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愛原様のたわごと(13年9月29日)








愛原「いやあ、星野監督はすごいなぁ!」

逆沢「星野監督って、プロ野球の星野仙一の事か?」

愛原「うん。現東北楽天イーグルスの星野監督。」

鼎「あの楽天球団が優勝だなんて、すごく感慨深いよね。」

愛原「うん。東北楽天イーグルスは、近鉄バファローズが解体されてオリックスに併合された際に新設立された球団であるが、新設立という事もあって、いきなり充実した戦力というわけにもいかず、初年度は38勝97敗1分という有様。その楽天が球団設立9年目にして初優勝だもんな。大したもんだ。」

逆沢「ま、優勝から何十年も遠ざかっている球団もいくつかある事を考えたら、大健闘といえるかもね。どことは言わないけど、広島とか横浜とかヤクルトとかオリックスとか。」

愛原「全部言ってるじゃねえか・・・。けど旧オリックスと近鉄のいいとこ取りをした新オリックス球団はまだ一度も優勝してないのに、その残りカス(?)的な戦力でのスタートを余儀なくされた楽天が先に優勝とは、色んな意味で驚き以外の何物でもない。」

鼎「優勝の要因は何かな?」

愛原「うーん。まぁ色んな要因が重なった結果だとは思うが、監督の質という要因はやはり含めたいなぁ。個人的に。」

鼎「3球団を優勝させたのは、プロ野球の歴代監督でも3人目らしいよね。星野監督は。」

愛原「ちなみに後の2人は名将として名高い三原脩氏と、後は西本幸雄氏な。もっとも西本監督はなぜか日本一には一度もなれずじまいだが。」

逆沢「ん? そういえば星野監督も日本一経験は無かったような気がするけど・・・。」

愛原「うん。残念ながら一度も無い。優勝は何度もしてるけど、短期決戦に弱いタイプらしく、日本シリーズではいつも最終的に負けている。」

逆沢「あー、短期決戦といえばそういえば北京オリンピックの時も、4位に終わって散々バッシングされてたわねー。」

鼎「実績だけで言えば、星野監督はペナントレースには滅法強いけど、日本シリーズや国際試合のような短期決戦らは弱い感じがするよね。」

愛原「まぁペナントレースに勝つ事が本業というか、第一目標なんだから、それはそれで十分な気もするけどな。あの弱かった阪神や楽天まで優勝させてしまう手腕は、素直に賞賛していいと思う。こう言ったらなんだが、北京オリンピックの時の星野バッシングの世論の具合は、さすがに不当な評価だったような気がしてならない。」

逆沢「まぁ世間なんて、そんなもんだわ。特にプロ野球に関心のない国粋主義者からみたら、星野監督なんて【プロ野球でどんな評価をされてるか知らないが、北京オリンピックで惨敗して日本に恥をかかせた愚将】でしかないわけだし。」

愛原「そうでなくても叩く世論は、加熱しやすいわな。」

鼎「そういえば少し前のネット記事でも、ソーシャルネットワーク上で最も影響力のある感情は【怒り】だなんて記事を見た記憶があるかも。逆に【悲しみ】の感情などはほとんど影響力がないらしいよね。」

逆沢「分かる分かる。【被害者がかわいそう】という趣旨の記事でも、なぜか【加害者は許せない!】みたいな反応に置き換わっちゃったりしてる光景はいっぱいみられるしねー。」

愛原「一緒に悲しむのではなく、一緒に怒る方が心理的に楽なのかな?」

逆沢「そうなんじゃないの? 【被災者が可愛そう・・・。少しでも被災者の救いや癒やしになるようにしたい】思い悩むよりも、【行政は何をやってるんだ! 東電は責任取れ!】怒りをまき散らす方が色々楽だし。悲しみを共有しようとすると心理的にも(時には肉体的金銭的にも)しんどいけど、怒りを共有する分には、むしろ嗜虐心を刺激したりもするだろうし。」

愛原「まぁ悲しみを共有するという事は、苦しみも共有する事でもあるからな。一方、怒りをぶちまけた所で、苦労するのはぶちまけられた側の人間でしかない。前者は【一緒に頑張ろう(苦労を共に分かち合おう)】というスタンスなのに対して、後者は【お前ら頑張れよ(お前が責任取れよ)】というスタンスになるのかも知れない。」

逆沢「ま、【頑張れよ!】と励ます分には所詮人ごとだし、気楽に言えるからねー。【一緒に頑張ろう】だと自分も苦労を背負わなければならないから、簡単には言えないだろうけど。」

愛原「でも励まされる側からすれば、苦労を共有してくれる方が百倍ありがたいだろうけどな。【お前を苦しめるあいつは許せないよな】と言ってくれる友人よりも、【お前が苦しめられている時には俺もお前の側に立って共に行動する】と言ってくれる友人の方がずっとありがたいというか。」

鼎「でも自分が被害者の立場でいる時には【助けて欲しい】と思っていても、自分が傍観者の立場でいる時に【助けたい】と本気で思える人はそんなにいない気がしなくもないかも。」

愛原「そういえばCivilization4をプレイしていた時に、とても興味深い格言が登場していたのを思い出した。【貧しい者に食物を施すと彼らは私を聖者と呼ぶ。なぜ貧しい者には食物がないのかと聞くと、彼らは私を共産主義者と呼ぶ。 - ドン・ヘルダー・カマラ】という奴だが。」

鼎「みんな、自分たちを助けてくれる人に対しては聖者扱いしたり、感謝もできるけど、だからといって社会全体で助け合いをしようと考える事には消極的という事かなぁ? 助け合いをするという事は、自分も助けてもらえるけど、その代わり、自分が他人を助けないとならないという事でもあるから。」

逆沢「つまり自分を助けて欲しいとは思うけど、自分が他人を助ける気は毛頭ないという事か? あるいは自分が他人を利用できる社会には賛成だけど、自分が他人に利用される社会には反対というか?」

愛原「何とも虫のいい発想だなぁ。現実社会の考え方としては、自分もたくさん助けてもらえるがその代わり自分も他人の為にたくさん負担するという【大きな政府】型社会と、お互いに自己責任が大原則の【小さな社会】型社会があるだけで、自分はたくさん助けて欲しいけど、他人を助けるのはめんどいから嫌だなんて理屈は通用しないのだが。」

逆沢「そういう身勝手な理屈を振りかざす人の行き先が、自己責任を追求する小さな政府型社会にも反対だけど、社会主義にはもっと大反対という論法なんだろうけどねー。」

鼎「端からみたら少し矛盾してるというか、すごく身勝手な感じもするけど、でもそう考える本人にしてみれば、極めて真面目に社会に対して怒りを感じてたりもしてそうだよね。」

逆沢「でも矛盾を追求したらやっぱり怒るし、どっちの方向にも反対なら今の日本と自分自身に満足しているかとか、将来に明るい展望を感じるかと問われたら、貧富格差の増大とか、少子高齢化の拡大とか、体感治安の悪化とか、世界全体での人口問題・環境問題・民族対立・ミリタリーバランスなどに起因する外交状況の深刻化とか、やっぱり色々不満があるようだし。とりあえずあらゆる事に怒ってはいるみたいだけど、怒ってる本人自身に、有効な解決策があるわけでもなさそうなのよね。」

鼎「自分でもどうしたら良いかは分からないけど、とりあえず【何とかしろ!】と怒っているのかな?」

愛原「そんな訳で、今回のテーマは【怒り(いかり)】だ。現実世界ではネガティブな感情の一つととらえられている一方で、ファンタジーの世界では、なぜか戦闘力を増大させたり、新能力覚醒を促したりもしてくれる謎の感情〜怒り。これについて少しだけ掘り下げてみたいと思う。」

鼎「私はあまり怒りっぽい人は好きじゃ無いんだけど・・・。」

逆沢「怒りっぽいというか、キレやすい人は、私もノーサンキューだわ。でもたまにいるわね。そういうの。」

愛原「ではなぜその人は怒ったりキレたりするんだ? まずはそこから考えてみよう。」

逆沢「そりゃあ、不愉快だからでしょ。相手が思い通りにならない。世の中が思い通りにならない。自分が期待したような成果がでなかった。もしくはそういうネガティブな未来ばかり頭に浮かんで仕方ない。欲求不満。不安。あせり。恐怖。そんな状態。」

鼎「いわゆる冷静な人とか、大人の対応ができる人なら、そういう欲求不満状態を表面に出さずに押し込む事もできると思うけど・・・。」

愛原「まぁ程度はあるだろうけどな。特にその人の逆鱗を刺激するようなひどい振る舞いや侮辱をしようものなら、普段どんなに温厚な人でも反射的にキレる事は誰しもあるだろう。」

逆沢「もちろん誰でも堪忍袋の緒が切れる可能性はあるわよ。けど、元々の堪忍袋の性能の差もあると思うんだけど。ありえないくらい簡単に逆上するような忍耐力の足りない人も世の中にはいるし。」

鼎「私の個人的な印象では、腕っ節自慢の人の方が、相対的にキレやすい人が多そうな気がするけど、これは気のせいかなぁ?」

愛原「多分、気のせいではないだろう。人間だけに限らず、動物自体、怒りの感情を発露させる事で、相手を威嚇・威圧する事は多い。相手に怒りの感情を見せつけるという事は、【俺は今、すごく不愉快である】という意思表明であると同時に、【これ以上、俺を不愉快にすると、お前に危害を加えるぞ】という警告行為も兼ねている。つうか動物の威嚇行為は、大体みんなそんな感じだ。」

逆沢「つまり怒りの感情をあえて隠そうとせず、逆に見せつけることで、【俺をこれ以上、不愉快にするな】と暗に要求しているわけね。」

愛原「もっと露骨に言えば、【俺の欲求不満を解消しやがれ】という要求行為でもある。」

鼎「つまり縄張りを荒らされて怒っている(威嚇している)動物にしてみれば、【さっさと俺の縄張りが離れろ】という要求を相手にしてみせているという事でもあるわけだよね。」

愛原「この怒りの発露による要求行為は、人間の乳幼児などもよくやりがちだ。この段階でしっかりしつけないと、欲求不満を起こす度にすぐにキレたりしかねなくなる。」

逆沢「つまりキレやすい大人というのは、ある意味では、子供の時のしつけが失敗した結果という事かな?」

愛原「・・・個人差も大きいので、必ずしもそうとはいえないが。無論、子供の頃はちゃんと育っていても、大人になってから何かのきっかけで、威嚇行為による欲求不満解消があまりにも上手くいきすぎると、悪い意味で学習してしまって、その大人は、不快な事がある度にすぐにメンチ切りながら街を歩くような人格になってしまう事もあるようだ。」

鼎「ファンタジーの世界では、怒りで我を忘れた事がきっかけで新能力に覚醒しちゃう時があるけど、こういう前例ができると、そのキャラはそれ以降、戦いが不利になる度に積極的にキレようとするかも知れないって事かな? キレると強くなる事を学習してしまったから。」

愛原「それはもう間違いない。もちろんキレて能力覚醒した事による副作用やデメリットが大きければ話は別だが、そういうマイナス要素が無ければ(もしくは小さければ)、そのキャラは以後、些細なことでもキレるキャラになってしまうだろうな。キレた方がおいしい展開になると学習してしまったら、それはもう当然というか。」

鼎「そういえば何がソースか忘れたけど、深刻な知能障害を伴う自閉症(低機能自閉症)の人は、適切なしつけをせずに無闇に甘やかしたりすると、すぐに暴力に訴えるような性格になりやすいという話を聞いた事があるけど。これも怒る(威嚇する)事で思い通りになる事を学習してしまったせいかなぁ?銀英伝のエルウィン・ヨーゼフ2世的な感じになるというか。」

愛原「障害児であろうがなかろうが、威嚇行為で思い通りになる事を学習させてしまうと、そういう性格になる可能性はより高くなるのは同じだ。ただ障害の程度がひどい程、それが分かりやすい形で発露しがちというだけで。ちなみに自閉症にも色々あって、いわゆるアスペルガー(広汎性発達障害)も、自閉症の中に含まれる(いわゆる高機能自閉症)。もっとも高機能自閉症の場合は、知能レベル自体は常人と大差ないか、もしくは常人以上の事も珍しくないが。」

逆沢「偏見かもしれないけど、アスペ=空気の読めない人というイメージがあるんだけど。」

愛原「俺も専門的な事はよく分からないが、それは少し偏見が過ぎるかもしれない。どちらかというと空気が読めないというよりは、高機能な共感能力に難があるといった方が適切かもしれない。(ちなみに一般的なアニマルには、人間のような高機能な共感能力は備わっていないようだ。)するとどういう事になるか? たとえば身内が死んだのをみて、単純に嘆き悲しむのではなく、それをみて自分が同じ目に遭わないように学習したり、これからの自分の生活をどうやりくりしようかと冷静に考えられる。あるいは利用価値があるか否かで友人や親しくする上司部下を選んだり、善悪や公平さではなくどちらを支持した方が自分(およびその血族・仲間)にとって有利かという基準で物事を判断しやすい。つまりいわゆるアスペの人は、よくいえば冷静かつ合理的(だからある意味では頭が良い)。悪く言えば身勝手な一面を強く持つタイプも存在する。もちろんそんな事をすれば、他者に嫌われるのは明らかなんだが、本人に悪気があるわけでもなく、単に無意識に(本人も自覚しないままに)それをやってるだけなので、第三者からみたら空気が読めない(or変人である)ように映る時もある。ただ社交性と自閉症は無関係なので、そこは混同しないように。人付き合いがどれだけ下手くそであっても、自閉症的な思考とは無縁の者も多いから、そこは勘違いして無闇に他人にレッテルを貼るのは厳禁だぞ。逆を言えば、カリスマ的素養を持つ自閉症の人も中にはいるからな。」

逆沢「そんな話を聞くと、織田信長も高機能自閉症だった気がしてならないわ。ただ織田信長の場合は、常人よりもはるかに頭が良く行動力やカリスマ性もあっただけで。だってあの人、当時の常識を大幅に外れるような残虐行為や因習破壊行為を繰り返したり、無能だからという理由だけで古くからの宿老も温情なく放逐したり、その分色んな人から不信がられたりしてたみたいだし。その一方で、秀吉や松永久秀らに対しては、すごく好意的だったようだけど。」

愛原「秀吉は主君をおだてるのが上手い上、有能極まりなかったしな。当時珍しかった無宗教的思考を持つ松永久秀には、ある種のシンパシーを感じたのかも知れない。ジョジョの花京院典明が自分と同じスタンド使いである空条承太郎らと出会って感じたようなシンパシーを。【ああ、こいつは自分と同じタイプに違いない。他人になかなか理解してもらえない自分という人間の本質を、この人なら分かってくれるに違いない】と感じて安心できる感覚というか。もっとも松永久秀の方は、織田信長に対してそんなにシンパシーを感じていなかったようだが。」

逆沢「松永久秀は、陰謀渦巻く畿内で密かに力を蓄えてきたような心理通だし、少なくともアスペとは正反対のタイプだと思うわ。確かに松永久秀もある意味では破壊者だったかも知れないけど、松永久秀の場合はその時がくるまではどこまでも自分の本性を隠し通せるタイプだったような気がするし(だから主君には信頼され、手堅く出世もできた)。空気を読めないというか、空気に負けず、空気すらぶちこわす強さを持つ一方、誰からみても異端にしかみえない織田信長とは正反対のタイプというか。」

鼎「ジョジョ第4部の世界観にたとえてみれば、織田信長は見た目も少し個性的な上、スイッチが入ったらとんでもなくキレる東方仗助型。松永久秀は実は異能者だし調子に乗ると本性も出すけど、普段は社会に綺麗に溶け込んでいる吉良吉影型といえるかもね。」

逆沢「ジョジョの世界では、東方仗助よりもよっぽど見た目や言動からしてアスペ的なキャラがたくさん登場するけど、そういう意味でも吉良吉影は逆にまとも過ぎて斬新だったわ。」

愛原「実際には他人の痛みが自分の痛みであるかのように感じられるほど共感能力抜群な仗助がアスペのはずがないし、むしろ自分の欲望に忠実過ぎかつ他人の悲しみや痛みに無頓着な吉良吉影の方がはるかにアスペっぽいけどな。」

鼎「けど織田信長さんは東方仗助さん同様、スイッチが入るといきなりキレやすいイメージがあるよね。【泣かぬなら殺してしまえホトトギス】のイメージそのままというか。寛大な時はすごく寛大なのに、キレたら全く容赦がないタイプというか。但し、自分の欲望というか、野心と支配構想の為なら他人の人生を容赦なく踏みにじれるところは、吉良吉影さん寄りだと思うけど。」

愛原「まぁ中世以前の指導者は皆、大なり小なり恐怖政治的な手法も用いるが、織田信長の場合は、そのベクトルが通常の支配者と比べてもあまりにも突出していた事もあってか、謀反も絶えなかったし、結果論でいえば、恐怖で部下を抑え込む手法はうまくいかなかったともいえそうだ。」

鼎「怒りの感情を見せつけて周囲を威嚇した結果、他者が自分にひれ伏して従順になってくれればいいけど、そうならない事も多いよね。」

逆沢「ってか、凡人がそれをやったら、逆効果になる方が多いと思うわ。逆に軽蔑されたり、危険視されたり、場合によっては友人も失って孤立してしまったり。」

愛原「だから普通の人間は、怒りを抑制するメリットを学習して、そう簡単にはキレないようになる。怒りを抑え込む術をよく知っている点も、単なるアニマルと人間の最大の違いの一つだ。」

逆沢「ところで怒りを抑制した方が人間社会的に有利な事が多いのは分かるとしても、純粋に戦闘能力としてはどうなのかな? ファンタジーの世界では怒った方が強くなるみたいだけど。」

愛原「脳波という観点では、怒りの感情は、必ずしも戦闘には向いてないらしい。何でも怒りの感情が増幅されると、ベータ波という脳波がでるそうだが、これは衝動や緊張といった要素を増幅させ、とりあえず何かをしなくては落ち着かないというか、考えるよりも先に手が出るというか、とにかくそうしたくなるらしい。いわゆるバーサーク状態。冷静さを欠いており、ヤケクソになったような状態。ただこの状態では、元々力押しだけで勝てるような相手には有利に働く可能性もあるが、そうでない相手には厳しい。冷静になりたくとも、極度の緊張状態と衝動状態が邪魔して、まともな思考ができなくなるからな。怒りっぽい人なら、後になってから特にそう感じる事が多いはずだ。」

逆沢「分かる分かる。けど後悔できるという意味では、怒りっぽい人の方がマシかも知れないわね。一番ヤバいのは、自分は冷静なタイプと思い込んでいる人の方というか。こういう人は最後まで自分が冷静さを欠いている状態であった事に気づかないから、後で自戒する事も反省して対策を練ることも撤退することもできなくなる可能性も高いから。いわゆる酒を飲んでも、顔が赤くならず、酔った自覚もないタイプの方がアル中になったら手をつけられないようなものというか。」

愛原「そういう意味では、一番、危険なのは、キレたくなる心理状態を無理矢理抑え込んでいるような状況かも知れん。本人は怒りを抑え込んでるつもりかも知れんが、それは怒りを表面に出さないだけで、冷静な状態では決してないからな。その自覚があればいいが、自分はキレずに踏みとどまっているから冷静であるに違いないと思い込むと、いろいろ危険だ。まぁヤケになったり、意地になってる時にありがちな心境ではあるが。」

鼎「ところで怒りの感情が増幅すると、パワーが増したりしないのかな? ファンタジーの世界みたいに。」

愛原「怖れ(おそれ)の感情が弱くなる事により、本来の力そのものを発揮しやすくはなるだろう。冷静な状態の時なら、(当たり所が悪かったり、相手のよけ方次第では)こちらの指の骨が折れる可能性や相手を大きく傷つけてしまう可能性を怖れて、フルパワーで相手を殴る事に躊躇が働く人でも、怒りの感情がマックスになれば、フルパワーでパンチを打てるようになるだろう。そういう意味では、怒った方がパワーが増す論もあながち間違いではない。」

鼎「失敗を怖れないというか、リスクを怖れない事でリミッターが外れるという意味では、怒ることでよりパワーが増す論には説得力がなくもないという事かなぁ?」

愛原「ただ怖れ(おそれ)の感情の方が、怒りの感情よりも、戦いに有利という解釈もあるぞ。相手を怖れる事で、攻撃力は下がるかも知れないが、その代わり、防御力は上がるからな。特に怖れの感情に闘志が加わった状態は、相当強い。相手を最大限に警戒する一方で、諦めず知謀の限りを尽くせる心理状態はな。」

鼎「けど逆に、怖れ諦めにつながる可能性もあるよね。」

愛原「それは最悪の状態だな。諦めという感情は、戦闘では最も不向きだ。」

逆沢「じゃあ逆に、最も戦闘に有利な感情は何かな? 怒りでも怖れでも諦めでもないとすると、やっぱり冷静な状態?」

愛原「冷静な状態は、戦況が厳しいと予想されると、諦めの感情に変化する事もあるから、必ずしも有利とはいえない。逆に戦況が有利すぎても、今度は慢心してしまって、やはり不利に働く場合も多いしな。」

逆沢「じゃあ他にどんな状態がある? 悲しみ? 喜び? 他に何がある? まぁ漫画の世界では、無我の境地に達するというか、心を空っぽにするという状態も、最強バージョンになりやすいらしいけど♪」

愛原「俺は無我の境地とやらに達したこともない雑念だらけの俗人だから、そんな感情が有利に働くのかどうかは分からない。個人的には心を空っぽにするよりも、適度に集中力を高めた方が余程強くなりそうな気がするが。」

鼎「集中力が高まると、勉強でも運動でも、普段以上のパフォーマンスが出るような気がするよ。」

愛原「あと闘志。挑戦心。やる気。そんな感情もプラスに働くだろう。たとえば国盗りSLGに挑むときのような感情。クロスワードパズルに挑むときのような感情でもいい。あるいは今までは格下の相手ばかりとしか戦えず退屈していたが、いよいよ自分と互角以上に戦える相手が登場して、ワクワク感が止まらない状態と置き換えてもいい。」

逆沢「ああ、【オラ、ワクワクしてきただ】って奴ね。」

愛原「前向きな闘争心に満ちあふれている状態。少し難解な局面にぶち当たって、どうやって次の一手を打つかをアドレナリンを出しながら楽しみ興奮し悩んでいるような状態。この心理状態の時なら、慢心する事も無いし、極めてタクティックスな思慮も期待できるし、諦めや弱気の感情に襲われることもない。比較的戦闘向きの心理状態といえる。少なくとも怒り時よりは、安定して強いといえる。」

逆沢「結局の所、怒りの感情は、力押しや威嚇が通用するような、格下相手にしか通用しないという事かな?」

愛原「ま、力押しや威嚇が通用するような格下相手に対しては、怒りの感情を惜しみなく出す行為がプラスに働く事はあるだろうな。ただ逆を言えば、相手の威嚇に屈するという事は、自分が相手より格下である事を認める事にもつながりかねない。つまり怒りを相手に堂々と見せつけるという事は、単に【これ以上、俺を怒らせるとお前もロクな事にならないぞ】という警告のみならず、【自分の方がお前より上であるぞ】との意思表示であるか、もしくは【自分との上下関係を試している】状態ともいえる。少なくとも、自分より明らかに格上の相手に、公然とメンチ切ったりする奴はいないだろ?」

逆沢「まぁ日本の政治家の中に、アメリカの大統領を公然と威嚇・挑発するような勇者はいないわね。」

鼎「逆にアメリカは、世界中に対して、怒りを公然と振りまいているわね。あの国は許せない。あの大統領は許せない。あいつらをやっつけろ・・・と言わんばかりに。やっぱり怒りは自分が強大な力を持っている時に最も効力を発揮するという事かなぁ?」

逆沢「逆に戦後以降の日本政府がアメリカ政府や在日米軍に対して、怒りの意思表示を示した事なんてほとんどないわね。どれだけ理不尽な要求をされようとも。」

愛原「心の奥底で、怒りの感情をためこんでいる可能性はあっても、それを表面に出すとは限らない。それを表面に出せば、それは相手に対する威嚇・挑発行為になりかねないからだ。」

逆沢「つくづく怒りの感情というのは、力押しが通用するような格下相手用のものでしかないと感じさせられつつあるわ。」

鼎「漫画の世界だと、真の強敵と戦う際に最も多用される気がしなくもないのにね。」

愛原「自分より格上の強敵相手にキレても、おそらく逆効果だろうな。冷静な思考はできなくなるし、相手を不用意に警戒・刺激する可能性も高まるし。」

鼎「結局、ネットで怒りの感情が拡散しやすいのも、自分が攻撃を受けない安全な場所にいるという安心感が背後にあるからかなぁ?」

逆沢「上から目線の言動がネットで多く見られるのも、【怒りの感情の発露=自分がお前らより格上であるという意思表示】と考えれば、なるほど納得だわ。」

鼎「私としては、もっと優しさの感情が広がるような世の中になってくれたらいいと思うけど。」

愛原「半分以上は同意。特に悲しみを共有できる感情は、そこらのアニマルにはない最も人間らしい感情の一つだから、(重度の自閉症である等の事情でもない限りは)無闇に忌避せず大事にしてもいいと思う。無慈悲な弱肉強食の世界に生きる彼らと違い、我々はもっと高度なレベルで助け合うことができるからだ。無論、程度の善し悪しはあるけどな。東日本大震災で首都圏がパニックになった頃に突然現れた奇妙なお通夜モードみたいなのは、さすがに行き過ぎなのでノーサンキューだが。」

逆沢「被災者に対して【天罰】と言い放てる程、無慈悲でありたいとは思えないけど、変な同調圧力もノーサンキューだわ。つうか同調圧力がかかる時点で、それは既に悲しみの感情から、怒りの感情に変化してるような気もするし。【みんなが悲しむべき時に、一緒に悲しまないあいつを許せねえ】ってなった時点で、それはもう被害者に他する慈愛から、自分の意に反する者に対する憎しみに変質してしまってる気がするし。」

鼎「けど怒りの感情って、すぐに巨大な群れを作っちゃうから厄介だよね。ネットイナゴとかもそうだけど、怒りの感情はあっという間に伝播しちゃうから。伝染病の数倍も早い速度で。」

愛原「群れる事で、強くなったと錯覚もしやすくなるからな。もっとも数の暴力が侮れない破壊力を持つのは事実だけど・・・。ただネットイナゴやバーサーカーには知性が期待できないのが欠点だ。」

逆沢「まぁ世の中に対してただ諦めたり慢心するよりは、怒るべき時に怒る方が有益とは思わなくも無いけど・・・。」

愛原「可能ならもうワンランク上の感情を背にしたいところだな。怒りの感情で覚醒する可能性に賭けるよりも、より知性を刺激する感情でひらめきを促したり、より集中力を刺激する感情で心身を研ぎ澄ませた方が、おそらくより良い成果が期待できるだろうから。」














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