原「イジメを見て見ぬふりをする人が多くいる事からも分かるように、【もしも自分が少数派の味方をしたら、自分も迫害される側に回りかねない】ような状況ができてしまった場合、心の中で【彼らに対する理不尽な弾圧はなんかおかしい】と思っている人がどれだけいようが、案外、この手の法案は簡単に通ってしまうと俺は見ている。積極的に賛同まではしなくとも、大半の国民は少数派への弾圧法案を見て見ぬ振りしてそうだ。」

鼎「つまり民主主義国であろうが共産主義国であろうが、恐怖政治のようなものは起こり得るって事かなぁ?」

愛原「ナチスドイツも、元々民主主義的な制度から台頭したものだからな。過激なカリスマが【あいつを殺せ!】と叫んで、それに民衆が賛同したら、とりあえず恐怖政治のできあがり。後で民衆達がおかしいと気付いても、そのカリスマに反発したら、今度は自分が粛正される立場になりかねないから、大抵の人間は黙ってる。東日本大震災直後の【不謹慎ブーム】の時もそんな感じだった。不謹慎ブームに異を唱えようとするだけで、【不謹慎だ!】と罵られて悪玉にされてしまう。」

鼎「そういう意味では、日本の刑は世界的にみて軽すぎると言われてるけど、寛大さという意味では合理的だったのかなぁ?」

逆沢「日本は世界的に見てトップクラスの脱獄の低さで知られているけど、刑務所にいた方が快適というのもありそうだしね。この前、広島で起きた超久しぶりの脱獄事件の顛末みても、そんなオチだったし。」

愛原「刑が厳しくなればなる程、自首する率は当たり前のように下がるし、追い詰められた容疑者が劇烈な抵抗を示したり、死人は口なしとばかりにただの窃盗犯が目撃者を容赦なく殺す確率も上がるからな。刑務所内の暴動や脱獄の確率も、当然のようにして上がる。」

逆沢「日本の刑の欠点は、むしろ被害者への目線の気がするわ。刑が甘すぎて被害者の泣き寝入り率が高くなりすぎっていうか。」

愛原「それには心から同感だ。」

鼎「けどという事は、民衆が寛大さを失って過激になっていくってのは、色んな意味で危険すぎるって事かなぁ?」

愛原「まぁ、好ましくはないな。ただ今の日本の政治は、既得権益層の壁に阻まれて、世の中が求める変革のスピードに全く追いついていない。変革のスピードが遅すぎれば、その遅れを取り戻す為、よりスピード感のある過激な改革を求める声が民衆の間から出るのは当然だ。」

逆沢「まぁ震災直後の時も、【菅が辞めない限り、震災復興には協力しない】と野党がごねたり、今でも与野党ともに消費税の賛否もまとめられず、ただ足の引っ張り合いをしてる有り様だしね。スピード感ゼロというか。」

愛原「まさしく革命前夜の光景そのものだな。明治維新の時もフランス革命の時もそうだが、現行の政権が古い既得権益にこだわって全く前に進まない状態というか。それで民衆のいらだちが高まっている。にも関わらず民主党は、比例削減80とかバカな事を言って、保身ばかり考えている。当の本人達は、自分達の信じる正義の実現の為に必要な方法と思っているのかも知れんが。」

鼎「恐怖政治の指導者とかもそうだけど、自分の権力に固執する人や、自分の正義を盲信する人は、自分が一歩身を退く事で世の中が良くなる可能性とかは、全然考えたがらないのかなぁ?」

逆沢「むしろ【反対派が邪魔をするから、上手くいかないのだ】と考えてんじゃない? だから恐怖政治を行なって反対派を一掃しようとしたり、比例ばかり削減して自分達の権力をより強化しようとするんだろうし。」

愛原「議員定数削減の流れ自体には反対しないので、俺としては小選挙区枠を200以上削減するか、小選挙区制度自体廃止するなら、比例削減80もOKだけどな。重要なのは、出来の悪い政権が速やかに去れるような制度に変えていく事。出来の悪い政権がますます居座りやすくなる制度への改悪は、断じて許し難い。」

逆沢「けどブッシュ大統領に限らず、政治家という人種自体、人並み以上に自分の正義を確信したがる生き物だしねー。反対者が当選しにくい制度に変えたがるのは当然のような気もするし。」

鼎「寛容の精神で与野党が話し合いでまとまれば最高なんだけど、今の政治家のバックには利権団体がいるから、安易に妥協もできないし、それで数の暴力に訴えたがる一面もありそうだよね。」

愛原「話し合いの余地がないなら、勝者が最も苛烈な処断方法を取りたがる心理は、まぁ理解できる。ファンタジーの主人公達が、復活した魔王などを完全消滅させたがるのも、話し合いの余地が全くないからだろう。生かしておいたら、またいつ刃向かってきて、自分達に災厄を与えてくれるか分からない存在というか。」

鼎「つまり民主党から見たら、自民党以外の党は話し合う余地がないので消え去ってもらうしかない存在と判断したという事かなぁ?」

逆沢「自分達の方から妥協するとか消え去るという選択肢はないのかねー。民主党も自民党も、国民にノーを突きつけられたからこそ、今の惨状があるのに。」

愛原「民主党は現時点での勝者ではあるからな。ファンタジーの主人公がラスボスと妥協したがらないのと根底は同じ。自分達に余裕があれば、もう少し寛大な政権運営もできるのだろうが、余裕がなくなったからこそ、苛烈な姿勢に転じ始めたという事だろう。敗戦濃厚な国ほど、かえって戦争反対派に対する取り締まりを強化したがるようなものというか。」

逆沢「そのたとえは分かり易い。それでJAL相手には年金削減案も強行できたのに、東京電力にはひたすら弱気って事ね。前者の時には国民の支持があったけど、今はそれもないから、電力労連の支持を失うリスクは取れないという事で。」

鼎「つまりラスボスがいつでも倒せるような弱い存在だった場合は、主人公達はもっと寛大な処断方法を選んだ可能性があったという事かなぁ?」

愛原「それはあり得るな。人間は余裕があるほど、寛大にもなれるからな。俺が戦国SLGをプレイして敵武将を捕虜にした際にも、戦況に余裕があれば登用に応じなかった武将をあっさり逃がすが(再登用のチャンスを期待して)、余裕が無ければさっさと斬るからな。」

逆沢「危ない、この人〜!!!」

愛原「ともかくこの手の問題で肝心なのは、もしも余裕のある時期に恵まれていたならば、その時にさっさと事を進めるという態度だ。お互いが寛大でいられる内にできるだけ話を前に進めようという事。」

鼎「お互いに寛大でいられる内は、何もしない方が角が立たないからという理由で、お互いに何もしない方が多い気もするけど・・・。」

逆沢「RPGの勇者や王様達も、封印が解けて魔王が大暴れするまでは、抜本的な対策を試すこともせず、何もしない事が多いしね。」

愛原「【本当にヤバい状態になるまで何もしない→パニックになるほどヤバい状態になってから慌てて何とかしようとするから、過激な方策を採らざるを得なくなる】ってか。【後悔先に立たず】とはよく言ったものだな。」







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