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愛原様のたわごと(12年5月6日)




愛原「非常にアニマル的ではあるが、季候が良くなると作業能率も格段に上がる。実に有り難い事だ。」

鼎「そういえば作業能率が上がると、今まで見つからなかった大きなバグも見つかると、この前、作者さんが言ってたよ。」

逆沢「なんだ? 今頃になって新しいバグが見つかったのか?」

愛原「修正に少し手間取るバグなんで現状放置だが、ひとそれのバックログ機能が一部のケースで使用不能になるバグが見つかったらしい。」

逆沢「一部のケースって、具体的にどういうケース?」

愛原「5択の選択肢が出てきた際に、上から4番目の選択肢を選ぶと、そのイベント内に限って、一時的にバックログが使用不能になるバグらしい。原因ははっきりしていて、バックログを使用不能にするスイッチが混ざっていたという、至って単純なヒューマンエラーというか、ケアレスミス。ただ全ての選択肢でそうなる訳ではなく、一部の選択肢だけだけどな。」

逆沢「ならバグ潰しも楽勝じゃない? そのスイッチを取り除くだけだから。」

愛原「全選択肢を再チェックし直すという、単純な人海戦術的作業になるからな。まぁ、そんなに深刻なバグじゃないから、気が向いたら少しずつ直そうかなと思っている。今は作業能率が上がって、色々新しいイベントなどを作成する作業が割と油に乗ってるから、そういうルーチンワークはモチベーションが下がった時にゆるゆるやりたい。」

逆沢「ま、今まで報告もなかったバグだし、深刻度も頻度も高くはなさそうだから、後回しでいいのかも知れないけどねー。」

愛原「イベントが終了するたびに、バックログ機能が再度使用可能になるような、一種の自動修正処理を元々システム内に内蔵しているから、いつまでもバックログが使用できないままなんて事もないし、もしもこのバグにぶつかっても、気にしないで進めてもらえたらいいと思う。」

逆沢「しかし本当に、うっかりミスってのは無くならないわねー。注意が足りないというか。」

鼎「人間に完璧はないというのを、改めて思い知らされる思いだよね。ちょっと注意したらすぐに気がつくはずの誤字や脱字も、全然無くならないし。」

愛原「人間は必ずミスをする。だからミスする事を前提に物事も進めなければ、大変な事になる。今回も、イベント終了毎のバックログ再使用処理をこっそり混ぜといて良かったわ。」

逆沢「始めからミスをしない人なら、そんな再使用処理自体、内蔵する必要もなかったのにね。そしたらその分だけでも動作が軽くなるし。」

愛原「ウチのゲームって、そんなに処理重い??」

逆沢「AVGメインなんだから、処理が重かったらヤバいでしょ。軽くて当たり前なジャンルなんだから。」

鼎「けど、【ミスを最小限に留めるに済むスキル】というのがあれば、本当に便利だと思うよね。そしたら不確定要素やトラブルに遭遇する確率もぐっと減るだろうし。」

愛原「それが可能なら、本物のスーパーマンだな。ミスを選択しない。つまり正しい選択を選び続けられる能力。そういう能力の持ち主は、どんな力自慢の勇者よりも、ずっと最強のような気もする。せっかくだから、今回のテーマは【鑑識眼】でいってみるとするか?」

鼎「鑑識眼?」

逆沢「それっていわゆる、宝石とか骨董品の価値を見抜く能力の事?」

愛原「正確には、物の価値や真偽、良し悪しなどを見破る能力全般の事だな。仮に宝石や骨董品の目利きが得意なら【宝石や骨董品に目利きが利く人物】という事になるが、逆をいえば宝石や骨董品でなくてもいい。」

鼎「私が一番欲しいのは、人を見抜く能力かなぁ? ほら、この前、厚生年金の運用会社が壮絶な詐欺をやったとかって、ニュースがあったでしょ。この人なら信用できるとか、この人は詐欺師だとか、人の顔を見るだけで、その人が悪人かどうか見抜く能力があればいいなと思うけど。」

逆沢「経営者自身は詐欺をやる気マンマンでも、営業マン自身は上司がきちんと仕事をしていると信じていたなら、そんな眼力があっても、無意味だと思うけどね。営業マンの顔をみて、この人は嘘をついてないと見抜けた所で、全然意味ないから。」

愛原「けど人を見抜く能力自体は、やはり有ると無いとでは大違いだぞ。古来より英雄といわれる人は、人物鑑識眼は誰にもまして優れているものだ。」

鼎「織田信長さんなんかは、出自にこだわらず、どんな外様の人でも能力主義で人材を抜擢して、逆に先代から仕えるような譜代の家臣でも、役立たずとみれば容赦なく追放するような人だったらしいよね。」

逆沢「私欲にまみれた、おべんちゃらだけが得意な佞臣を重用するか、能力と忠誠心にあふれた良臣を重用するかは、その人が英雄の器かどうかを量る、最大のバロメーターみたいなものだからね。」

鼎「現実世界でも、経営者が経理担当に仕事を任せきっていたら、いつの間にかその経理担当が職場の大切なお金を私的に流用していたとして、ニュースになるケースが後を絶たないけど・・・。」

逆沢「そういうのも含めて、人を見ぬく眼力があればいいなとは、私も思うわ。」

愛原「けど昨日まで善良で信頼できる同僚だった人物が、ある日、悪い人に脅迫されたり、悪い女に誘惑されたりして、突然、悪事に手を染めるケースもあるからな。ていうか、始めから悪い人なんかおらん。」

逆沢「だからその人の微妙な変化に、いち早く気付く眼力が欲しい訳よ。昨日まで善良だった人のわずかな変化に素早く気付いて、素早く対処できるような能力というか。ほら、学校のイジメ問題とか児童虐待の問題でも一緒でしょ。子供のちょっとした変化に気付く事ができれば、イジメ問題も児童虐待問題も、深刻な段階にならずに済む事も多いし。」

鼎「幼い子供が、母親と同居する男に虐待されて死んだりした場合、【児童相談所は何やってたんだ?】とか【なんで強制的に保護しなかったんだ?】とか言われて、バッシングされる事も多いよね。」

愛原「ただ眼力という観点でみれば、DV男と同居する母親が、そもそもの諸悪の根源のような気もするけどな。児童相談所の職員の眼力がどうこう以前に、母親の男を見る眼力の方こそ、もっと深刻視されるべきだとも思うが。」

逆沢「ま、そりゃそうなんだけど、児童相談所の職員は、一応プロなんだから、眼力を鍛えるのは当然の事でしょ? それでお金もらって生活している訳なんだから。」

愛原「ま、プロのくせに目利きができないというのが、一番致命的なのは同意。宝石の鑑定も出来ない宝石鑑定士がいてはならないように、プロに一定水準以上の眼力が求められるのは、ま、当然と言えば当然だ。」

鼎「私が一番、悩ましいのは、私達一般人が、プロを見抜く時なんだけど。ほら、たとえば家のリフォームをしようとするでしょ。で、私達はリフォームのプロにお仕事をお願いするわけだけど、そのプロが信用できるかどうか分からないでしょ。お金は安くても手抜き工事ばかりやる業者かも知れないし、じゃあお金が高ければまともかといえば、不安をあおってその人の財産をとことんまで吸い尽くそうとする超悪徳リフォーム業者の可能性もあるし。」

逆沢「食料品の産地偽造問題も同じね。中国産は安いけど信用できないという人は多いけど、じゃあ日本産と書いてあるのが信用できるかといえば、かなりの産地偽造品がある訳だから。モノによっては、日本産と表記されているものの半分以上が実は外国産らしいし。高くて粗悪なら、安くて粗悪な方がマシに決まってるし。正直に中国産と書いてある商品なら、消費者もそのつもりで買うから、あらかじめ業者側も叩かれないように品質チェックくらいしてそうだけど、偽造品は始めからだます気マンマンだから、もっと品質的にヤバい気がしてならないし。」

鼎「そういうモノを見破れる鑑識眼があればいいなと、私は思うんだけど。」

愛原「現実世界でも、ファンタジー世界でも、英雄といわれる者は、大体、鑑識眼が優れているものだ。主人公の元に、ザコみたいな人間は集まってこないし、そういう人間が主人公の片腕となる事もない。一見ザコに見えても、主人公が見込んだ人間は、大体大成するか、それなりの見せ場があるものだ。名も売れていないのに一流の武器を作る鍛冶屋とか、誰がどう見てもうさんくさいのに本物の情報ばかり入手してくる情報屋とか、英雄といわれる者は、大体そういう意味での人を見る目が傑出している。」

逆沢「ファンタジーの世界だと、それもご都合設定として通用しちゃうんだけどねー。」

鼎「でも現実世界でも、馬鹿にできないと思うよ。たとえば劉備という人の元に、関羽とか張飛とか趙雲とか諸葛亮といった超一流の人がたくさん集まってきたのは、決してファンタジーじゃないよね。」

愛原「劉備という人は、死の間際に【馬謖を重用するな】とか【劉禅に才なくば、君(諸葛亮)が帝位に就け】と遺言したりなどと、最後まで人間を正確を見抜いてたふしすらあるからな。劉備嫌いの人からすれば、劉備は運が良いだけの詐欺師という評価もあるだろうが、劉備がどんな逆境でも常に生き延びられたのは、その人物鑑定眼の凄さにあるような気がする。少なくとも劉備がピンチになった時に頼った人物は、ほぼ例外なく劉備を保護し続けているし、劉備が才能を見いだして重用した人物は、これもほぼ例外なく活躍しているからな。」

鼎「三国志の世界でいえば、曹操さんと袁紹さんの対比がとても分かり易いよね。人材を使いこなす曹操さんと、人材に恵まれながら使いこなせなかった袁紹さんの対比が。」

逆沢「もちろん鑑定眼だけの問題でなく、その人材を育てたり、気持ちよく働いてもらえるように気遣いもしたりとか、色んな要素も大きいだろうけど、大体英雄と呼ばれる人は、信用してはいけない人間を信用して大ポカかますような例は、あまりなさそうな気はするわね。」

鼎「鑑識眼を磨くいい方法ってないかなぁ?」

愛原「俺自身、大した鑑識眼を持っていないから、その質問にはきちんと答える事はできん。ただ鑑識とか目利きというのは、まず知恵と手間が根底にある事を忘れてはならない。思い込み願望だけでその場で信用するのと、客観的情報などを考慮した上で時間をかけて精査した上で信用するのとでは全然、内容が異なるからな。経営の見通しを正確に語り、担保もちゃんと用意した上でお金を借りようとする人と、担保も経営の見通しも何もないけど、ひたすら涙を流し頭を下げてお金を借りようとする人と、どっちを信用するかのような感じだな。」

逆沢「後者にお金を貸す人は、情にほだされる人ね。」

鼎「けど詐欺師に騙されやすい人は、前者タイプの人が多いらしいよ。」

愛原「欲の皮が突っ張っている人ほど、上っ面の理屈や説明ばかりを重視して、詭弁に騙されやすいからな。こういうタイプは(自分の願望を満たすような)情報の入手には意欲的だが、情報分析はしないというか、裏を取らない為、詐欺師が年間何%の配当とか、細かい数字や専門用語を多く出してくるほど単純に信用する。その一方で、担保価値があるかとか、実際に差し押さえが可能なのかとか、いつでも返金に応じてもらえる構造なのかとか、リスク面には興味をもたず、相手の【大丈夫です】とか【安心して下さい】とか【他のお客様からもご好評】といった中身のないセリフだけで納得する。上手く行くケースだけを取り上げた予想図を元に理性的に(実際には詭弁的にこじつけて)納得する一方、上手く行かないケースについては【多分大丈夫】で済ます最悪のパターンだ。」


逆沢「それ、役所とかが公共工事を推進する時に、地元に説明する時に使う常套手段じゃない? 上手く行くケースだけ丁寧に描いているけど、風雨で工事期間が長引いた場合の費用をどうするかとか、完成後損失が出た場合の責任を誰が取るかとか、そういうリスク部分には絶対触れないというか。」

鼎「詐欺師の手口そのものだよね。上っ面だけのバラ色の展開部分だけを綿密に練り上げる事で、いかにも理論的に見せかけて、実は上手くいかなかった時の部分に関しては、楽観論精神論だけの中身のないものでという。」

愛原「人間は必ずミスをするというか、もし失敗したら(期待する予想曲線を下回ったら)どうする?という観点が全くないから、年金問題から公共工事の問題に至るまで、今の日本は恐ろしい事になっている。トラブルやバグや想定ミスは誰にでもつきものなのに。」

鼎「よく不動産のチラシで【駅から歩いて何分】とかあるけど、あれも信号などに引っかからず上手くいった時が前提になってるみたいらしいよね。」

逆沢「公共工事の工事日程や予算なども、一日も雨が降らなかった場合が前提の事が多いらしいしね。」

愛原「鑑識眼といえば、いわゆるメディアリテラシーの問題も含まれるな。特にネットの世界では、ツイッターを始め、かなりのデマも流れているようだし、情報の真贋を見破る必要性もかなりありそうだ。」

逆沢「ネットの世界では、情報だけはいくらでもあふれているから、自分にとって都合が良い情報だけに絞って検索をかければ、いくらでも自分にとって都合の良い情報がヒットするからねー。で、その星の数ほどの情報を見て、改めて【自分はやはり正しかった】と確信してしまうというか。」

鼎「実は自分にとって都合の悪い情報で検索をかければ、自分が信じたい情報以上に、自分が信じたくない情報であふれているかも知れないのにね。」

愛原「ま、やらせ投稿やステルスマーケティングが当たり前の現代では、多い情報とか目立つ情報ほど、正しいという事にもならないけどな。」

鼎「まさしくメディアリテラシーという名の鑑識眼が問われるという事になりそうだよね。」

逆沢「ネットやるだけでも、鑑識眼が必要な世の中ってか。面倒くさい世の中だわ。」

愛原「だから鑑識する手間を放棄する人間も増える一方だ。安易に結論を出す。思いこむ。声を大きくして騒いだり、数の暴力で訴える事で、鑑定価値そのものを自分の信じた価値観で塗りつぶしてしまおうとすらする。1万円の価値しかない宝石を100万円の価値があると信じ込むだけでなく、それを喧伝する事で、本当にその宝石の価値を100万円という事にして世間に認知させてしまうようなものだな。」

逆沢「それ、押し売りというか詐欺同然じゃん。1万円の価値しかない宝石を、100万円で売りつけるようなもんで。」

愛原「特に人間の価値とか名声とか情報といったものは、美術品と同様に、価値の算定基準が極めてあいまいなものだ。声の大きな者が【あれには価値がない】と騒ぐことで、本当に市場価値が下がってしまう事も多い。」

鼎「東北地方の農産物とかが、風評被害でかなり市場価値が下がっているらしいけど、これも目に見えない大きな力が、不当に市場価値を下げてしまっている例といえるかも知れないよね。」

逆沢「なるほど。つまり正しい鑑識眼などなくても、自分達自身が商品価値を決めてしまえるだけの腕力があるなら、関係ないって事か?」

愛原「そのせいか、ネットの中でも、自分で勝手に良し悪しを決めつけて、必死で喧伝する奴が後を絶たない。そいつが心の中で思いこんでいるだけなら無害だが、喧伝する事で価値自体に影響を与えてしまうからな。」

鼎「誰かがネットに書き込みした事で、ラーメン屋さんのラーメンのおいしさが変わるはずもないのに、書き込み次第で、お客さんが増えたり減ったりもするから、印象操作の効果ってのは、なかなか侮れないよね。」

逆沢「ちゃんとした鑑定能力のある人間以外、そういう書き込みはできないようにすればいいのに。」

愛原「ま、そう言うな。世の中には【馬鹿な大衆にまで、選挙権を与えなければいいのに】なんていう輩もいるからな。」

逆沢「自分は賢い大衆だと、そういう人は心の中で思いこんでそうね。少なくとも自分が選挙権を取り上げられる側ではないと確信してそうというか。」

愛原「選挙権に限らず、選ばれた人だけが権利を行使できるという免許制度にしたいのならば、免許の合否判定基準を、あらかじめちゃんと整備する必要がある。かつて安倍晋三が教員免許を更新制にして出来の悪い先生を排除するみたいな事を言ってたが、じゃあ誰が更新する際の合否を決めるのかをちゃんと整備してなければ、組織に都合の悪い奴を間引くだけの改悪にしかならないのと同じだな。」

逆沢「免許制度にするなら、免許の合否をきちんと鑑定できる人がいないと意味がないって事ね。」

愛原「ま、それでも、現代社会において、本物の目利きがより重用されているのは間違いない。プロの技術者。プロの医師。プロの先生。プロの生産農家・・・。機械の異常にすぐに気付く。体調や行動の異変にすぐに気付く。手抜き工事や産地偽造のないホンモノを見抜く。そんな目利きのプロたち。」

逆沢「まー、理屈ではそうなんだけど。ただ本当に私達には、その真のプロを見抜く眼力すらないわけよ。そりゃあこまめに時間をかけて探せば、自分にあった本当においしいラーメン屋を見つける事ができるかもしれないし、手抜きもボッタクリもしない誠実なリフォーム屋さんも見つかるかも知れないけど。」

愛原「でも探しても見つからないという事はないだろ。100件回ったけど、どの店も、ぼったくり店とか、手抜き工事店ばかりでしたという事もないと思うけどな。談合でもしてない限りは。」

逆沢「つまり鑑識眼に自信がなければ、手間を惜しむなという事か?」

愛原「それしかないだろうな。情報の裏を取るという作業も、要するに手間をどれだけかけられるか?というだけの話だからな。学校のイジメや児童虐待の問題にしても、いつもより多く話しかけるという手間をかけるだけで、以前なら気付かなかった小さな異変に気付くかも知れない。」

逆沢「ただ児童虐待の問題に関しては、職員のやる気がどれだけあっても、DQN親が邪魔しまくったら、どうにもならない事も多そうだし、私はあくまで職員の眼力よりも、DQN親の責任を強く問いたいけどね。DQN男と同居したがるようなDQN女の眼力の無さ具合は特に。」

愛原「DQN女は、願望と(女の)直感思い込みだけで人間を鑑定するからな。【私ならこの人を変えられる】とかホザくのは、大体このタイプ。他人を自分の思い通りに変えられるなど、思い上がりもいい所というか、そういう歪んだ自分一人すら変えられないのに、赤の他人の人格を変えられる訳ないだろがと思うが、こういう女にそれを言ってもまず無駄だからな。」

逆沢「でも本人は、そんなスゴい自分を信じて疑わないと。で、何度も男関係で失敗して、悲劇のヒロインに酔いしれるけど、それでも学習能力がないから、直感と願望だけで相手を鑑定し続ける愚を繰り返すのね。」

愛原「願望や思い込みが入りすぎると、逆に鑑識眼が曇る。この宝石の価値が100万以上だといいなとか、100万以上に違いないと思いこんで鑑定すると、実際には1万の価値しかなくても、つい100万の価値があるように錯覚してしまう事すらあるからな。」

鼎「生まれつきすごい鑑識眼を持っている人は英雄と呼ばれるような人だけで、大抵の人は地道に知識や経験を積み重ねながら、少しずつ一人前の鑑定士になってると思うよ。」

逆沢「そりゃ何の予備知識も訓練もなしに、いきなり宝石鑑定とかできたら、その方がよっぽど怖いわ。」

愛原「プロの技術者が、優れた目利きぶりを発揮して、小さな異変に気付いたりするのも、基本はやはり豊富な知識と経験から来るものだからな。場数をこなす、手間をかける、という当たり前の作業を怠れば、そりゃあ失敗する可能性が高くなっても当然だ。」

逆沢「つまり専門知識もないのに、すぐにハンコを押すみたいな人は、かなり危険って事か?」

愛原「優柔不断といわれようが何だろうが、知ったかぶりをして痛い目に合うくらいなら、時間をかけた方がいい事もあるんじゃないのか? まぁだからこそ詐欺師といわれる人達は、【今がチャンス!】とか【すぐに振り込まなければ間に合わない】という論法で、即決を相手に促すんだけどな。」

逆沢「けど、カッコは悪いわ。特に迷いに迷って選んだあげく、最終的に後悔する事もあるし。」

愛原「ま、熟考したから、必ず正しい判断に行き着くとは限らんけどな。特にゲーム作りのようなものは、何回テストプレーしても、なかなかバグがゼロにはならん。けどな。テストプレーを1回もしないのと、色んな場面を想定して何回も繰り返すのとでは、バグの数や確率が全然違ってくるんだぜ。」

鼎「熟考した結果、蛇足的な要素も加えたりして、より間違った判断をしてしまう事も多いけど、それでも間違った原因を追及したり、後で改善する上では有利だよね。」

愛原「大して熟考もしないまま、思いつきで選択した事がたまたま上手くいく事も、世の中は多い。しかしそういう場合、なんで上手くいったのかがさっぱり分からなかったり、見当違いの勝因で上手くいったと思いこんでしまったりして、後でとりあえず同じ事をやったつもりでも、今度は大失敗という事も多い。で、失敗した原因を追及しても、今度は全然分からない事も多い。」

鼎「思いつきで行動するのは、ただのバクチに近い所があるよね。当たるも八卦って感じで。」

愛原「ちゃんとした鑑識眼に基づいてゴーサインを出すのと、思いつきや直感だけでゴーサインを出すのとでは、見た目は同じでも中身が全然違う。野球のバッターがど真ん中に来たボールを叩いてホームランになったとしても、相手の性格やカウントから次はど真ん中に球が来るだろうと分析してホームランになるのと、何となく次はど真ん中に球が来るだろうとヤマを張るのとでは、その根底の部分が全然違うようなものだ。今回はたまたまど真ん中に球が来たから良いが、もしもそうでなければ、後者の方は今後の対策も立てられず、再びヤマカンに頼るしかなくなるからな。」

逆沢「未来予測は、目利きの中でも一番難しいと思うわ。」

愛原「同感。特に政治経済の世界ではそんなのばかり。しかも厄介なのは、ちゃんとした鑑識眼に基づかず、願望で語る連中が多い事だ。たとえば国債を大量発行したが、景気があまり良くならなかったとしよう。この時、願望だけで語る人間は、もしも国債発行に反対していたなら【それみろ。全然効果がなかったじゃないか】と語り、逆に国債発行に賛成していたなら【国債発行したからこそ、この程度で済んでいる】と弁解する事になる。」

逆沢「何、その無責任な堂々巡り。どっちにしても自己正当化って?」

鼎「なんか特定の政党の信者が、【ウチの党が政権をとってたらもっと上手にやっていた】【お前の党が政権をとってたらもっとひどい事になっていた】を使い分けるようなものかな?」

愛原「未来予測を目利きする場合は、願望ではなく、もっと具体的にシチュエーションを分析する事が必要だ。もしも【ただ結果論で相手を批判をするだけで、ちゃんとした代案を出せない】人間ならば、仮にそいつに仕事を任せたとしても、どうせ何も出来ないか、批判相手と同じ結果を辿るだけだろう。」

逆沢「嫌な性格のシュウトメババアが、息子の嫁の料理がまずいと酷評した所で、だからといってシュウトメババアの作った料理が、嫁よりうまい事を証明は出来ないようなものか?」

鼎「けどそれを聞いた第三者が、シュウトメさんの批判を間に受けて、お嫁さんに対する印象を低下させてしまう可能性はあるよね。」

愛原「典型的なネガティブキャンペーンだが、ネットの書き込みを間に受ける人がいるように、一定の効果はあるだろうな。だからこそネガティブキャンペーン自体、一向になくならない訳だが。」

鼎「私達は、もう少しきちんとした鑑識眼を養って、世の中を見ないと駄目という事かな?」

愛原「人間は必ず失敗するという大前提も、頭に置いた上でな。あと人物鑑識をする場合に大事なのは、意欲の問題。たとえば壮大なシナリオ構想を周囲に語り、理論だけはふるうけど、全然筆が進まないライターと、多少未熟なところがあっても、ちゃんと筆を進め、依頼者の注文に応じて修正もしてくれるライターなら、俺は迷わず後者を選ぶ。後者は未熟であるが故のミスも多いだろうが、着実に修正と前進が期待できるからだ。でかい事ばかりいうけど、ロクに仕事もせん奴よりずっといい。」

逆沢「一番上手くいった時のケースしか想定せず、大きな夢ばかり語って何もしないのは、詐欺師の手口そのものでもあるからねー。」

鼎「失敗したり笑われるリスクを恐れて、筆を全然進めようとしないライターよりは、どれだけ笑われても転んでもちゃんと書き続ける人の方が、将来性はずっと上の気がするかも。」

愛原「まぁ、そりゃあ処女作が大ヒットなんて例も中にはあるし、生まれつき優れたセンスの持ち主もいるだろう。でも残念ながら、誰もが天才肌とか英雄肌という訳にはいかないし、じゃあ凡人ならどうするか? もちろん足りない部分は、手間をかけて場数もこなして埋め合わせるしかない訳だ。」

逆沢「素晴らしい職人さんもたくさんいるけど、その人達の多くが、子供の頃から人並み以上の素質を持っていた神童だって事はまずないだろうからね。少し見ただけでエンジンの異常に気付いたり、指先だけで物の厚みを測れたりするのも、多分、生まれた時からの才能ではないだろうから。」

愛原「思いつきや直感だけでエンジンの異常に気付いて得意顔になってる奴は、いずれ肝心な場面で判断を誤って、大損害を引き起こすだろうな。大した根拠もなく選択した判断がたまたま大当たりする事もあるが、それを才能と思いこんで過信するのは危険だ。真の鑑識眼というのは、そんな底の浅いものではない。」

逆沢「少々うまくいかない事があっても、それでも挑戦を諦めず、それでいて前と同じ失敗を繰り返さないようにしっかり自分を見直す事ができて、手間も惜しまなかった人にこそ、そういう眼力とかセンスは宿るのかもねー。」

鼎「劉備さんの人物鑑定眼や危機管理能力がチート級なのも、それだけの苦労を背負ったからかも知れないよね。」













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