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愛原様のたわごと(12年8月5日)






愛原「学生さんにとってはうれしい夏休み期間中でもあるだろうし、お盆近くなってきた事から、今日はポジティブに、とあるフリーゲームを紹介したい。」

逆沢「ん? 久しぶりにヨソ様のフリゲの話題か?」

鼎「ウチのサイトはかなり尖ってるから、安易に紹介とかすると、相手様が迷惑するかも知れないよ。」

愛原「気にするな。制作者サイドが相当零細であったりすれば、少し躊躇するところはあるが、今回はそうではないからな。」

逆沢「それで今回はどんなフリゲだ? まぁあんたの事だから、そこらにあるようなものは出してこないだろうけど。」

愛原「今回、紹介するのは【ゲームで裁判員! スイートホーム炎上事件】というフリゲだ。今年の5月にできた新作フリゲだが、一部メディアにも紹介されたフリゲだし、公開後2ヶ月以上経っているから、知ってる人は知ってるだろう。」

逆沢「ああ、なるほど。そう来たか。誰も知らないような超マイナーゲームを出してくるかと思ったわ。てっきり。」

鼎「確か制作者が大阪弁護士会だったよね。」

逆沢「フリゲとはいえば、商業ゲームの体験版や販促用のお手軽フラッシュゲームのようなものを除けば、ほとんど個人が趣味で作っているゲームばかりと決まっているのに、いやはやえらい時代が来たわとは思うわ。」

愛原「以前、アメリカ国軍が作っているフリゲの話をした事はあるが、日本国内の主な組織がフリゲを作るなんて話は、ちょっと記憶にない状態だった。いや、公的な組織だけではなく、非公的な組織・・・たとえば企業などであっても、ゲームと明らかに無縁な業界がフリゲを作って広く公開する例は、ほとんどなかったように思われる。」

逆沢「つまり日本も、ようやく少しは、アメリカに追いつきつつあるって事か? フリゲ文化という面でも。」

鼎「で、フリゲ作者の視点から見て、その大阪弁護士会謹製のフリゲはどんな感じだった?」

愛原「キャラクターグラフィックのクオリティーとかシナリオとかシステム周りという面では、商業ゲームと大差はない。なので有料ゲームしか遊ばないという舌の肥えたゲームプレイヤー相手でも、十分通用するだろうと思われる。基本システムは【吉里吉里2】。フリゲ作者からエロゲまで幅広く使われるAVG向きのフリーソフトウェア。その一方で、背景素材や音楽素材はフリゲマニアにはたまらない同人仕様になっている。」

鼎「同人仕様って、要するに音楽にフリー素材を使ったり、背景素材を自前で撮った写真画像を使うとか、そんな感じ?」

愛原「・・・全部、正解。魔王魂さんとことか、フリゲ作者なら聞き覚えのあるフリー音楽素材が採用されている。背景画像も、元ネタを知ってる人からみたら、一発で【ここがモデルの写真】と分かるような感じで、思わずニヤリとできる。」

逆沢「つまり普段、フリゲなんかやらないというプレイヤーでもそれなりに耐えられるクオリティーではあるけど、フリゲに慣れているプレイヤーからすると、それはそれでニヤリとできるような同人臭い仕様も随所に使用されているという感じかな?」

愛原「俺の主観では、多分、そんな感じ。」

鼎「で、肝心のゲームの中身はどんな感じだった? 組織が作るゲームとかなると、何かのプロモーション色が強すぎて、肝心のゲームとしての面白さとしてはイマイチなイメージもあるけど。」

愛原「結構面白かったぞ。『十二人の怒れる男』という映画に共感を覚えたことのある人なら、特にハマれると思う。主人公の選択次第で、被告人を有罪にも無罪にもできるシステム。かなり頑張れば、裁判人の全てを無罪もしくは有罪という認識に導くこともできる。でも一回目のプレイでは、プレイヤー自身の良識に従って、成り行き任せでプレイするのが一番楽しいとは思う。総じて社会に対する知的好奇心が強い人ほど、是非とも一度ブレイしてほしいと思えるようなゲーム。逆にバンバン敵を撃ち殺すとか、そういう快感だけが目的の人は、ちょっと退屈かも知れない。あと萌え豚とかもカエレ・・・と少しだけ思わなくもない。」

逆沢「まぁ、弁護士会が作るようなゲームで、萌え要素や大量殺戮要素がありすぎたら怖いし♪ 分からなくもないと思うわ。」

愛原「もっとも【大阪】弁護士会だから、ノリは決して堅苦しくはないけどな。」

鼎「けどゲームという概念に関しては、インテリといわれる人ほど否定的な印象を持ちがちだと思うけど、そのインテリ層が集まる弁護士会がフリゲを作っちゃうというのは、すごいと思ったかも。

逆沢「分かる分かる。年配のインテリ層ほど、【ゲーム脳】とかいうようなトンデモ科学を信じたり、いわゆるオタク的カルチャーに批判的なイメージがあるわ。」

愛原「ま、しゃあない。ゲームなんてものが無くても上手に生きてきた人達にとって、ゲームなんてものは今後も必要ないし。未知の得体の知れないものでしかないからな。特に新しいものに積極的に挑戦する意欲に乏しい保守的な人ほど、どうしてもそういう傾向は強くなる。」

逆沢「でもインテリほど、保守的ってのはなんかおかしくない?」

愛原「全然おかしくない。成功者ほど、自分を成功者に導いてきた今のシステムを変える必要性がないわけだから、守りに入るのは当たり前。ついでにいうと経団連とか強い権力を持つ個人・団体ほど、保守志向なのも同じ理由。但し気持ちが若く、向上心や危機感や創造力を持つ真のインテリならば、逆に凡人以上に革新的な行動を好みがちだ。大阪弁護士会のメンバーには、今まで誰もやらなかった事を企画しただけあって、極めて革新的な発想のできる若いインテリらが多くいるようだな。」

逆沢「ま、誰もやらなかったことをやろうとするには、人一倍の積極性とか指導力とか知力とか自信とか創造力とか、そういうものが必要だろうしね。」

鼎「政治家の人でもそうだけど、若くして成功したような人ほど、恐れを知らないというか、積極的で勇気ある挑戦を期待できそうなイメージがあるよね。」

愛原「最近は、脳トレのゲームとか、単純に遊ぶだけの目的だけで終わらない、何らかの教育的・啓発的な効果もあるようなゲームも見られるようになって、個人的にはうれしく思う。」

鼎「昭和の時代には、マンガも色々偏見の目で見られた時代があったけど、【マンガで分かる○○入門】みたいな感じで、マンガという表現方法を通じて分かりやすく教育効果をもたらせるようなマンガもたくさんあるし、そういう風な扱いになっていけばいいと思うよね。」

愛原「ま、ゲームやマンガだけに限らず、テレビにしろ、小説にしろ、歌にしろ、みんな単なる表現媒体に過ぎないという点では同じ事だけどな。」

逆沢「昭和時代にマンガ同様の偏見に満ちた扱いを受けたテレビにしても、教育テレビとか放送大学という概念もあるしね。」

愛原「中世以前に吟遊詩人がかなでた詩の数々から、平成のコンピュータゲームに至るまで、あらゆる表現媒体は、単に人を楽しませる目的だけに留まらず、多くの人間に知識や教養や感動をも与えてきた。というわけで今回のテーマは、【作者(表現者)が作品を通じて伝えたい思い】だ。」

鼎「作者や表現者が作品を通じて伝えたい思い?」

愛原「うん。作品のテーマといえばいいかな?たとえば大抵の歌には、それぞれテーマがあるだろう? たとえば恋人の切なさを表現した歌とか。」

逆沢「最近の歌謡曲とかを聴いてる限りでは、歌詞も覚えられないような、心地よいような音感だけが値打ちの歌の方が多そうだけどねー。特に洋楽なんか、真面目に歌詞に込められた意味を理解して聴いてる人なんか、ほとんどいなさそうな気がするし。ぶっちゃけ作業用BGMと同価値でしかないというか。」

鼎「でも歌詞のない曲でも、名曲というのは多いと思うよ。クラシック音楽とかにも、聴いてるだけで脳裏に光景が浮かぶような名曲はたくさんあるし。ゲームミュージックとかでも、雰囲気にあった名曲というのはたくさんあると思うし。」

愛原「そう。ゲーム音楽にしても、ちょっと聴くだけで、いかにも大ピンチというのがはっきり分かるような曲とか、いかにも主人公が心が折れそうになっているのが痛々しく伝わるような曲とか、そういうBGMも数多い。そしてゲーム作者達も、そういう思いをプレイヤーに伝えたいからこそ、わざわざそういうBGMを場面に応じてチョイスし続けているというのは、ある。」

逆沢「だから、ここで泣いて欲しいと思う場面には、できるだけ悲しいBGMをチョイスしようとするわけね。」

鼎「ラスボスとのバトルの時に、今までと違う戦闘BGMを使用するのも、【今までのような敵とは違うぞ】というアピールをする為にはすごく効果的だよね。」

愛原「このようにゲーム作者は、作品を作る際に、作者が狙っている意図がちゃんとプレイヤーに伝わるように、音源一つとってもできる範囲で配慮する。最近の商業ゲームでキャラクターのボイス付ゲームが増えているのも、それを導入する事によって、さらに各キャラクターの感情が、プレイヤーに分かりやすく伝わるようになる効果を期待してのものだろう。」

鼎「厳密には、キャラクターボイスもBGMも効果音も、無ければ無いでゲーム自体は作れるけど、無いよりある方が、ゲームプレイの快適さが段違いだよね。」

逆沢「今更BGMや効果音の一切ないゲームなど、一部のハズルゲームを除けばありえないって感じだわ。」

愛原「もちろんあまりに雰囲気に合わないBGMをチョイスしてしまったり、あまりに下手な声優を起用すれば逆効果になる場合もあるが、まぁそれは技術的な問題でしかないからな。作者側の意図としては、よりプレイヤーに感情移入していただきたくて、それでBGMやキャラクターボイスを付加するという手間も加える。これは間違いない。」

逆沢「つまり作者側からみれば、わざわざしなくてもいい手間を加えるだけの価値があるわけね。BGMやキャラクターボイスには。」

鼎「そこまでして、作者さんはプレイヤーさんに感情移入してほしいと考えているという事かな?」

愛原「うん。ぶっちゃけそういう事。小説家が挿絵を入れるのも、作曲家が作詞家に協力をお願いしたりするのも、ゲーム作者がBGMやキャラクターボイスを入れたがるのも、ぜーんぶ理由は同じ。無ければ無いで、小説も音楽もゲームも成立自体はするのだが、挿絵や作詞やBGMを加える事でより伝えたい事が伝わりやすくなるから、それでそういう要素をあえて付加しようとするのだ。」

鼎「つまりそこまでしても、作者という存在は、自分の思いを相手に伝えたいと思い続けている存在という事かな?」

愛原「当然。もちろん作者が伝えたい思いの中身は、様々だ。単に【人気が出たらそれでいい】という思いでしかないなら、シナリオの中で登場する笑いも悲しみも萌えも燃えも、テクニックとしての仕掛けでしかないのだろう。まぁその手の人間は、ギミックという単語を好む傾向があるみたいだが。」

逆沢「ギミックという単語に置き換えてしまうと、せっかくの感動シーンの数々が全て、萌え豚のエサ並に安っぽく感じてしまって、私は好きじゃないんだけど。」

愛原「俺も嫌い。だから普段は使わない。まぁ俺は元々、萌えとか泣きが最終目的のゲームというのは、あまり好きではないというのが根底にあるから、単なる嗜好と認識の違いではあるが。」

鼎「萌えゲーとか泣きゲーというジャンルがあるけど、萌えや泣き自体が最終目的だと、シナリオ内の萌えシーンや泣きシーンの一つ一つが単なるパーツでしかなくなってしまうから、それで余計に一つ一つの感動のイベントが、ギミックという安っぽい概念として捕らえられてしまう可能性はあるかも。」

愛原「一方、単に人気が出たらいいとか、萌えて貰えばそれでいいというのではなく、それ以外の思いが込められている作品も多くある。というか、そんな作品の方が多いと思う。」

鼎「たとえばイソップ童話とかは、教訓になるようなお話で構成されているよね。」

逆沢「三国志も今でこそ人気歴史ものの一角だけど、元は歴史をできるだけ正しく伝える意図で編纂されたものだったわね。」

愛原「歴史を正しく伝えようとした結果、本来ならもっと高く評価されていい人物もどんどん浮かび上がってくるようになる。そしてその高く評価されて欲しい人間が大活躍するような歴史小説などが生まれて、やがてそれが拡散されるようになる。多くの人気歴史小説は、特定の歴史人物のファンでもある作者自身が、そのファンとしての熱い情熱を筆に込めて書くことで、さらに作品の面白さが増していくというのはあると思う。」

逆沢「ああ、分かる分かる。この歴史小説の作者は、本当にこの時代、この人物を愛しているんだなぁとか、逆に憎んでいるんだなぁとかいうのが、伝わる時あるもん。」

愛原「だからこそそういう作品は、面白い。もちろん自分が好きな歴史人物が憎々しげに書かれて不快に感じる事もあるだろうから、全ての人に受け入れられるはずもないが、それでも作品自体に魂がこもっている為、すごく人間味があるというか、良くも悪くも感情がシンクロしやすくなっている。」

鼎「歴史小説とかじゃなくて、普通のファンタジー小説でも、作者の魂がこもった作品というのは、すごくシンクロしやすいよね。作者の魂が、作品の世界観や各キャラクターにも無意識の内に投入されて、やがてキャラクターの性格だったらこうするだろうというのがそのまま再現されたりする事で、自分もその作品の世界にいるような感情移入ができるもん。」

愛原「その代わり、作品内のキャラクターに魂がこもると、もはや作者自身の手でも、そのキャラクターを自由には操れなくなってしまう事も多いけどな。その代わり、作者が細かいシナリオ部分まで考えなくても、キャラクターが勝手に歩いて物語を作ってくれるというメリットもあるが。」

逆沢「けどシナリオライターが二人以上だと、よほどちゃんと打ち合わせておかないと、おかしくなる危険性もあるわね。本来、一人の人間に込められた魂は一つだけのはずなのに、異なる二つの魂を無理矢理一人のキャラクターにぶちこんでしまうから、シーンごとに違和感ありまくりになりやすいというか。」

愛原「エロゲなんかで、エロシーンになる度に別人格になってしまうようなものもあるらしいが、そういうのははっきりいって興ざめだな。二人以上のライターがシーン別に担当したり、執筆の流れを完全に切り離してしまった際に、いかにも起きそうなミスともいえそうな気はするが。」

鼎「あ、でもたまに、【作者が作品に自分の思いを込めるのは良くない】という主張をする人がいるらしいけど・・・。」

逆沢「あー、昔、田中芳樹さんを批判する趣旨のサイトで、そういう発言を多く見つけた記憶があるわ。作者自身のイデオロギーとか思想があまりにも作中に出過ぎているとか。」

愛原「【それのどこがおかしい?】って感じだな。そういえばこの前、坂本龍一とかいう作曲家が【大飯原発再稼働反対の曲】を公開したらしいが、それに関して、【音楽を社会活動(政治利用?)で利用するのは問題だ】と主張するコメントも、ネット内で見た事があるぞ。」

逆沢「何、そのトンデモ思想?? 有名なクラシックからマイナーなゲームミュージックまで、あらゆる音楽にテーマが込められている事をその馬鹿は知らないのか?」

愛原「俺もさすがに、【コイツ頭おかしいのか?】と思ったわ。まぁどうせ、そういう頭の悪い奴ほど、逆に再稼働反対派を皮肉った曲でも出たら、今度は喜んで拡散したがるような気もするが。」

鼎「つまりそういう人の本音は、【俺にとって不愉快な事をする奴】を屁理屈でバッシングしたがってるだけって事かなぁ?」

愛原「どうせそんな所だろ? 本当は結論ありきでしかないのに屁理屈で他人の行動を批判する者は、立場が逆転した時、平気でかつて自分が主張した屁理屈を無かったことにしてしまうからな。ま、良かれ悪かれ、あらゆる表現媒体には大なり小なり作者自身の魂が投影される。それを問題視するのは、俺に言わせれば愚か以外の何者でもない。たとえば古田織部の面白さを強調したマンガを書こうとしている作者さんに対して、古田織部なんて元々マイナーな存在なんだから、もっとつまらない作品をかけと、非難するくらい愚かだ。」

逆沢「分かるわ。それ、作者の製作動機に関わる問題でもあるし。」

鼎「私はむしろ、今までの価値観をぶち壊すくらい、斬新で新しい切り込み口で表現できるような作者さんの方が好きと思ったかも。」

逆沢「【徳川家康は実は影武者だった】みたいな発想とか?」

鼎「うん。そんな感じ。そりゃあ、既存の価値観を覆したような価値観が広まったら困る人も多いだろうけど。」

逆沢「今まで浸透していた原発神話を覆されたら困る人もいるだろうけど、まぁそれと同じ感じかな?」

愛原「ま、学術的真理とか科学的定見とかを、心情的・感情的感覚だけでいじり回されたら大問題なのは、俺も理解できるけどな。俺もプロパガンダなどは大嫌いな方だし、音楽だのマンガだのゲームだのといった表現媒体による宣伝工作で、そういうものが歪められたらたまったもんじゃないというのは、十分に分かる。徳川家康影武者説が、小説やマンガになったという理由だけで、学術的真理としてまかり通るようになったら、それはそれで大問題なのも理解できる。だが、誰が何を愛そうと、信じようと、憎もうと、それ自体は自由だと考える。当然、それを元に何を創造・表現しようと、これも原則的に自由だろう(もちろん別の誰かの名誉を毀損したりとかすれば、それはダメだが)。」

逆沢「とすると田中芳樹や坂本龍一といった創造者がどんな作品を世に出そうと、それ自体はOkというスタンスね。」

愛原「当然。それを待っているファンもいるし、逆にみんながその作品に愛想を尽かしても自己責任。それだけの話。政府などの権力団体が、特定の音楽なり小説なりゲームなりを、一方的に強制したり、逆に焚書・発禁等するようになれば、これは全力で非難しなければならないが、個人が自分に与えられた権限と能力の範囲で、どんな作品を創造しようが、それ自体は喜ばしい事だと思う。」

鼎「じゃあ政府などの権力団体が、自前でフリゲとかを出すのはまずいかな?」

愛原「まぁ個人的には、肯定の方かな? アメリカ軍がフリゲを出したと聞いたときでも嫌な気持ちは全然しなかったし、仮に自衛隊が自衛隊をアピールするようなゲームを出しても、俺は【時代の進歩】くらいにしか思わない。ていうか今でも、自衛隊募集の萌えポスターくらい出てるが、苦笑はすれども、それを直ちに問題視する事も一切ないし。まぁ国家権力が特定の思想を押し付けようとするような動きはさすがに大反対だが、提案や啓蒙くらいはOKだと思う。もちろん我々には、そのフリゲに対して、【クソゲだ】とか【現実を無視した嘘っぱち】とか批判する権利もあるけどな。」

鼎「私は、地方自治体とかが、自分の市町村とかをアピールするようなフリゲを出しても、すごく面白いと感じたかも?」

逆沢「ああー、それは面白そうだわ。」

愛原「ま、JRとかでもミステリーツアーとか色んなゲーム企画自体はやってるし、フリゲという枠である必然性も全然ないからな。スゴロクでもカードゲームでもクイズでも何でも構わない。プレイヤーを楽しませながら、別の何かをアピールするという発想自体、少なくとも俺は大好きだ。そんな俺からすれば、歌や小説といった表現媒体に【作者自身の思いを作品に込めてはいけない】なんて主張をする奴は、心の底から阿呆にしか見えない。アメリカ軍がアメリカ軍をアピールして何が悪い? 原発反対派が原発反対をアピールして何が悪い? 作家が自分の倫理観や正義感に基づいた世界観の物語を作って何が悪い? むしろ逆の方がずっと気持ち悪いだろ? 俺は少なくともそう思うんだ。」

逆沢「ま、自分の思いとか欲望とか信念に逆らった作品を出すなんて、ストレスでしかないからねー。そりゃ分かる。」

鼎「ところで冒頭に紹介した大阪弁護士会謹製のフリゲにも、製作者自身の思いとかホンネとか、反映されていたフシはあった?」

愛原「テーマが裁判員制度なので、普通にプレイする限りにおいては、極めて中立な感じ。でもプレイ後、オンラインアンケートに回答した後でもらえるパッチをつけた後で見れるおまけ部分とかで、ニヤリとした部分はあったぞ。」

逆沢「おいおい。アンケートに答えたらもらえるパッチって。そんなものまであるのか?」

鼎「それで、どんな部分にニヤリとしたの?」

愛原「うん。いわゆる製作秘話のようなコーナーがあるのだが、そこで各キャラクターのデザインをどうするかについての、各弁護士スタッフのやりとりがあってだな。たとえば男性弁護士キャラクターが割とイケメンタイプなんだが、男性弁護士スタッフの中から、男性弁護士キャラクターがイケメン過ぎると批判が多く出たらしい。」

逆沢「へ? 男性弁護士キャラクターがイケメン過ぎるとなんでまずいの?」

愛原「なんかよく分からんが、【実際の弁護士はこんなにカッコよくないぞ】みたいな意見が出たらしい。でも女性弁護士が企画責任者だった事もあって、イケメンの方がいいと押しきったらしい。」

逆沢「その企画責任者の弁護士は、腐属性の人か?」

愛原「知らん。あと女性検察官はリアルでもオシャレレベルが高いからという理由で、何度も書き直しになったエピソードとか、あまりしゃべるとネタバレになるからしゃべらないけど、まぁ面白かったぞ。」

鼎「裁判員制度がテーマって事は、裁判所の内情についても、色々分かるシナリオになってた?」

愛原「うん。色んなエンディングを見ると、ゲームと実際の違いを説明したおまけも登場するし、色々興味深かったぞ。あとネットの世界では【なんであの弁護士は、あんな凶悪犯の味方をするんだ?】とか批判する人達も多いが、それに対する見解なども、おまけで見れる。」

逆沢「ネトウヨさんは、本編だけのプレイで留めて、おまけは見ない方が良さそうかな?」

愛原「他にもテレビやネットでは、容疑者に対するうわさ話がよく登場するけど、そんなものは実際の裁判においては何の価値もないという話とか、ゲームを通じて自然と理解できるような仕様になってるから、個人的にも是非ともオススメしたいフリゲではある。」

鼎「いいところばっかり紹介したけど、問題点とかはある?」

愛原「とりあえずダウンロード容量が重い。通常のフリゲの感覚だとエラい目に合う。なのでネット環境次第では、ご飯中とかにダウンロードした方が良い。あとは・・・うーん、そうだな。あまりないけど、強いて言えばひねくれたものの考えをする人とか、自分は頭が良くて(裁判所のような特異な環境でも)弁も立つと思いこんでる人とかとは、少し相性が悪そうだ。別に衝撃的な大どんでん返しのオチがあるわけでもないし(ていうかプレイヤーの行動と判断次第で有罪・無罪が変わる素直なゲーム構造の為)、ゲーム内で発言できる機会も限られているからな。ま、特に最初のゲームに関しては、余計な裏を読もうとせず、素直になりきりプレイした方が絶対に楽しい。ちなみに俺も、通常の推理ゲームならもっと積極的かつ無節操かつ効率的に主人公をしゃべらせたり動き回らせたりするのだが、今回ばかりはリアル俺になりきって、適当に怠慢にプレイしてみて正解だったと思っている。効率重視のプレイは、2回目以降に特殊なエンディングを回収する時にやればいいと思う。」

逆沢「一つだけ質問。大阪に関係のないプレイヤーでも、普通に楽しめる?」

愛原「裁判員制度自体は、日本全国共通だから別に問題ない。気になるなら脳内で、自分の住む都道府県の裁判所という事に脳内補完しても、まぁいけるんじゃないか? 背景素材とかは大阪そのものだし、大阪弁キャラクターも何人かいるけど、ま、それは気にするなという事で♪」

鼎「結構オススメって感じ?」

愛原「うん。弁護士会という公的性格ももった団体が作ったゲームという時点でも十分興味深かったが、裁判員制度という、みんな名前だけは知ってるけど、実はあまりよく知らないものについて詳しくなれるというのも知的好奇心を刺激されてよかった。そしてそれ以上に、憶測や思い込みやうわさ話(専門用語では【伝聞】)ではなく、あくまで物証や証言等だけが証拠価値を持つという視点から、かつ限られた条件で、物事の真偽を判断するという事を肌で体験できたのもすごく良かったと思う。俺のような者がいうのもなんだが、本当にオススメだ。」













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