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愛原様のたわごと(12年11月4日)




愛原「今日は【議論】について、色々議論してみたいと思う。」

逆沢「議論について議論? 何のこっちゃ? 全然意味分からないんだけど。」

鼎「それ以前に議論って顔じゃないと思うよ。」

愛原「こらっ! いくらなんでも顔は関係ないだろ?」

逆沢「顔は関係なくとも、知能と日頃の言動と素行は関係あるでしょ。そもそも議論って何か、分かってモノ言ってんの?」

愛原「じゃあ問おう。お前ら、議論というのは、何のためにやるもんだと思ってる?

逆沢「うーん・・・暇つぶし! ・・・ってのはさすがに冗談で、話し合いを通じて何らかの方針とか方向性とか正当性とか妥当性とかを決める為にやるものなんじゃないの?」

鼎「異なる意見を集約して、一つの意見としてまとめる目的もあると思うよ。」

愛原「イエス。初めからみんなの意見がベストな状態で一つにまとまっているなら、議論する必要はない。また一つにまとめたいと思わないなら、やはり議論の必要はないからな。」

鼎「たとえば学園祭で、自分達の部活の催しを何にするのか決める際には、大抵サークル内で議論する必要がでてくるよね?」

逆沢「部員に何の断りもなく、部長が勝手に決めたりしようものなら非難囂々ものだろうし、それを避けるためにも、最低一度はみんなを集めて議論した方がいいと思うわ。」

愛原「みんなに意見を問う事で、より素晴らしいアイデアが提唱される事もあるだろうし、あるいは現行案の問題点が新たに判明する事もあるだろう。また複数の有力なアイデアが出た場合は、どちらのアイデアを採用すべきかを議論して、一つにまとめる必要が生じるケースも多い。」

逆沢「ただ議論ってのは、常にきれいにまとまるとは限らないのよねー。複数の陣営が対立したままで、結局まとまらない事も多いし、中には人を不快にするような発言ばかりする人間もいたりするし。」

鼎「でも【話せば分かる】という有名な言葉もあるよね。徹底的に議論し尽くせば、人はいつかは分かり合えるとも思うし。」

逆沢「【話せば分かる】というか、【人と人は、いつかきっと分かり合える】というのは、いかにも日本人好みの考え方らしいわね。欧米人とか中国人とかからすると、【最後にはきっと分かり合える】事が前提になっている日本のアニメやマンガのシナリオに、【?】って感じる事も多いらしいけど。」

愛原「まぁ特に欧米では、中世以前の時点で既に弁護士という職業が存在したくらいだからな。明治以降になってようやく現代風の裁判制度が導入された日本とは、話し合いに関する考え方が全然違うのだ。」

逆沢「は? 弁護士制度と話し合いに関する考え方に、何の関連性があるのよ?」

愛原「じゃあ聞こう。弁護士は何のために存在するのだ? 言っておくが話し合いの為じゃないぞ。」

鼎「弁護士さんの仕事は、第一義的には、言論や法律知識という武器を通じて依頼人に有利となるような主張をする事だよね。」

愛原「そう。ちなみに現在の裁判でも、弁護士と検察官(民事裁判の場合は原告・被告双方の弁護人)が、それぞれの立場で自分達の陣営に有利な主張を繰り返し、それを元に裁判官らが最終判断する図式になっている。間違っても弁護士と検察官(もしくは弁護人同士で)が直接議論し合う事はない。調停の段階なら話し合いで決着する可能性はあるが、裁判になった時点で、既に話し合いによる解決は不可能になっているのだ。」

逆沢「あー、そういえば、裁判に負けた側が【絶対に納得いかない】とか【主張が受け入れられず残念だ】とかコメントするシーンはよく見るけど、【どうやら我々が間違っていたようだ】とか【あやまちを丁寧に指摘していただき感謝している】なんていうシーンは見たことないわね。」

鼎「つまり欧米では、ずぅーっと昔から、話し合ってもうまくまとまるとは限らないというか、関係者だけで話し合って決着をつけるのではなく、第三者に双方の言い分を聞いてもらって白黒決着をつけようという考え方の方が一般的だったって事かなぁ?」

愛原「話し合いというか、議論を成功させるには、相手の主張にも丁寧に耳を傾ける必要がある。だが世の中には、一方的に主張するだけの人間も残念ながら多い。というか外国人は日本人よりも総じてプレゼンテーション能力というか、アピール能力が高い為、どうしても積極的に自己主張したがる人の割合が高くなり易い。また欧米では日本よりも【謝罪したら負け】みたいな考え方も根強い事もあり、どうしても自分から相手に譲歩をするという文化が希薄になりがちなんだろう。」

逆沢「だから外国では、話し合いで双方譲歩し合うよりも、裁判みたいなやり方で、無理矢理シロクロつけようという流れになりやすかったって事かな?」

愛原「但し欧米人は、自分達の利害さえからまなければ、かなり客観的で公平な思考ができる人達でもあるから、学問的な考察(たとえば物理学理論)などを議論させれば、おそらく日本人以上の成果を出しやすいとは思うけどな。」

逆沢「ああ、それも分かる。日本人は変な所でメンツを重視するから、そこで持論を曲げても自分に何の不利益もないような場面ですら、必死で意地を張る人間も多いからねー。」

鼎「欧米の人は、日本人よりもずっとデジタル思考だよね。利害や損得がからむとなったら、とことん自分に有利になるように我田引水的な弁論を展開するけど、利害に絡まなかったり、相手の案に乗った方が結果的に自分も得すると思えれば、すぐにでもよりベストな案に乗り換えられる柔軟性があるように思えるし。」

逆沢「日本人の場合は、【こっちの方が絶対に仕事が早く終わる】と論理的に説明しても、妙な意地を張って【俺は俺のやり方でやる!】とか言ってはねのけるような人も多そうだからねー。そういう意味では、欧米人の方が議論向きな気もするわ。」

愛原「議論の主な目的の中に、よりベストな結果を出す事がある以上、自分の出したアイデアよりも相手の出したアイデアの方が合理性や正当性があると思ったら、それを素直に認める度量が欲しい。それすらできないなら、議論の場に参加する資格もないと思う。」

鼎「ただ自称【議論好き】な人ほど、実は相手の意見を素直に聞かないというか、自分の意見ばかりを押し付ける傾向が強いような気がするのは、気のせいかなぁ?」

逆沢「多分、気のせいじゃないんじゃない? 議論好きな人ほど、持論に自信を持っていたり、相手を論破する自信があったりするだろうから。」

愛原「そういう人は、議論がしたいんじゃなくて、布教したいだけの人だと思うけどな。」

鼎「布教?」

愛原「そう。布教。たとえば宣教師は、自分が相手を説得して改宗させる気持ちはあっても、自分が相手に説得されて逆に改宗する気持ちなんか、欠辺もないだろ?」

逆沢「ああ、なるほど。こちらは【Aという思想が本当に正しいかどうか、これから徹底的に議論しよう】と思ってても、宣教師サイドは【Aという考え方が正しい事は既に明らかであり、相手にもこの事実を理解して受け入れてもらおう】という姿勢になってしまってるわけね。」

愛原「本気で健全な議論をしたければ、自分の主張にも常に疑問符をつける度量がなくてはならない。自分が問答無用で正しいと思いこんでいる人間が議論に参加したところで、布教活動にしかならないからな。」

逆沢「でも明らかなトンデモ理論を布教してくる相手を論破する事くらいはできるんじゃないの? そういうトンデモ宣教師を論破するのも気持ちいいだろうし。」

愛原「実際にそういう連中と論戦をやってみたら分かると思うが、かなり不毛というか、ひたすらストレスたまるぞ。そういう連中は、議論をする上でのタブーをどんどん犯してくるからな。」

鼎「議論をする上でのタブーというと、たとえばどんな?」

愛原「大ざっぱに言うと、まず人の話を聞かない。一方的に主張と質問ばかり繰り返す。逆にこちらの質問には、まともに答えない。こちらの質問に対して、逆質問で返したり、はぐらかしたり。」

鼎「なんかテレホンセールスを連想したかも。テレホンセールスの人も、一方的に【○○さんですね?】とかイエス・ノーで答えられる質問とプレゼンテーションばかりを交互に早口で繰り返して、相手に質問させる余裕などを与えない手口を使う人が多そうだし。」

愛原「テレホンセールスの類は、黙って電話を切るか、それが嫌なら【忙しい】だの【興味ない】だの【不必要】だの頭ごなしに言って、相手の返答を聞かずに速攻で切らないと、耐性低い奴は簡単にカモられるぞ。相手はマニュアルに沿って訓練されたプロだから、論破してやろうなどと思ってナメてかかると、逆に個人情報吐かされたり、唐突にアポイント提案されたり、あげく言質を取られたりして面倒な事になる。」

逆沢「ディベートに自信のある人は、逆質問を上手く使えば、相手から電話を切る所まで追い詰められる可能性はあるけど、調子に乗ると営業マンが直接訪問してくるような展開にうっちゃられる事もあるから、余計な冒険は私も薦められないわ。」

鼎「けど内容によっては、絶対に反論しないとまずい時もあるよね。たとえば企画会議でとんでもない企画が特定論者の勢いだけで進められそうな時とか。こういう時はどうすればいいかなぁ?」

愛原「とにかく質問しろ。相手がトンデモ論者なら、どうせこちらの質問に対してまともに反論できないだろうから、相手がこちらの質問をはぐらかそうとしても、絶対にそれを阻止して、質問に答えさせろ。そしてその質問に対する回答に瑕疵があれば、それを争点にした議論の流れに持っていけ。」

逆沢「具体的にはどんな感じで?」

愛原「具体的にか? うーん、そうだな。ウチのサイトで過去にネタにしたものを例に出すなら、たとえば原発問題なんか分かり易いだろう。原発問題は、推進方向にしても廃止方向にしても、メリットとデメリットが共存するが、現状維持を選択するようなトンデモ論者は持論のデメリット部分に関して、全く無防備だからな。」

逆沢「あー、現状維持派はダメだわ。現状を維持しようと思えば必ず直面するはずの、耐用年数問題とか、核廃棄物処理問題とか、テロや災害による損傷が再び発生した時の対策とか、核燃料の調達問題とか、そういうデメリットに対して全くの無策だから。」

愛原「俺の狭い認識の範囲では、現状維持派からこれらのデメリットに対して、どういう対応策があるかについての具体的な回答を全く聞いた試しがない。要するにこちらが持つ当然の疑問に全く答えない。ちなみに半年前、最もよく聞いたこれらの質問に対する回答は、こちらの質問に対する回答を無視した上での、【もしも電力不足が起きたらどうするんだ?】という逆質問だったが。」

逆沢「相手の質問に答えないまま、質問をかぶせたらダメだろ? 普通に考えて。」

愛原「質問に質問をかぶせてOKなのは、(相手陣営と比べて今までロクに質問の機会を与えられなかった場合をのぞけば)比較検証が可能な時だけだ。たとえば原発を維持し続けた場合のコストと原発を将来的に廃止していった場合のコストの比較というなら、話は分かる。マネーという分かり易い統一基準で比較検証ができるからな。だが今回の場合は、そうじゃないわな。」

鼎「双方の陣営から、相手に対する質問が出た場合は、どういう風に議論を進めていけばいいのかなぁ?」

愛原「もちろん双方共に、相手の質問に対しては、真面目に答える義務がある。たとえば【もしも電力不足が起きたらどうするんだ?】という質問に対しては、実際にどれくらいの確率で電力不足が起きるかという検証と、もしも電力不足が発生した場合の具体的な損失額などについて検証する必要がある。」

鼎「実際にどれだけの出力があるかとか、どれだけの電力を外部から調達できるか等については、ウチのサイトでも散々議論してきたテーマだよね。」

愛原「ロクな検証もしないまま【電力は足りている】とか【原発は安全だ】等と言い切るような人間は議論向きではない。議論の場は、願望や思い込みを語る場ではないからな。」

逆沢「でも夏はとっくの昔に終わったし、今となっては原発を回さなくとも電力は十分足りていたという部分に関しては、実際の電力消費量から逆算しても明らかなんだけどね。」

愛原「それはあくまで結果論。○×ゲームなら、馬鹿が勘だけで予想しても50%の確率なんだし、それがたまたま的中したからといってドヤ顔されても不愉快だ。」

逆沢「ネット内では、検証する前に先に結論だけ決めて、あげく自分の決めた結論に反する陣営を一方的に攻撃しまくるような人間も、ちょくちょくいるみたいだけどねー。」

愛原「リアルな話で言えば、世論が二分されるような重要な問題というのは、常にメリットとデメリットが共存するものだ。その難しい問題を、たかが1日や2日で結論出せる人間の方が異常といわざるを得ない。テレビのコメンテーターを真似てるつもりなのかどうか知らんが、思いつきと直感だけで、重要問題をさらっとジャッジすんなよとも思う。」

鼎「でも言いたい事は分かったよ。思いつきや願望を根拠にものを語るのではなく、もっと具体的な数字や資料を出した上で、相手が出してきた問題点に真摯に向き合う必要があるって事だよね。」

愛原「そう。ちなみに計画停電が発生した場合の損害額については、東日本大震災が起きて間もない頃に東京電力管内で発生した計画停電を参考にすれば、大体の数字は想定できるだろう。」

逆沢「つまりこれらの数字を反駁の材料にすればいいわけね。」

愛原「一方、事故が起きた場合の経済的損失も、今、現在でフクシマで起きている訳だから、計算は容易だ。はっきりいって比較するのも馬鹿らしいほど、ケタが違う。たった1回の事故で世界一の電力会社が国の援助無くしては倒産確実になる規模の損害額なんだから。」

鼎「じゃあ最近、問題になっている電力会社の赤字問題については?」

愛原「まずは比較検証対象の提出が必要だな。要するに【○○の赤字】という数字だけを見ても、それが多いか少ないかは分からない。それを判断するには比較対象が必要だ。たとえば現状では廃炉と再稼働をみすえた両面作戦になっている為、原発の維持費と火力の稼働費が両方とも乗っかっている。仮にこの両面作戦を改めて、原発の全面稼働に舵を切れば火力の燃料費が不必要になり、逆に廃炉に舵を切れば原発の維持費や使用済み核燃料を初めとする各種処理費用が不必要になる。直接的にはこれらとの比較検証が必要だろう。」

逆沢「外国との比較も必要ね。単に高く燃料を買わされているだけの可能性もあるから。」

鼎「韓国と比べると、5割くらい割高で買わされているという記事は読んだ事はあるけど・・・。」

愛原「アメリカに足元を見られているからな。まぁアメリカ以外から購入すれば改善の可能性はかなりあるが・・・。ちなみに日本は外交取り決めにより、核燃料を調達する際にアメリカから一定%以上、強制的に買わなくてはならないようになっている(ちなみに石油などもオイルショック以前では、中東から直接購入するルートがかなり限定されており、アメリカのご機嫌を過剰に伺う形になっていた。逆を言えばアメリカにも対しても毅然と対応できるなら、別にアメリカがウランやガスの世界一の産地というわけでもないので、アメリカによるボッタクリ状態を回避しやすくなる。)。ま、現状のまま原発に頼りすぎる程、アメリカに逆らいにくい外交状態になるリスクも頭に入れておいた方がいい。」

逆沢「あと電力会社のコスト体質の問題ね。東京電力でも、あり得ないほどの贅沢三昧の放蕩経営が色々明らかにされたけど。」

愛原「電力会社のコストについて語るなら、国営化した場合とか、電力自由化を進めた場合などについての真面目なシミュレートも必要だ。まぁこれも、現行のシステムが最も経済的に不効率なのはほぼ明らかだが。その理由を真面目に語るとあと3回くらい、テーマを引っ張らないと語り尽くせないから、次回以降、機会があった時に色々説明してやろう。」

逆沢「いらんいらん。大体、今回のテーマは【議論】であって、電力会社のコスト体質に関する話ではないだろが。」

愛原「そうだった。つい話が大きくそれてしまった。本当は原発維持の際にかかる税金の話とか、色んな角度からまだまだ話したい事はあったのだが。」

鼎「でも議論を進める際には、願望や決めつけで語るのではなく、ちゃんと比較検証をしながら議論を進めていくのが大事ってのは分かったかも。」

逆沢「少なくとも、こちらの質問に真面目に答えない奴は、論外って事ね。こちらの質問に答えもしないで、いきなり逆質問で返す奴とか。」

鼎「そういう人は、本当は相手の質問に答えられるほど頭も良くないのに、結論だけ先に決めて、最終的に議論に勝ちさえすればいいと考えるような人だと思うよ。」

愛原「かつて30兆円枠を突破した時の小泉純一郎は、公約違反を糾弾された際に【(この程度の公約違反は)大したことない】と言い切ったが、こちらの質問や糾弾に対して【大したことない】の一言で済ませてしまうのは、あまりにひどすぎると思った事はある。でも真面目に相手の質問に答えられない人間が、【その話はまた今度改めて】とか【まぁまぁ、落ち着いて】とか【君に質問を求めた覚えはない】とか【そんなくだらない質問に答える必要はない】とか【質問の内容が理解できないので答えようがない】とか【問題が大きくなったらその時に改めて考えたらいい】とか【トラスト・ミー】などの一言で逃げたり、【そんなのは常識だ】とか【みんなも私の意見に賛成と言っている】とか【これは民意だから】などといった中身ゼロの詭弁回答で自己正当化するシーンは、今まで数え切れない程、見てきた。いずれもひどい奴だと思ったものだ。」

逆沢「【こちらの質問に真面目に答えない】以外に、議論する上でのタブーとかはある?」

愛原「いっぱいあるが、次に最も多くみられるのが【相手のデメリット部分ばかり取り上げて、反対する】というものだ。」

鼎「ネット用語でいう所の【disる】の事かなぁ?」

愛原「そう。まさに。それ。」

逆沢「けど議論に反対はつきものなんじゃないの? デメリットを検証するなとか、反対するなというなら、それは議論でもなんでもないと思うけど。」

愛原「反対するからには、代案が必要だ。たとえば学園祭で何の催しをするかという会議をしているのに、あれもダメ、これもダメと、他人のアイデアにダメ出しばかりする割に、自分は一切アイデアを出さない奴がいたら大迷惑だろ?」

逆沢「つまみ出したくなるわ。そんな奴。」

鼎「けど大人数で議論をすると、そういうタイプの人も、大体一人はいるよね。」

逆沢「他人のアイデアにケチをつける事で、アイデアを出した相手より偉くなったつもりにでもなってんじゃない?」

愛原「日本人には、割と減点主義が好きな人も多いからな。何かを実行して失敗するよりは何をしない方がマシとか、リスクを伴うアイデアを出すよりは、何のアイデアも出さない方がマシとか。」

鼎「けどそういうドヤ顔の減点主義者が他人のアイデアを潰しまくっていると、結局、何の結論も出ないまま、議論が散会になってしまう可能性も高くなるよね。」

逆沢「逆を言えば、現状維持を望むような人間が、他人のアイデアをなんだかんだとイチャモンつけて、故意に潰しまくる可能性もあるって事かな? 特に議会などでは、全ての法案が廃案になると、自動的に現状維持になってしまうしねー。」

愛原「原発問題にしろ、年金問題にしろ、TPPにしろ、世論を二分するような議論の場合、どの選択肢を選んでもメリットとデメリットが共存して当たり前だ。つまり全ての人が満足するような100点満点の結論など出ないのは分かりきっているのに、【100点満点じゃないから反対だ】とばかりに、いちいち人の提案にケチをつける人間がいる。マイナス点がたった1点でもあれば、そこを徹底的に攻めて、相手の主張を一方的に潰す人間がいる。」

逆沢「他人の主張を否定する時にマイナス1点でも許さない人に限って、自分の意見のデメリット部分に関してはマイナス何点でも見てみないふりをする傾向もあると思うけどね。」

鼎「さっき上でも触れたけど、自分は相手の失点部分を徹底的に質問攻めにするのに、相手が自分の失点部分を質問してくると、まともに答えずにスルーする人も多そうだよね。」

愛原「そういう人は、普段100の善行をしている優等生が1の悪行をした時には【奴の本性が明らかになった】とばかりに散々に非難するのに、不良が100の悪行をしても見て見ぬフリして、あげく不良が1の善行をしようものなら【これが彼の本当の姿だ】と、ほめまくったりしそうだな。」

鼎「そういう風に極論ばかりをつまみ出して議論をミスリードする人は、すごく困るよね。」

愛原「極論を用いて議論を進める輩は、ある意味、究極の詭弁家だ。こんにゃくゼリーをみれば喉をつまらせて人を死なす危険な食物と非難し、とび職をみれば犯罪を犯しても当然な人達と認定し、犯罪者がたまたまアニメやゲーム好きだったらアニメやゲームが元凶と認定する。もちろん確率として、こんにゃくゼリーを喉につまらせる人が出てもおかしくないし、アニメやゲームに影響されて犯罪を犯す人もいるかも知れないが、そんな事をいちいち取り上げていったらキリがない。」

鼎「こういう極論好きな人を説得する上でも、比較検証がすごく有効だよね。たとえばこんにゃくゼリーの他にお餅などで同様の被害が出てるかを比較検証したり、アニメやゲームがそれほど好きでない人による犯罪者の率と比較検証したり、数十年前の同種の犯罪率とか外国での同種の犯罪率と比べて比較検証するみたいに。」

逆沢「でも極論好きの人は大体思い込みが激しいから、そういう正論は通じないのよねー。たとえばマンガやゲームなどの影響で【少年犯罪が増えている】とか【レイプが増えている】と思いこんでいる人に対して、具体的に警察庁などの統計を示して反論しても、彼らはそういう犯罪が起きる度に【それみろ。また事件が起きたじゃないか?】といわんばかりに大騒ぎするし。」

愛原「大阪で事件が起きる度に【また大阪か】と書き込んだり、犯罪者の職業がとび職とか建設業だと勝手に納得してしまう連中と同じ発想だな。統計的にみれば、そんなの無視していい確率なのに。よく昔から【東京はスリが日本一、大阪はひったくりが日本一】などと騒がれるが、じゃあ東京や大阪が飛び抜けてスリやひったくり犯の巣窟なのかといえば、そんな馬鹿な事はない。別に東京で見知らぬ人が近付いて来たからと言って、そいつがスリである確率なんか知れてるし、大阪で見知らぬ人が走ってきたからといって、そいつがひったくりである確率も、微々たるものだ。ていうかそんな事を過度に気にしてたら、東京で満員電車なんか怖くて乗れないわ。大体、日本の治安自体、そんな特別に悪くない。」

逆沢「けどいわゆるdisりが好きな人は、統計的には極論同然でも、いちいち大きく騒ぐからねー。そういう人は事件や不祥事が起きる度に【それ見た事か】といわんばかりに大騒ぎするし、ツイッターとかやってたら、それに関する記事を号外出すような勢いで喜んでリツイートして拡散しまくるし。事件や不祥事を起こした人自体はほんの例外的な一握りに過ぎなくても、何か起きる度にそれに関するコメントをいちいちネットに書き込んで、【だから東京の人は信用できない】とか【だから大阪はヤバい】とか【だから田舎者はダメなんだ】みたいな感じでその集団全体をまとめて否定したがるというか。」

鼎「こんにゃくゼリーを叩く人とか、アニメやゲームを叩く人とか、建設業を叩く人とか、外国人を叩く人とか、色んな人がいるけど、こういう人は大体、確率的に論評に値しないような不祥事や事件をわざわざ取り上げて、さもその集団に属する人(物)全体が巨悪のように主張したがる傾向があるよね。」

愛原「うーん。じゃあ、本来なら2番目の【相手のデメリット部分ばかり取り上げて、反対する】に含まれる項目だが、あえて【極論を引き合いに強引に議論を進めようとする】も個別にタブーの項目に含めるとするか? 俺もツイッターなどでネガティブリツイートをするような連中は大嫌いだからな。」

逆沢「あまり話が長くなりすぎても困るから、あと1つくらいにしておきたいんだけど、他に議論を進める上で許せないタブーとかはある?」

愛原「あと一つだけ選べってか。うーん。【勝利条件を勝手に設定する】とか【証明責任を果たすべき側が果たさない】とかいっぱいあるが・・・。そうだな。あと一つだけピックアップするなら、議論をする上のタブーその4。議論のテーマと関係のない行為をする事で無理矢理議論に影響を与えようとする。

逆沢「たとえばどんな感じ?」

愛原「人格攻撃をする。脅す。殴る。利益誘導する。泣き落とす。その他色々。

逆沢「とりあえず殴ると脅すがタブーなのだけは、速攻で理解できたわ。」

愛原「人格攻撃には、【貴方の言うことは信用できない】などといった比較的穏健な言動も含む。相手がウソやデマを根拠に無茶な持論を展開してきた場合ならともかく、そうでもないのに【相手の意見は聞かない】というのでは、議論する意味自体がなくなってしまうからな。」

逆沢「それは議論ではなく、一方的な主張とか、説教とかをしたい人が使いたいセリフの気がするわね。」

鼎「私は、相手の正論に押しまくられて、どうしようもなくなった側が、苦し紛れに言うセリフというイメージの方が強いと思ったかも。」

愛原「【あの人の言葉は信用するな】とか、そういう類も、特定の弁士の発言権を奪う問題発言だ。だけどたまに討論系のテレビ番組でも、こういう発言をする人がいて、びっくりした事がある。」

逆沢「だったら最初から、討論に呼ぶなよって感じだわ。」

愛原「次に利益誘導と脅しのケース。札束で相手の頬を叩いて主張を変えさせたり、あるいは【抵抗するなら、後で痛い目遭わせるぞ】と脅して主張を変えさせたりするケース。綺麗な言葉を使えば【取引】という単語でまとめられると思われる。」

逆沢「おいおい。単なる【買収】【脅迫】【取引】なんて綺麗な単語でまとめていいと思っているのか?」

愛原「政治の世界では、よくあるものだからな。アメとムチという言葉で置き換えてもいい。ちなみにこの【取引】という概念も、欧米人を初めとした多くの外国人がすごく好む。」

鼎「アメリカでは、司法取引という言葉もあるよね。」

愛原「日本人の場合は、悪い奴には重い罪が与えられて当然とか、商品は適正な相場で売買されて当然という考え方が根底にあるが、外国人の多くはそうじゃないからな。彼らは日本人よりもはるかに利害・損得に敏感なので、取引によって議論の結果が左右される事はよくある。どんなに真摯に説明しても受け入れられなかった提案が、賄賂を渡した途端にすんなり受け入れられたり・・・。」

逆沢「うーん。個人的な議論なら、どういう取引が内部でされようが、殴って相手の言うことをきかせるような例でもない限りは【勝手にやれ】って感じだけど、たとえば政治家とかが、誰かから政治献金を受けたとか、誰かがバックについたとか、誰かと選挙協力を結んだとか、そういう個人的な取引で、議論で主張すべき内容が変えられるような世の中は御免だわ。」

鼎「腕力とか武力とか権力とか資金力とか、そういうもので議論の行方が左右されるようになると、それはもう議論とは呼べないと思うよ。」

愛原「まぁそれを言えば、国権最高の議論の場である国会の議員ですら、カネや組織票の力で当選している議員だらけだけどな。議論の段階では早急に与野党一致していたはずの法案が、小沢外しとか菅外しとか解散とか、訳の分からない条件取引もからんで、いつまでも通らないなんて訳分からない状態が続いている。私欲まみれのくだらない条件取引で、議論の行方自体が歪められるのは、見ていて本当にむなしい。」

鼎「【取引】という概念自体は、人間が社会活動を続ける上ですごく有意義だと思うけど、時と場合をもう少し選んで欲しいと思ったかも。」

愛原「脅迫や役割分担といった取引活動は人類以外の動物でも割と行なったりするが、議論は地球上で人間だけが可能な知的行為だ。一方的に自分の意見を押し付けるのでもなく、一方的に相手の意見を否定するのでもなく、みんなが相手の意見にもちゃんと耳を傾けてちゃんと判断できる世の中になれば、より醜い争いの少ない世の中になると思うし、俺は人類の知性にこれからも期待したいと思っている。丁寧に議論を重ねる事で、相手や社会や科学的知見に対する誤った認識や偏見や思い込みや勘違いを改められる事も多いのだから。」

鼎「少しずつでも【人と人が、より分かり合える】ような世の中に近づければいいよね。」














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