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愛原様のたわごと(12年4月14日)




愛原「ようやく春が実感できるようになってきた。製作も上向きだし。ただ【春眠暁を覚えず】だけが難点ではあるが。」

逆沢「製作の油が乗ると、つい時間を忘れてしまうのよねー。明日も仕事があるはずなのに、気がついたら恐ろしい時間になってて、その分、睡眠時間がかなりヤバい事になったりして。」

愛原「本当にヤバいヤバい。生活リズムを早く安定させないとな。」

鼎「新年度という事で、初めて社会人になる人とかも多そうだけど、学生と社会人では生活リズムが結構違うから、そういう人達にもなんとか乗り越えて欲しいよね。」

逆沢「五月病という言葉があるように、実際には4月よりも5月あたりが一つのヤマ場になりそうだけどね。」

愛原「もう1ヶ月か2ヶ月もすれば、自分のいる職場がブラックかどうかも含めて、ある程度は見えてくるだろうな。そういえばアンケートの中に、とてもうれしいコメントもあったぞ。詳細は非公開だから一切触れないけど、ウチのプレイヤーの中で今年から公務員として働くことになった方もおられるようだ。」

逆沢「おおっ。公務員といえば女性が結婚相手となる男性に望む職業ランキング一位らしいわね。そりゃあ、めでたい!」

愛原「実際には、公務員といってもピンキリだけどな。作者の同級生にも公務員が何人かいるが、それ公務員?みたいな仕事をしてるものも案外いるし。」

鼎「公営の動物園とか交通局とかに勤めている人も、普通に公務員だよね。」

逆沢「まー、でも非公務員一筋の私が報道など通じて感じるイメージでいえば、【公務員=安定性抜群で給料も多くて仕事も割とラクチンで利権ズブズブで変態も多い】みたいなイメージもあるけど。」

愛原「お前、この流れで、よくそんなムチャクチャ言ってくれるよな・・・。」

逆沢「けどアンタ自身も、割と公務員には批判的なスタンスなんじゃないの?」

愛原「まぁ批判したい部分も山ほどあるが、実情としてはかなりピンキリだからな・・・。公務員でも過労死する者は普通にいるし。あと変態公務員が何となく多く感じたとしてもそれは、民間人なら三面新聞にも載らないような罪でも公務員がやったらニュースなるからに過ぎないぞ。」

鼎「本来は誰であろうとやってはいけない事だから仕方ない事かも知れないけど、公務員の人は特に、飲酒運転とかわいせつ行為とか万引き行為とか、そういう犯罪行為をすると人生転落まっしぐらだから、人から後ろ指を指されるような行いには警戒する必要があるよね。」

逆沢「あと公務員の人は、どうしても個人情報とか許認可権とか、裏社会の人が欲しがる重要なものを握っているから、弱みをみせて脅されたりしないようにも気をつける必要もあるしね。」

愛原「公務員は本当にピンキリ過ぎる。部署が変われば内容も激変するし、同じ部署でも、所属する県や市などが変わると、やはり職務内容も給与もかなり変わるからな。」

逆沢「市民の立場からすると、隣の市に引っ越したからと言って、極端に収める税金の額や市民サービスが変わる気もしないけど、実際は結構差があるものなのかな?」

愛原「結構変わるぞ。たとえばゴミの分別とか収集方法なんかは、かなり変わる可能性がある。役所内の事情面に限って言えば、神戸市のゴミ収集担当部門なんかは実質労働時間が非常に少なく(午前中にゴミを集めた後は、実質自由時間になってしまう為)、午後はキャッチボールとかしながらだらだら過ごすだけになっていたのがマスコミにバレて騒ぎになった事があるし、じゃあ他の市町村はといえば、しっかり民間委託(アウトソーシング)やって上手に経費と人員の効率化を進めている所もあるし。」

逆沢「どっかの市では、委託した民間ゴミ処理業者が不法投棄していて大問題になった所もあるらしいから、それも良し悪しだけどね。」

愛原「赤字の市バス事業にしても、橋下市長率いる大阪市なんかはバス運転手の給与引き下げで対応する事にしたらしいが、路線を民間に移譲して市バス自体を廃止した所もある。このように所属する役所が違えば、同じ部署であっても中身が全然変わってくる。」

鼎「市民の立場でも、この市は水道料金が高いなぁとか、この市は高齢者サービスが充実しているなぁとか、この市は中学校でも給食が当たり前なのかとか、この市はハコモノだらけだなぁとか、この市の下水道普及率はかなりひどいとか、差を感じる事もたまにあるよ。」

逆沢「そういや年度末ギリギリの3月末に、大飯原発のある福井県おおい町では年被害額500万円の獣害対策の為に18億円かけてフェンスを作る事を決定したらしいわ。総延長160キロメートルだって。」

愛原「総延長160キロというと、大阪〜名古屋間の直線距離が140キロだから・・・うーん、想像できない距離だな。ていうか年被害額500万円なら、元を取るのに360年かかるのだが・・・。というか360年もフェンスの寿命持つのか? 仮に2012年から360年さかのぼると1652年だから、徳川3代将軍家光が死去した翌年になるのだが・・・。」

逆沢「年被害額が500万円だったら、毎年500万円ずつ被害補償に使った方が、ずっと合理的だと思うけど。それでも360年は持つわけだし。何も無理に公共工事しなくても。」

鼎「私は予算消化の為だと思ったけど・・・。年間500万円の被害額といってもおおい町の人口で割ったら、一人あたり年580円ほどにしかならないし、役所が大きく問題視しなければならない程の被害額なのかなーという気もしなくもないし・・・。」

愛原「うーん。しかし本当におおい町、掃いて捨てるほどのカネ持ってるんだなぁ〜と思ったわ。所属する自治体が変わったら、こんなに豊かさが変わるんだという印象だわ。」

逆沢「てかそんな無駄銭を地方に配る余裕があるなら、増税どころか減税しろよって感じなんだけど。」

鼎「でも逆にかなり総人件費なども切り詰めて頑張っている所もあるし、総論だけで公務員を評価するのも難しいよね。」

愛原「歳出全体からみた生活保護の比率にしても、高い所は20%くらいあるのに対し、低い所は2%程度のところもある。どの公共団体もどうせ似たようなものだろと思いこむのは相当危険で、人件費にしろ公共事業費にしろ公債発行比率にしろ色んな項目を比較しながら(もちろんその都市特有の事情や過疎過密の問題とか複数の要素も加味する必要はある)、ここはよく頑張ってるとか、ここは腐ってるなぁとか、ここはずるいとか、個別に判断するようにしないと駄目だ。」

鼎「日本人といっても色んな日本人がいるように、公務員といっても本当に色々あるから、レッテルを貼るような感じで単純にひとくくりにするのもまずいよね。」

逆沢「でも共済年金の問題とか、ひとくくりにできそうな部分に関しては、私ははっきりとひとくくりにして、非難も攻撃もするけどね。」

愛原「さてそんな公務員であるが、実は7lcwやひとそれの主人公達も実は公務員であったりする。今回はそんな【公務員ヒーロー】をテーマにして、色々くだらない話をしてみたい。」

逆沢「公務員ヒーロー? つまり公務員が主人公のお話という事か?」

愛原「別に主人公である必要はないけどな。たとえばウルトラマンシリーズに登場するウルトラ警備隊なんかも、位置づけとしては怪獣達と戦う公務員ヒーローの団体だよな?」

鼎「とするとエヴァンゲリオンに登場するネルフとかも、公務員ヒーローの団体の扱いに入れていいという事かなぁ?」

愛原「実態はうさんくさそうだが、国民目線から見たら使徒とかいう得体の知れない化け物と戦う組織だから、一応、公務員ヒーローの団体という事になるんじゃないのか?」

逆沢「じゃあ時代劇に登場する水戸黄門とか暴れん坊将軍とか大岡越前とか遠山の金さんとかも、公務員ヒーロー?」

愛原「内偵段階では身分を詐称している事が多いけど、最終的には公権力にモノを言わせているし、公務員ヒーローなのは間違いないな。」

鼎「こうしてみると公務員がヒーローの物語は、結構多そうな気がするよね。」

愛原「水滸伝の主人公の宋江みたいに、スタートは反権力側だったのに、いつの間にか官軍側について官職持ちの公務員になってるパターンすらあるしな。」

鼎「それを言ったら、RPGやSRPGの世界でも、最初はレジスタンスとか傭兵団とか冒険者とかいう民間組織の立場だったのに、気がついたら王女様と仲良くなったり、騎士に叙任されたり、国を建てたりして、公務員にクラスチェンジしちゃう人もかなり多いと思うよ。」

逆沢「うーん。公務員というのは、やっぱヒーローにとっても憧れの職業なのかねー。」

愛原「まぁ自分達を正当化できる錦の御旗のようなものなんじゃないのか? 少なくとも国民が国を支持しているという前提が成り立つ場合は、その国を保安する側に居るんだぞという事自体が、正義の証みたいな感じで。」

逆沢「私としては、国や政府そのものが悪いとまでは言わなくても、国や政府に巣くう悪代官みたいな政治家や役人達をブチのめすような作風の方が好きなんだけどねぇー。」

愛原「必殺仕事人とかザ・ハングマンのようなパターンだな。RPGでも将来的に公務員になる気がないなら、こっちのカテゴリーに入るだろう。あと【非公務員=反権力】かといえば、これは全然違う。これはいわゆるセカイ系作品で最も顕著なパターンでもあるが。」

鼎「セカイ系というか、箱庭世界型の作品の場合は、主人公達が警察などの公権力に全く頼ろうとせずに、自力で悪を打倒しちゃう場合が多いよね。」

逆沢「場合によっては、国民も政府機関も、実は少し前まで世界滅亡の危機にあった事すら気がつかないまま、正義の味方の活躍によって世界が救われてしまっている事すらあるわね。」

愛原「逆を言えば、セカイ系でない作品の場合、ヒーロー達が公務員であるか否かは、物語として少なからず影響が出てくると思われる。」

逆沢「仮にヒーローがヒーローとして活躍する以前から既に公務員であったなら話が早いけど、そうでなければどういう扱いになるの?」

愛原「非公務員系ヒーローのパターンはいっぱいあるが、俺が今思いつく範囲ではこんな感じかな? @国や政府などに正体がバレないようにこっそりと活動している。A国や政府などと協力関係にある。もしくはそれらから黙認されている状態。B国や政府すら容易に手を出せないような巨大な力を持っている(もしくはそういう勢力に属している)。

鼎「@は、一番メジャーで分かり易いパターンだよね。」

逆沢「変身ヒーローに多そうなパターンの気もするわね。仮面ライダーとか魔法少女系作品も、このグループに入れた方がいいかな?」

愛原「まぁもしも仮に、仮面ライダーの正体が国や政府に存在がバレたら、(リアル路線なら)いずれ研究対象にされそうだし、俺が仮面ライダーの立場でも、まぁ正体を隠したくなるかも知れないな。」

逆沢「Aはどういう存在だ?」

愛原「私立探偵とか、冒険者とか、傭兵団メンバーとか、ロボット研究所所属メンバーとかが、これに相当すると思われる。」

逆沢「あー、そういえば探偵ものの主人公は、なぜか公務員じゃなく民間人の立場なのよね。」

鼎「民間人の私立探偵には、逮捕権とかがない不自由さがある反面、組織の論理に縛られず、興味のある事件を徹底的に追い回せる利点もあるし、何よりも機動性があるよね。」

逆沢「あー、なるほど。それなら傭兵団の意義も分かるわ。国軍の立場だとはばかられるような非人道的な事も傭兵の立場ならしやすいし、そのせいか、21世紀になっても未だにアメリカやイギリスには傭兵会社があるくらいだしねー。」

愛原「研究所という立場も、使いやすいぞ。政府や大企業にスポンサーになってもらって、新エネルギーやロボットの研究を進め、場合によっては傭兵稼業も兼ねる形で悪の組織とのバトルすら引き受ける。もちろん民間団体だから、公務員のような細かい制限は受けず、メンバーが未成年だろうが、無給無保険だろうがやりようによってはOK。」

逆沢「で、最後はBと。これは裏社会の組織とかになるのかな?」

鼎「政府与党の大物すらアゴで使うような黒幕が率いていたりすると、何となく雰囲気がでそうだよね。」

逆沢「HUNTER×HUNTERに登場するハンター協会なんかも、国を上回る力がある組織として描かれているらしいわね。」

愛原「大財閥を率いているなどの理由で、カネの力で一国の総理くらい自由に操れるとか、あるいは忍者組織のような秘密の集団を率いているから、やはり国を裏で自由に操れるとかのパターンも考えられる。」

逆沢「どっちかというと、悪の組織の方がふさわしい気もするけどね。Bのパターンは。あまりに強大すぎて。」

愛原「Bのパターンの場合、味方も強大な分、敵もより強大にならざるを得ないな。世界が滅亡するか否かみたいな作品ならしっくりくるが、敵があまりにもしょぼいと、色々泣けてきそうだ。」

逆沢「一人の女の子のハートをゲットする為だけに財力に物を言わせて、学園の経営権をあっさり乗っ取るような作品も、世の中にはありそうな気もするけどね。」

愛原「・・・おおい町にも負けないすさまじい財力の無駄遣いだな。嫌いじゃないけど。」

鼎「つまり非公務員系ヒーローの場合は、国や政府といった公的機関と、どういう関係を築くかが重要になりそうだよね。公務員と敵対するor公務員と関わり合いになりたくないなら@。公務員と対等の立場で付き合いたいならA。公務員を上から目線で振り回したいならBという事で。」

愛原「一方、公務員ヒーローの場合は、主人公達がいるポジションが物語のカギとなると思われる。」

鼎「ポジションというと、役職とか地位とか所属とか、そういう感じのもの?」

逆沢「まぁ、所属の重要性に関しては、私でも分かるわ。犯罪を取り締まりたいなら警察。敵国を攻撃したいなら国軍。素晴らしい学校を作りたいなら教員みたいな感じで。」

鼎「だけどリアルを重視すればするほど、実際の公務員はやれる事が限られるのが難点だよね。実際の警察は、昔はやった西部警察みたいな破天荒な活躍とかは絶対にできないし。」

愛原「現実の警察は、裁判所の許可をもらわないと、ガサ入れすら制限される事も多いくらいだからな。もっとも最近は視聴者がリアル路線を好む事もあって、割と現実に近いスタイルの刑事ドラマに変わっているようだが・・・。」

逆沢「それはそれでメンドクセ・・・。私にはやっぱり規律や法に細かく縛られない非公務員系ヒーローの方が向いてるわ。バレない犯罪は犯罪じゃないじゃないけど、必殺仕事人がこっそり悪人を成敗しようが、仮面ライダーが怪人をどれだけ爆死させようが、バレなきゃOKだし。」

愛原「まぁ、無理にリアル路線に近づける必要はないけどな。水戸黄門や暴れん坊将軍路線も俺は好きだし。」

逆沢「国のトップがヒーローとして最前線に出てきて巨悪と戦うなんか、マンガ的展開の最たるものだしね。まぁ、だからこそ面白さとインパクトが倍増するような気もするけど。」

愛原「国家元首クラスの公務員をヒーローにした場合、ヒーローの能力や意思が国自体にも素直に反映されやすいというメリットがある。ウチのゲームでは、7lcwがちょうどそのパターンだな。」

鼎「万能系カリスマの宮田さんとか、真面目で厳格な大神さんとか、平和的な婆娑羅さんとか、熱血で突撃一辺倒の辰巳さんとか、知謀に秀でた利権政治家タイプの黒藤さんとか、いずれも自分の志向(嗜好)と能力に応じた国造りをしてる感じだよね。」

逆沢「アンタだけは、反主流派に色々振り回されたりもして、とても思い通りの政治を行なっている感じがしないけどね。」

愛原「俺は、適度に無能という設定のキャラだからな。宮田や黒藤のように、有能と設定されているキャラが国家元首なら、国家元首の思い通りの国造りができるだろうが、俺はそういう設定じゃないので、国自体もそんな中途半端な感じになっている。」

鼎「つまりヒーローが善良かつ万能なカリスマ系であればあるほど、【民衆がみんな喜んでいます。メデタシメデタシ】というエンディングという形になりそうだよね。」

愛原「宮田や婆娑羅のシナリオのエンディングなら、当然そういう具合になるな。俺が主人公なら中途半端なメデタシエンド。黒藤が主人公なら、いかにもアレなエンディングになる。」

逆沢「7lcwの方は国家元首がヒーローだったけど、ひとそれの方は逆で、同じ公務員ヒーローでも末端の方ね。これも狙った設定なのか?」

愛原「当然。ちなみにひとそれのスタンスは、平成以降の刑事ドラマの主人公とか、銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーのように、ムカつく目上というのを一つのテーマにおいてある。」

逆沢「ああー、分かる分かる。刑事ドラマだと、キャリア出身の警察官僚とか、本部からの出向者とか、場合によっては上層部自体が、主人公にイヤミな事を言ったり、捜査の足を引っ張ったりするのよね。」

鼎「銀英伝のヤン・ウェンリーさんも、腐った政治指導者とか、無能な上官とかに足を引っ張られてみたいなシナリオだよね。」

愛原「つまり同じ公務員ヒーローでも、主人公を上層部に置くか末端に置くかで、物語の視点が大きく変わってくるという形になる。まぁ無論、主人公より目上のキャラを無能キャラとか悪人キャラにしなければならない訳でもないのだが・・・。」

逆沢「ま、尊敬に値する先輩とか上司というキャラクターを登場させても、それはそれで面白いとは思うけどね。けど自分より目上の人の全てが尊敬に足るいい人ばかりだと、主人公がミジメになりそうだから、やっぱり腐った目上役のキャラクターも欲しいわね。」

鼎「けど目上の人が悪役の場合、主人公はどう対処すればいいのかなぁ? ほら、たとえば暴れん坊将軍は国のトップだから、悪代官も容赦なく成敗できるけど、一浪人とか下級武士の立場で、合法的に悪代官を成敗する事はできないでしょ?」

逆沢「あ、そうか、そうなのよねー。考えてみたら、悪い敵より、悪い味方の上司の方が、成敗したい人からすれば厄介なのよね。一兵士の立場でも、敵国の司令官を撃ち殺す事はできるし、撃ち殺せば英雄にもなれるけど、一兵士が味方の上官や自国の政治家を撃ち殺したら、逆に軍法会議にかけられて処刑されかねないし。」

愛原「非公務員ヒーローや国家元首クラスの公務員ヒーローなら、悪代官をやっつけるのは難しくない。だが下っ端の公務員ヒーローは、(公務員である限り)目上の悪代官をやっつけるのは非常に難しいという弱点を抱える。だが、だからこそ都合の良い側面もある。」

逆沢「都合の良い側面というと、たとえばどんな感じで?」

愛原「一番のメリットは、失敗を他人のせいにできる事だ。」

逆沢「は? もう少し具体例がないと、イメージがわかないんだけど?」

愛原「銀英伝のヤン・ウェンリーの立場を例に取ると、彼の周りには無能な提督や利権政治家がいっぱいだ。しかしだからこそ【劣勢を挽回できる】というシチュエーションが再現しやすいわな。仮にヤン・ウェンリーが最初から大物政治家だったり統合作戦本部長クラスなら、最初から無謀な戦い自体をしないから、劣勢自体にならないわけで。」

逆沢「ああ、なるほど。無能な上司とかがいっぱいいてくれるおかげで、ヤン提督の凄さが光るわけね。」

愛原「ヤン提督がどれだけ頑張ろうが、それ以上に無能な政治家らが足を引っ張ってくれるから、クーデターは簡単に起きるし、国も滅びるし、ヤン提督は常に劣勢の立場に立つ事ができる。」

鼎「とすると、暴れん坊将軍などの作品には、一点だけ大きな矛盾があるという事かなぁ? 暴れん坊将軍はすごい名君って事になってるのに、悪代官はいつまで経ってもいなくならないし、江戸の街も永遠に犯罪の巣窟みたいになってるしみたいに・・・。」

逆沢「なるほどね。自分達の立場をあえて限定してしまう事で、世の中のある色んな問題を、全て政治のせい、官僚のせい、財界のせい、外国のせいみたいにできるって事ね。」

愛原「ひとそれの世界観も同様で、与党政治家らがアメリカのいいなりだったり、超素質者に対する差別政策を推進し続けるからこそ、カオス戦士はいつまでも減らないしみたいな所はかなりある。政治家や総本部が立派すぎると、物語が最初から成立しないのだ。」

逆沢「ああ、なるほど。よーく分かったわ!」

鼎「けど国や政府の悪行を非難する立場なら、やっぱり非公務員ヒーローの方が動きやすいと思うけど・・・。」

愛原「それは、主人公の性格設定と動機次第だな。たとえば銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーが最初から非軍人だったとしよう。この場合、ヤン提督は愛する民主主義を守る為に、あれだけ頑張れたと思うか?」

逆沢「うーん。それはイメージできんわ。せいぜい売れない小説家やって、歴史の中に埋もれていたと思うし。」

鼎「ヤン提督は、提督だったからこそ、活躍の場に恵まれたという側面もありそうだよね。」

愛原「それと同じ。主人公に強い意思や能力があるなら、公務員であろうと非公務員であろうと、己の理念を貫くために全力を出せるであろうが、大抵の人間はそうじゃない。刑事(公務員)と私立探偵(非公務員)で置き換えても同じ。刑事なら動機はさほど重要ではない。職務命令であれば否応なく、事件に首を突っ込まないとならないので、少々スチャラカなキャラクターでも物語は動く。だが私立探偵の場合は、もう少しちゃんとした動機がいる。私立探偵本人に、その事件に関わりたくなる強い動機があるか、依頼者に頼られるだけの実績などがあるかなど。」

鼎「そういえば現実世界の探偵さんは浮気調査などがほとんどで、余程の実績とかがないと、大きな事件に関われる機会はあまりないそうだよね。」

愛原「非公務員の立場で事件に積極的に首を突っ込みたいなら、まだフリージャーナリストの方が現実味があるな。だがジャーナリストの場合は、それを記事にしてナンボだから、そこは絶対に忘れてはならないが。」

逆沢「私立探偵もフリージャーナリストもなんか微妙だわ。他にいい職業はないのか? 巨悪と戦える非公務員は?」

愛原「非現実的な職場でもいいなら、何でも屋でも殺し屋でも私立学園教師でもOKだが、現実路線だと難しいなぁー。料理人でも医者でも会社員でも、物語自体は作れるが、巨悪と戦うとなると・・・、島耕作や山岡士郎の立場で巨悪と戦ったり、政治を変えたりするのはさすがにしんどそうだ。」

逆沢「結局、ヒーロー稼業をやりたいなら、公務員が一番近道って事か?」

愛原「少年漫画やゲームに使えそうなバトルを伴うシナリオだけに限定すれば、公務員が一番無難なのは間違いない。なぜなら公務員だけが合法的に暴力を肯定しやすいからだ。我々非公務員は、正当防衛など特殊な環境を除けば、いくら正義の味方をきどったところで暴力行為自体がアウトになる事が多い。だが公務員の立場なら、(職業や状況にもよるが)暴力で悪を制圧する権限があるし、それ以上に、そういう場面にでくわす確率もはるかに高い。」

逆沢「事件に出くわす確率か・・・? ああ、なるほどねー。私達、民間人が交通事故や暴行事件にでくわす確率と、警察の人が通報を受けて交通事故や暴行事件に立ち会う可能性も、そりゃあダントツに違うもんね。」

鼎「つまり暴力で正義を主張するようなシナリオほど、公務員ヒーローに向いているって事かなぁ?」

愛原「どうしても非公務員ヒーローにこだわるなら、公権力に正体(や活動ぶり)がバレない自信があるなら@。公権力に必要としてもらえるような特殊なスキル(と信頼関係)があるならA。公権力にも圧力をかけるパワーあるならBという道もあるがな。ちなみにひとそれの世界観では、日本政府自体にカオス戦士を野放しにする意思がない為、Aだけは成立せず、Bのような巨大組織も現状では設立されていないので、カオス戦士として生きる道を選んだ時点で@にならざるを得ない。」

逆沢「@タイプのカオス戦士になるか、ロー戦士という名の公務員ヒーローになるかの2者択一って事か?」

愛原「作者は迷いに迷って、主人公に公務員ヒーローとしての道を歩ませる事にしたみたいだけどな。非公務員ヒーローとして生きるには、強い意志と高い能力が必要で、これはしんどすぎると思ったみたいだ。(ヒーローとしての活躍にこだわらず、ただひっそりと生きるだけならどちらでもいいが、それでは物語が成立しない為パス。)」

鼎「同じ公務員なら、悪代官としてよりも、公務員ヒーローとして日々を頑張っていきたいよね。」

愛原「たとえば生活保護費一つ巡っても、暴力団員や働く意志もないボンクラだけ優遇するような公務員なら悪代官寄りだろう。だが厄介な事に、裏社会の人間ほど、生活保護費の詐取テクニックにも秀でており、(場数もこなしているから)不備のない申請書類をきちんとそろえてくる。その結果、裏社会関連の人にだけ生活保護費が手厚く支給され、口べたで書類の不備も多いが、本当にそれを必要としているシロートの申請ばかりはねつけられる事も多いらしい。」

逆沢「けど現実問題として、今時の公務員志望者は、社会正義の実現に貢献したいという動機ではなく、ただ単に生活の安定だけが動機の人も多いらしいからねー。そう言う人は、機械的に書類の形式だけを見て、生活保護費を出すかどうか判定しそうだわ。」

鼎「学校の校長先生でも、学校を少しでも良くしようとして改革に乗り出すような事はせず、逆に定年まで問題さえ起きなければそれがベストといわんばかりに、イジメ事件なども無かった事にしてしまう人が増えているらしいけど・・・。」

愛原「そういう連中は、公務員ヒーローとは真逆の人種だな。公務員ヒーローというのは、時には危険を顧みず世のために貢献できるような、まことに尊敬すべき人間の事をいうのだ。逆にもしも警察官や学校の先生や政治家が、己の保身や利権ばかり考えたらどうなるか? 公務員は、他のどの職業と比べても、最も正義の味方として活躍しやすい誇るべき職業であると同時に、最も滅ぼされるべき汚らしい悪玉にもなりかねない、そんな因果な職業でもある。」

逆沢「公務員は、己の行い次第で、簡単に正義の味方にも悪の戦闘員にも変われる特殊な職業ってか。」

鼎「市民の悩みに親身に応えて支えてくれる職員さんや、悩める生徒をきちんと導いてくれる教員さんとか、困った時にいち早く駆けつけてくれる消防士さんや警察官さんとか救急隊員さんとか、利権団体との戦いに全力をあげてくれる議員さんとか、ヒーローの名に値する立派な公務員さんもたくさんいるよね。」

逆沢「私達の生活は、利権政治家らによって苦しめられてもいるけど、素晴らしい公務員ヒーローの皆さんによって、生活の安全や秩序や治安を守られている所も結構あるしね。」

愛原「ヤン・ウェンリーや三方監督がそうであったように、不快な目上による理不尽な命令に苦しめられる事もあるだろう。妥協しなければならない事も多いだろう。だがそれでも、組織の汚い部分を当然と思わない、そういう自分なりの良心と誇りを決して見失わない高潔な公務員が多くいて欲しいと思う。全ての公務員は、民間人以上にヒーローになれる環境にもあるのだから。」

鼎「子供達にも憧れてもらえるようなヒーローでありたいよね。」













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