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愛原様のたわごと(13年3月10日)





愛原「今日のテーマは【人気対戦競技(バトル・ゲーム等)の条件】だ。受験戦争だの出世競争だのリアルの武力紛争だのといった生々しい勝負ごとではなく、ゲームやスポーツなどの娯楽要素のある勝負ごとを対象に、どうすれば競技やバトルのプレイや観戦が盛り上がるようになるか? あるいはどうすれば閑古鳥が鳴くかについて、適当に考えてみたいと思う。」

逆沢「お、久々にウチのサイトらしい実用的そうないいネタじゃん。何か思うところでもあったのか?」

愛原「うん。WBCの観客動員数を調べてみて、想像以上にひどい数字で愕然としてだな。で、【なんでこんなに観客動員数が少なすぎるのか?】と感じたり・・・。」

鼎「せっかくだけど金曜日に東京ドームで行なわれた日本台湾戦は満員だったらしいから、それは前提からして間違ってると思うよ。」

逆沢「うんうん。視聴率もかなり良かったらしいしねー。福岡のヤフオクドームで行なわれた第1ラウンドの観客動員数はイマイチだったらしいけど、これは立地にも問題あったんじゃないの?」

愛原「真夏に行なわれるオールスターなら、愛媛でやろうが新潟でやろうが、どこでも大抵満員になる。福岡だから満員にならないという理由にはならない。・・・と、今回のテーマは日本人の視点だけで動員数を語る趣旨じゃなかった・・・。たとえば同じ福岡で行なわれたキューバ対中国戦の観客動員数はどれくらいだったと思う?

鼎「うーん。キューバは割と野球が盛んな国だし、中国はすぐお隣の国だから、そんなにひどい観客動員数にはならないと思うけど・・・。コアな日本人のファンも、日本戦を観るついでに見に来てもおかしくはないと思うし・・・。高校野球でもお目当てのチームが登場する試合を観るついでに、その前後の試合もセットで観戦する人もいるでしょ。」

逆沢「参考情報として聞きたいけど、福岡のドームで行なわれた日本の試合はどれくらいの観客数が訪れてたの?」

愛原「対ブラジル戦は開幕戦という事もあってか、公式発表では28000人。プロ野球のペナントレースとの平均観客動員とほぼ同じ。次の中国戦に関してはその半分の14000人。キューバ戦では福岡最終戦かつ実力伯仲の好カードにも関わらず、初戦を下回る27000人。」

逆沢「うーん・・・。キューバと中国では実力差も大きくてとても好カードとはいえないし、もしかして5000人割ってるとか??」

愛原「とりあえず公式発表における正解は約3000人・・・・なんだが、実はこの数字はかなり怪しい。参考になる資料が乏しい(あまりに実態がひどすぎて、主催者側が正確な数字をマスコミに公表するとはとても思えない)ので話半分の参考程度にとらえて欲しいが、とりあえず参考写真が付いてて一番マシそうな記事を貼っておくと、こんな感じ。」

逆沢「ぶっ!!まさかの100人割れか?? って、よく見たら、ソースがまとめサイトじゃねえか? まとめサイトには、ハ○スター速報や痛い○ュース(ノ∀`)のようなデマ中傷拡散サイトも混じってるけど、この記事は信用していいのか?」

愛原「今回は信憑性よりも分かりやすさを重視してチョイスしたが、より詳しく調べたければ、自力での電話取材や直接訪問などで裏を取ってくれとしか言えん。ちなみに公式発表での観客動員数は3000人だが、この手の数字はチケットが売れた枚数をそのまま出す場合(阪神甲子園球場等)や、主催者発表によるデモの動員人数ばりの水増し(昔の東京ドーム等)も珍しくないから、参考程度に留めておいた方がいい。

鼎「福岡のドームの最大観客収容数は約39000人だから、仮に3000人も入ってたら、観客席の7.5%は埋まるよね。でも写真を見る限りでは、とても5%(20分の1)も埋まってるようには見えないけど・・・。」

逆沢「つーか、1%も埋まってないだろ? どう見ても・・・。」

愛原「まぁ実数が公式発表通りの3000人であれ、100人割れであれ、どっちに転んでも、大幅赤字必須のとんでもない数字である事には変わりない。」

鼎「いくら何でも国際試合で、この観客動員数は異常すぎると思うけど・・・。酷いけど、やっぱりこれが現実なの?」

逆沢「つまり野球の人気自体、世界レベルでみたら実はこの程度って事か?」

愛原「WBCの参加国数自体、たった28だしなぁ・・・。」

鼎「去年のロンドンオリンピックで、野球がオリンピック種目から外されたけど、世界レベルの野球人気がこの程度しか無かったとすれば、やっぱりオリンピック競技から外されてもやむを得なかったという事かなぁ?」

逆沢「うーん。もしかして【日本の常識は、世界の非常識】という事がまた一つ、明らかにされてしまったのか?? 深夜に街中を歩いてても滅多に襲われない治安の良さとか、独特の進化を遂げたといわれる携帯電話などに続いて。」

鼎「そういえばレスリングもオリンピック種目から外されそうになってるらしいけど、これも世界レベルでみた人気度でいえば仕方ない事なのかなぁ?」

逆沢「つーか、日本人ですら、アマレスに関心持ってる人なんかそんなにいないでしょ。女子サッカーや大リーグ野球と同じで、日本人の選手が活躍しているという点に関してのみ、興味があるだけで、競技そのものにはほとんど関心が無さそうというか。だから仮に日本人選手が全然活躍しなかったら、ボートやトランポリンやテコンドーと大差ない知名度や人気になっちゃうんじゃないの? 実際、レスリングにしろ女子サッカーにしろ、国内試合を熱心に観戦するファンなんかほとんどいないでしょ?」

鼎「女子サッカーのリーグ戦も、世界一になった事で一時的に観客動員数が増えたらしいけど、まだまだ経営的にはかなり厳しいらしいよね。」

逆沢「そうそう。日本人の多くは競技そのものに関心がある訳じゃなく、彼らが日本の看板を背負って世界相手に大活躍するのを期待しているだけだから、国内試合なんてどうでもいいのよ。サッカーですら、プロ野球中継と比べたら、テレビ中継数も少ない状態だし。日本中で大きく盛り上がるのはワールドカップのような国際試合の時だけというか。」

愛原「それでも観客動員数(=チケット収入)とテレビ放映権料等が伸びてくれれば、興業としてのオリンピックは大成功になる。で、ここで問題なのは、レスリングは陸上や水泳などと比べて、それらが期待できるか?という事だ。」

逆沢「うーん。世界的な人気はよく分からないけど、日本国内に限ってみれば・・・やっぱり微妙かな? 新聞やテレビで吉田沙保里選手が金メダル3連覇をしてる記事を見てすごいなーとは思うけど、その試合を直接観にいったり、生でテレビ観戦する人がどれくらいいるかと言うと。私も日本の看板背負ってる人が活躍するのはうれしく思うけど、競技そのものに強い関心がある方じゃないからねー。」

愛原「レスリングでの歴代金メダル総数が世界3位の日本ですら、その人気レベルじゃ、世界レベルでの人気は最悪に近いだろうな・・・。」

逆沢「ん? そんなに日本のレスリングは強かったのか?」

愛原「ロンドンオリンピックでの日本は金メダル数わずか7個という低迷ぶりだったが、その内4個がレスリングだったはず。さらにレスリングは2008年の北京と2004年のアテネでも2個ずつ金メダルを取っており、事実上の日本のお家芸競技の一つである。ちなみにレスリングにおける金メダル数の1位2位はソビエト(ロシア分は含まずとも単独1位。ロシア分含めればダントツ1位)とアメリカで、日本はスウェーデンらと並んで3位な。」

逆沢「なんというマッチョ国ランキング・・・。日本の体育会系も体罰と精神論の世界だから、マッチョニズムという点ではまぁ妥当か♪」

愛原「ただレスリングも、野球ほどではなくとも、十分に寡占状態のようでだな。一部の国がメダルを独占するような状態に割と近い。というか一部の国以外ではまるで人気がないのか、競技参加メンバーの多くが特定国に偏り、当然のように特定国だけがメダルをがっぽり持っていく。」

逆沢「つまりロシアやアメリカや日本などの特定国でオリンピックを開催すれば、レスリングに関してはそこそこ客が入るかも知れないけど、他の国でやったらまるで客が入らないであろうスポーツって事か? いや、日本の場合はどこまで客が入るか分からない部分もあるけど。」

鼎「私は、ロシアや日本でレスリングの国際試合をやっても、トータルでは赤字の可能性が高いと思うよ。WBCのキューバVS中国戦で全然お客さんが入らなかったようなもので、自国選手が登場しない対戦カードで猛烈な大赤字が出るのは分かりきっているから。福岡のドームも、日本チームが登場しない対戦カード3戦分の運営経費で、トータルかなりの赤字になっててもおかしくないし。」

逆沢「つまりオリンピックを興業としてみるなら、多くの国で人気があるスポーツの方がありがたいって事ね。サッカーのワールドカップもそうだし。」

鼎「どうやったら人気が出るのかなぁ? それさえ分かれば、野球もレスリングも、オリンピックで外される可能性も出てこなかったと思うし。」

愛原「まず観戦する側の視点としてみれば、応援するチームが強い程、応援したい気持ちになるファンの数も増えると思われる。大魔神佐々木が最盛期の頃の横浜ベイスターズも、今からすると信じられないくらい人気があったし。女子サッカーも、世界一を体験してから人気と知名度が急上昇した。」

逆沢「ただ勝って人気を大きくするという手法は、あくまで一時的な浮揚効果に過ぎないのよねー。逆を言えば、負けたら人気が急降下してもおかしくないって事だし。現にここ10年ほどの横浜ベイスターズの人気なんか、恐ろしいくらい悲惨な状態になってるし。横浜市民ですらどの程度熱心に応援しているか分からない有り様というか・・・。」

鼎「自分が応援するチームに勝ち目がないと分かってると、応援する側もしらけちゃいやすいよね。今の横浜市民が昔ほど熱心にベイスターズについて熱く語りたがらないとすれば、そのせいもあるだろうし。」

逆沢「レスリングにしても、勝ち目のほとんどない国からすれば、空気のような存在だろうしね。日本人からみたボートやテコンドーのようなものというか。だから大抵の日本人からすれば、ボートやテコンドーがオリンピック競技から消えても、痛くもかゆくもないし。」

愛原「つまり、野球やレスリングがオリンピック競技から消えても痛くもかゆくもない国も多くあるという事だ。野球にしろレスリングにしろ、特定国の寡占状態になっていて、とても参加国の過半数の支持をとりつけられる状態にない。もちろん日本人やロシア人やアメリカ人だけで十分なチケット収入や放映権料をはじき出せるなら話は別だが、現状はとてもそうではないと言う事もあるだろうしな。」

鼎「つまり興業の視点でみれば、特定チームだけが【俺TUEEEE〜】する状態よりも、多くの参加チームにメダルのチャンスがある状態の方が望ましいって事だよね。」

逆沢「プロ野球でも、その傾向はあるだろうしね。特にパ・リーグは群雄割拠状態が続いてて、昭和時代の万年閑古鳥状態と比べると、相当改善されてるし。逆にセ・リーグは、強いチームと弱いチームが二極化しつつあって、それに比例するように視聴率や観客動員数もいまいち伸び悩んでいるというか。」

愛原「パ・リーグの人気が昭和時代と比べて急伸長しているのは、地方進出と地元密着という経営戦略のせいでもあると思われる。昔のパ・リーグは、ロッテ・西武・日本ハムが関東、近鉄・阪急・南海が関西という状態が長く続いてて、しかも関東関西には既に巨人阪神という超人気球団が地元密着していたから、その点で既に人気面でかなり不利な状態に置かれていた。」

鼎「けど南海がダイエーに身売りされて、そのダイエーが福岡に進出した事で、九州のプロ野球ファンがたくさん掘り起こされた感じがあるよね。ダイエーからソフトバンクにさらに交替したけど、地元密着戦略がちゃんと継承された事もあって、今でも福岡のドームの観客動員数はセ・リーグの平均と比べても全然見劣りしない良い状態になってるし。」

逆沢「北海道に移転した日本ハムや、東北を拠点においた楽天も、かなりプラスの刺激を与えているようだしね。少なくとも東京ドームを本拠地にしていた頃の日本ハムと比べたら比較にならないほどに。」

愛原「いくら関東関西が大都市圏でも、一度に掘り起こせるファンの数には限りがある。その一方で九州や東北にはまだまだ埋もれた需要が豊富にあった。これを世界レベルでみた野球やレスリングに置き換えると、なぜ世界レベルでみた野球やレスリングが不人気かが分かるはず。」

逆沢「あー、なるほど。一部の国だけが野球やレスリングで盛り上がれる一方で、大多数の国々では応援したくなるレベル(or強さ)のチーム(or選手)自体が存在しないから、盛り上がるわけがない状態になってしまってるって事ね。」

鼎「昔のパ・リーグは、巨人阪神が既に強固な地盤を築いている関東関西にこだわってしまってたから、それ以外の地方の人からすればますます存在価値がないような状態だし、肝心の関東関西の人からもほとんど相手にされないという悲惨な状態になってたけど、そうゆう寡占状態は、人気という視点では極めて悪手だったって事だよね。」

愛原「次に日本でプロ野球が大人気なのは、その選手の供給源にもなっている高校野球の存在も大きいと思われる。そして高校野球自体、他の高校部活動にはない人気の秘密がいくつかある。」

逆沢「やっぱりテレビ中継がされることと、将来プロ野球選手として成功すれば巨額のカネと名声が手に入る点が人気の秘密かな?」

愛原「その通りだな。細かい点をいえば、野球はサッカーやバスケットボールなどと比べても、非常にテレビとの相性が良い。サッカーやバスケットなどは一瞬で展開が大きく変わる事が多い上、その際にズームアップと全体画面を巧みに切り替える必要性も高く、落ち着いてみるにはやや不向きだが、野球はシーンごとに映すべきシーンがほぼ決まっているので、お茶の間でのんびり観戦するのにすごく適合している。その気になれば音声だけでも、急展開を把握できるし、それから慌てて画面を見直しても、ビデオが流れるから大抵の事は把握できるようになってるし。」

逆沢「サッカーやバスケットなどは、10秒後には全く別の展開になってる事も珍しくないから、【ゲーム途中でさっきの名シーンをもう一度ビデオでゆっくり確認】シーンなんか試合中に挿入する余裕なんかほとんどないしねー。サッカーの場合は、シュートやパスミスなどでボールがラインの外に出てしまった時に、わずかにインターバル時間が取れる程度だし。」

鼎「高校野球の場合、テレビ中継でじっくり落ち着いて観れるのも魅力だけど、その際に郷土の代表がちゃんと登場するのも大きいよね。夏だったら全都道府県代表が登場するし、春でも各地方の代表が決められた数だけちゃんと登場してくれるから。」

愛原「うん。この【郷土の代表】というのは、やはり大きい。そのスポーツ自体に関心無くても、郷土の代表が登場すれば応援したくもなるし、活躍すればなおうれしい。サッカーやレスリングに全く関心のない人間でも、日本代表チームがそれらの競技で活躍すればうれしくなるようなもので、地元の代表チームの活躍はやはり素直にうれしいものだ。」

逆沢「大阪や神奈川などの強豪地区の住人からすれば、【弱っちい日本海側や北日本の都道府県の出場枠減らして、地元の枠をもっと増やせ。そしたら地元っ子が野球留学なんかしなくて済むのに】という声もたまにあるらしいけどねー。」

鼎「大阪クラスになると、北陸や山陰のナンバー1高校よりも、ずっと強い強豪校がいくつもあるから、全国ランキングでも作って、強い順番から49校なり32校なり出場できた方が合理的という声も無くはないと思うけど、これはどうなのかなぁ? プロサッカーにJ1とJ2の区別があるように、弱い高校と強い高校でランクを決めて、強い高校だけが上位大会に出場できるようにして、その代わり強いリーグでビリランクのチームと弱いリーグでトップランクのチームだけ、毎年リーグ入れ替えできるようにしても面白いような気もするけど。」

愛原「それをやると、いわゆる強豪地区の高校が何校も出場可能になる代わりに、弱小都道府県の高校が一切甲子園に出れなくなってしまう。そうすると弱小都道府県の住人はほとんど高校野球を観なくなってしまう。一方、強豪地区の応援がさらに加熱するかと言えば、実はそんな事はなく(たとえば大阪代表が1校しか出場しなかった場合、大阪の人の多くはその1校を郷土の代表として応援するが、逆に2校以上が出場しても、応援が分散する事はあっても、2倍になる事はない)、トータルでの高校野球ファンは大きく減少する。」

逆沢「首都圏と関西だけにパ・リーグのチームをどれだけたくさん集めても、無駄なのと同じ理屈ね。巨人ファンの多くがロッテファンや西武ファンや日本ハムファンを兼ねて、均等に応援するはずがないようなもので。」

愛原「それよりは全都道府県に均等にチャンスがある方がいい。現行のトーナメント方式は、ワールドカップやWBCのリーグ戦と異なり1発勝負オンリーだから、本当に強いところが最終的に勝ち残りやすいシステムとはいえないが、だからこそ強豪チーム同士がつぶし合ったり、強豪チームの乱れを突いた弱小校の金星勝利も起こりやすく、全てのチームに夢と希望のあるシステムになっている。だから毎年どこかの地区で意外な高校が甲子園に出場したり、意外な伏兵が甲子園で優勝したりする事もある。強いチームが必ず勝つとは限らないが、だがそれがいい。」

逆沢「本当に強いチームが勝ち上がれるとは限らないルールだと、日本一や世界一を決めるには不都合がある気もするけどねー。」

愛原「強いチームが勝つに決まってるような勝負は、ただの予定調和でしかない。強い奴が【俺TUEEEE〜】する分には都合が良いが、それ以外の奴はしらけてしまう。娯楽は何も野球観戦やレスリング観戦だけではないので、それがつまんないと思うようになったら、そのファンはすぐに別のファンになってしまう。そうなれば、その競技自体、閑古鳥が鳴く状態になってしまう。」

鼎「ゲームセンターが廃れていった構図と全く同じだよね。昔はストリートファイターUとか、色んな対戦ゲームが大流行でゲームセンターもたくさんあったし、対戦ゲームの全国大会もあったそうだけど、ゲームセンターの構造上、弱い人はすぐにゲームオーバーになっちゃうし、強い人だけがいつまでも筐体を独り占めできるシステムだから、初心者の多くはすぐにしらけちゃって、他の娯楽にいっちゃって、やがてコアな上級者だけしかゲームセンターに残らなくなって、その中でも淘汰はさらに進むし、気がついたら誰もいなくなった状態になっちゃってみたいに。」

愛原「【初心者お断り】の業界は、新人が全く入ってこなくなるから、長期的に見れば確実にすたれる。強い奴が【俺TUEEEE〜】したくなる心理は分かるが、その過程で弱い奴や新参者を蹂躙してしまうと、その人らは嫌気が差して去ってしまって、全体の人気自体もしぼんでしまう。オリンピックで野球やレスリングの人気が低迷気味な理由の一つに、特定国によるメダル寡占があったとしても全く不思議ではない。」

逆沢「でもこの初心者お断りの悪習は、フリゲを含むゲーム全体にも結構ある気がしない? ほら、上級プレイヤーからすれば、難易度は高い方が燃えるし、やりこみ要素もたくさん欲しい。けど初めてのプレイヤーからすると、難易度が高いゲームは途中で投げ出す理由にしかならないし。で、コアなファンを重視するか、新規ファンの開拓を重視するかというジレンマが発生するんだけど。」

鼎「かつて歴史SLGの最大手として知られたKOEIがいつのまにか路線変更しちゃった感があるけど、これもコアなファン新規ファンの扱いに悩んだ結果のような気もするよね。信長の野望シリーズも三国志シリーズも、シリーズごとにどんどんマニア路線が進んじゃって、それについていけないファンが少しずつ脱落していって、それで何年か歴史SLG自体作らない時期があったんだけど、2012年に6年ぶりに三国志の新シリーズを出して、でもそのゲームが超初心者向けというか、コアなファンを怒らせるようなお子様仕様だったから、ますます不評を買ったという話も聞いた事があるし。」

愛原「コアなファンの高年齢化を考えると、新規ファンの獲得に重点を置き直した経営戦略自体が悪いとはいえない。だがシリーズものは、固定ファンの支持でもっている部分も大きいので、固定ファンがあぜんとするような路線変更をやると、そっちのマイナスの方が大きくなる危険性も秘めている。いっそのこと、新シリーズの名でやった方が良かったかも知れない・・・・。」

鼎「難しい問題だよね。ドラクエシリーズにしても、オンライン化した事で、一部の固定ファンの大きな不評を買ったそうだけど・・・。」

愛原「一人用ゲーム多人数(オンライン)ゲームでは、そもそも層が全然違うからなぁ。一人用ゲームのシリーズとして成功したものを不特定多数のプレイヤーとからむゲームに変えたら、そりゃあ嫌がるファンも出るだろう。」

逆沢「つまり実現可能性を別において理想を言うなら、コアなファンと新規ファンの両方を獲得できるのが一番という事になるんだろうけどねー。」

鼎「ゲームで言えば、上級プレイヤーをうならせるようなやりこみ要素も欲しいけど、新規プレイヤーが速攻で愛想を尽かさないような難易度調整と取っつきやすさが欲しいって事かなぁ?」

愛原「スポーツでも理屈は同じ。世界を相手に戦う一流アスリート達が目標とするような世界大会が盛り上がるに越したことはないけど、普通にスポーツを楽しみたいだけの平凡な学生さんや親父さんでも、気楽に楽しめる(or応援できる)環境が欲しい。」

逆沢「初心者同士でヘタクソながらもわいわいやるサッカーなら、誰でも楽しめると思うしねー。逆に上手い奴だけでサッカーボールの取り合いをやって、自分にはパスも一つも回ってこないし、敵のボールを奪うこともできないなんてなると、はっきり言ってしらけちゃうけど。」

鼎「スキーでも水泳でも、上手い人と比べちゃうからつまんなくなるのであって、他人を気にしなければ、それなりに楽しめる人は多いと思うよ。」

逆沢「分かる分かる。スキーや水泳のような個人競技なら、他人と比べない限りは自分のペースで自由に練習したり楽しめるはずだし、サッカーや野球のような集団競技でも、チームメイトの実力が似通っているなら【誰々が足を引っ張った】なんて雰囲気にもなりにくいし、対戦チームとの実力も拮抗しているなら、一方的に蹂躙されて不快な気持ちにもならずにも済むだろうしね。」

愛原「一人用ゲームの利点も、他人と競争する必要がない所にあると思う。他人より上手くなる必要もないし、変な見栄を張る必要もない。友達関係に余計な気を配る必要もない。廃人プレイと縁遠い、暇なときだけゲームをするようなライトユーザーからすれば、対戦ゲームやネットゲーム仕様は、はっきり言って余計なお世話以外の何者でもない。娯楽は楽しむためにあるのであって、誰かに勝つためにあるのではない。そこを絶対に勘違いしてはいけない。」

鼎「勝つに越したことはないけど、楽しめなかったら意味がないよね。ゲームでもスポーツでも。」

愛原「体罰指導が常態化しているクラブも多いと聞くが、楽しむために部活動をやってる人からすれば余計なお世話そのものだ。そりゃあ勝てばうれしいし、勝つに越した事はないが、受験戦争やリアル戦争と違って、娯楽の一環としての勝負ごとでそこまで勝利至上主義になるのは、目的からして本末転倒だと思う。」

鼎「ただ言葉は悪いけど、私達一般の日本のファンも、勝利至上主義の視点でアスリートを見ちゃってるのかも知れないよね。だから4位に沈んだ星野ジャパンは散々に叩かれたし。女子柔道の体罰問題も、【日本は金メダルを取って当たり前】という勝利至上主義のプレッシャーを監督や連盟が強く感じたせいもあるだろうし。」

逆沢「東欧などの旧共産圏では、国を挙げてアスリートを育成する事も珍しくないけど、それも勝利至上主義が蔓延し過ぎているから、特別な訓練施設で365日練習漬けで、あげく薬物に頼る人もいたりしてそうだけどねー。そこまでいったら、娯楽としてのスポーツをやってるんじゃなくて、国の宣伝任務を任された特殊工作員でしかないようにも思うけど。」

愛原「勝利至上主義で、そのスポーツの人気が本当の意味で出る事は決してない。少なくとも現状のままでは、吉田沙保里選手が何度金メダルを取ろうが、レスリングの競技人口が大きく増えることもなければ、レスリングの試合会場に足を運ぶファンが大幅に増える事もないだろう。勝者以外価値がないというのなら、最終的な勝者になれる見込みの薄い大半の若者はレスリングをやってみようなんて思わないし、ファンにしても【オレは(選手が)戦うのが好きじゃねぇんだ・・・(選手やチーム)勝利が好きなんだよォッ!!】みたいな人は、(勝利したかどうかは新聞やネットで確認すれば事足りるから)選手や競技団体にお金を落とす事もないだろうしな。」

逆沢「何、どこかの悪役みたいなそのセリフ?」

鼎「競技の人気を増やすには、競技そのものを好きになってもらわなければダメだよね。初心者や下手な人でも楽しめる工夫が欲しいというか。少なくともルールくらいはすぐに覚えられないと、プレーどころか観戦すら楽しめないから。」

逆沢「ヘタクソでも、バッティングセンターに行けば同じだけバットを振りたい。ボーリング場に行けば同じだけボールを転がしたい。そういう当たり前の心理を無視して、極端な上級プレイヤー優遇システムを採用したゲームセンターが廃れたのは、ある意味自然なのかもね。【長くプレイしたければ強くなれ】と言われても、大半の人はそこまでして強くなるメリットもないし、他にも娯楽はたくさんあるんだから。」

鼎「だからスキー場などでは、小さなお子様でも楽しめるような初心者コースもあるし、そういう配慮が行き届いている娯楽は、そうでないスポーツよりずっとマシだよね。」

逆沢「野球やサッカーは、観る分にはまだマシだけど、プレイする分にはその点で難がありすぎるのよねー。ヘタクソが気軽にプレイできる環境がほとんどないから。」

鼎「でも観る分にはマシなのは、やはり大きいよ。全国どの地域に住んでても、それなりには応援できる環境が高校野球やプロ野球にはあるから。たくさんの人に応援してもらえる環境ほど、選手もやる気が出て、ますますプレイが楽しくなると思うし。」

愛原「一部の教条主義者が高校野球中継を教育的観点だがどうだの、汚い大人がビジネスのために球児を食い物にしているだの、訳分からない論理で非難してるが、とんでもない話だと思う。誰だってチヤホヤされたらうれしいし、マイナースポーツをやってる選手達の多くも、もっと正当に自分の活躍を認めてもらいたいという気持ちくらいはあるだろうから。またプレイする側だけでなく、応援する側にとっても自分達のひいきチームがちゃんと放映されるのはうれしいものだ。この辺もマイナースポーツやマイナーチームのファンなら、気持ちはよく分かるはず(マイナーな漫画やゲームのファンも、その作品が無名であるが故に残念な思いをした事はあると思う)。その機会が強く与えられた球児のことを恵まれていると感じる事はあっても、その機会を奪おうとする連中は正直好きじゃない。」

逆沢「まぁフジテレビデモや非実在美少女規制騒ぎの時のように、自分にとって関心のないものを弾圧して喜びを感じる人も多いし、高校野球に興味のない人からすれば、高校野球中継自体がウザく感じる気持ちは分からなくもないけどねー。」

愛原「だったら、それ以上に魅力的なコンテンツを提言するべきだな。オリンピックだって、新種目が採用される裏で人気のない競技が種目から外れるのは当たり前。テレビ番組だって、枠が決まっている以上、何かを追加すれば、別の何かの番組がはじかれる。それを踏まえた上で、より魅力的なコンテンツを提言するのが筋だろう。ただ単に【あの番組やめろ】は、単なる嫌がらせにしかならない。」

鼎「そして各競技団体やファンも、少しでも多くのファンの獲得を目指すべきだよね。自分達だけが楽しければそれでいいというなら、それはゲームセンターの二の舞だし。」

逆沢「レスリングなんか、井の中の蛙状態の日本人に、自分達こそが世界標準と思いこんでいるアメリカ人に、【俺TUEEEE〜】で満足しているロシア人にと、新規開拓なんか眼中に無さそうな国ばかりで上位を占めていて、いかにもヤバ過ぎるわ。もはや札束で買収するくらいしか挽回策はなさそうと思えるくらいに。」

愛原「対戦要素のない個人競技や一人用ゲームならともかく、対戦要素のある競技や対戦ゲームで成功したいなら、自分だけ強ければそれでいいという勝利至上主義からは脱却すべきだと思う。特に他人に自分を認めてもらいたいなら、他人を楽しませる工夫が必要だ。ずぶの素人や弱い奴をコケにしたり排除しながら、その一方で、強い俺をチヤホヤしろと言ってもそれは通用しない。ヘタクソでもスポーツを楽しみたい時はあるし、初心者でも対戦ゲームに挑戦したくなる時もあるし、弱小地区でも甲子園に出たいと思う事はあるし、ならばそれは温かく迎えるべきであり、それを怠れば、彼らはきっとしらけて去っていく。そして誰もいなくなったゲームセンターで、一人で王者を気取っていても、こんな空しいことはない。」

鼎「対戦要素のある競技やゲームは、対戦相手があってこそ成り立つ以上、対戦相手やそのファンがしらけるような展開にしたらダメだよね。」

逆沢「パ・リーグや高校野球の成功にならって、少しでも多くの人に関心を持ってもらえる工夫も必要かもね。」















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