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愛原様のたわごと(13年8月30日)







愛原「今年の高校野球は、例年に無い展開で新鮮に面白かった。」

逆沢「高校野球に関心のない人からすれば、そんなネタ振られても正直困るんだけどね〜。そういうネタは。」

愛原「興味ないなら興味ないで構わんから、とりあえず話に合わせてくれ。さて、例年と比べて何が違うか? まず第一にベスト8の面々が実に新鮮だったこと。東京や大阪・神奈川・愛知・福岡・兵庫といった政令指定都市も抱える大都市圏が3回戦までに軒並み全滅して、岩手・山形・群馬・茨城・富山・徳島・高知・宮崎の8校が生き残る大波乱の展開になった。」

鼎「近畿圏も東海圏も中国地方も首都圏1都3県も、全てベスト8にすら残れず全滅したというのは、すごく異例だよね。しかも残った8校の内、春夏合わせた優勝回数が3回超えるのは、計6回の徳島県と計5回の高知県の四国勢だけで、富山県と山形県に至っては夏ではベスト8が過去最高という状態だったから(春も含めれば1回だけベスト4に入ってるが・・・)。」

愛原「そして野球強豪県の貫禄を見せる四国勢2校が、そろいもそろって未だ優勝経験の無い東北地方勢に敗北し、ベスト4には、岩手・山形・群馬・宮崎の4県が生き残る。このうち、群馬以外は優勝経験無し。ただし群馬勢も初出場校であり、もしも優勝したら初出場で初優勝という快挙を成し遂げるという漫画的展開になったのだ。」

逆沢「漫画なら、強豪県は最後の切り札に取っておくでしょ? 単に強豪県や優勝候補がつぶし合って、弱小県のヘボ高校ばかり残っただけじゃないの?」

愛原「こらっ! 弱小県とか言うな!! 真面目に野球中継見てたら、ベスト8に残ったチームの技量レベルの高さも分かるはずだ! 彼らはいずれも勝つべくして勝ってきておるわ! ・・・多分。」

鼎「全国で唯一優勝経験が無い東北地方の高校が2校もベスト4に残った事もあって、【今年こそは!】という期待感もあって盛り上がったよね。」

逆沢「結果的にはまたもや白川越えもならず、九州で唯一初夏共に優勝経験のない宮崎県勢による初優勝もならず、群馬県代表の前橋育英が優勝したらしいけどね。」

鼎「ネットの一部では、岩手と山形と群馬と宮崎では、どこが一番都会かとか、どーでもいい事で盛り上がってたりもしていたみたいだよ。」

逆沢「んな事、まったくもってどうでもいいわ。私的には、今年の高校野球関連ニュースで印象に残ってるのは、岩手県代表の花巻東高校が見事なヒールを演じたらしいって事くらいだし。といっても試合の中身自体は知らないし、ネットでなんか騒ぎになってるらしいって事で、調べたらなかなかオモロい事やったらしいじゃんって程度だけど。」

愛原「新聞やテレビではまったく話題にもなってないけどな。ネットでだけそこそこ注目度のあるニュース扱いになってた感じだが。」

鼎「元をたどれば高校生の部活だし、ダーティープレイとかヒール校とか、そういう後ろ向きのネタが新聞やテレビで報道されないのは、私的にはすごく妥当だと思うよ。」

逆沢「ところでさして関心のない私にはイマイチよく分からなかった部分もあったんだけど、その花巻東高がヒール校扱いされたダーティープレイって、一体どういうものだったわけ? 殺人スライディングかましたとか、悪質な死球やクロスプレーで相手のエースや4番を骨折させたとかいうなら、かなりのヒールパフォーマンスだと思うけど。」

愛原「心配するな。そういう漫画じみたダーティープレイまでは、さすがにやっておらん。まぁ去年の春に限っては、優勝候補筆頭の大阪桐蔭の4番バッターを骨折させてはいるが、これは不幸な事故であって、故意ではないだろう。・・・多分。」

鼎「今回、花巻東高が問題視されたのは、【サイン盗み】の件と、【カット打法】の件だよ。」

愛原「厳密に言えば【サイン盗み】疑惑な。もう一つはくさい球を全てファールにしてしまう事で四球による出塁(および相手投手に多くの球数を投げさせる事による疲労)を狙った【カット打法】が、バントに相当するのではないかという疑惑(通常のヒッティングと異なり、バントの場合は、2ストライク後のファールは三振扱いとなるため)。まぁどっちも疑惑レベルではある。」

逆沢「うーん。サイン盗みって、確かルール違反じゃ無かったか? もっともバレないようにやってるチームは、たまにあるらしいけど。」

愛原「元々はルール違反って程じゃ無かったようだが、今ではルール違反という事になっている。というのもサイン盗みが明確な違反じゃなかった頃は、守備側もサインを盗みにくくする為に、暗号みたいなやたら複雑なサインのやりとりをしていて、そのため、試合進行のスピードが著しく遅れ、試合運営上、大きな支障が出ていたからだ。」

逆沢「逆を言えば、試合進行に差し障りが無ければ、サイン盗み行為もアリって事か?」

愛原「うーん。多分そうなんじゃないのか? 要は単なる駆け引き行為だからな。国際試合レベルでも、サイン盗み行為が行われる事は無くも無いらしいし、それを逆手にとって、ニセのサインを相手に読み取らせて相手を攪乱する事もあるらしい。」

逆沢「一つ、質問。サイン盗み行為って、そもそもバレるものなの? この前の秋田書店による不正行為みたいに、内部告発でも無い限りは普通、発覚しないと思うんだけど。」

鼎「あくまでサイン盗みの件は、疑惑だよ。もっとも高野連側も、疑惑の真偽に関して追跡調査をする意向はないようだけど。」

愛原「李下に冠を正すような、明らかにサイン盗みをしていると疑われても仕方ないような挙動不審な動きを花巻東のナインがしてみせた為に、審判がそれを注意したというのが、この疑惑の焦点だ。」

鼎「ネットでは、それを指摘された際の花巻東の監督のコメントが白々しいという事で、それも疑惑の根拠にされている感じだったよ。」

逆沢「なるほど。シロかクロかは問題ではなく、疑わしい振る舞いをした事が問題視されたという事か?」

愛原「もっとも準々決勝で花巻東に1点差で惜敗した徳島県代表の鳴門ナインは、試合前から花巻東がサイン盗みをしてくる事を前提にプレイしていたみたいだし、その証拠となるであろう不審な動きを審判に伝え、実際に審判が花巻東ナインに疑われるような不審な動きを慎むように警告もした。そして準決勝で花巻東打線を3安打0失点に抑えて完勝した宮崎県代表の延岡学院も、サインのやりとり自体しないという究極のサイン盗み封じをやってたらしいから、どうも高校野球界では【花巻東=サイン盗みをやるチーム】として広く認知されていた感もありそうだ。」

逆沢「なるほど。でもそれなら鳴門ナインは、延岡学院みたいにサインのやりとり自体をしなければ良かったんじゃないの? そうすればサイン盗みなんか怖くないし。」

愛原「球威が武器のピッチャーならサイン無しでも何とかなるかも知れないが、鳴門高校のピッチャーは変化球と制球力でかわすタイプの投手だったから、ノーサイン戦術は極めて至難だ。ついでにいうと鳴門高はベスト8で唯一の公立高校であり、選手層も相対的に薄い。甲子園レベルで通用するピッチャーも一人しかおらず、サイン盗みされるともろいと分かっていても、そのピッチャー以外に選択肢がないような状態だ。」

鼎「でも鳴門高校は、強打で優勝候補の一角として注目もされた静岡県代表の常葉菊川高校に17−1でボロ勝ちしてるくらいだから、層は薄くとも、投打共に本来の地力はありそうなチームだよね。。」

逆沢「なるほど。鳴門も延岡学院も審判もそろって、花巻東高に対して疑いの目を向けていたのは事実なんだろうけど、まー、それでも疑惑は疑惑だしねー。で、もう一つ。カット打法というのもまずいのか?」

愛原「ちゃんとスイングしていれば無問題なんだが、途中でスイングを止めたらバント扱いになる。でもってその花巻東の選手のスイングが、バントにもスイングにも取れる微妙な感じだったのが問題視されたようだ。あと四球をはじめから狙ってストライクのボールを全部ファールにするような打撃が、そもそもスポーツマンシップ的に許されるのか?という問題も含めてな。」

逆沢「くさい球をわざとファールにするくらいは、プロでも普通にやってんじゃないの?」

愛原「それ自体は何も問題ない。ただバント状スイングで、それをやった事が問題なんだ。少なくともプロが同じ事をやり出したら、四球狙いのバッターだらけになって、野球自体がスポーツとして成り立たなくなってしまう。あと高校野球の場合は、プロほどには露骨な内角攻めができない事もあって(フェアプレーの観点からデッドボールなどの危険性がある内角への執拗な攻撃は割と忌避される傾向がある)、この手のバントスイングを潰すのも容易ではない。特に鳴門のピッチャーは、そのカット打法を得意とする特定の打者一人に40球以上投げさせられており、元々主力投手が一人しかいない鳴門勢にとっては、その点でも相性が最悪だった。」

鼎「プロ野球でも、100球投げたら先発交代のタイミングの目安になるくらいなのに、たった一人のバッターに40球も投げさせられたら、試合にならないよ。投げても投げても全部ファールにされたりしたら。」

愛原「鳴門のピッチャーの制球力が低ければあっさりと四球かデッドボールになってたと思うが、コントロールの良さが災いして、余計にたくさん投げさせるハメになった気がしなくもない。」

逆沢「うーん。でもこっちもグレーな訳でしょ? 明確にブラックといえないというか。私的には、むしろアイデア野球だと思うし、聞けば聞くほど面白いバッターじゃんって印象だけど。」

愛原「ネットではほとんど触れられていないが、実はカット打法自体は、40年以上前に既に試されている打法だったりする。もっとも40年前の時点では、前例のない打法と戦法をするトリッキーバッターが現れたという事で、アイデア野球というポジティブな受け止め方も含めて、ちょっとしたニュースにもなったようだが・・・。しかし最終的にルール改正されて、このカット打法も封印される事になったようだ。個人サイト様の記事であるが、内容も秀逸でリンクフリーという事で参考程度に貼らせていただくと→http://set333.net/ru-ru06fauru.html。ちなみに余談だが、この時、対戦相手のトリッキーバッターに対して、【卑怯な真似はやめろ】と言ったとされる習志野高校のキャッチャーは、現巨人の阿部慎之助の父らしい。ついでにいうと元ミスタータイガースの掛布雅之が当時の習志野高の主力選手だった。なので当時の阿部パパや掛布選手のファンなら、今回の花巻東の選手のカット打法を見て、40年前に似た光景があったのを思い出したかも知れないな。」

鼎「私、過去に無かったプレイだから賛否両論の声がネットで出てると思ったら、実は昔にも似たような事例があったんだね。というか打率000なのに出塁率が4割超えて全盛期のイチロー選手並って、カット打法って本当に野球の常識を破壊するようなトリッキー打法だよね。」

愛原「まぁこの40年前の東洋大姫路VS習志野戦の時点ではカット打法に関しては、ルールブックに何の記載も無くグレー状態だったが、現在はルールブックにもちゃんと記載されている。残念ながら花巻東の選手によるカット打法は、現在ではグレーではなく限りなくブラック。花巻東高の監督らは、40年前に自分たちの先輩格がいた事を知らなかっただけだろう。」

逆沢「だったらなんでもっと早く、高野連は花巻東側に警告しなかった訳?」

鼎「それは私も思ったかも。確か高野連側の見解としては、【今までは見逃してきたけど、これからはルールを厳格に運用し、バントアウトとみなす事もある】みたいなニュアンスで、鳴門戦の後に花巻東ナインに警告したみたいだけど。でもこの高野連の扱いに対しても、【だったらなんで、もっと早く警告しなかった。それまでに花巻東のカット打法(とサイン盗み行為)で敗れたチームが可愛そうだ】みたいな声はネット内でもかなりみられたよ。鳴門だけじゃなくて、愛媛県代表の済美も花巻東に負けたとはいえ、6−7で1点差の僅差だったから。」

逆沢「うーん。何という四国クラッシャー!」

愛原「高野連も悩んだんだろうなぁとは思う。建前上、高校野球はさわやかクリーン野球という事になってるし、サイン盗み行為なども一切行われないことになっている。そして実際に内部告発などによる決定的な不正の証拠があるわけでもない。よくよく見たらかなり怪しいけれど、あくまでもグレーでしかない。高野連側としたら、大会終了まで見て見ぬ振りして、そのまま一切のおとがめもなく無難に感動の高校野球が終わったら、それがベストと考えていたかも知れない。」

逆沢「でも準々決勝で鳴門高校が花巻東による不正行為疑惑を審判に告発した事で、見て見ぬ振りもできなくなってしまったと。」

鼎「サイン盗みをしていたと疑われても仕方ないような挙動不審な場面をネットで公開されてたりした事も、要因としてあったかも知れないね。」

愛原「サイン盗み疑惑だけ。あるいはカット打法だけが問題ならまだしも、ダブルで同時に問題として顕在化した事も、花巻東高がヒール校扱いされる要因として大きかっただろう。1件だけなら偶然とかうっかりミスで済まされるが、2件も重なるとさすがにまずい。」

鼎「この問題が吹き出てから、東北勢初の優勝という期待感が一気に盛り下がって、2校ともそろって準決勝で負けちゃったのはすごく残念だよね。」

逆沢「でもヒール校が優勝してたらそれはそれで問題になるだろうし、高野連的にはほっとしてんじゃないの?」

愛原「不祥事が三度の飯より大好きな一部ネット民なら、逆に喜ぶかもしれないけどな。格好のバッシングネタができたという事で。」

逆沢「つうかヒール校なんて、漫画の世界くらいしか存在しないし、そういう叩き甲斐憎み甲斐のあるチームが現実に存在してくれた方が、ドラマ的にもおいしいような気もしなくはないけどね。」

鼎「一部ネットでは、20年前に松井秀喜選手を5打席連続敬遠した時の明徳義塾以来のヒール校とも言われたりしてるようだよ。」

逆沢「つうか明徳義塾の敬遠は、完全にルールの範囲内だし。ヒールとしてのインパクトで言えば、花巻東校は高校野球の歴史を多分塗り替えたわ。」

愛原「という訳で、かなり前置きが長くなったが今回のテーマは、【悪役(ヒール)】だ。そいつが本当に悪い奴かどうかは別にして、悪という役回りの価値についてちょっと考察してみよう。ぶっちゃけ、お前らにとって悪役は必要か?」

逆沢「架空世界では悪の勢力は必要というか、無いと盛り上がらないけど、現実世界なら悪はノーサンキューだわ。」

愛原「本当にそう思うか? 心の底で悪を必要としていないか? 別に真の悪である必要はない。とにかくみんなと一緒にバッシングできるような、叩き甲斐のあるような悪を。この国をダメにする無能政治家でも売国政治家でもいい。社会に害をもたらす特定外国人でもいい。民衆を騙したり洗脳するマスコミでもいい。少子高齢化を助長する今時の女(あるいは男)でもいい。労働者から搾取するだけの悪しき経営者・財界人でもいい。税金を食いつぶすだけの老人や生活保護者でもいい。ウ○コ製造器でしかないニートでもいい。そばにいるだけで周りを不快にする隣の隣人でもいい。」

逆沢「いや、そういうムカつく存在は、全員いなくなってくれた方がスッとしていい・・・と言うのはさすがに危険発言か?。」

愛原「じゃあその悪い奴が望み通りいなくなっても、自分を取り巻く不幸な状態が改善されなかったとすれば、お前はどう考える?」

逆沢「うーん。言いたい事は何となく分かったわ。けどそういう思考をする人の大半は、【悪い奴がいなくなれば、俺の不幸な状態は必ず改善されるはず】と考えるんじゃないの? 仮に改善されなければ【別の誰かを新たに悪役にして、そいつに罪をなすりつける】とか。以後無限ループで。」

鼎「それ、完全に【どくさいスイッチ】のエピソードそのままだよね。【俺がモテないのは両親の教育が悪いからだ】→【両親消去。でもやっぱりモテない】→【俺がモテないのは学校の連中が陰で俺の悪口言ってるからだ】→【学校の連中消去。でもやっぱりモテない】→【俺がモテないのは政治が悪いからだ】→【与党の政治家消去。でもやっぱりモテない】→【俺がモテないのはマスコミの連中が妙な風潮を広めるからだ】→【マスコミの連中消去。でもやっぱりモテない】→【俺がモテないのはイケメンやリア充の連中がいるからだ】→【イケメンやリア充消去。でもやっぱりモテない】→【俺がモテないのは俺の価値が分からない女が悪いんだ】→【女消去。でもやっぱりモテない(つうか終了)】みたいな感じで。」

愛原「悪い奴がいなくなる事で、改善される事も少なくはないだろう。しかしそれだけで改善される事ばかりではない。そもそも逆恨みであったり、筋違いな事も多い。」

鼎「でも他人を悪い奴と思い込み、自分の不幸を悪い奴のせいにする事で、気持ちが落ち着く事も多いよね。」

愛原「悪役は、ある意味、精神の安定剤だな。この世から悪が消えたら、自分にふりかかる全ての不幸は、全て自分のせいであり、他人の責任にできなくなってしまう。まわりが善人ばかりの環境というのは、意外と息苦しい環境でもある。」

鼎「まわりがいい人だらけだと、ちょっとした不正や手抜きもできなくなる気がするよ。みんながちゃんと真面目にやってるのに、自分だけさぼったりしたら、きっと印象悪いだろうし。それで自分だけが周りに叱責される事になったら、もっとつらいし。」

逆沢「職場で自分以外の社員が全員サービス残業大好きで、かつ休日はみんなそろってボランティア奉仕するのが当たり前という環境だったら、それはそれですごく息苦しそうだわ。」

愛原「周りの人間が自分より出来のいい人間ばかりだと、すごく肩身が狭くなるぞ。」

逆沢「それはすごく分かる。人はある意味、常に誰かを見下す事で安心する生き物だから。出来の悪い人間をみる事で、【俺はあいつよりマシ】と思えたり、【俺はあそこまでひどくない】と思えたりできるわけだし。」

鼎「自分が誰かに叱責された時にも、他に悪い人がいれば、【俺だけが悪いんじゃない。他にも悪い奴はいっぱいいる】とか言い訳もしやすいよね。言い訳にしかならないけど。」

愛原「あと自分が正義の味方を気取りたければ、悪が必要という側面もある。悪が存在しないと、自分が正義にもなりえないからな。」

逆沢「正義の味方が登場する漫画やゲームや時代劇などには、必ず悪役も登場するしね。ってか悪役がいなくなった時点で、物語は終わっちゃうし。」

愛原「ヒーローものの真の主役は悪役の方だ。というのも正義の味方が、必ずしも正義の心を持っている必要は無いからな。悪漢タイプのアンチヒーローであろうが、事件に巻き込まれただけの本来は無難主義の一高校生であろうが、そいつより悪い奴が登場して、かつその悪い奴をやっつけたら、そいつは正義のヒーローになりえるからな。」

逆沢「言われてみれば確かにそうだわ。極端な話、悪あってこその正義な訳ね。正義あっての悪ではなく。」

愛原「悪を必要とする人は非常に多い。その大きな理由として、悪が存在する事でどんな残虐非道や理不尽も許容されがちという側面もあるかも知れない。極論を言えば、【悪をやっつける】という大義名分さえあれば、何の罪のない人を暴力行為に荷担させたり、人様の財産を容赦なく徴用したり、戦争という大量殺人劇すら肯定される事も多い。」

逆沢「なるほど。相手が悪であり、そいつに対抗する為なら、何をやっても構わない的理論ね。」

愛原「悪役(ヒール)の存在は、非常に便利だ。まず悪役認定した相手に対しては、どんな迫害をしても許されやすい。【こいつは○○だから、いじめられても仕方ない】的理論だな。次に悪役認定されていない他人に対しても、特定の行為を強制しやすい。【鬼畜米英を倒す為に、カネも命も差し出せ】的理論でな。さらに【テロリストをかくまう奴はテロリスト】的理論を振りかざす事で、言いなりにならない人間を悪認定もしやすい。俺にヒール扱いされたくなければ、俺の言いなりになれって感じでな。」

逆沢「なるほど。支配者にとって悪役はすごく便利って訳ね。自分にとって都合の悪い奴は全て悪認定して叩きつぶす。それ以外の人間には【悪認定されたくなければ言いなりになれ】と迫って、服従させる。そしてどんな残虐非道や理不尽行為を行っても、【悪をやっつけるために必要だ】という大義名分さえあれば許容される。ヒールさえ用意できれば、何をやっても許される。究極の免罪符って訳ね。

愛原「相手が悪玉なら、相手の言い分も聞かず、問答無用でライダーキックで爆殺しても許されるのだ。もちろんそいつが、本当に悪い奴であろうがなかろうが関係ない。【大量破壊兵器を保有している疑いがある】でもなんでもいいから、誰かを適当に悪玉に指定して、かつ周りがそれを信じれば、その時点で何をやっても許される免罪符を手に入れる事ができる。ネットでも都合の悪い人を売国奴とか反日呼ばわりして、免罪符を手に入れたがる人は多いだろ?」

逆沢「自分に都合の悪い人を全て悪玉認定する一方で、【俺に逆らったら悪玉認定するぞ!】と威圧する手合いは、ネットでもリアルでもいくらでもいるわね。」

鼎「人は悪を憎みながらも、内心、悪役をどれだけ必要としているかを色々思い知らされる思いだよ。悪役が存在する事で、【俺はあいつよりマシ】と安心もできるし、言い訳もできる。別の誰かを言いなりにもできる。本当の意味での悪もやりたい放題になる。【赤信号みんなで渡れば怖くない】じゃないけど、【他の人も悪い事をやってると思える事で、自分自身も悪い事をやりやすくなる】し、【もっと悪い奴を懲らしめたり、対抗するという名分で、自分自身も悪い事をやりやすくなる】だろうから。」

愛原「だからこそ悪を求めている部分もあるだろうな。悪の数だけ免罪符が手に入るとするなら。だからこそ人は、自分が事件に無関係であっても、事件があればその中から悪役となれるキャストを探しだし、鬼の首を取ったような勢いで容赦なくバッシングする。若者がアイスケースで寝そべっていようと、遊園地ではしゃごうと、それで実害を受けている当事者の数自体はわずかだろう。しかしそんな無関係の人に限って、まるで親を殺されたように、時には被害当事者よりも激しく悪玉に怒りをぶつける。ちなみに特に最近のネットを見て最も不愉快になったのが、福知山の花火会場での火災事件に関する、とあるヤフーニュースのコメントだ。」

逆沢「あー、事件を起こした露天商やその組合に対するバッシングがすごいみたいねー。まー、起きた事件の惨状具合からすれば妥当だと思うけど。」

愛原「俺が不快に感じたのは、賠償問題に関する記事だ。そこには【露天商に全額賠償させろ。絶対に税金は投入するなよ!】という意見と【被害者の救済が最優先だ。商工会議所や福知山市役所なども速やかに補償しろ】という意見の両方があったが、前者の意見には賛同が多く、逆に後者は【私はそう思わない】の方が多かった。俺はすごく違和感を感じたが、お前らはどう思う?」

逆沢「気持ちは分からなくも無いけどね。悪い奴を懲らしめるという視点と、何の罪もない一般市民の血税を投入するなんてあり得ないという視点は、いかにも当然という感じもするし。」

鼎「でもそれって、被害者を思いやる視点ではないよね。暴漢に誰かが刺されたのをみて、110番はするけど119番はしないようなものというか。正義の味方としては、悪の組織さえ壊滅したら、悪によって苦しめられた人はどうでもいいといわんばかりというか。フセインをやっつける為なら、イラク国民やアメリカ兵がどうなろうと知った事じゃないといわんばかりというか。」

愛原「【東電は直ちに有り金全部払って賠償しろ。国税は一切投入するな。その結果、関東地方の電力供給が何年止まっても構わん】と言ってるのと同じだな。」

逆沢「現実は、その逆突っ走りまくりだけどね。被害者そっちのけで加害者の方を思いっきり最優先に救済してる感じだし♪」

鼎「自分が被害者だったらどう思うか?という視点が全然ないよね。その花火大会の賠償に関するコメントの内容に関してだけ言うと。自分が電力止められるような立場になったら、すぐ怒るくせに。」

逆沢「自分が加害者になる可能性も考えてなさそうだわ。まぁこの点は、交通事故に関するコメントとかみると、いつも思う事だけど。詐欺事件の首謀者とかならほぼ100%故意だからともかく、過失事故は誰でも起こし得る可能性がある事を分かっていないというか。」

愛原「所詮は他人事という事なんだろうな。自分が被害者になる可能性を考えないから、被害者にも冷たくなれる。そして加害者になる可能性も考えないから、事故の加害者にも問答無用に厳しくなれる。失言コメントをした岩手県会議員とか、載せるべきでない写真をアップした店員らを徹底的に叩く。その結果、誰かが死のうが、一つの店が潰れようが、それで心を痛めることもない。加害者を叩き過ぎた結果、仮に被害者の被害がさらに拡大したとしても(被害者の店が潰れたりとか)、それで自責の念にかられることもない。むしろ悪をやっつけた爽快感だけに酔いしれているような印象すら受ける。」

鼎「結局の所、加害者になる可能性も被害者になる可能性も考えない人達にとっては、加害者は演劇上のヒールでしかなく、ヒールを徹底的に叩くことで正義の味方を気取って、そのヒールが社会的に徹底的にたたきのめされて再起不能になったらメデタシメデタシって事でしかないのかなぁ?」

逆沢「漫画やゲームの世界でヒールをたたきのめす感覚と同レベルで、現実のニュースを味わってるのかも知れないわね。ハイスコアを狙うノリで徹底的にヒールを叩き続けるというか。」

愛原「興業なら、それもアリなんだけどな。プロレスなどでは当たり前のようにヒールが登場するし。プロ野球でも、アンチ巨人の人からすれば、【平気でルールもねじ曲げるナベツネ率いる金満球団巨人(?)】というのは格好のヒールだろう。悪役をやっつける快感というのは非常によく分かるし、漫画やゲームの世界で、どれだけ悪役を憎んでも構わない。興業でヒールを憎むというのもアリだろう(但し、それはエンターテイメント内に限る)。だがそれを社会のリアル部分まで持ち込まれると色々困る。」

逆沢「けど悪役ってのは、本当に便利すぎるからねー。あまりにも免罪符として便利すぎるから、誰もがついつい多用しちゃうというか。もう悪人は一人でも多い方がいいと言わんばかりに、毎日のように事件や不祥事関係の記事を見つけては、正義感(?)にあふれた攻撃的バッシングを繰り返す手合いも後を絶たないし。」

愛原「その意識が、色んなえん罪も生むんだけどな。罪のない人に罪を押しつけ、悪人でない人を悪役にすりかえる例も後を絶たない。特に権力者などは【大量破壊兵器を保有している疑いがある】的なノリで、平気で悪役を作りだし、そちらに大衆の目をそらそうとしたがる。」

逆沢「ま、日本も韓国も中国も、政権が不安定になったり人気取りを意識する度に隣国を悪認定して国民をあおって、そちらに目をそらすような真似ばかりしたがるしねー。適当なヒールを作り出して、そちらに憎しみを集中させて煽るやり方は、アメリカだけじゃなくて、どこでも共通なのかも知れないわね。」

愛原「ま、古代の頃から、悪玉を別に用意して、大衆の不満をそいつにそらす手口は普通に使われていたようではあるけどな。はじめから兵糧が足りないのを分かっていながらそれを放置して、適度に兵士の不満が高まった頃に頃合いを見計らって兵糧担当官が横領した事にして、そいつを悪玉に祭り上げてそいつを処罰する事で逆に味方の士気を上げたりとか。」

鼎「なんかそれ聞いて、はじめから懸賞の商品数が足りないのを分かっていながらそれを放置して、それが明るみに出そうになった途端に懸賞担当の従業員が景品を横領した事にしてクビにした論を思い出したかも。」

愛原「その秋田書店の不祥事に関しては、実際に社員が横領した可能性も(現時点では情報不足なので)ゼロとはいえないので、俺のコメントはニュートラルな。こういう言い方はしたくないが、何らかの不祥事を理由にクビ宣告された社員が、その意趣返しにその会社の悪事を内部告発する例は結構多くて、どっちもどっちな場合もあるから・・・・。」

逆沢「ま、部下とか政敵とか外国とか、適当な誰かに罪をなすりつけたりして、そいつに怒りの矛先を向けさせる手口自体は、古今東西無数にあると思うわ。」

愛原「消費税増税とか、それを実行したら絶対に支持率が下がるといった局面が予想できた場合、普通の為政者は、別の誰かにやらせようとするのが常だしな。そういう時は適当な誰かをスケープゴートにして、そいつにやらせる。5%の時は村山であり、今回は野田って感じでな。黒幕はもちろん別にいるんだけど、憎まれ役は別に用意する。【悪役=悪】とは限らない。その悪役は、黒幕が用意した弾よけのスケープゴートでしかない例も非常に多い。」

逆沢「在日米軍からみれば日本政府がスケープゴートであり、日本政府からみたら東京電力がスケープゴートであるようなものかな? その方針を裏で推進しようとしている黒幕は別にいるんだけど、黒幕が叩かれないように適当なヒールを用意して弾よけにする。そして黒幕の思惑通り、沖縄県民は日本政府の弱腰と言いなりぶりを叩き、原発被害者達は東電に責任追及し続けるような感じで。いずれも黒幕は別にいるのに。」

鼎「ヒールというのは、実は人々の不満や怒りを引きつけて吸収するサンドバッグなのかも知れないね。あるいはオトリというか。」

愛原「そう。サンドバッグであり、オトリそのもの。日本も韓国も中国もアメリカも、自国の都合が悪くなれば、他国を悪役としてセットした上で徹底的に煽り、憎しみをそちらに振り向けさせようとする。いや、政府や権力者だけではない。我々個人も、自分の都合が悪くなれば、すぐに他者を悪役にして責任転嫁したがる者は多いだろ?」

逆沢「不満や怒りを内にため込んだら、その先にあるのうつや自暴自棄といった自滅だけだからねー。ヒールはその不満や怒りのはけ口としてやっぱり必要って事なんじゃないの? もちろんはけ口にされても仕方ないような本物のクズ人間もいるけど、そういう人は自分が他人にサンドバッグにされる可能性の高さを自覚しているから、あらかじめ適当な他人をスケープゴートに仕立てて、そいつを大衆に差し出すと。」

鼎「そう考えたら、本当に悪い人は、悪役を作り上げる側の人だよね。いかにも自分が正義の味方であるような顔をして【こいつは悪い奴だぜ】と周囲にいいふらすような人こそが、実は一番悪い奴だったというか。」

逆沢「まぁ人にむやみに憎しみの感情を植え付けたがる人が、善人のはずがないだろうしね。」

愛原「悪役は、あくまで役柄のとしての悪でしかない。誰かに作られた悪が悪役だとすれば、じゃあ【その悪役を配役した奴は誰か?】という視点で考えてみたら面白いかも知れない。誰かに罪をなすりつける一方で、自分は素知らぬ顔をしていたり、ひどい場合は正義の味方ヅラしている奴すらいるだろうから。」

逆沢「よくよく調べたら、【大量破壊兵器を保有している疑い】をしている国こそが、世界最大の大量破壊兵器保有国である可能性もあるわけだしね。中国などのサイバースパイ行為を最も強く非難し続けていた国が、実は世界一のサイバースパイ網を構築してましたなんてオチもありえるだろうし♪」

鼎「サスペンスドラマなどでは【真犯人は別にいる】事が多いけど、本当に悪い人間ほど、別人を悪玉に仕立て上げて、自分の身を隠すのが上手いのかも知れないね。」

愛原「みんなが悪と思っている人間は、実は誰かによって悪玉のレッテルを貼られただけの被害者かも知れない。仕立てられた悪役でしかない可能性も十分ある。」

逆沢「でも、殴り心地の良さそうなサンドバッグが目の前に用意されたら、とりあえず叩かずにはおれない人もいるだろうしね。もしかしたらサンドバッグの中身には、何の罪のない人が縛られて閉じ込められているだけかも知れないのに。」

鼎「殴り心地という意味では、本当に殴られるべき人がサンドバッグになってるとは限らない気もするよ。本当に悪くて強くて野蛮な層を叩くのではなくて、反撃してこないであろう平和主義的思考の層とか、もしくは反撃されても怖くないような少数派層や社会的弱者層を選んで叩く人も多そうな気がするし。」

逆沢「反撃してくるサンドバッグとか、固すぎて殴った側の指の骨が折れかねないようなサンドバッグは困るって事じゃないの? 実際問題、黒服着た筋肉質で怖い感じのお兄さんを指さして【テメーのような奴がこの国を悪くしているのだ!】とタンカきるのは怖いけど、いかにも体が弱そうなホームレスのおじいさんを指さして【テメーのような奴がこの国を悪くしているのだ!】とタンカきる分には上等って人もいるだろうし。で、悪い奴を懲らしめるのなら何をしても構わない的ノリで、ホームレスの人を半殺しにしたりする若者グループもあったりするくらいだし。」

愛原「ま、ヒールは倒してこそ快感が得られるものであって、返り討ちに遭わされたら、色々恥ずかしかったりもするからな。」

逆沢「スポ根漫画的展開が好きな私としては、強敵に挑み、何度やられても立ち上がるような人間こそが、真のヒーローだと思うけどねー。」

愛原「勝てる相手にしかケンカを売らない的な、ドラマ性のかけらもないつまんない正義の味方気取りの方が、今の日本には多いって事じゃないのか? ま、RPG型ヒーローというか。RPGの場合は、パーティーが全滅したりすると、所持金を没収されたり色んなペナルティーがあるから、基本的に勝てる相手にしかケンカを売らないのが戦略セオリーになるからな。何度も負けながら、それでも繰り返しプレイし続ける事で強敵も攻略する対戦格闘ゲーム型ヒーローは、今時はやらんかもしれん。」

鼎「あと悪役に、色んな物語をつける人も多いよね。」

愛原「まぁ悪役にはとことん凶悪で薄汚い悪役であってくれた方が、シナリオ的に盛り上がるのは間違いないからな。俺たちも7lcwの黒藤軍などには、とことんそういった役割を与えていたりはする。だがそれはあくまで興業・ファンタジーの話であって、リアルと混同してはいけない。リアルのニュースにまで勝手に想像の羽を広げまくったあげく、【福知山の花火大会で事件を起こした露天商は、日本に敵意しか持たない在日の仕業で、今回もはじめから悪意をもって故意にやったに違いない。俺は絶対に許せない!】とか【だから俺は前々から売国政治家を出す岩手県民にはロクな者はないと言ってきた。そして今回、岩手県にはあんなヒール行為をするような腐った教育をする学校しかない事が改めて証明された!】とか【ローゼン閣下は我々オタクの味方だ。閣下が二次元規制に賛成だなんてありえない。これは民主党の陰謀だ!】というのはまずいと思う。いくらなんでも物語を盛りすぎだろ?」

逆沢「それらって、いかにも【こうしてスマイリーキクチ犯人説が広がった】的なサンプルねー。人は自分に都合のいい物語を作ってそれを信じ込むというか。」

愛原「ま、ヒールがヒールらしくあるためには、それらしい悪の武勇伝というか物語が必要なんだろうけど、ファンタジーと現実をごっちゃにしたらまずいよな。せっかく現代日本には漫画やゲームや映画といったという便利なものがあるんだから、不満や怒りのストレスはその世界の中のヒールにぶつけたらいいのに。よりによってリアルの人間に、アリもしない物語をつけて、サンドバッグにする事はないだろとも思う。そんなに殴りたければ、ゲームセンターのパンチングゲームでも殴ってたらいいし、そんなに罵りたければ漫画やゲーム世界の中にゲスキャラなんてあふれる程いるんだから、そいつを思う存分罵ればいいのに。」

逆沢「ウチのゲームの中にも、真性のゲスはいくらでもいるしね♪ 殺しても殺しても飽き足らないくらい。」

愛原「ヒールを叩きたくなったら、ウチのキャラでも遠慮無く叩いてくれたらいいぞ。作者叩きは困るけど。」

逆沢「そういう心配は、もう少しまともな作品を出してからするものだ。」
















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