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愛原様のたわごと(12年10月21日)





逆沢「なんか最近。作者、ゲーム漬けみたいねー。作る方じゃなくて遊ぶ方で。」

愛原「みたいだな。それだけ世の中には、まだまだ値打ちのあるゲームがたくさんあるという事だ。大変喜ばしい事ではないか。」

鼎「最近は、プレイヤーの舌がすごく肥えてるから、並のゲームではなかなか評価してもらえないって聞くけど。」

逆沢「娯楽自体が飽和状態だからねー。ゲームもマンガもバラエティー番組も、年々進歩しているのは間違いないと思うけど、それ以上に、みんなの舌の肥え方がハンパじゃなくなっているというか。」

愛原「俺は、10年前のゲームでも、まだまだ普通に楽しめるけどな。」

逆沢「それはそれでメーカー泣かせねー。古い作品にいつまでも固執されると新作が売れなくなるから、適度に飽きてもらった方がいいんだけど。」

愛原「古いゲームには古いゲームなりの味も楽しみ方もあるぞ。何年も眠らせていたゲームを久々に起動させてみると、また忘れていた昔の快感がよみがえるって感じ?」

鼎「押し入れに眠っていたマンガを、数年ぶりにふと読み返してみた時の感動みたいなものかな?」

愛原「うん。まさにそんな感じ。以前、ゲームブックの話をした時以来、色んな物を出してきてみては、当時の感動をもう一度という感じ。」

逆沢「【当時の感動をもう一度】ってオッサンか、お前は。」

愛原「悪いな。オッサンだ。何を今更。」

逆沢「開き直るな。」

愛原「ただ年齢を重ねたせいなのか、ゲームなんかをプレイしてると、なんとなく昔より難易度が高く感じる・・・。慣れのせいもあるかもしれんし、年齢のせいで集中力(とそれに伴う緻密さ)などが低下したせいもあるかも知れん。ただ昔ほど効率プレイができない分、純粋に効率よりも世界観を楽しむようなプレイができる喜びはあるぞ。」

鼎「ゲームだと、どんなジャンルが多いかな?」

愛原「現状では、SLG系の比率が非常に高い。あと育成要素の強いRPGとか。」

逆沢「時間食い虫じゃん。これはまだ長くなりそうね。」

鼎「ここの作者の嗜好でいうと、やはり国盗りSLG系統か街作りSLG系統が主な比重を占めそうな感じがしたかも。」

愛原「まぁ、ハズレではないな。で、今回のテーマだが【優秀な人材の登用・起用方法】でやりたいと思う。」

逆沢「なんともまぁ・・・。どういうジャンルのゲームが元ネタか、直感で思い浮かびそうなテーマねー。」

鼎「武将とか人材単位でコマンドを出すタイプの国盗りゲームだと、どれだけ優秀な人材を効率的に多くゲットできるかが、クリアの鍵になるよね?」

逆沢「国盗りゲームの名を借りた、事実上の人材狩りゲームも多そうだしね♪ まぁ史実でも【荊州を得た事よりも、貴殿を得た事の方がうれしい】と評された武将とかもいたらしいし。中途半端な領土を手に入れるよりも、その領土に居た特定の人材を仲間にできる喜びの方が大きいという気持ちは分からなくもないけど。」

愛原「今回はこの【優秀な人材】なるものを、リアル的な視点も交えながら色々語ってみたいと思う。」

鼎「ゲームの世界では、パラメータというはっきりとした指標があるから、誰が見ても一流か三流かの区別はつけやすいけど、現実世界ではそうはいかないよね?」

愛原「ていうか、環境によって人間の質というのは、常に変わるからな。いや、人間だけではなく、動物全般にも当てはまると思われる。たとえば働き蟻に関する実験で、こういう面白いものがある。」

逆沢「働き蟻という単語が出ただけで言いたい事がなんとなくピンと来たけど、説明がめんどいから、とりあえず具体的に説明して。」

愛原「うむ。知ってる人は知ってると思うが、働き蟻の働きぶりをとある研究者が調べてみた結果、よく働く蟻が2割。ほどほどに働く蟻が6割。ほとんど働かない蟻が2割だったそうだ。で、よく働く蟻だけを集めて再度観察したら、どういう結果が出たと思う?」

鼎「私、知ってるよ。よく働く蟻だけを集めても、結局、2:6:2の元の比率状態にしかならなかったんだよね。」

逆沢「そういう事。要するに【優等生だけを集めたら、メンバー全員が優秀な働きをするすごい組織になる】と思っても、実際はそうはならないって事ね。人間社会の場合は、働き蟻の社会ほど露骨ではないけど、それでも優秀な生徒ばかり集めて進学校を作っても、誰一人落ちこぼれないって事は絶対にないし、逆に中学時代に偏差値50程度だった生徒を集めた高校からも、毎年何人かは一流の大学に合格したりもするし。まぁそういう事が言いたいんでしょ?」

愛原「ご名答。中学まで成績優秀と言われても、それが高校・大学・社会人でも続くと思ったら大間違いで、どの段階でも必ず落ちこぼれは出るものだ。無論、逆に凡庸な生徒ばかりを集めた高校や大学からも、毎年何人かは必ず駿馬が出る。少なくとも進学校で落ちこぼれた人間ではどうやっても対抗できない程度の駿馬がな。」

鼎「これは学校の成績みたいな物差しで測れないものだと、もっと露骨に出る現象だよね。」

愛原「うん。たとえば真面目に掃除をしない人間ばかりを集めたらどうなるか? 誰も掃除をしない不潔な空間が出来上がるだろうと思ったら、実は必ずしもそうじゃない。【自分が今まで掃除を真面目をしなかったのは、自分が掃除をしなくても、他の誰かがやってくれるからだ。他の誰もやってくれないなら、自分がやるしかないじゃないか。これ以上、不潔な空間には耐えられないし】みたいな思考の者が出て、何割かの人間は、真面目に掃除をする人間に鞍替えしてもおかしくない。」

逆沢「逆に真面目に掃除をする人間ばかり集めても、全員がその後も掃除をちゃんとし続けるとも限らないわね。中にはすごく潔癖症の人もいて、他人に掃除を手伝って欲しくないという人もいるだろうし。また掃除をする頻度の好みも、人によって全然違うだろうし。」

鼎「仮に勝ち組の人だけを集めても、今度は勝ち組の人同士でパイの奪い合いを始めるだけだから、全員が仲良く勝ち組になる事もないだろうし、置かれる立場が変わったら、自分の立場が激変してもおかしくないというのも、すごく分かるかも。」

愛原「人は置かれた状況によって、どうとでも変わる。かつてぐうたらな人間であったとしても、働かなければ死ぬみたいな環境に置かれたら真面目に働くようになってもおかしくないし、その逆もあるだろう。また人間関係の影響も大きくて、【この人のためなら頑張れる】から【コイツとだけは一緒に働きたくない】に変わる場合もあるし。」

鼎「あのスーパー大リーガーのイチローさんにしても、オリックスに入団した当初から大活躍していた訳じゃなくて、仰木監督がオリックスの監督に就任してからブレイクしたらしいし、そういう人と人の縁もすごく大事だよね。」

逆沢「置かれた状況とか、周囲の人間とか、そういう色んな要因によって、凡庸な人材が一流に化けたり、一流の人材が不良在庫になったり、現実の人間というのは常に変化するって事ね。」

愛原「うん。まずはその点を抑えて欲しい。」

逆沢「て事は、リアル社会では、【常に優秀な人材】なんてものは存在せず、環境次第って優秀にも凡庸にもなるって事?」

愛原「あくまで基本はそうだ。だが人間の場合、経験値とかスキルという要素にも大きく左右される。これは2011年の4月17日に【専門スキル】というテーマでとりあげたネタでもあるが。」

逆沢「あー、トレーラーの運転にしても、スダチの生産にしても、経験やスキルがまず第一にモノをいうという話をしたわね。文武両道の東大生にいきなり、トレーラーの運転とかスダチの生産をさせたら上手にこなすかといったら、絶対にそんな事はなくて、そういうのは経験やスキルが一番大事なんだという話だったか?」

鼎「ノウハウってすごく大事だよね。お医者さんにしても、大工さんにしても、漫画家さんにしても、自動車整備屋さんにしても、農業や漁業の専門家にしても、そういう人達は何年・何十年と積み上げてきたノウハウがあるからこそプロの仕事ができるのであって、どんな東大生であろうと総理大臣であろうと、専門知識がなければ、プロの前では所詮、その他大勢と変わらないというか。」

逆沢「【優秀な人材】というのは、勉強ができるとか運動ができるとかそんな次元じゃなくて、どれだけ専門的な知識や技術を持っているかで判断する方が大事という事かも知れないわね。【経験は素質よりも強し】というか。」

鼎「最近、【民主党政権が上手く行かなかったのは政治経験が全然足りなかったからだ】とか【政治の素人に政治を任せるのがそもそもの間違いだった】という発言も、ちょくちょく聞くけど、やっぱり経験って大事なのかなぁ?」

逆沢「おいおい。そんな事言ったら、未来永劫、日本国は自民党に政権を任せないとならないのか? 自民長期政権時代が長すぎた影響で、与党としての十分な政治経験を持っている党が自民党以外に無い状態なんだけど。」

愛原「無論、そんな事はない。古今東西問わず、革命や政権交代の類は世界全体で何十回何百回と起きている。ていうか革命が起きた場合は、過去の政権の手法や前例が通じなくなる場合が多いため、誰が政権をとろうと最初は素人状態だ。」

逆沢「それじゃ過去の革命政権は、どうやって政権を上手く運営したのよ?」

愛原「その質問は不適切。大体、そもそも【上手く】運営した革命政権なんて、歴史上にほとんどないぞ。革命が起きたら、大体、血が流れる。反乱が起きたり、経済的な混乱が発生したり、色んな問題が頻発する。比較的穏便な革命と思われがちな明治維新とか戦後昭和20〜30年代の日本にしても、実はかなり混乱した状態だった。」

逆沢「混乱したといっても、今の民主党政権みたいに国民に愛想を尽かされて、政権を倒されたりまではしてないじゃない? 今の民主党政権とそれらの時とは一体、何が違うのよ?」

愛原「一言で言えば、政権打倒できるだけの力を持ったライバル勢力の存在の有無だ。たとえば明治維新を例に取ると、薩長が幕府を倒してしまった時点で、国内には薩長に対抗できる勢力が皆無になっただろ?」

鼎「つまり新政権がどれだけ混乱を巻き起こそうと、その新政権を倒せるだけの力を持ったライバル勢力がいない状態になれば、嫌でもその政権は存続できるって事かなぁ?」

愛原「そういう事。これは中国共産党だろうが大政翼賛会だろうが、みんな同じ。戦国時代を例にとっても、なぜ豊臣政権は崩壊し、徳川政権は250年続いたか? 理由は簡単。豊臣政権の時代には徳川家という強大な勢力が存続していたのに対し、徳川政権はそうじゃなかったというだけの話だ。善政をしたから政権が長く続いたとか、悪政をしたから長く続かなかったというのは、必ずしも正しい見方ではない。まぁ悪政をすればするほど、反乱やクーデターや外国の介入が発生しやすくなるから、間接的・長期的には無関係とまではいえないが。」

鼎「つまり民主党が過去の革命政権のように上手くいかなかったのは、自民党というライバル勢力を滅ぼしきれなかったからという事?」

愛原「大きな要因の一つではある。というのも旧政権を滅ぼすというのは、優秀な人材をゲットする最も効果的な手段の一つでもあるからな。」

逆沢「いかにもゲーム的発想ねー。そりゃあ国盗りSLGでは、敵勢力を滅ぼす事が最も効果的な人材確保の手段の場合が多いけど。」

鼎「ちまちまと計略で忠誠度を下げて一人一人引き抜く手間とか考えたら、武力ずくで敵勢力を滅ぼして、敵勢力下に所属していた人材をまとめて一気に登用した方が楽だよね。仮にその場では登用を断られても、浪人状態だったら、後で雇用するのも割と楽だし。」

愛原「お前ら、ゲーム的発想と馬鹿にしてるが、【敵勢力を滅ぼして、優秀な人材をゲット】というのは、現実の歴史でも最もメジャーな方法だぞ。何か妙な先入観で勘違いしてねえか?」

鼎「ほえっ? そうなの?」

愛原「大真面目にそうだぞ。戦国時代だろうが明治維新だろうが太平洋戦争直後の日本だろうが、実はみーんなそう。たとえば一番分かり易いのが明治維新で、実は明治新政府は、かなりの数の幕臣を明治新政府の元に招き入れている。有名どころでは函館五稜郭で明治新政府と戦った榎本武揚や大鳥圭介らがそうだが、それ以前、あるいは以後でも、かなり幕臣が明治新政府に仕えている。」

逆沢「確か新撰組の人でも、後に明治新政府下の役人として働いている人がいたらしいわね。いくらなんでも変節が過ぎると思ったけど。」

鼎「なんで彼らは、仇敵である明治新政府の元で人生をやり直すことにしたのかなぁ?」

逆沢「同感。あともう一個不思議なのは、明治新政府側にしても、いつ裏切るか分からない幕臣を、なんで易々と許して政権運営メンバーに入れたのかって事。中には要職に抜擢された人もいるみたいだし。」

愛原「理由は簡単。まず明治新政府側の理屈としては、政治経験豊富な人材を多く必要としたからだ。薩長の維新志士達は、理念と行動力はあるが日本国を運営するという意味で、政治経験が絶対的に足りない。なので250年間、曲がりなりにも日本国を運営してきた幕臣達の持つスキルやノウハウは、やはり色々貴重だったのだ。」

逆沢「じゃあ、明治新政府に仕える事にした幕臣側の理屈は?」

愛原「単純に無職だったから。幕府が倒れた時点で、幕臣は全員無職。彼らも生きていく為には、働かなければならない。しかし彼らの多くは、政治関係以外のノウハウがない。彼らが商人・職人として再就職したくとも、ノウハウも何もないのにいきなりそっちの道で生きていくのは大変だ。」

逆沢「つまり幕臣の多くは、政治やるしか脳がないから、引き続き明治新政府下の官僚(あるいは政治家)として、人生をやり直す事にしたって訳ね。」

鼎「あ、そういえば、戦国時代では、たくさんの大名家が滅ぼされたけど、その元大名だった人とか、その家臣だった人が、いつの間にか他の大名家の家臣として再就職しているケースも多かったよね。」

逆沢「あー、なるほど。いつまでも浪人だと生活が苦しいから、チャンスがあれば彼らは、どこかの大名家に再仕官したりするわけね。それもかなわない場合は、たとえ元大名であろうと長曽我部盛親みたいに寺小屋の先生やったり・・・。」

愛原「あの織田信長が急速な勢力拡張ができた理由の一つに、優秀な外部スタッフを積極的に部下に取り込んだというものもある。足利将軍家を利用するために将軍家との付き合い方をよく知る明智光秀らを重用し、権力構造が複雑怪奇な近畿を掌握する為に、松永久秀や荒木村重を抜擢したり。」

鼎「そういえば織田信長さんの部下の秀吉さんも、赴任地の近江や播磨で、優秀な人材をたくさん登用していたよね。特に黒田勘兵衛さんあたりは、播磨国内に強い人脈を持っていて、秀吉さんが穏便に播州支配する上で貢献したらしいし。」

逆沢「けど領土を拡大した際に現地人を登用するというのは、他の大名家でも大なり小なりやる事なんじゃないの?」

愛原「従属勢力として取り込んでも、そういう連中は非常に扱いにくく、またすぐ寝返る危険も高い。上杉家あたりがその典型で、地盤と密着しすぎた土豪というのは、あくまで言いなりになる部下ではないから、ちゃんと利権や褒賞を保証しないと簡単にそっぽを向く。織田家はその点で対応ぶりが全然違う。斉藤・六角・浅井・朝倉などといった土豪勢力自体は解体して、その土豪勢力内にいる優秀な人材だけを登用するやり方を貫いた。徳川家だけは例外で、家康が自分の長男を殺してまで徹底して恭順の意を示したから、信長に滅ぼされずに済んでたが、もしも本能寺の変が無ければ、いずれ最終的に信長に滅ぼされていたかも知れん。」

逆沢「ああ、なるほど。結局、織田信長がとった手法も、薩長政権が明治維新を成し遂げた時と同じパターンなのね。敵に回ったら面倒であったり、言いなりにならないようなライバル勢力自体はきっちり滅ぼすけど、その後でその遺臣達を登用する事で、新たに得た支配地を上手く治めるノウハウだけはきっちり確保すると。」

愛原「織田信長は一向一揆に対して果断な方針を取ったが、その一方で無条件降伏同然の形で石山本願寺を降伏させた後は、人が変わったように一向宗への弾圧をきっちりやめている。本願寺のボスである本願寺顕如が自分の言いなりになる意向を示した以上は、一向宗徒と敵対し根絶やしにするよりも、一向宗徒を操るスキルを持っている彼ら坊官をうまく利用した方が、治安が上手くまとまると判断したのだろう。」

逆沢「織田信長が一向宗徒に一揆はやめろと言っても効果はないけど、宗徒を自由に操れる政治スキルを持つ顕如にしゃべらせたら効果てきめんだし、この辺の配慮はさすがだと思うわ。」

愛原「この手の例は世界中、しかも時代を問わずみられる。戦後の日本にしても、タテマエ上、GHQによって大日本帝国の軍部と軍部中心の独裁政権が解体された事になってるが、実際には東条英機や松岡洋右らと並んでニキ三スケと呼ばれ大日本帝国の大重鎮だった岸信介(安倍晋三の祖父)がアメリカのスパイ(?)として(かつて東条らと同様にA級戦犯として拘留されているが、後、アメリカ側に利用価値を見いだされて、極秘に資金提供を受けたりして後に首相に就任。後年、米国での機密文書の秘密保持期間が満了した事により、この旨も情報公開されている)抜擢されたりしているし、GHQにしても、日本国内で豊富な政治経験を持つ日本政界の要人は、何人か操り人形として支配下に置いておきたかったようだ。」

逆沢「ま、アメリカ人だけで日本の政治をやるわけにはいかないし、である以上、軍部や帝国議会の要人を皆殺しにする訳にはいかないという理屈は分からなくはないわ・・・。つまり東条英機をはじめとした見せしめとして罪を背負って死ななければならないグループと、岸信介のように旧政権内の政治事情通として手駒として生き残らせるグループに分けられたともいえるのかな?」

鼎「現地人を傀儡にするというのは、植民地支配の王道だよね。たとえ実質は宗主国の操り人形でも、形としては現地人に管理させるというのは。」


逆沢「今の日本の政治もそんな感じね。在日米軍の問題にしても、アメリカ政府が直接、地主に圧力をかけて日本の土地を差し押さえたりするのではなく、日本政府が地主と交渉して軍用地を差し押さえた上で、日本政府が在日米軍に土地を差し出す形態になってるし。」

愛原「直接、批判の矛先が宗主国側に向かわないようにする緩衝としての意味合いもあるが、何よりも現地の事情に詳しい現地の政治経験者に任せた方が上手く行くだろうという思惑も大きいと思う。」

鼎「こうして整理すると、革命政権なり新政権なり侵略勢力なりが、多少とも混乱を小さくして新政権を運営したいと思うなら、旧政権の優秀な人材を多く取り込む必要がありそうだよね。」

愛原「但し、旧政権の人材を言いなりになる状態で取り込みたいなら、一旦、彼らを無職に追い込むなり、何らかの事前用意が必要だけどな。」

逆沢「思いっきりIFの話だけど、仮に民主党なり維新の会なりが、今の日本の官僚や政治家を一旦、無職に追い込んだ場合は、明治維新の時のような劇的な再生劇は期待できるかな?」

愛原「社会保険庁改革や大阪府政の現状を見る限りは、公務員相手に対しては、強い指導力を持って脅せば一発で再生できそうな気はするけどな。」

逆沢「そんな簡単にいくかねー?」

愛原「かつて社会保険庁が廃止され日本年金機構が設立される際に、当時の厚生大臣だった舛添要一が、旧社会保険庁の役人達に対して、割と厳しい再雇用の条件を突きつけた事がある。過去に不正に流用された年金の返金など、端的に言えば彼らの給与が減る内容なんだが、それを受け入れるのなら日本年金機構に再雇用してやるという内容だった。」

鼎「けど実際には、ほぼ100%の現役の社会保険庁の役人さんが、その条件を受け入れたと聞いているよ。逆にOBの人で、退職金などを返還した人はほぼ0%だったらしいけど。」

逆沢「ちょっと待て。過去に不正に年金を流用したり、雑な管理をしてたのは、ほとんどOBの方だろが。ましてコンピュータ化されて以降に社会保険庁に入ったような若手にしてみたら、【自分は何も悪くないのに、何で不正流用された年金の賠償をしなくてはならないんだ?】って心境だと思うけど。」

愛原「それでも無職になるよりはマシだと思ったんだろ? 人間心理なんてそんなもん。大阪府や大阪市でも、橋下旋風を受けてブーブー文句言っていた役人はたくさんいたが、じゃあ彼らが集団離職したかといえば、全然そんな事はない。年収が百万や二百万減らされようと、それだけの理由で大量離職なんか起こるわけがない。これは東電のような巨大民間企業でも同じ事。」

逆沢「つまり時の政権がもっと強気に出たら、官僚なんてもっともっと効率的に働かせる事ができるって事か?」

愛原「ワ○ミのような会社でも、現時点でそれなりに回っている事からすると、そうなんじゃないのか? もっともワ○ミの場合は、役所でも巨大企業でもないから、風評とか別の要因で、今後、簡単に潰れる可能性はあるけど。」

鼎「私は、ブラック企業のような雇用条件で、彼らを働かせたくはないけど・・・。」

愛原「ま、それは当然。俺が言いたいのは、共済年金システムや公務員の身分保障システムなど、彼らの腐敗を助長しかねない過剰なお手盛りシステムを制限しろと言っているだけだ。」

逆沢「官僚の方だけじゃなくて、政治家の方はどうかな?」

愛原「こちらはある意味、もっと簡単。たとえば平成以降に自民党を除名されたり離党した人間の末路を見てみれば分かる。小沢一郎でも亀井静香でも平沼赳夫でも小林興起でも大村秀章でも中山成彬でも石破茂でも・・・。」

鼎「あ、みんな新党を結成したり、他党に鞍替えしたり、知事になったり、また復党したりしてるよね。」

愛原「明治維新の時の幕臣と、思考回路は全く一緒。彼らは政治のプロではあるが、逆を言えば政治以外はシロートだ。だから籍を変えても、可能であれば政治関係の仕事に就こうとする。ちなみに政治家の秘書の場合は、もっと露骨に籍を変える傾向がある。小泉チルドレンの秘書だった人間がそのまま小沢チルドレンの秘書になったり。またマイナーな政治家の場合は、落選した場合は党職員として再就職したりとかな。」

逆沢「つまり自民党の政治家にしろ民主党の政治家にしろ、党に留まっても当選し続けられるなら、わざわざ党籍を変えようとは思わないけど、もしも所属する党が消滅したり、党籍を除名されたり、このままでは選挙に負けると思ったりすれば、彼らは簡単に党籍を変えるって事かな?」

愛原「うん。彼らは上様に【潔く腹を切れ!】と言われても、それで潔く腹を切るようなタマじゃない。何らかの理由で自民党を除名されても、それで政治稼業を辞めたりなんかしない。自民党に所属していた時には【自分こそが保守本流】とか【根っからの自民党員】とか【信念の人】とか言ってた人でも、党にいられなくなった途端に、簡単に主義主張をひっくり返す。主君を何度も変えた武将とか、あっさり明治新政府に仕えた元幕臣とかを変節漢と非難する人もいるが、人間は元々そんなもん。民間企業人でも、転職先として一番多いのは、やっぱり同業だ。コックの再就職先はやっぱりコック。プログラマーの再就職先はやっぱりIT関係。大型トラック乗りの再就職先もやっぱり別会社の運送業者なんて例は非常に多い。」

逆沢「ちゅうかコックがプログラマーになったり、プログラマーがトラック乗りになるような例なんか、聞いた事ないわ。」

鼎「仮に転職するなら、過去に蓄えたスキルや人脈を活かせる職業の方がいいと考える人が多いのは当然な気がするよ。」

逆沢「それで国会議員をクビになっても、政党を変えたり地方政治に転向したり党職員になったりする人が後を絶たないってか。」

鼎「公務員という職業は、技能職でもなければツブシがききにくい事もあって、それでか、特に転職を指向する人は少ない気がするよね。」

逆沢「だから少々理不尽な理由で待遇が悪化しても、辞める人がほとんどいないというのもありそうね。まぁ元々の待遇が良すぎる影響の方が大きい気もするけど。」

愛原「故に、官僚だろうが政治家だろうが、働く環境を変えれば、彼らはいつでも優秀な人材として様変わりできる可能性を秘めているといえる。そしてそういう優秀な人材を上手く働かせる環境さえ作り上げられるならば、上に立つ者自体に最初から経験値は必ずしも必要ではない。」

逆沢「織田信長が一向宗の僧侶としてのスキルを身につける必要がないようなものね。一向宗徒をおとなしくさせたければ、そのトップを支配下に収めたらそれでOKのようなものかな?。」

鼎「後に初代内閣総理大臣になった伊藤博文さんにしても、元をたどれば英国大使館に火を付けたりして暴れるような過激なテロリストだし、何も最初から経験豊富な政治家という訳ではなかったよね。」

逆沢「ってか、どんな職業でも最初は誰でもドシロートに決まってるわ。」

愛原「ただ現代日本において、シロートを忌避する風潮が強まっている気配は、正直感じざるを得ない。求職欄を見てみれば【経験者優遇】のオンパレード。病院でも、新人に採血されるのを嫌がる患者さんがかなり多いと聞く。」

逆沢「そりゃ、新米同然の医者や看護婦に採血とか手術されて、余計に痛い目に遭わされたら誰でも嫌だし。」

鼎「けど新人が経験を積む場所が少なくなればなるほど、長い目にみれば重大な国力の低下につながると思うんだけど・・・。」

愛原「そうなのだ。ていうか職人肌の製造業などでも、そういう傾向がかなり強まっていると感じる。新人を育てる余裕がない。その分、熟練工だけに仕事が偏るような傾向がかなり強まっている。」

逆沢「そういえばトヨタやマクドナルドが実力主義の見直しを決めたという記事に、面白いことが書いてあったわ。実力主義を強化した途端に、上司や先輩が部下や新人にスキルを教えなくなったって。新人に下手にスキルを身につけさせると、そいつが自分より業績を上げて、自分の評価が相対的に下がりかねないから。で、これはまずいと思って、見直したらしいけど。」

愛原「実力主義が悪いのではなく、業績を判定する項目の中で【部下の教育】のウエイトが低すぎたんだろうな。部下の功績を、部下を教育した人間の功績にも正当に加えられるシステムなら良かったかも知れんが・・・。」

鼎「シロートである事が悪いのではなくて、シロートをちゃんと育てられる環境作りの方が大事だよね。」

逆沢「【あいつはダメな奴だ】で切り捨てるだけじゃ、社会から成長要素を奪うだけにしかならんと思うわ。」

愛原「経験豊富である事が、デメリットになってしまう事もあるしな。人は経験を積み重ねる程に、手抜きのテクニックとか、バレないサボリのテクニックとか、利権を上手にむさぼるテクニックとか、余計な知識も身につけてしまう。その結果、安全確認の手順がおろそかになって、重大な事故を招いたりする事も多い。」

鼎「まともな役所や企業で人事異動を頻繁に行なうのも、あえて人脈や経験値をリセットさせる事で、腐敗を防ぐ目的があるよね。」

愛原「日本の官僚機構がヤバい理由の一つに、スキルのブラックボックス化があると思われる。官僚が書いた作文を読むことしかできない大臣が多いのは昭和の時からの悪習だが、政治家に高度な政治スキルを身につけさせない事で、官僚だけが政治の重要な部分を牛耳る構図が出来上がってしまっているというか。肝心の政治家自身がある意味で政治のシロート状態のままなので、経験豊富な官僚が悪知恵をどんどん身につけて、腐敗がひどくなっても全くブレーキがかけられない状態になっているというか。」

逆沢「で、その経験豊富で悪知恵に長けた腐敗官僚を理屈無用で叩きのめして建て直すには、伊藤博文ら、維新志士のような爆発力のあるシロートが必要って事か?」

愛原「中途半端に知識や経験があると、経験豊富なプロを叩きのめした際に起こるデメリットばかり、目がいってしまうからな。」

逆沢「でも、そこで安易に妥協して現状維持なんて選択すると、ただでさえ悪知恵の働く経験豊富なエリートがますます知識と経験を蓄えて、もっと腐敗が進んで手がつけられなくなるのよね。」

愛原「そんな末期症状になってから革命を起こそうとすれば、間違いなく大規模な混乱になる。ソビエトからロシアに変わった時みたいな混乱では済まないかもしれない。変革時に過渡期特有の混乱が発生するのは当然だが、初期の腐敗時に手を打っていれば小さな混乱で済むものが、とんでもない規模になりかねない。財政問題、年金問題・・・どの問題も放置する期間が長くなればなるほど、そのツケが大きくなる事くらい、シロートでも分かるだろ?」

鼎「私達はシロートだからこそ、プロに任せたいという気持ちもあるんだけど・・・。」

愛原「【自分が何一つ努力しなくとも、プロがきっと自分のために頑張って社会を良くしてくれるだろう】と考えるのは、さすがに甘えだ。残念ながら今の日本人には、【余計なことさえしなければ、政治は上手くいって当然】とか【いつも通りさえ守っていれば、事故やトラブルも起きなくて当然】とか考えるタイプもいて、何か不祥事や事件・事故が起きるとすぐに人災扱いにして、誰かを叩く人がいるが・・・。」

逆沢「保守的な人ほど【現状維持さえしていれば、現状より悪くなる事はない】と考えがちだからねー。」

愛原「実際には現状維持の期間が長くなるほど、いらん知識も身について、手抜きや経理のごまかしや癒着などの腐敗も進むんだけどな。それに楽してお金もうけできるできる方法を身につけてしまった人間に、ただ【真面目に働け】といっても無駄。」

逆沢「上の方で、人は環境次第でどうでもなるとあったけど、それに当てはまれば、【ぬるま湯に浸かって、すっかり腐敗した人間】にただ【真面目に働け】とか念仏を唱えても馬耳東風で、それよりは【ぬるま湯を撤去する】などの実力行使で、彼を取り巻く環境自体を変える方がずっと大事って事ね。」

愛原「人は環境次第でどうにでも変わる。そして環境を変えないままでいると、人はどんどん腐敗する。だからこそ環境を変えるという事はすごく大事なのだ。」

鼎「働き蟻のエピソードじゃないけど、人は環境を変える事で、今まで低い扱いを受けてきた人が急に評価されたりする事もあるよね。」

愛原「学校や職場では低い扱いを受けていた人が、ネットの中では優れたリーダーシップを発揮したり、【お前、すごいな】とか【貴方の主張は素晴らしい】などと賞賛される事もある。このように人間はとりまく環境を変えることで、すぐにでも生まれ変われる可能性はある。」

鼎「人生をやり直せるチャンスとか、社会全体を立て直せるチャンスとか、そういう環境を変えられる状態を保つ事はすごく大事だよね。うつ病も環境を変える事でかなり改善されるらしいし、イジメ問題も進学や転校という形でイジメっ子がいない環境に変える事ですぐに解決するケースがほとんどらしいし。職場でのトラブルなども、上司や部署や営業所を変えるだけで、かなり改善する事が多いらしいから。」

逆沢「逆を言えば、保守化した人間が変な精神論や自分だけしか通用しない経験論や古くさい因習や道徳観を振りかざして、世の中を変えるチャンスとか、誰かの人生をやり直させるチャンスとか、そういうのを阻害するようになると、かなり危険って事ね。」

鼎「あと、シロートに不寛容な世の中も、すごく怖いと思ったかも。短期的に見れば熟練のベテランに仕事を頼んだ方が効率いいかも知れないけど、どんなベテランも、いずれは衰える時が来るし、腐敗もしやすくなるから。」

逆沢「社会に余裕がなくなると、他人を育てる余裕もなくなるというか、うかつに他人を育てると、そいつが自分の仕事を奪ってしまいかねないような状態にもなりかねないからねー。」

愛原「技術の継承が正しく行なわれない世の中になると、その技術自体がいずれ衰退する事になる。ベテランがいるんだから、ベテランに任せていればいいじゃないかとタカをくくっていると、そのベテラン自体が衰えたり堕落した時に思いっきり後悔するようになる。今年の阪神タイガースみたいな感じでな。」

逆沢「阪神は若手が全然育っていない。ベテランが腐敗というよりは聖域化・権威化して若手はもちろん、監督・コーチですらベテランに強くものを言えない。野村・星野といった外部出身の指導者がいなくなった事で再びOBが大きな顔をして旧態依然の暗黒時代に戻ろうとしている。うーん、なるほどねー。」

鼎「プロ野球は典型的な競争社会だから、若手が育ってない程、ベテランはいつまでも一軍選手として大きな顔をできるのは分かるけど、これってチーム全体にとってはすごく良くない状態だよね。」

愛原「阪神は人気球団だから、それなりには鳴り物入りの新人をドラフトで確保しやすいはずだ。にも関わらず、ここ数年、ドラフト1位の人間が全くと言っていいほど1軍で活躍していない。優秀な素質を持っているはずの新人が、ずうーっと花開くことなく埋もれた状態になっている。」

逆沢「その一方でOBも外部の指導者がいなくなった事で、再び先輩ヅラしやすくなったしね。こういう人達は最も変革を嫌うだろうし、OB達にしてみたら、政権も奪還できて今の方が満足な状態かもしれないけど。」

鼎「今の阪神タイガースの状況と政界の状況がダブって見えなくもないかも。阪神も世代交代のタイミングを見失って、今年は散々な状態だったし。」

愛原「シロートや若手を甘やかせとまでは言わんが、腐敗・権威化したベテランがシロートを抑えつけて好き放題するような社会は大変良くない。過渡期特有の混乱が少々出ても、新しい時代に適応した変革を迅速に進める気概がないと、いずれ暗黒時代に突入という事になるだろう。」

鼎「阪神タイガースが暗黒時代に突入しても悲しむのは阪神ファンだけだけど、日本自体が暗黒時代に突入するのはやめて欲しいと思ったかも。」















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