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愛原様のたわごと(12年12月15日)




愛原「選挙期間中は、デマやネガティブキャンペーンがいつもの数倍増しになって、本当に嫌になる。」

鼎「インターネットが普及したおかげで、庶民の立場でも意見を発信しやすくはなったのはプラスだと思うけど、デマやネガキャンまで広まりやすくなったのはマイナスだよね。」

逆沢「政治家やコメンテーターがテレビでおかしな事を言って叩かれても自己責任だけど、ネットの世界では匿名が幅を効かせてるせいで、だました者勝ち、けなした者勝ち、あおった者勝ちになってるのは、正直面白くないわね。」

鼎「【ウソをウソと見破れる人でないと、ネットを使うのは難しい】という論法で、匿名によるデマやネガキャンを正当化する人もいるそうだけど、これってすごくおかしいよね。たとえば12月7日に岩手県や宮城県の沿岸で津波を伴うちょっと大きな地震があったそうだけど、この地震でも愉快犯が被害者を装って救助を依頼するようなひどいデマも流れたらしいけど、これって絶対ダマされた方が悪いはずがないよね。」

愛原「助けを求めて困窮している人に対して、いち早く救助の手を差し伸べる行為が悪いはずがない。むしろデマの可能性を疑って、救いの手を誰も差し伸べなくなる世の中の方がずっと怖い。選挙活動も同様で、人をだますような行為が許されるはずがない。特に災害や人の不幸を政治利用する奴は、何にも増して不愉快だ。」

逆沢「あー、【災害を政治利用するな!】は、このコーナーで何度もあんたが繰り返して言ってる決まり文句のようなものだしねー。ここ最近でも、中央道でトンネルが崩落したり、北海道で大停電が起きたりしたけど、何でもかんでも政治批判に結びつけるアホがたくさん出たみたいだし。」

鼎「【トンネルが崩壊したのは、民主党が公共工事を減らしたからだ】とか【原発を再稼働しなかったから大停電が起きた】とか、色んな意見をネットで見たよ。」

愛原「真面目に新聞を読んでたら、トンネル崩壊は道路公団が民営化されるよりもずっと前から続く定期点検の不備が原因である事も、大停電も電力不足ではなく鉄塔が倒れたからというのも一目瞭然なのに、連中はそんな事に関係なく、デマを拡散して人の不幸を政治利用しまくる。本当にはらわたが煮えくりかえる。」

逆沢「ま、トンネルが崩壊した原因が明らかになったのは事故の翌日以降だし、大停電が起きた原因が判明したのも停電の数時間後だから、即レスに慣れたヤフーニュースコメンテーターやツイッター民なら、原因が判明していない段階で憶測だけでデマを拡散しまくっても不思議はないと思うけどね。」

鼎「でも、なんで原因も分からない内から、憶測だけで見当違いのコメントを書いたりしちゃうんだろうね。」

逆沢「しかもそういう人間ほど、原因が判明した後になっても、謝罪も訂正もしないままみたいだしね。中には誤りを指摘されても、なお強弁や詭弁で押し通すようなクズもいるみたいだし。」

愛原「コメンテーター気取りの人間は、大体賢ぶりたい人だから、【誤りを認める=自分がバカだと認める】と考えて、それで素直に誤りを認めない可能性もあるかも知れないな。」

鼎「本当に賢い人は、誰よりも誤りを認める度量が強い人だと思うけど。知識欲が強い人というのは、自分が知らなかった事を知ろうとする意欲とか、間違って認識していた事を改める意欲に関しては、凡人よりもはるかにどん欲と聞いた事もあるし。」

愛原「賢い人賢ぶる人は、似てるようで実は正反対のベクトルを向いているからなぁ。後者はある意味では厨二病の典型的症例そのものともいえそうだが。」

鼎「厨二病って、前回も少し触れた単語だよね。」

逆沢「厨二病要素のないファンタジーなんかありえないから、そう悪いものでもないとは思うけど、厨二病という単語自体、対象を小馬鹿にしたネットスラングの意味合いも含むから、世間ではやっぱりネガティブなイメージかもねー。中学二年生を略した【中二】から取って中二病というのが本来の単語らしいけど。」

愛原「ただネットの世界では懐古厨とか割れ厨とかニコ厨とか【○○厨】という単語が氾濫しすぎて、これを【○○中】と書き直すと、余計に意味が通じなくなってしまう。賛否両論と批判は承知の上で、今回は表記上【厨二病】という形で、これをテーマにして掘り下げてみたいと思う。」

逆沢「つまり今回のテーマは、厨二病でいいわけね?」

愛原「うん。ファンタジーを創造したり楽しんだりする上で、大きなスパイスとなる厨二病的要素。その一方で蔑称として使われる事も多い厨二病というものを、もう少し掘り下げて語れればいいと思っている。」

鼎「厨二病といっても、何のことが分からない人も多そうだから、まずは基本的な説明が必要だよね。」

逆沢「すぐ前にも言ったけど、厨二病というのは、元々は中二病というのが正しくて、要するに中学二年生くらいの少年らにありがちな自意識過剰やコンプレックスから来る思い込みとか妄想とか行動とか意識とかを表した単語・・・で、あってたかな?」

愛原「端的な例を出すと【凡人どもと違う俺カッコいい】と思うような心理が、典型的な厨二病とされる。他人と違う考え方とか行動規範を持つ事に優越感を感じたがる。より具体的にいえば、【誰も知らないような知識や視点を持ってる俺】とか【マスコミや世間の空気に踊らされない俺】とか【人並みの成績や記録に満足しない俺】とか【みんなが涙を流している場面でもクールに気取れる俺】とか【みんなが気付かない秘密に気付いた俺】とか【真の正義に目覚めた俺】とか【未だ覚醒していない未知の才能を秘めている俺】とか【本気になったらきっとスゲー俺】とか・・・。」

逆沢「まー、いかにも反抗期特有の心理状態ともいえそうだけどねー。ま、大抵の人間は、大人になるに従って世間の空気にのまれてしまうだろうから、こういう反抗期ならではの自分だけのアイデンティティーを確立しようとする心理は嫌いじゃないけどね。」

鼎「人間はみんなと一緒という事で安心を感じる部分と、みんなとは違うという事で誇りや優越感を感じる部分の両方があるけど、このうち、後者の部分が厨二病といわれるものなのかも知れないよね。」

愛原「人間も群れを作る動物の一種に過ぎないから、みんなと一緒である事に安心感を感じる一面はあるが、その部分だけしかないと、自分のアイデンティティーが無くなってしまう。自分を愛したり特定の他人を愛したりする上で、その他大勢のモブな他人と差別化を図ろうとする心理自体は、否定できない要素だと思う。」

鼎「こうしてみると、厨二病って、人間が人間らしく自信を持って生きていく為に有益ではあっても、逆に他人に小馬鹿にされたり嘲笑される筋合いなんかないと思うけど・・・。」

愛原「自分自身は【俺カッコいい】と思ってても、他人から見たら【全然カッコよくない】事も現実は多い。第三者から見ると、カッコよくもないし、賢くも見えないし、たくましくも見えない。そんな凡庸な人間がナルシストを気取ってたら、お前らどう思う?」


逆沢「あー、それはすごく痛い。なるほど。それで厨二病は、嘲笑の対象になるわけね。」

鼎「でもそれは、全然カッコよくない人が自分はカッコいいと思いこんでいたり、たいして頭の良くない人が自分は天才と思いこんでいるから痛いのであって、実力と自己評価が一致していたら誰も痛いとは言わないよね。」

逆沢「それでも程度はあると思うけどね。厨二病の人は、単に自分が優れていると思いこんでいるだけじゃなくて、他人を凡庸とか愚民とみなして心のどこかで見下してる所もあるから、たとえ実力と自己評価が一致していても、やはり反感や軽蔑を買いやすいと思うし。」

愛原「厨二病の人は【凡人どもとは違う自分】に価値を置いている為、凡人と同じ価値観を持つ事を毛嫌いする傾向が強いと思われる。だから大衆が泣けばクールに徹し、大衆がどうでもいいと思う事に強い関心を示す。みんながAと言ってる時に【それは間違っている。正解はBだ】と言ってのけ、実際にBが正解だったみたいなシーンをすごく好む傾向がありそうだ。」

鼎「それ、あまのじゃくの心理と同じだよね。まぁそれも、反抗期特有と思えばすごく納得できるけど・・・。」

逆沢「けどこういう【常識を覆しつつも、より正解や勝利に近付くシーン】というのは、ファンタジーだろうと歴史物だろうとジャンルを問わずにドラマでは一番盛り上がるシーンでもあるような気がするわね。」

愛原「そう。当たり前の事をして当たり前の勝利をつかんでも、誰も感動しない。優勝候補のチームがセオリー通りの戦いをして優勝しても、それは退屈な予定調和でしかないからだ。むしろ弱い者が知恵や友情を駆使してでも強い者を倒すような展開を好む。凡人程度の考えではたどり着けない難解なトリックを奔放なアイデアで打ち破るような展開を好む。凡人が常識と思いこんでいた事が実は間違いで、本当の真実が明らかにされるような展開を好む。」

逆沢「うーん。大衆は厨二病をバカにしながらも、結局、厨二病的な展開が大好きってか?」

愛原「無論、俺もその一人だ。最初からラスボスとタイマンでやりあえるような強い勇者が主人公のRPGよりも、最初はそんなに強くなくとも、多くの仲間の協力と知恵と努力(経験値あげ?)でいずれ自分よりはるかに強かったはずのラスボスを倒せるまでに成長するRPGの方が好きだし。」

鼎「私も、シナリオを読み進めていく内に、本当の真相に気付くようなシナリオは大好きだよ。意外な人がラスボスだったり、隠された過去が明らかにされたり。そういう大どんでん返しがあるシナリオは。」

逆沢「お前ら、ガキか? といいながら私も、実はそういう展開は大好きだけど・・・。」

鼎「そう考えると、クリエイターといわれる人は厨二病の人の方が面白い作品を作れそうだし、そうでない人も厨二病的な感性を素直に受け入れられる人の方が、ずっと素直に色んな作品を楽しめそうな気がするよね。」

逆沢「ただ厨二病的展開が、すごく鼻につく時もあるのよねー。いかにもご都合的すぎたり、ベタ過ぎたりすると。」

愛原「ベタ過ぎるというか、オチが読め過ぎたり、どこかで見たのと同じパターンの繰り返しだと、どうしてもつまんなく感じる事はあるよな。まぁ展開がありきたり過ぎると、意外性も感動もへったくれもなくなるから、それでくさく感じるというのは分かる。新鮮味がないというか。」

逆沢「あとご都合過ぎるのも、なんかムカつくわ。特に【愛や怒りの力で真の能力覚醒→どっかーん→勝利】みたいなのをやられると。」

鼎「ご都合過ぎる展開と言えば、【こんな事もあろうかと!!】みたいなものも有名だよね。あと成功確率0.1%と言われたものが、大した理由もなくあっさり成功してしまうとか。」

愛原「ギャグだと割り切れれば問題ないが、真面目な見せ場でご都合展開を連発されると、興ざめする事もあるかも知れんな。」

鼎「大どんでん返しがあるのはいいけど、説得力が欲しいよね。ラスボスが悪に染まった理由とか、ラスボスの正体が今まで隠されていた理由とか。ラスボスを倒す秘策も、単に能力覚醒してどっかーんではなく、知恵や胆力で危機を脱するようなシーンであって欲しいとか。」

逆沢「厨二病的展開と揶揄される作品は、多分、ご都合的過ぎて説得力が足りなかったり、ベタ過ぎたりして意外性が色あせてたりするからかも知れないわね。それでも制作者だけはいかにもドヤ顔で大どんでん返しを成功させたといわんばかりの演出だから、余計に色々鼻につくと。」

鼎「こうしてみると、嘲笑されても仕方ないようなレベルの低い厨二病と、人の感動を誘うようなレベルの高い厨二病の二種類がありそうだよね。」

愛原「その分岐点となる最も大きな要素は、おそらく【凡人どもと違う俺】の中身に説得力があるかどうかだろうな。」

鼎「実際に凡人とは格が違うと他人に思わせられるほどの実力や説得力が伴っていれば問題ないけど、そうでなければただの誇大妄想気味の人と思われかねない可能性もあるよね。」

愛原「うん。その通り。たとえば【自分には優れた才能がある】とか【自分は将来、絶対成功するはずだ】と思いこむ事自体は、思春期までの健全な少年少女が少なからず認識する意識だろう。だがこの厨二病的妄想を実現するためには、それなりの努力が現実世界では必要になる。社会が右上がりの時代であれば、その努力のハードルはやや低くなり、普通に努力すれば普通に就職して普通に結婚して普通にマイホーム持って普通に余裕のある老後を送れるかも知れないが・・・。」

逆沢「ああ、分かった。厨二病患者が痛々しく見える理由が。要するに本人は自分の才能や人生の成功や安定を過信しているけど、それを裏付けられるだけの説得力ある人生設計も努力も実績も何もないから、そういう人が痛々しく見える訳ね。」

愛原「まぁ大半の人間は、大人になる過程において無数の挫折を経験するから、その結果、自分の器がこの程度しかないというのを自覚して、良くも悪くも厨二病状態からほぼ抜け出してしまうんだけどな。【自分の運動神経では、暴漢をやっつけてヒーローになる自分を演出するのはまず不可能だ】とか、【自分の学力では、司法試験に合格して敏腕弁護士として名を馳せるのはまず不可能だ】とか、【自分の絵画センスや創造力では、売れっ子漫画家として成功するのはまず不可能だ】とか、その他色々。」

逆沢「で、年を経ることに、不可能な事や困難と自覚せざるを得ない事がますます増えていくのよね。年収600万以上も、綺麗な奥さんもらう事も、安定した老後もみーんな不可能みたいな感じで♪」

愛原「ただ今時の中年は、昔よりもハイソな夢を見ながら育っているから妥協線がやたら高そうだけどな。妥協ラインをもっと低くすれば、既婚率ももっと高くなりそうなのに。」

逆沢「男も女も相手に求めるラインが自分の市場価値以上に高すぎるからねー。ええ年こいたオッサンがいつまでも若い女の子にこだわってたり、ええ年こいたオバハンがいつまでもありえない年収を相手に要求したり。」

鼎「私、そういう人達も、実は悪い意味での厨二病そのものだと思ったかも。」

愛原「ん? それはどういう意味だ?」

鼎「えーとねー。まずそういう人は今でも自分に高いレベルの夢と希望を持っているよね。【いつか自分にも素敵なお相手が】みたいな感じで。」

愛原「それくらい別にいいだろが。人は夢や希望がないと生きられん。どれだけ老人になろうが、人は常にささやかな夢や希望くらいは持ち続けるものだ。」

鼎「でもその一方で、その人達は夢をかなえるための努力はほとんどしてなくて、その代わりに世の中のことを分かった気になってるよね。【自分の人生は○○なのは、世の中が△△なせいだ】みたいな感じで。」

愛原「まぁ、それもやむを得ん。実際に世の中がそういう状態なんだから。」

鼎「【世の中のことを分かって賢ぶってる俺、カッコいい】というのも、典型的な厨二病だよね。夢や希望を純粋に持ち続けて真剣に努力している人達を青臭い連中だといわんばかりに上から目線で見下して、そんな達観してる自分をカッコいいと思いこむのも。」

愛原「・・・むっ。そんな解釈するか?!」

鼎「本当に賢い人は、物事を実現するために何をすべきかを真面目に考えて行動できる人だと思うよ。ダメと決めつけて言い訳しかしない人は、賢ぶってるだけのような気がするよ。本人は言い訳を考えるのに知恵を絞ってるから、それで自分は賢いと思いこんでるかも知れないけど。」

愛原「むうっ・・・。なんか自分の触れられたくない心の中の闇の部分をかきまわされてるようで、すごくつらいぞ!」

鼎「普通の大人の人は、自分の駄目な所を自覚して、色々妥協しながら生きていける人だと思うの。でも世の中には、前向きな厨二病の人と、後ろ向きな厨二病の人もいて、前向きな厨二病の人は今でも必死で青い鳥を追いかけられる人だと思うの。もちろん実際に青い鳥を捕まえられるかは別だけど、たとえばプロ野球選手として成功するような人は、人一倍、青い鳥を捕まえるべく自分を信じて突き進める人だけだろうから、青い鳥を本気で追いかけられる人自体はすごく尊敬できると思うよ。そういう人は仮に夢破れて挫折しても、違う道でまた自分を信じて頑張れる人だろうから。」

逆沢「一方、後ろ向きな厨二病の人は、自分の駄目な部分をあくまで認めようとせず、あくまで【本当の自分はスゴい】と思いこんでいて、にもかかわらず青い鳥追いかける気力は既に失っていて、【スゴいはずの自分が成功しないのは社会(or特定の誰か)のせい】とか思いこむ訳ね。【自分は世の中のことをいかにもよく知っている】といわんばかりの顔をしながら。」

鼎「前回、売れ筋の話をした時にも少し触れられた話だけど、今時の人は、すごく刹那的に結論を出したがる傾向があると思うの。たった1つのニュース記事やツイッター文を読んだだけで、全て理解したつもりになった人が多そうというか。北海道で停電が起きたというニュースを聞くだけで、【原発を回さなかったから電力不足で停電した】と条件反射で思いこむようなノリで。」

逆沢「本人は、1を知っただけで10を知ったつもりだろうけどねー。たまたま1つの円状の物体の正体が球だった事で、残り99個の円状の物体も全て球に違いないと思い込みやすいタイプというか。」

愛原「ま、自分の特異な家庭環境を基準に日本の家庭の現状を語る人とか、自分の労働環境だけを根拠に日本の景気を語る人とか、どこどこで事件が起きたとニュースになるだけであの場所は危険だと決めつける人とか、A=Bだったから、CもDもEもきっとBに違いないと考えるような短絡的な人ってのは、ちょくちょくいるからな。人はどうしても自分の経験を最優先に物事を考える。アメリカでも旧ソ連圏でも大きな原発事故は起きているのに、日本で原発事故が起こるわけがないと考えたり、戦前の日本でもギリシャなどの他国でも財政危機でえらい目に遭ってるのに、財政危機なんか起こるはずがないと思いこんだり。」

逆沢「本当に賢い人は、自分の身の回りにあるわずかなデータだけで安易に結論を出したりしないと思うけどねー。1を知っただけで10を理解できるのは天才といわれる人だけで、それ以外の人は天才になったつもりにしかなれないと思うけど。」

愛原「厨二病の人は自分に強い自信を持っているから、即断をためらわないのだろう。」

逆沢「だからその自信の根拠が、私には分からないんだけど・・・。」

愛原「根拠のない自信を持てるからこそ厨二病のような気もするけどな。あー、でも自分は偉いと勘違いする理由は、いくつかあるかも知れないな。たとえば甘やかされて育った子供は、良くも悪くも過剰に褒められているから自分に自信を持ちやすい一面もあるとか。」

逆沢「でもそういう温室育ちをした子供は、自分の実力以上に自分を過信しがちだから、社会に出て自分の評価が意外に低いと気付いたりすると、簡単に心が折れる事もあるらしいけどね。」

愛原「後は、本当に子供の時だけ神童と呼ばれた場合とか。いわゆる真面目系クズと称されるタイプに多いらしいけど。昔の栄光時代が記憶に残っている分、【本気になったらお前らなんかに負けっこない】とか思いこみやすそうというか。」

逆沢「なんかのまぐれで、1回だけ場違いに優秀な成績をあげてしまったりすると、それが本当の自分だと思っちゃう事もあるらしいしね。確率論で言えば、普段の成績の方こそが本来の自分の実力であり、1回だけの優秀な成績なんて確変でしかないのに。」

鼎「普段からパッとしない人が、占い師とか社会的権威のある人におだてられたりすると、すぐその気になっちゃう事もあるそうだよ。特に先生と呼ばれる職業の人に【すごく理解が早いですね】とか【貴方の知能指数は割と高いと思います】とかちょろっと言われるだけでその言葉を過剰に間に受けて、以後あらゆる場面で【俺が優秀なのは既に先生からも認められている。俺は間違っていないはず。間違っているのは他の連中だ】と思いこんだり。」

逆沢「そういうおだてられたらすぐに木に登る承認欲求に飢えた豚は、色んな意味で要注意ね。厨二病にもなりやすいし、下手すると悪徳占い師とかにカモられる可能性もあるし。」

愛原「銀英伝の登場人物に、アンドリュー=フォーク准将というのがいるのだが、彼はそう言う意味では典型的な悪い意味での厨二病だったと思われる。彼は士官学校を首席で卒業し、弁舌も軽やかで与党政治家の覚えもめでたく、それ故に自分の才覚をあまりに過信していたのだが、実際には軍事参謀としての才覚は無いに等しく、にもかかわらず【自分は参謀としてもすごく優秀だ】と思いこむだけの危険なタイプだった。」

鼎「で、実際に戦役に参加したけど、彼が期待するような戦況にはならなくて、それで支離滅裂で無茶な命令を指揮下の将軍に出したりして、あげく【他人に命令するような事が自分にできるかどうか、やってみたらどうだ!!】と叱責されるや、ヒステリー起こして卒倒しちゃったんだよね。」

逆沢「で、その後も、思い込みが激しい性格を利用されてクーデターに利用されたり、優秀な自分なら特例が認められて当然と言わんばかりに、正規の手続きも経ないまま人事異動を願い出て、それを断られたら、またヒステリーになって事件起こしたりとか。」

愛原「厨二病が悪化して、現実とフィクションの区別がつかなくなったら、こうなるんだろうなぁと思わせる好例だとは思われる。自分は特別で何をやっても許される。自分の才覚は特別であり、何をやっても上手くいって当然だし、また賞賛されて当たり前。そう思いこんでいるにも関わらず、現実が彼のセカイ通りに動かなくなるや、今度は情緒が不安定になり、あげくの果てに様々な問題を引き起こす。そして自分を評価しない人間や、自分より評価されている人間や、自分が評価されない社会に対して強い憎しみを持つようになる。」

逆沢「まさしく承認欲求が暴走した怪物そのものね。」

愛原「普通の人間なら、世間の評価と自己評価の間にズレがあれば自己評価を修正しようとするはずだが、厨二病が悪化すると世間の評価の方が間違っているという解釈に陥ってしまう。幼小の時にエリートだった自分が落ちこぼれたのも、就職や恋愛がうまくいかないのも、ぜーんぶ他人や社会のせいという風になってしまう。」

逆沢「みんなが落ちこぼれてたり、大多数の人が就職や恋愛が上手くいかずに苦しんでいるなら、それは社会のせいかも知れないけど、同世代の人の中でも、しかも生まれ育ちが特段に恵まれてなくとも、それなりの成績でそれなりに就職も恋愛もしてる人が少なからずいるにも関わらず、なんでもかんでも世の中のせいにするのは、さすがにどうかしてると思うわ。」

鼎「フォーク准将という人は、高学歴過ぎて、しかも与党政治家という究極の【先生】からも高く評価されてしまってたから、それで自分自身の能力を過信しちゃったんだろうね。そんな自分がうまくいかないのは、配下の提督のせいであり、無能な上官のせいであり、腐敗した政治家達のせいでありという風に考えてしまって、どんどんおかしな方向に行ってしまったと。」

愛原「自分に自信を持つ事自体は、自分に自信を持てない人と比べても恵まれているし、素晴らしいことだとも思う。だが現在の自分の実力を過信し過ぎてはいけないという事だろうな。」

逆沢「現在の自分の実力を過信してしまっている人は、そもそも自分の実力を更に磨くための努力もしないだろうしねー。自分の将来性を過信するだけなら、その明るい将来を目指して頑張ろうという気にもなるだろうから、メリットの方が大きいだろうけど。」

鼎「けど【本気になったら・・・】とか【明日から頑張ろう】とか言ってるだけの人は、永遠に本気(?)になれる日は来ないと思うよ。確かに本気になれればダイエットでも禁煙でも何でも成功するだろうけど、そんな事をだらだら言ってる人ほど、現実にはダイエットも禁煙も絶対に成功しないような気がするし。」

逆沢「つくづく厨二病には、説得力が必要なんだと感じるわ。口先だけの厨二病には何の価値もないどころか、人に不快感しか与えないものなんだと。」

愛原「頭脳派キャラを登場させたつもりでも、実際にそのキャラが出した知恵やアイデアのレベルがあまりに低かったりトンチンカンな内容だったりすると、ただの痛いキャラにしかならないようなものだな。賢い人と賢ぶる人とでは、全然中身も印象も違うようなものというか。」

鼎「私、フォーク准将のような賢ぶるような人よりは、不言実行のストイックな人の方がずっとカッコいいと思うし、好きだよ。」

逆沢「少なくとも他人をおとしめてまで、自分を偉く見せようとする人には全く魅力を感じないわね。他人を見下す言動をすることで自分を偉く見せようとするのは、悪い意味での厨二病患者に一番ありがちな現象だと思うけど。」

愛原「自分が知恵を出したり努力して偉くなるのではなく、ライバルをおとしめる事でそのライバルより高い評価を偉くなろうとするのは、ゲス行為以外の何者でもないな。ネガティブキャンペーンやデマをばらまいて偉そぶる連中には、不快感しか感じない。」

逆沢「【中二病】が【厨二病】というネガティブな扱いになってしまったのも、他人をおとしめる事でしか自尊心を保つ事ができない人が少なからずいるのが原因かも知れないわね。」

愛原「俺自身、安直に空気にのまれる人よりは空気に抵抗する方が好きな厨二病体質の持ち主だから、厨二病をネガティブなものとらえられる風潮はあまり好きじゃない。だが自分を過大評価しすぎる痛い人になりたいとも思わない。」

鼎「【敵を知り、己を知れば百戦すれども危うからず】という有名な孫子の言葉があるけど、まさにその通りだよね。自分の能力を過大評価して、ライバルや大衆を過小評価するような人が、リアル社会で役に立つはずがないし。」

愛原「弱い奴が、自分が弱い奴である事を認めた上で、自分を磨いたり知謀を駆使して強い奴を倒すからこそドラマになるんだ。弱い奴のくせに自分は強いと思いこんで強敵にまっすぐ向かっていく奴はただのバカだ。」

鼎「知恵や努力で大どんでん返しを成し遂げるというのは、厨二病的名シーンの中でも一番絵になる場面だよね。」

逆沢「ファンタジーの世界では、愛とか怒りとか気合とか、訳の分からない要素だけで大どんでん返しが行なわれる事があるけど、こういうのは余程うまく演出しないとしらけちゃうし、やっぱり現実世界ではあり得ない要素が多すぎると、非常識すぎてダメなのかも知れないわね。」

鼎「知恵や努力(仲間を集めたり、技術を習得したりなど)で大どんでん返しを成し遂げるというスタイルなら現実世界でも応用が利くし、説得力も段違いだから、それで同じ厨二病的シーンでもプラスに感じるのかも知れないよね。」

愛原「説得力に富んだ裏付けのある厨二病か、説得力のかけらもない自分の脳内のセカイの中でしか通用しない厨二病か? その差が大事だという事だな。」

鼎「けど知識を身につけるのも努力が実を結ぶのも、一朝一夕には不可能だよ。思い込みで全てを知ったつもりになったり、本気になったらいつでも上手くいくと思いこむのは簡単だけど、そういう人は後者の痛い人タイプにしかならないから、私達も気をつけないといけないよね。」

愛原「厨二病的要素が好きな人間だからこそ、【だから厨二病の奴はダメなんだ】と言われないように、その点は改めて自戒しておこう。少なくとも思い込みだけで、デマやネガティブキャンペーンを間に受けて賢ぶらないようには気をつけたいと思う。」













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