トップページに戻る


愛原様のたわごと(12年4月30日)





愛原「本棚の整理をしてると、ついつい本を読みふけってしまい、作業が全然進まない。」

逆沢「テキパキと後片付けができる人からすると、見てるだけで腹が立ちそうなタイプね。本なんか整理した後でもゆっくり読めるんだから、とりあえず先に片付けろって。」

鼎「でも何度でも読み直したくなる本がたくさんあるってのは、とても幸せなことだよね。」

逆沢「そういう事ばかりしてると、部屋が本ばかりになって、ますます片付かないから、本でもゲームでも一回読み(遊び)終わったら、なるだけ早めに処分するクセをつけたらいいのに。」

愛原「その代わり、一度手放した後でもう一度読みたいとか遊びたいとなった時には、すごく悔しい気分になるけどな。」

逆沢「けど一度読んだ本を何度読み直しても、新たな発見とかは何もないでしょ? そりゃ何年も前に読んだっきりなら、読み手の思想や心境に変化があった分だけ、新しい感動とかはあるかも知れないけど。」

愛原「細かい部分まではいちいち覚えてないから、一度読んだ本などでも、それなりに感動や満足感や知識の充足感などはあるぞ。」

鼎「何か刺激を受けた本もあった?」

愛原「まぁ捨てずに置いている本は、それなりに気に入っている本ばかりなので、どの本でも読み直す度に良い刺激にはなるけどな。あと本の内容によっては、ガラにもなく哲学的な事もつい考えてしまったりする。」

逆沢「はん、哲学? あんたのレベルで何を語っても、くだらんネタ以上にはならないような気がするけど。」

愛原「ごもっとも。で、今回のテーマだが【平等と競争】でやってみたいと思う。」

逆沢「平等といえば、自称保守とかいわれる人が嫌っている概念ね。なんでかよく分からないけど。」

鼎「けど自分のことを不平等に扱われて満足する人なんていないだろうから、平等社会を目指すのは当たり前だと私は思うけど。

愛原「鼎の言ってる事はおそらく正しい。平等を嫌う人間は、平等の定義づけがそもそもおかしいか、上位階級にいる(もしくは自分が上位階級だと思いこんでいる)人間か、自分より下の被差別階級を作って安心したい連中だけだ。」

鼎「平等の定義づけがおかしいというのは、たとえばどんな場合?」

愛原「もっとも有名なのは、【機会の平等】と【結果の平等】だな。」

逆沢「あー、それは有名すぎるわ。平等嫌いの人は、【結果の平等】をやたら引き合いに出したがる傾向があるわね。どんなに努力をしても成果を出しても、そうでない人と報酬が一緒だと、誰も頑張らなくなってしまうと言ったりして。」

鼎「でもそういう人は、格差は当然とか言って、【結果の平等】を否定の材料にして議論を進めながら、【機会の平等】の是正にも取り組みたがらない気がするよね。なんか議論相手が【機会の平等】の話をしていても、自分は【結果の平等】の問題性ばかりを追求して議論をミスリードして、平等という概念自体を否定したがるというか。」

逆沢「【親や先祖が努力して得た報酬を、子供や子孫がそのまま享受できるのは当然だ】という風な論法で、【機会の不平等】を肯定したがる人もいるみたいだしね。」

愛原「どの程度まで財産の相続を認めるかについては、かなりデリケートな問題だからな。理想だけで言えば、相続税や贈与税の類は、限りなく100%に近づけた方が【機会の平等】を満たす上では都合がいいが。」

鼎「けど100%に近づけたら、不安になる人も多く出てこないかな? 今の日本の法律では、どんな感じになってるのかなぁ?」

愛原「そもそも遺産総額が5000万円に満たない場合は、相続税自体かからないので、ほとんどの国民にとって相続税で悩む必要はない。ただヤバいのは最高税率の方で、2003年の時に小泉内閣が大幅に引き下げている。つまり大金持ちの子孫が大金持ちのままでいられる可能性が大幅に高まった。」

逆沢「つまり今の日本では、結果の平等はもちろんだけど、機会の平等も昔より弱まっているって事か?」

愛原「20世紀の日本では突出した金持ちがほとんどいなかったので、【外国に資産を移して外国に住めばいい】的な発想をする日本人自体少なかったのだが、今は格差が広がった分、大金持ちも増えているので(その代わり年収300万円以下の労働者が数倍に増えてるが)、その人達が【もしも富裕層に不利な税制に変えたら、財産を海外に移すぞ】と脅して、ますます富裕層有利な世の中になりつつある。国家運営の観点から言えば、国民の経済水準はできるだけフラットに近づけた方が良かったのにな。」

鼎「20世紀のアラブ圏などが一番分かり易いけど、富裕層とそうでない層の経済格差が大きい国ほど、内需は伸びにくい欠点があるよね。」

逆沢「そりゃ誰でもゲーム機やマンガやバナナとかを買える国と、一部の金持ちしかそれらを買わない国とでは、国内で売れる商品の量が全然違うから、そんな国で内需が伸びる訳ないわ。金持ちが同じゲーム機やマンガやバナナを100個とか1000個とか10000個くらい買うなら別だけど。」

鼎「日々の生活に苦労するような貧しい人が少ないほど、犯罪も起きにくいし、生活保護を必要とする人間の数も抑えられるし、人々の不満も出にくいから、治安維持とか財政規律といった部分でも効果は大きいよね。」

逆沢「自動販売機やコンビニが普通に機能する程度には、治安もいいからね。なんだかんだいっても日本は。」

愛原「資源でも国土の広さでも、決してアメリカのように恵まれていない日本が、なぜあそこまでの高度成長を成し遂げたか? それは日本人の勤勉性などという精神論だけで解決できる問題ではない。逆を言えば、その日本の強みを放棄した時、日本は国土と資源に見合った程度の二流国に転落しても、なんら不思議でないという事だ。」

逆沢「まして今の日本人に、昔ながらの勤勉性を期待するのも難しそうだし♪」

愛原「ごめんな。」

鼎「つまり20世紀の日本に限って言えば、一部のお金持ちだけに高い相続税をかける反面、大半の国民には相続税はかからなかったけど、それ以前に大半の国民は中流だったから、そういう税制でもうまくいってたって事かなぁ?」

愛原「消費税も昔は、免税となる額面水準が今より高かった為、零細な業者はその分だけでも助かるシステムになっていた。今は事実上、誰でもかれでも消費税を払わなければならない状態になって、人頭税っぽく変わってしまっているけどな。」

逆沢「その代わり、法人税は昔よりかなり安くなってるらしいけどね。」

鼎「やっぱり大企業とか富裕層が、【海外に資産を移されたくなければ、俺達金持ちの税金を安くして、その分、貧乏人から多く搾り取れ】と圧力をかけるように変わってしまっているという事かなぁ?」

逆沢「そんな無茶な要求をのんだら、ますます格差が広がって、内需規模も落ち込んで、日本の国力も下がる一方なんだけど。」

愛原「【権力者にさらに権力を与えたら、その権力を武器に、さらにより強い権力を際限なく求めるようになる】という悪循環にすっかりはまりつつあるな。このまま行くと、アメリカみたいに1%の富裕層が国家全体の4割超の財産を握り、下位80%の人間の財産を全て合わせても国家全体の7%にしかならないような状態になるかも知れないな。」

逆沢「何その北朝鮮状態? 北朝鮮とアメリカの違いは、権力者がそのまま元首を兼ねているか、大統領を傀儡として裏で操っているかくらいの違いしかないようにも思えたんだけど。」

鼎「日本はどうして、昔のより平等だった頃のやり方を放棄しつつあるのかなぁ? やっぱり保守とかいわれる人が、平等を嫌っているから?」

愛原「一部の人が、労働組合などの本来は搾取される側だった層を激しく攻撃しているからな。もちろんそういった団体の中の一番目立つグループが利権団体化してるのは大きな事実だが、それをクローズアップしすぎて、資本家の思惑にまんまと乗せられている。むしろ今のような時代こそ、本来の意味で労働者の待遇が改善されなければならないのだが。」

逆沢「いわゆる春闘とかやってるタイプの労働組合は、今は貴族階級でしかないからねー。公務員と電機・鉄鋼・自動車・電力などの大企業に所属している組合人に、中小企業や派遣の労働者の悲哀なんか分かるはずがないし。ていうか連合系労組は、自分達正社員の権利を守るために、派遣労働者や下請けを露骨に切り捨てようとしてる感じもするし。」

鼎「60歳以上の雇用を守るために、新社員の雇用を大幅に抑制しようという動きも、最近すごくみられるよね。」

原「本来は、立場の弱い派遣や中小の労働者にこそ、労働組合が必要なんだが、既に貴族組合と化した既存の大手労組の存在を理由に、労働者階級が資本家階級に逆らう事自体を否とする風潮が広がっているのは大問題だ。」

鼎「なんか悪い人が一部いるからという理由で、全体を規制しようという考え方に近いよね。ちゃんと申告をしなかったり薬を飲まないてんかん症状の人がいるからという理由で、てんかん患者全体から運転免許を取り上げようみたいな感じで。」

愛原「だったら店で酒を買ったり飲んだりする場合は、あらかじめ運転免許を返上してからにするべきだな。まぁ特定の団体(に所属するメンバー全員)を非難する上で、【一部の悪い人】をクローズアッブして取り上げるのは、最もメジャーな詭弁の一つだが。」

逆沢「さっきの【結果の平等】の問題性をクローズアップする事で、平等という概念全体を否定してやろうという詭弁と同じパターンね。」

愛原「事業仕分けが話題になってた頃も、矮小な問題点をやたら強調する論法で一部の陣営が大暴れして、改革自体が骨抜きにされてしまったからな。今の民主党の惨状の理由は、改革をやり過ぎた結果、反発を買ったのではなく、改革を半分もやり遂げられなかった失望の方が大半だろう。」

鼎「だから次の大改革を期待して、橋下ブームが起きているという事かな? よくよく考えると、国民は改革を嫌がっているのではなくて小泉ブームの頃から、10年以上ずぅーっと、本物の改革を期待し続けていそうではあるよね。」

愛原「そう考えると、直近の参院選だけは、有権者は大きく判断を誤ったな。脱自民的な改革をやり遂げられなかった民主党にお灸を据えようとした所までは良いが、代わりに自民党を大勝させたのは大失敗だった。自民党に脱自民の政策なんかできるはずがないし、現実に今も麻生太郎なんかは【今までの自民党の政策が正しかった事が認められた】的な発言をしていて、自民的政策を改めていこうという意欲のかけらもないし。門番がちゃんと仕事をしないからといって、泥棒を新しい門番に任命したようなものだ。実際、参議院で自公が過半数を抑えた事で、野田政権は(大連立を視野に入れてか)自民党的な政策(増税路線とか親米路線とか原発推進路線とか公共工事復活路線とか)ばかり推進するようになってるし。」

逆沢「つまり国民は、10年前からずっと改革を希望してるのに、この前の選挙では、改革を強行できなかった臆病な政権を懲らしめるために、よりによって最も改革に後ろ向きな党を勝たせてしまうという大愚行を選んだが為に、今の日本の惨状があるって事か?」

愛原「民主党を負かすのは構わない。だが自民党を勝たせたのは、より大きな失敗だったと言わざるをえんな。」

鼎「ところで平等を嫌う人が増えているとすれば、それはそういった詭弁に踊らされている人が増えているせいだけかな? 私はそれだけじゃないような気もするけど。」

愛原「まぁ単なる流行とかファッションで、平等批判をやってる人もいそうではあるな。【人権や平等を非難するオレかっこいい】みたいな感じで。厨二病患者丸出しというか。昭和時代の【真面目はダサい。ワルっぽいオレかっこいい】系の不良少年と同類というか。」

逆沢「まー、そういう人は、熱病から覚めるのを待つしかないわね。」

鼎「既に貴族階級にいる人達は、今の特権を取り上げられたくないから、平等な世の中になろうとする動きには、断固抵抗すると思うけど、こういう人達が力を持ちつつあるのが、一番の原因にあるような気がするけど、どうかなぁ?」

愛原「それは大きいと思う。が、それだけではないような気もする。というのも今の労働市場をみてみると、ワークシェアリングとは逆の形態。つまり俗に【日本には過労死するほど仕事があり、自殺するほど仕事がない】と言われるほど、いびつな労働力の集中状態になってしまっているからだ。」

逆沢「つまり【10人を短時間働かせるよりも、3人を長時間働かせる労働形態】になってしまってるって事か?」

愛原「うん。これは実は公務員のような職場でも比較的顕著にみられる現象だ。一人あたりの給料と労働時間を下げて、その分、多くの人数を雇用すれば解決する話なのに、なぜかそれをしようとしない。」

鼎「民間では、【お前の代わりはいくらでもいるんだ】とばかりに、薄給で労働者をこき使うような会社も増えているような気がするよね。」

逆沢「おかげで労働者の疲労のたまり方がハンパなくて、事故がやたら増えてるような気がするのは気のせいかな?」

愛原「自動車で事故を起こした運転手の労働時間などを調べると、おそろしい事になってたなんて例はいくらでもあるからな。バスやトラックの運転手が起こした事故は大体、睡眠不足や疲労が深刻なケースばかり。彼らはプロ故、適正な労働条件で働かせれば、初歩的な運転ミスなんかそうそう起こすわけがないのだが、最近は居眠り運転とか、かなり基礎的な部分でヤバいケースが増えている。」

鼎「少しくらい収入が減っても、労働環境にゆとりがある方がいいと思うのにね。」

逆沢「けど高級取りであるはずの公務員ですら、ワークシェアリング型には否定的みたいだからねー。給料が減るよりは、過労死するほど仕事がある方がいいという事じゃない? 春闘とかで話題になる労組でも、新人の採用を抑えても、ベアや雇用をできるだけ維持したいという意見の方が圧倒的に優勢みたいだし。」

鼎「つまりゆとりのある平等な世の中よりも、過労死しかねない程過酷でも、勝ち組になれる可能性のある世の中の方が良いという事かなぁ?」

愛原「もしかしたら人間にとっての幸せは、他人と比較した上での相対的なものなのかも知れんな。【みんなが幸せな世の中】を望むより、【あいつよりも上の俺】を望む気持ちの方が強いのかも知れない。差別がなかなかなくならないのも、見下す対象が欲しいという願望の表れかも知れない。」

逆沢「【戦いに敗れて死ぬなら本望だ!】って感じか? 要するに。」

鼎「けど仕事に生き甲斐を見いだしている人ならともかくとして、仕事をカネを稼ぐ手段としてしか割り切っていない人の方が多いと思うけど。まして上司から無理矢理過酷な労働を命令されている人などは、絶対に【戦いに敗れて死ぬなら本望だ】なんて思わないよね。」

愛原「人間誰しも、自分の信念を貫いて死ぬ事を美徳と考える面はある。だから過労死する人の全てが不幸であったとは思わない。藤子・F・不二雄さんのように、ペンを握ったまま死ぬのも、また一つの生き様・死に様だろう。だが、自分のやりたいことをやって死ねる人は、残念ながらまれ。特にうつ病などを併発していた場合は、ほぼ間違いなく【やりたくもない事をやらされた】事が原因の、一種の衰弱死のようなものだ。本望でもなんでもない。」

鼎「なんか今まで頑張って頑張って頑張って来たけど、ついに心がボキッと折れてしまった感じだよね。」

逆沢「そこまで無理して頑張らなくてもいいのに、という感じもするけど。」

愛原「その一方で、始めから正当な努力を拒否する人も増えている。そういう人は、すぐに生活保護に頼ろうとしたり、振り込め詐欺の手先になったりする。」

鼎「でもそれは、仕方ない所もあると思うよ。競争社会が過酷化して、無職の人や特定の出自の人への偏見や差別もひどくなって、そういう人が少々努力してもムダみたいな社会にもなりつつあるから。」

逆沢「過度の競争社会は、競争に負けた人達を腐らせやすいからね。総中流といわれた頃の日本では、ほとんどの人が多少の税金を収められる程度には収入を稼げていたけど、今は逆に税金で生活している人が増えて、その分だけでも財政を圧迫する有り様だし。」

愛原「そういや財政危機のギリシャで、興味深い話があったぞ。ギリシャは年金が手厚くて、それが財政破綻の大きな要因の一つだったんだが、だからといって高齢者への年金支給額を減らして欲しいという若者はそんなにいないらしい。なぜなら若者は若者で無職で、政府が支給する親の年金だけが頼りの収入源になってるケースが多いからだそうだ。」

逆沢「何、そのニート的発想。親の年金をアテにしてる自体で終わってるわ。親が死んでも、生きてる事にして不正受給も平気でしそうというか。」

鼎「働き世代が働かず、税金で飯を食べようとする人が増えるほど、国家財政が危なくなるのは、明白すぎるほど明白だと思うけど。」

逆沢「あー、でも日本がちょうど、その方向に突っ走り中のような気もするわ。60歳以上の人の雇用を守るために、若者の採用枠をますます削減とか、そんな嫌なニュースも最近ちょくちょく聞くし。」

鼎「ワークシェアリングという言葉をほとんど聞かなくなったくらい、今の日本は変わっちゃった気もするよね。」

愛原「国全体の労働市場の規模自体は、昔とそんなに極端には変わってないと思うんだけどな。30年以上前では、専業主婦の比率も高かったが、それでも経済は問題なく回っていた。それに比べて今の日本では、女性の就業率が高まったが、市場自体が求める正社員の需要数自体はそう変わらない為か、女性の社会進出が進んだ分だけ、非正規や失業者も増えたような気もする。」

鼎「うーんと、つまり。昔は一人の男性が一家を養っていた構図が、今は夫婦共同で一家を養う構図に変わっているけど、実際には市場規模はそう変わってないから、家庭ごとに収入などがバラバラという事かなぁ?」

逆沢「夫婦二人とも高収入な代わりに、家事や育児に時間を割けない生活を余儀なくされる家庭がある一方、夫婦二人ともかなりの低収入で、家計の維持もままならない家庭もあるなど、家庭のバランスがガタガタになってる可能性もあるわね。」

鼎「そんな状態だと、離婚率が高くなる一方でもやむを得ない気がするかも・・・。一緒に暮らしていても、共同生活をしているメリットや実感がなかったり、お互いの不甲斐性を批判しあったりしがちになりそうで・・・。」

愛原「昔は良かった的なノスタルジーに浸る感情などはないし、年金問題のように昔、ラクをしてきたツケが今に回っている部分も多いので、ただ昔のスタイルに戻すべきとは、これっぽちも思わないけどな。ただ、今の社会の方が、露骨に経済格差が出るから、余計に労働者が過度な競争にさらされるようになってしまっているように思われる。」

逆沢「ワークシェアリングが浸透すれば改善される問題なのにそれをせず、無職か長時間労働の二者択一を選ばせている所が、なんともエグいわ。まぁ雇う側からすれば、【無職になるよりはマシだろ】と脅して過酷な労働を強制しやすいから、そういう労働体系の方がありがたいんだろうけど。」

愛原「ワークシェアリングとも関連があるが、一部の貴族階級がパイを独り占めしているのも大きな要因だな。大企業の正社員などの一部高級取りの給料を減らして、その分のお金を下請けや派遣労働者に回せばより平等で安定的な社会に近づけるのに、それをしようとしないというか。」

逆沢「あはは。ただ【あいつより上の俺】になりたい人からすれば、自分の財産を減らして、その分他人の財産が増えるなんてのは、絶対受け入れられない事だと思うけどねー。彼らはそもそも、平等な世の中なんかこれっぽちも望んでないし。自分は努力したからそれだけの報酬をもらってて当然とも思っているし。派遣や下請けは努力不足だから安月給なのは当然と思っているかも知れないし。」

愛原「度し難い貴族階級だな。おそらく電力会社の幹部なども、そういう思考の連中が多いのだろう。元々、韓国の電気料金と比べても2倍近く高くて、それが国際競争力を大きく奪っている事には全く触れず、自らの独占体制を維持して私服を蓄える事しか頭にない。」

逆沢「確か東京電力管内の企業向け電気料金が17%値上げになったそうだけど、これもかなりキツそうね。」

愛原「てめえらの高人件費と独占体制をぶっ壊せば、韓国と同レベル程度には電気料金も下げられて、ようやく韓国と対等に国際競争もできるようになるってのに、なぜか財界も政界もそういう議論はこれっぽちもしない。」

鼎「自民党からでも民主党からでもいいから、そういう悪しき慣習を保守する風潮を、早く改めてくれればいいのにね。」

逆沢「JALにやったレベルの措置すら執れない体たらくだしね。責任の所在も明確じゃないから、あれだけの事故を起こしても誰一人逮捕されない異常事態も続いているし。」

愛原「東電に関しては、政府の要請で銀行に資金を注入させている以上、もはや破綻させる事は不可能だろう。再建させる条件だからこそ銀行は東電にお金を貸したのに、政府が東電を潰して銀行にババをつかませたら、政府主導の壮大な詐欺行為になるからだ。あと責任問題に関しては、今後もうやむやなままだろう。財務省自体が【東電の株式を過半数握ったら、経営責任が国主体になってしまうから、それは回避したい】みたいな事を言ってるくらいだし。責任を持って東電を改めさせるよりも、東電の好き放題を許しても自分達の責任問題になるのだけは回避したいというのが官僚の考えである以上、どうにもならん。」

逆沢「な、なんという超無責任体質・・・。日本はどうしてここまで落ちぶれたの??」

愛原「自分さえ良ければそれでいいという人が、富裕層や国の上層部や貴族階級の中で急増しているんだろうな。認めるべき責任を認めた上で、みんなで助け合って危機を乗り越えるのではなく、誰かを蹴り落としても自分だけは責任を回避し、逃げ延びるみたいな発想になっているというか。」

鼎「もう他人が仲間ではなく、ライバルというか敵にしか見えなくなってしまっているのかも。子供の頃から過度の競争にさらされて、クラスの同級生も職場の同僚も、周りが蹴落とすべきライバルみたいになって・・・。特に出世して勝ち組になっている人ほど、多くの人を蹴落としてきただろうから、【俺達勝ち組は、努力して勝ち上がってきたのだから、それ相応の権力を行使して、相応の報酬をもらうのは当然】みたいな意識になってみたいに。」

逆沢「なんという思いやりのかけらもない、傲慢な考え方・・・。まぁ勝者の権利を主張する者にとっては、敗者が平等を口にする事ほど醜いものはないと映るかも知れないけどね。」

愛原「ま、ダルビッシュが何億稼ごうと、それで文句言う人がいないように、正当な報酬であると思えれば、何も問題ないんだろうけどな。つまり【結果の平等】が保証される必要はこれっぽちもない。問題はむしろ、【機会の不平等】と【固定された階級】の方だろう。生まれたときから貴族階級の者もいる反面、何十時間レジ打ちをしていても、何百時間トラックを運転しづけていても、決して改善されない固定された労働条件。それでいて再就職もままならないから、自分の置かれた立場がどれだけ理不尽でも、それから安易に抜け出せずますます固定されてしまうようになる。それは自由競争なんてもんじゃない。人生をやり直す権利も職業選択の自由も、事実上ほとんどないのだから。」

逆沢「ま、安月給で過労死しかねないほど労働させられるなら、生活保護もらって悠々自適を選ぶ人が増える一方なのも分かる気がするわ。」

鼎「けど生活保護にも条件はつけられないのかなぁ? 代わりに北国で雪下ろしのボランティアをやるとか、強制的に色んなNPO法人に所属させて、積極的に色んなボランティアに参加してもらうという条件で、生活保護を支給するというのなら、労働による対価という形になるから、社会全体からみても有意義だと思うけど。」

愛原「今の所は、そんな主張をする人間は、聞いた事がないな。生活保護制度自体無くせみたいな過激な主張をする人は、ネットでもよく見るが。」

鼎「セーフティーネットのない社会では、ますます起業したり転職したりするリスクを冒す人がいなくなって、労働条件がより悪化したり、犯罪に走る人が激増するだろうから、いくら何でも生活保護の撤廃は論外すぎると思うよ。」

逆沢「ていうか総中流社会がぶっ壊れた事で、下流層が激増して、その増え続ける下流層の重みにセーフティーネットが耐えきれなくなっているのが、今の日本の現状だからねー。セーフティーネットの強化にも税金がかかるし、本当に悪循環だわ。」

愛原「ま、日本経済全体で言えば、GDP(国内総生産)もGNI(国民総所得)も、実は1992年以降、ほとんど横ばいだ。つまりマクロ経済規模で言えば、良くもなっていないが悪くもなっていない。にも関わらず、小泉改革以降、目に見えて下流層が増えた理由ははっきりしている。富裕層がお金を貯め込んで、下の層にお金を落とさなくなった分だけ、かつて中流といわれた層がやせ細っているだけだ。何度も言うが、市場規模も経済力も、実は20年ほどほとんど変わっていない。日本人トータルで持ってるお金の量も、ほとんど変わっていない。ただ持っている人の内訳が大きく変化しただけだ。」

逆沢「一部の人だけがたくさんのパイを独り占めにできるアメリカ型に変わってきているだけって事か?」

鼎「パイの大きさは20年前から変わっていないのに、一部の人がパイをたくさんぶんどって離さなくなったから、目に見えてやせこける人が増えてるって事だよね。」

逆沢「でもこのままいくと、横ばいの経済力が今度は下方に下がっていきそうね。一部の肥え太った豚階級どもが、労働者を過酷な労働環境に追い込んで、事故も増える一方だし。税金で救済しなければいけない層も増え続ける一方だし。」

愛原「元請けのゼネコンがたくさんのマージンを抜くと、下請けの建設業者が手抜き工事をやらなきゃいけなくなるようなものだな。電力会社がたくさんの電気料金を抜くと、メーカーがより厳しい条件で国際社会と競争しなくちゃならないようなものともいえる。上層部が限りあるパイをたくさん抜き取っているから、下は下で過酷な労働条件を強いられたり、手抜きをせざるを得なくなってしまう。まさしく悪循環そのものでもある。」

逆沢「【能力や努力に応じた格差は当然】とか言って格差を肯定しながら、実際には能力とか努力とかは関係なく独占体制とか許認可権とか、そういう権力ばかりを乱用する層が格差が広げてしまった結果が、このザマか。」

鼎「しかも元々権力を持っている層に、さらに権力を与えてしまったおかげで、今では彼ら富裕層が持つ権力にブレーキをかけるのも、困難になってしまっているのが現状なんだよね。」

愛原「それでも下は下で平等が維持されていれば、横の連携で強大な権力と対抗もできるんだけどな。かつての戦後間もない頃の労働組合は、まさにそれだった。弱い者は弱い者で力を合わせて、強い者に対抗していく土壌があった。」

逆沢「今は、かつて友となれたはずの者すら、ライバル視するような世の中だからねー。まぁ支配者階級からすれば、最下層は最下層同士で競争という名の内ゲバをやっててくれた方が、矛先が自分に向かわずに助かるし。」

鼎「つまり支配者階級の狙いとしては、序列社会が理想という事かなぁ? ほら中学校や高校のテストで、はっきりと順位や偏差値が出るような社会。自分の順位がはっきり分かる世の中であるほど、競争をさらに煽ることができるから。たとえば自分の順位が250位だと分かれば、その人は249位の人と協力し合うよりも、逆にその人をとりあえず抜きたくなるだろうから。」

逆沢「序列や順位をはっきりつける事で、競争心理をあおるって訳ね。」

愛原「学校の成績とか年収といった、誰でも分かり易い物差しができた事で、国民同士の競争心理をさらに煽った部分もありそうだな。あの人はマラソンが得意で、あの人はとても面白くて社交性のある人で、あの人は機械いじりが得意な人で、あの人は魚捕りの名人で、あの人は木工の達人でみたいな感じで、物差しが1本でない世の中なら、【人は人。自分は自分】で、余計なライバル意識をもたずに済んだだろうけどな。」

逆沢「見た感じの暮らしっぷりに極端な差がなければ、Aが漁業をやっていようと、BがITエンジニアやっていようと、Cが学校の先生やっていようと、Dが自動車整備士やっていようと、それぞれのプロとして社会に必要な尊敬に足る隣人でしかないんだろうしね。社会全体で色んな職業の人が必要なのは、当たり前だから。」

愛原「ところが現在は、儲かる仕事とか過酷な仕事といった別の物差しが重要視される世の中だ。本当はどの職業の人も尊敬されるべきなのに、ある職業の人はお金を独り占めする事で嫉妬と不快感を買い、ある職業の人は厳しい労働環境で頑張っているのに雲助と蔑まれみたいに、尊敬されるべきプロ達が軽蔑や憎しみの対象になってしまっている。」

鼎「かつてのブルーカラー偏見のようなものだよね。指先だけでミリ単位未満の厚さも計測できるような優秀なブルーカラーの人がいるからこそ、加工貿易国家日本の隆盛があったのに、職業自体に序列をつけたがる人がいるおかげで、優秀な人材がブルーカラーに集まって来にくいみたいな弊害も出たりして。」

逆沢「ま、経営者自身が、自分の会社の従業員達を、代わりはいくらでもいる歯車程度にしか考えてないからね。バス運転手という名のその道のプロを雇ったという認識ではなく、いくらでもいる代わりの部品を一円でも安く調達して、使用不能になるまでこき使うみたいな感覚だから。」

愛原「成績や年収という物差しが、その人の誇りすら奪いかねない危険な状態だな。どんなに職人としての腕に自信があっても、安月給でしか報われなかったり、過酷な労働環境でロボットのように酷使されたりすれば、自尊心もなくしてしまうわ。まず人としての平等が根底にあってこそ、その人ならではの自己実現欲求がわき起こり、より高いレベルの自分を目指せるというか。良い意味での競争心理というか、自発的かつ建設的な向上心につながるというか。」

逆沢「最低限度の生活も危ないレベルだと、生存欲求が先に来て、人間としての誇りとかプロとしての誇りといった自己実現欲求が後回しになってしまいかねないからね。」

鼎「生きる為に、経費を削って手抜き工事をせざるを得ないとか、犯罪に手を出さざるを得ないとか、プロとしての誇りとか人間としての誇りをぶん投げなくちゃいけないとすれば、すごく悲しい事だよね。」

愛原「俺も、もしも数ランク厳しい労働環境とかに置かれたら、生存欲求を優先するために、趣味とかをぶん投げてしまうかも知れないな。逆を言えば、俺はワーキングプアといわれる多くの人と比べれば、まだ恵まれているのだろう。こうやって趣味に割く時間もあるからには。」

逆沢「なんか本当に、権力を笠に着てパイを大きく奪ってる層にすごくムカついて来たわ。」

愛原「なかなか深いネタだっただろ。ちょっとだけ見直したか?」

逆沢「そんな事を言うから、余計に自分の上限の低さをさらけ出しているというか、余計にマヌケに見えるわ。」

鼎「ゴールデン・ウィーク向きの明るいネタでもなかったし、タイミングの悪さも相変わらずと思ったかも。」

愛原「・・・・相変わらず、手厳しいな。お前らも。」















トップページに戻る