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愛原様のたわごと(12年8月19日)




愛原「個人的にネタにしたい時事ネタがいろいろあった2週間であったが、今回はオリンピックネタと終戦記念日ネタを組み合わせて、敗戦処理ネタでもやってみようかと思う。」

逆沢「敗戦処理ネタ? また辛気くさそうなネタねー。もっと明るいネタとかないのか?」

鼎「それ以前にロンドンオリンピックで日本が取ったメダル数は、今回かなり多かったみたいだし、むしろ勝戦だったような気がするよ。」

逆沢「金メダルの数だけで言えば、韓国の半分ほどしかない惨敗ぶりだったけどね。銀メダルと銅メダルの価値を金メダルと同等とみなすかどうかで、勝ち戦とみるか、負け戦とみるか、評価が分かれそうな微妙な結果というか。」

鼎「なんかかつての蓮舫さんの【1番じゃないと駄目なんですか?】を思い出しちゃったかも。当時の印象では保守系の人ほど、1番(=金メダル)の価値を高く評価していたイメージもあるけど。」

逆沢「ま、今まで入賞やメダルにも届かなかった苦手競技で初めて銀メダルや銅メダルが取れるのと、今まで金メダルを量産していた競技で金メダルを逃すのとでも、全然意味が違うだろうから、いっしょくたにまとめて評価するのも、暴論な気もするけどねー。」

愛原「その意見には同感だな。個人的には女子マラソンの評価が気になった。前回の星野ジャパンの時ほどのバッシングが無かった点に関してはほっとしているが、他競技と比べると少し辛口のコメントをネットでも多く見受けてしまったもんでな。」

逆沢「まぁ、しゃあないんじゃない? 高橋尚子さんや野口みずきさんらのイメージが強すぎて、日本の女子マラソンは強くて当たり前というのが、一般的なイメージとして浸透しすぎているから。」

愛原「俺は女子長距離は割と好きだから、下手の横好きなりに言わせてもらうが、有森裕子時代から野口みずき時代までの黄金期の活躍を、今の女子長距離に求めるのは相当高望みだと思うぞ。たとえば今のインターハイレベル高校生のタイムをみても、間違いなく旧世代よりも伸びているのだが、それ以上に外国人勢のタイムが飛躍的に伸びすぎているのが現状だ。」

逆沢「要するに日本の女の子達も前世代を上回るくらいの数字を残して頑張っているけど、それ以上に外国の力が伸びているって事?」

愛原「今年の高校インターハイでも、アフリカからやって来た高校生留学生達に、日本トップレベルの長距離高校生アスリート達が軒並み蹂躙されている。残念ながらこれが現状だ。」

鼎「つまり今の流れだと、今の高校生達が社会人となった頃でも、女子マラソンで日本が栄冠をつかみとるのは難しそうって事?」

愛原「そこまでは分からん。だがいわゆるスポーツ科学という面で技術後進国だった外国の国々が、技術先進国並の技術を身につけた結果、技術先進国だった日本のアドバンテージが失われているという側面は大きいと思う。最も典型的だったのは、柔道。柔道は長らく日本の国技と呼ばれていて、日本が蓄えていた圧倒的なノウハウが例年、金メダルを量産していた感じだが、外国勢が経験値を積み上げてきて、技術面での差が小さくなった結果、ついに今回のような大惨敗になったような気はしなくともない。」

逆沢「あー、技術とかノウハウの差が縮まっているという考えね? まー、駅伝中継とか見てても、身体能力ではアフリカ勢がダントツだなとは、10年以上前から感じていたけど。そのアフリカ勢が国単位でももしも技術やノウハウを身につけてしまうような時代が来たなら、上位をアフリカ勢に独占されてもおかしくないとも思ったし。」

鼎「それが現実に起こったのが今回のオリンピックだったという事かなぁ? そういえば中国とかでも、昭和の頃から今ほどオリンピックがずっと強かったイメージはないし、やっぱりスポーツの世界でも、技術やノウハウの差は大きく響くという事かな?」

愛原「逆に日本が金メダルを取った競技を見てみよう。レスリング4個、ボクシング1個、体操1個、柔道1個の計7つだ。」

鼎「格闘系にすごく偏っている気がするよね。」

逆沢「格闘系はどっちかというとアマよりプロに有力な選手が偏る傾向が強いから、そういう意味では穴場というイメージがあるわね。特にレスリングとかはまだ正式種目となってからの歴史も浅いし。」

鼎「それをいったら、前回まで正式種目だった野球でも、オリンピックに世界最高の人材が集まらない穴場競技という点で同じだったよ。」

愛原「穴場競技という点では、女子サッカーも同じだな。まだ競技人口が絶対的に少ない上、歴史的にも浅く、どの国にも豊富な経験やノウハウが蓄積されてない為、そこに注力すれば比較的効率的に勝てる可能性があるという点では。」

逆沢「なんか日本って、穴場というかニッチに深く食い込んでメダル量産してない? セコいけど。」

愛原「日本は毎回やたら多くの選手団をオリンピックに送り込んでるイメージがあるが、マイナーなニッチ競技にもまんべんなく選手を送り込んでるから、そうならざるを得ないという事かも知れんな。」

鼎「でも今回はちょっとほっとしたかも。冬のオリンピックの方では、ここ10年ほど惨敗続きだったから。」

逆沢「金メダル1。銀0。銅0。なんて年もあったからねー。その時は唯一金メダルを持ち帰った荒川静香さんが大フィーバーだったけど。イナバウアーとか、流行語になってた記憶もあるし。」

原「銀英伝内で何度も登場する【負け戦ほど英雄を必要とする】という事なんだろうな。」

逆沢「ま、日本人は、負け戦を負け戦と正直に報道すると、猛烈なバッシングをすぐに起こしたがるから、それを避ける為に負け戦ほど英雄を必要とするんだろうけどねー。今回のオリンピックも、金メダル数でいうと惨敗といってもいい状態なんだけど、メダル数だけでいえば今までで最多とか報道して、いかにも大勝利といわんばかりの報道の流れになってるし。」

鼎「メダル数に関しては、大会別に競技種目数との割合で比較しないと全く意味がない気がするけど・・・。」

愛原「この負け戦を勝ち戦のごとく報道する姿勢は、ミッドウェー戦役以降の日本の歴史ともクリソツだなと、終戦記念日あたりにふと思い浮かんだ。負け戦を負け戦と報道しない。実際には惨敗続きのような状態なのに、それでも善戦を続けているような大本営発表や報道を繰り返し、どんどん自国を疲弊させる。そんな感じだから、玉音放送が流れてもまだ【なぜ善戦続きの日本が、突然敗北を認めるのか理解できない】風な国民も多くいたと聞く。それと同じ事が、今の日本でも平然と起こっている。そう思うようになると、なんか肌寒くなってきてだな。」

鼎「そういえばオリンピックだけじゃなくて経済分野でも、実際には韓国勢に劣勢に立たされているのが日本の現状という話も聞くけど。」

逆沢「仮に日本と韓国が戦争したら日本が余裕で勝つみたいな事を平気でのたまう強気のネットユーザーさんの書き込みもみるけど、どうも実際にはかなり怪しそうだしねー。軍備。経験。情報収集力。どれをとっても。こんな事をいうと、一部の強気のネットユーザーさんに殴り込みかけられそうだから、ここでしか言わないけど。」

愛原「外で言うのはやめておけ。戦時中の日本国内で【このままでは日本は戦争に負けるだろう】と発言するのと同じくらい危険だ。人間は自分に都合の良いことしか信じたがらない。【不都合な真実】からは目を背けたがるのが、多くの人間の思考だからな。」

鼎「【不都合な真実】というのは、かつてアメリカで副大統領を務めたゴアさんの映画の題名だよね。環境問題をテーマにした作品だったかな?」

愛原「敗北。劣勢。不利な情報。そういったものをどれだけ真摯に受け止められるか? 今回はこれをテーマにやりたいと思う。テーマ名は【捲土重来を期す為に〜敗北の受け止め方】だ。」

逆沢「捲土重来。また難しそうな四字熟語を引っ張ってきたわねー。ひょっとしてそんな事で、自分が賢くみせようとでもしているのか?」

愛原「日本人のくせに、特に外来語で表現する必要性もない場面でカタカナを多用したがる連中よりマシだろう。分かりやすく書こうとすると、どうしても長文にならざるを得ない事を一言で表現したい時に、四字熟語というのは非常に有効だからな。」

鼎「ええと。辞書によると捲土重来というのは【一度敗れたり失敗したりした者が、再び勢いを盛り返して 巻き返すことのたとえ】という事だよね。」

逆沢「要するにリベンジの事じゃない? それならリベンジとカタカナ4文字で表現した方が、ずっと分かり易いのに。」

愛原「・・・・・・。」

逆沢「・・・けどまぁ、言いたい事は分かるわ。本当は負けてるのに、それを勝ってると思いこんでいるようでは、とても状況の改善は望めないって事が言いたいわけ。ね」

原「・・・代弁、感謝する。問題が起これば、問題点を探し出して、それを解決する事で問題を無くすのが本来のあり方。バグが見つかったら、バグの原因を探し出した上でそれを潰す事で、バグを無くすようなものだな。」

逆沢「けど世の中には、敗北してもそれを認めない。問題や障害が起きてもそれを認めない。バグが発生してもそれを認めない。そんな人も少なからずいるからねー。」

愛原「現実に改善すべき問題が発生しているのに、それを問題と認識すらできないというのは、色々まずいと俺は思う。まして大敗北を大勝利と誤認するようでは、対戦末期の日本の状態と何ら変わりないわな。」

鼎「単なる世論対策でささいな嘘を言うならともかく、現場レベルでも嘘の情報が当たり前のように通るようになると色々まずすぎるよね。」

愛原「そのまずすぎる嘘が、対戦末期の日本では当たり前のように起きていた。たとえば1944年10月の台湾沖航空戦では、【敵空母11隻撃沈、8隻撃破、他多数の戦艦・巡洋艦を撃破】とあり得ないような規模の嘘の大本営発表をしたが為に、後々取り返しの付かない事になっている。」

逆沢「ってか、空母19隻も一気に失う規模の大敗北を米軍が喫したなら、事実上、アメリカ軍の太平洋機動艦隊自体が完全覆滅したのとイコールでしかないと思うんだけど・・・。」

愛原「うん。この大本営発表を真面目に受け止めれば、少なくとも米軍が今後日本に航空戦をしかける事が当面不可能になっても当然。その前提でレイテ迎撃戦なども作戦指揮されたのだが、実際には飛んでくるはずのないアメリカ戦闘機が突如、レイテ沖に現われたりするもんだから、現場は大変なことになったらしい。」

鼎「けど大本営発表がウソだらけという事は、現場の人なら薄々感づいていただろうから、それも折り込み済みで、作戦に修正を加えられなかったのかなぁ?」

愛原「この台湾沖航空戦の場合、天皇陛下自身がその奇跡的大勝利の報告を間に受けて祝福の声明を出し、日本国内でも祝賀の提灯行列が出るような状態になっていたから、今更【あれは、誤報でした】で済まない状態になっていたのだ。だから作戦自体も、アメリカ空軍が壊滅済みという前提で実行せざるを得ない。無論、レイテ迎撃戦を担当する現場は現場の方で、捕虜にした米軍パイロットを尋問して本当の情報を確認した上で、上層部に作戦の修正を要望していたみたいだが、それでも上層部は天皇陛下も祝福してみせた程の大勝利が誤報であるはずがないという大前提を改めようとせず、以後、日本軍はますます窮地に追い込まれていく事になる。」

逆沢「うーん。これはひどい。」

鼎「敗北を敗北。劣勢を劣勢と受け止められたなら、きっと違った対策も取れたと思うのに、どうしてみんな、それができないのかなぁ?」

逆沢「仮に誰かがウソの情報を伝達しても、それ以降の誰かがそれを修正できれば、そんな事にはならなかったとも思うしね。大本営が嘘つきなら、天皇陛下がそれを修正するか、天皇陛下もウソを信じてアテにならないなら、天皇の意向を無視して現場が無断で作戦を修正すればいいとも思うけど。」

愛原「ただ、これに似た戦史の例は、歴史上にもいくらでもある。本当は負け戦なのに、それを正直に報告しない事で、国家に致命的な損害を与える例。中国で最初の皇帝となった始皇帝の建てた秦ですら、本当は敗戦続きなのを部下が隠し続けていた事で、首都に迫る寸前まで皇帝自身が気付かなかったという間抜けな形で、その幕を閉じる事になったのだ。」

鼎「その話は知ってるよ。丞相の趙高さんが、敗戦続きの責任を取らされて更迭される事を恐れて、敗戦続きという事実を皇帝に一切報告しなかった為に、秦はまともに対策らしい対策もとれないまま、やがて歴史から幕を下ろす事になったんだよね。」

愛原「趙高は、それ以前の段階でも、敗戦の責任を部下になすりつけようとして、その結果、部下の将軍が敵に降伏してしまったりとか、いかにも亡国の奸臣らしい振る舞いを多くみせている。ついでに言うと皇帝に【敗戦続きで首都陥落目前】という真相が露見するや、【以前から敗戦続きにも関わらず何の手も打たなかった皇帝は無能】という風に、その皇帝に敗戦の全責任を押し付けて、皇帝殺しまでやっている。」

逆沢「すげー奸臣ぶりねー。部下に責任を押し付けたと思えば、今度は上司に責任を押し付けて、皇帝殺しって。」

愛原「責任を取りたくない性格の人間が責任ある役職に就いてしまうと、往々にしてこういう悲劇が起きやすいという事かも知れんな。大日本帝国の最後がああいうむごい形で幕引きになったのも、責任を取りたくない人達が情報を操作できる立場に多くいた事が原因の一つであるようにも思われる。」

逆沢「正確には、敗戦の責任をとりたくない人達ね。大日本帝国の軍人達には自らの命すら惜しまない、裏表なき忠烈な軍人が多くいたという美談で、私達は印象づけられている感じもあるけど、実際にはインパール作戦の時のあの人を始めとして、敗北の責任を取りたがらない人達が大半であったからこそ、あんな形の大戦末期になってしまった感じがするし。」

鼎「それを言ったら、平成の今になっても、敗戦の責任を誰々が取ったという事は全然ないままのような気がするよ。歴代の総理大臣の誰一人として、英霊に謝罪の言葉を告げない事一つとっても、今でも誰も間違った事は何もしていないという認識みたいだし。何も戦争そのものに勝った負けたというマクロなレベルだけじゃなくて、局地戦レベルでひどい作戦を発案・実行したり、情報伝達レベルで誤報を垂れ流したりとか、そういう部分でも、誰々が何々の罪で処罰されたとか更迭されたとか、そういう話はほとんど聞かないし。」

逆沢「大日本帝国軍の軍隊の内実は、誰も責任を取らなくていい軍隊だったって事か?」

愛原「マレーの虎と呼ばれた名指揮官が、天皇陛下や東条英機に個人的に嫌われていたという理由で、しばらく中国の奥地に飛ばされて、敗戦濃厚になってから、再びその軍事手腕を買われてフィリピンの司令官に抜擢されたなんて逸話を聞くと、当時の大日本帝国軍は、信賞必罰ではなく、誰々に好かれていたとか嫌われていたとか、いかにもくだらない理由で人事運用が成されていたのかとも思うし、暗澹な気分になるわ。」

逆沢「まぁ、仕事が出来るかどうかよりも、上司の好き嫌いだけで人事が決まるなんて組織は、会社組織とか官僚組織でもよくあるからねー。」

鼎「戦果とかはどうでもよくて、重要なのは上司や同僚にどれだけ好かれるか嫌われるかという軍隊も、すごく怖い感じもするけど・・・。」

逆沢「でもなんとなく、モヤモヤが晴れてきたわ。大和特攻とか、冷静に考えたらあり得ないような作戦も、当時の日本軍は平気でやってたけど、戦果とかはどうでもよくて、重要なのはその場の雰囲気だったと解釈すれば。大和特攻が当たり前という雰囲気の会議で、自分だけがそれに反対しても、上司や同僚に嫌われて左遷されるだけだろうしねー。日本軍では作戦的に合理的かどうかよりも、組織の空気を乱さないというか、人間関係で失敗しない方がより重要だったと解釈すれば。」

鼎「誰が無様な敗戦をしようが、誰がウソの情報を垂れ流そうが、身内をかばい合う体質の組織だと、特定の仲間を戦犯扱いにしてさらしものにしようという雰囲気になりにくいのは、分かる気がしたかも。現代の役所や警察や学校でも、身内の誰かが不祥事を起こしても、お互いにかばい合って不祥事をもみ消そうとしてしまう所はかなり感じるし。」

愛原「そういう身内同士のかばい合いが常態化した組織ほど、責任を全体化したがる傾向があるようにも感じるよな。敗戦直後の首相の言葉がいきなり【一億総懺悔】発言だし。そういえば大津市のイジメ事件に関しても、教職員出身の輿石民主党幹事長が【学校が悪い、先生が悪い、教育委員会が悪い、親が悪い、と言っている場合じゃない。みんなできちんとやっていかなければならない】とか言っていたな。」

逆沢「責任を回避したい人ほど、【社会全体、国民全体の責任】に拡散化したがる気はするわね。その論理で言えば、大戦中に無謀な作戦を実行されたのも、嘘八百の大本営発表がまかり通ったのも、みーんな社会全体、国民全体の責任ってか。で、誰一人謝罪もしないまま、英霊に感謝さえしていればそれでいいと。」

鼎「でも今の日本人の反応を見る限り、仮に特定の個人が戦犯になった場合、その戦犯が過剰につるし上げられるだけだと思うけど。ほら、星野ジャパンの時も、4位になっただけで誰も損をしてないと思うけど、それでもものすごい大バッシング状態になったし。」

逆沢「以前、ここのコーナーでネタにした事もあったけど、鳥インフルエンザの時とか新型インフルエンザの時でも、特定の業者や生徒らに対して、猛烈な電話抗議やバッシングが展開された事もあったわね。日本人は、誰かがイケニエに捧げられると、とにかく叩く叩く。たとえ真犯人がえん罪であろうが、犯罪性が無かろうが、とにかく叩きまくるから。」

鼎「日本では、うかつに責任を認めてしまうと、自殺するまで追い込まれる可能性があるから、それで誰も責任を認めたがらない所があるかも。」

愛原「ま、星野ジャパンが猛バッシングを受けていた頃にウンザリしていた自分としては、無関係の庶民が容赦ないバッシングをするような構図には、どうしても不快感を示さざるを得ない。だが、だからといって敗北を敗北と言わず、失敗を失敗と言わず、誰も責任を取ろうとしない風潮には、より強い懸念をせざるを得ない。それは単に不快であるのみならず、致命的な打撃につながる事も多いからだ。」

逆沢「ま、実際には敗戦続きなのに、戦勝続きとホラ吹き回ったら、自国がどんな状態になるかくらいは誰でも分かる事だしね。」

鼎「実際にはライバル勢力が相当力を付けているにも関わらず、まだ自分達の方が圧倒的に強いと思いこんで、正確な情報分析も対策も怠るようでは、やがてそのライバル勢力に一方的に蹂躙されても仕方ないようなシチュエーションは、歴史上でも無数にあるよね。」

逆沢「分かる分かる。特に貴族階級の人とかで、【あんな下賤な連中にしてやられる訳がない】とばかりに必死に相手を見下して、【あんな奴らごときに本気になるようでは恥だ】とばかりに真剣に対策を練ることも放置して、それで最後に痛い目に合うケースも多そうというか。」

愛原「貴族階級だけにとどまらず、相手を見下したがる人間が上層部に占める組織は極めて危険だな。そういう人間は、自分より相手の方が上だと認めると精神の均衡が取れなくなるため、周囲の賢者らがどれだけ諫めても、ますます意固地になってそれを拒否する。本人は相手を見下して現実逃避していれば精神的に満足かも知れないが、巻き込まれる大半の部下らは大迷惑だ。

鼎「でも人の上に立つような人は、大体人生の成功者である場合が多いから、普通の人以上に他人を下に見る性格の人が多い気がするかも。」

愛原「苦労人の成り上がりの場合は、逆に猜疑心が強くなりがちだけどな。他人を見下すことは少ないが、その代わり必要以上に他人を警戒しがちになる。一方、生まれながらの貴族だったり、苦労知らずの成功者の場合は、お前の言う通り、根拠もなく自分が相手より偉いと思い込み、常人以上に怠慢な油断をしやすいとは思う。」

逆沢「どっちもどっちねー。まぁ【勝つ】という視点に立つなら、油断の少なそうな前者の方がずっとマシだと思うけど。それだけの警戒心と才覚があったからこそ、苦労してでも成り上がれたとも思うし。」

愛原「ま、何の対策も努力も状況分析もしないままでも【勝てるに決まっている】と思いこんでる奴に、勝負ごとをやらせてはいけないという意見には賛成だな。負けを認める。不利を認める。失敗を認める。危機を認める。そういうのは決して愉快なことではない。だが同じ失敗を繰り返さない為にも、それはやらねばならない事なのだ。【仕事でミスをしたかも知れない】とか【出かける前にガスを消し忘れたかも知れない】などと思った時、安易に【多分、大丈夫だろう】と思いこんで終わりにするか、きちんとミスの可能性を自覚した上で再確認の為に行動できるかの差というか。」

逆沢「そういうのは、単に勝負ごとの世界だけじゃなくて、普通に日常生活でもたくさんあり得る話だと思うわ。普通に危機管理意識の問題というか。」

鼎「そういう日常の危機管理意識に関しては、単に個人差の問題だから、私はそれほど気にしなくてもいいと思ってるけど。私からみてもっと怖いのは、他人に印象操作される方だと思うかな?」

逆沢「あー、国のプロパガンダとかマスコミの偏向報道で、負け戦を勝ち戦と思いこませられるような事があるとすれば、それは大問題かも知れないわね。」

愛原「とりあえずマスコミに対しては、情報の公平性が必要だと思う。たとえば日本人の大リーガー選手が活躍した場面だけ報道し続けた場合、日本の大リーガーが常に大リーグで活躍し続けているような錯覚を与えてしまう事があるだろ?」

逆沢「なるほど。負け戦の場面は決して報道せずに、勝ち戦の場面だけ報道する事で、常に勝ち続けているような錯覚を視聴者に与えてしまう危惧があるって事ね。」

鼎「私、松井秀喜さんがレイズから戦力外を受けた時に、玉音放送を聞いていた当時の日本国民のような心境になったかも。だって好成績を買われてレイズに入団が決まった報道があって、それから間もない頃、2.3回だけ松井さんが活躍したニュースだけしか知らなかったから。だから戦力外が出た段階になって、実際には打率もずっと低迷していてほとんど活躍できないままだった部分を知った時に、すごく戸惑ったというか・・・。」

逆沢「あははは。私も大リーグに渡った日本人選手の多くが、イチローみたいに年間続けて安定して好成績をあげているだろうなと、漠然と思いこんでいた頃が、昔、少しだけあったわ。」

愛原「この前、8月10日に和歌山でもパンダの子供が産まれたが、こっちの報道もほとんど行なわれないままだった。こういう公平性のかけらもない報道の仕方を続けるから、国民の知識が異常なまでに偏ってしまう。別にパンダの報道自体が特段必要とも思わないが、するならする、しないならしないで、公平性に配慮して欲しいとは思うんだ。大リーガーの報道にしても、してもしなくても構わんが、やるなら偏った印象で誤解を招かないように、補足説明を加えるなどして、全体的に配慮して欲しいというか。」

逆沢「経済や財政や外交の問題にしても、もう少しバランス感覚が欲しいんだけどねー。そりゃあ日本の報道機関なんだから、ある程度は日本びいきであるのは当然だとしても、その度が過ぎると、かえって不安になるというか。いや、それで安心する人の方が多いのかも知れないけど。」

愛原「【日本は○○国と比べて△△で劣っている】と報道するだけで、売国マスコミとかレッテルを貼りたがる人間も少なからずいるからな。それは日本が○○国に捲土重来を期す上で必要不可欠な情報だと思うが、そういう人は【△△で劣っている】という事実を知ろうとせず、【◇◇では(も)勝っている】という事実(?)ばかり強調したがる。」

逆沢「金メダル数で惨敗という事実より、メダル総数で大健闘という事実ばかり強調したがる傾向と、同じと言えば同じね。」

愛原「本当の実力者というのは、たとえ1位になっても、来期もそれを取れるように、勝って兜の緒を締めて対策を怠らないような者の事をいうのだ。まして負けている(部分がある)にも関わらず、【◇◇では勝っているから】と安穏とし、兜の緒を緩めるなんてのはどうかしてるといしか言いようがない。」

逆沢「マンガ的には、典型的な負け犬的発想ねー。やられ役に一番ふさわしいというか。」

鼎「ゲームの世界でも、序盤にあえて敗北確定イベントを挟んで、それを悔しく思ったり一度は挫折した主人公が再奮起して、やがてリベンジを果たす展開というのはちょくちょくあるけど、それは【一度は敗北を認める】からこそ乗り越えられるイベントだよね。」

愛原「敗北・ピンチ・大誤算・・・色んな障害が主人公を襲うだろう。だが敗北を敗北、ピンチをピンチ、大誤算を大誤算と受け止め、その上で反省し、対策を練り、努力を重ねるからこそ、ドラマが生まれるのだ。」

逆沢「分かる分かる。実際には負けてるにも関わらず、本当なら勝ってたとかグジグジ言い続けている主人公とかいたら、興ざめだもん。」

鼎「相手を弱い奴と決めてかかる主人公よりも、相手が強敵と信じて全力を出すのを惜しまない主人公の方が絵になるし、私もライバルが強大と思えるようなシチュエーションの方が好きだよ。」

逆沢「それも分かる分かる。てか相手を弱小と決めつけて、なめてかかるようなキャラクターは悪役の方がお似合いだわ。しかも威厳あるラスボス級の悪役ではなく、醜い性格をした中ボス級までの悪役にふさわしいというか。」

愛原「負けを認めることは、本当の意味での恥ではない。本当に恥ずかしいのは、第三者から見て明らかに負けてるような状態であるにも関わらず、それでも負けを認めず、改善策も現状認識にも関心を示さず、さらに周囲に醜い姿をさらし続ける奴の方だ。」

逆沢「うんうん。潔さというのは、すごく大事よね。それもかつての日本人の美徳だった気がするけど。逆に往生際が悪い振る舞いは印象も悪いわ。」

愛原「確かに勝ち戦を続けているかのような報道は、見ていて非常に気持ちがいい。【さすが日本、素晴らしい日本】という気にもなれるし、誇らしげにもなれるだろう。逆に韓国や中国の躍進ぶりを報道する度に、【この売国マスコミが】と言いたくなる人の気持ちも、全く分からない訳ではない。だが本当にそれでいいのか? 井の中の蛙で居続けて、本当の意味で満足なのか? いや、満足不満足の問題では済まない。お前達がそうやって傲慢な余裕をかまし続けている内に、どんどん追いつき追い越しされている現状のヤバさをどう感じているんだ?という事なんだ。韓国や中国の悪口を言い続けても、呪いだけで相手を殺せたりはしないからな。」

鼎「というか呪いで相手を殺せるなら、日本人の方が昭和の頃に既にたくさん殺されてるような気がするけど・・・。」

逆沢「うーん。だけど温暖化現象はデマだとか、日本の財政危機論はデマだとか、自分が信じたくない情報に関しては、どうやっても信じようとしない人が多いのも、また事実だしねー。まー、そういう人は、大した理由もないまま結論だけ強調するとか、対立陣営のネガティブキャンペーンやるか、訳分からないリンク貼るだけで、本当の意味で他人を説得できるような自説を裏付ける論理が全くないから、見分ける事自体は難しくはないんだけど。」

鼎「戦時中も、日本は不利だとか、負けているという事を信じたくない人はたくさんいたと思うよ。それがかえって、戦況を更に泥沼に追い込んだ部分もあると思うけど。」

愛原「投機の世界でも、投機が好きな人ほど一般的に自分が最終的に勝つ事を妄想しやすいから(ていうか自分が投機で損をすると思いこむような人は、初めから株やFXや宝くじなどの投機活動は行なわない為)、負けが込むほど、余計に泥沼にはまりやすいというのもあるらしいからな。だから潔く損切りもできず、破産宣告や離婚まで追い込まれる人も多い多い。」

逆沢「ま、自分(達)は最後にきっと勝つと信じている人に慎重論を唱えても、【そんな弱気な発言が味方の士気を下げるんだ】とか【人のやる気を削ぐような事を言うな】と罵られるだけのような気もするしね。で、そんな人ほど、最終的に負けを認めざるを得ない段階に追い込まれても、今度は【お前が余計なことを言ったせいで負けた】みたいな言い訳をしたり。」

鼎「なんか責任を取りたがらない人の全体図が見えた感じもしたかも。責任を取りたがらない人ほど、自分に都合の良いことばかり妄想して無茶をして、負けが込んでもなかなか現状を認めようとせず、それでもどうやっても上手くいかなかったら、今度は他人に責任転嫁したがるみたいな。」

愛原「責任感のある人程、失敗した際のリスクにも敏感だから、そもそも無茶はしないからな。たとえば同じ投機をやるにしても、そういう人は敗北条件がしっかりしている場合が多く、これ以上の額は生活資金だからどんなに勝っていても絶対に投機に回さないとか、これ以上の額で損が出たら、きっちり損切りするとか、そういうリスク管理ができる。だからその勝負一つに負けても、人生そのもので負ける事はそうそうない。」

鼎「どんな時でも負けを認めないというのが美徳に感じる時もあるけど、実際にはむしろ正反対って事かな?」

愛原「勝ち組・負け組という言葉があるが、人生全体そのもので完全敗北を悟る必要はない。しかし物事の一つ一つで負けを自覚する事は必要だ。たとえば【あいつに数学の点数で負けた】。それを自覚するのは、自覚しないよりもずっと良い。こちらの体調が悪かったからとか、相手の得意分野だったからとか、あるいは【本当は自分の方が才能は上だ】とか【もしも本気で努力したら、あいつよりもいつでも上に立てる】と思いこむだけで、実際には何の努力もしないよりも、百倍マシというか。」

逆沢「けど何の根拠もなく(本人にしてはちゃんとした根拠があると思いこんではいるけど)、相手を見下したがる人も、日本には多そうだけどねー。それだけならまだしも、そういう人程、状況が悪化するほど、今度は他人に責任転嫁したがるから、とにかくタチが悪すぎるというか。」

愛原「全くだ。こちらが真剣に厳しい現状認識を訴えても、そういう連中は、逆にこっちを攻撃する材料にしかしないからな。大日本帝国の軍人達も、大変だったと思う。厳しい戦況を真面目に口にすれば、いきなり危険な戦域に左遷されかねない。だが無駄にドーパミンが出まくっている連中に合わせていると、今度はやれインド攻めだ、やれ特攻隊だ、やれひめゆり竹槍学生隊だと、とんでもない提案ばかりが通過する異常事態になってしまう。」

逆沢「そういう異常な空気が醸成される前の段階でなんとかしないと、大変なことになりそうね。」

鼎「今後の日本がおかしな方向にいかないようにするためには、どういう工夫が必要かなぁ?」

愛原「とりあえず今のやたら偏向した報道をやめるべきだろう。日本は素晴らしい。東京は特別だ。そう報道し続けていれば、視聴者の多数派の精神は安定するかも知れない。だがその精神安定剤は麻薬そのものだ。麻薬をやめたら禁断症状がでかねない。ていうか現実に、ちょっと日本や東京のネガティブな話題が出るだけで条件反射で、【売国マスコミだ】とか【首都なんだから特別扱いは当然だ】といわんばかりに非論理的な大騒ぎする奴も多くいる。」

逆沢「ま、人間、快適な環境に慣らされると、不快な環境への耐性が無くなるからねー。甘やかされた子供ほどキレやすいとか、エアコン効きまくりの環境で育てられる程ちょっとした寒暖の変化ですぐに疲労するとか、色々あるらしいし。」

愛原「自分達の良い所だけでなく、悪いところや現実の厳しさも知った上で、問題点があれば知恵や努力で乗り越える。あるいは乗り越えられなくても、せめて簡単に挫折しないよう、妥協と寛容と忍耐の精神を鍛える。そういうのが必要だと思う。それができない人間ほど、ちょっとした壁にぶち当たったら、すぐに自殺を考えたり、うつ病になったり、ひどい場合は他人に八つ当たりしたりと、ロクな事をしないからな。」

鼎「けどマスコミや政治だけを悪役にする風潮も大問題だよね。自分だけは悪くないというか。」

逆沢「自分だけは悪くないと考え方も、責任感に乏しくて、自分に都合の良い妄想しかしない人にありがちな考え方だから困るわ。そういう人ほど、厳しい現状認識を突きつけられると猛反発して、こっちを悪役にしたがるから、本当は一番関わりたくない人種なんだけど。」

鼎「けどそういう人と関わるのを放置した結果、そんな人が中心となって社会が動くようになると、もっと危険だよね。」

愛原「同感。マスコミに偏向報道をさせてる最大の要因が、当の視聴者自体という側面もあるからな。不都合な真実から目を背けたがる視聴者が多いほど、視聴者に媚びざるを得ないマスコミも、それに同調せざるを得ない傾向もあると思う。また責任者を明らかにする作業が不可欠なのは当然だが、その過程において、必要以上のバッシングが発生したり、ひどい場合だと何の罪もない人にもバッシングの矛先が向かう風潮も大問題だ。」

逆沢「そろそろオチなのに、いきなりそんなまとめ方をされたら困る。社会全体の責任とかいうまとめ方はダメだと上の方で言ってたのに、今のまとめ方は、どう見ても社会全体の責任といわんばかりじゃない?」

愛原「うーん。それじゃこうまとめるか。責任感のない人間が上に立とうとするのは止めろと。自分だけは安全なところにいると思いこんでる人間が、匿名を盾に無闇なバッシングをするのも止めろと。行動や発言に無責任な人間ほど、平気で無茶を言ったあげく、何かあったら他人のせいにしたりして、ロクな事をしないからな。」














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