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愛原様のたわごと(14年1月26日)





愛原「今回のテーマは【一芸職人(スペシャリスト)VS器用貧乏(ゼネラリスト)】。」

逆沢「今回は分かりやすいテーマね。このテーマで話がグダクダになったら、進行役の手腕を疑えるわ。」

鼎「同じ座標上で対極に位置する2つのお題を出して、比較検証しながら話を進めるのは、最もやりやすい手法の一つだよね。」

愛原「対決型議題進行手法は、分かりやすくなるけど、善悪二元論に陥りやすい欠点もあるけどな。左翼VS右翼とか、原発推進派VS反原発派とか・・・。」

逆沢「でも盛り上がる方法でもあるけどね。対決をあおるやり方は。」

愛原「対決をあおればあおるほど、まとまるものも、まとまらなくなる。両方の良いところを取り入れたらウインウインになれるようなテーマならそれを目指すべきだし、どっちかの言い分を100%採用したら、どっちも不幸になる事も世の中には多いんだぞ。税率100%の超社会主義社会と税率0%の超アナーキズム社会のどっちを選んでも不幸になるようなものというか。議論というのは、一方が一方をたたきつぶせたら、上手くいくというものでもない。」

逆沢「もっともらしい事をいいながら、今回のテーマは、VSがついてるんだけどねー♪ あおる気満々というか。」

愛原「まぁ比較検証という科学的手法自体まで否定するつもりは毛頭ないからな。どっちが正しいかでは無く、両方のメリットとデメリットをあぶり出したいという思いから、今回はこういうテーマ名にしてみた。」

逆沢「はいはい。で、一芸職人というのは、要するに特定の能力だけが高い反面、それ以外はパッとしないようなタイプと解釈して言い訳ね?」

愛原「うん。まさにそう。知力90武力10とか、体育5数学1とか。そんな感じな。」

鼎「逆に器用貧乏というのは、なんでもある程度はこなせるけど、飛び抜けた長所もないようなタイプを指すのかな?」

原「うん。世の中には何をやらせても優秀な完璧超人タイプもいれば、極めて低いレベルで能力がまとまっている残念君タイプもいるけど、今回はそういうタイプは除外して、あくまで総合力は同じという条件で比較してもらいたい。」

逆沢「要するに、たとえば全部で100という合計値だけが先にあって、それをどう振り分けるかという話ね。知力99武力1でもいいし、知力50武力50でもいいみたいな感じで。」

愛原「そうそう。そんな感じ。ちなみにこの【総合力は対等だけど、その内訳が全然違う】というパターンは、ゲームの世界では当たり前のようにみられる。特に格闘ゲームでは鉄則ともいえる。」

逆沢「格闘ゲームか。あー、なるほど。【動きは鈍重だけど、一撃が重いタイプ】とか、【装甲が紙だけどやたらすばしっこいタイプ】とか、【一撃は軽いけど、遠くからでも攻撃できるタイプ】とか、【通常攻撃の性能はイマイチだけど、必殺技だけは超強力】とか、色んなタイプがいるわね。」

鼎「内訳が違う以上、使いやすさの差とか、相性は存在するけど、どのキャラが有利とは一概に言えないのがポイントだよね。」

逆沢「つうかどのキャラが有利と簡単に分かるようだったら、ゲームバランス的には失敗作でしょ?」

愛原「逆沢が今、すごく良い事言った。そうなのだ。ゲーム的には、内訳に差があっても、条件が同じなら総合力も可能な限り対等であるべきという一種の不文律がある。たとえば武器屋で買える品が複数あって、どれも同じ値段だけど、性能が一方的に違ったら、ゲーム的にはまずいだろ?」

逆沢「値段が同じで性能が全然違ったら、誰だって一番性能の良い武器を選ぶに決まってるからねー。」

鼎「格闘ゲームでも、特定のキャラの総合力が一方的に高かったら、プレイヤー同士の対戦が成り立たなくなっちゃうよね。」

愛原「だから【総合力で差をつけず、内訳で差をつける】という手法は、色んなゲームで広く使用される。武器一つとっても、値段が同じなら、性能で差をつける。この武器は特定の職業しか身につけられないけど威力は高いとか、この武器は命中率が高い代わりに威力が低いとか。」

逆沢「で、その結果、一芸職人タイプのキャラクターと、器用貧乏タイプのキャラクターで、差別化が図られるケースもあるというわけね。」

鼎「けどゲームの世界では、器用貧乏タイプはイマイチ使いにくい気がするけど、どうかなぁ? 何をやっても中途半端なキャラよりは、一芸に特化したキャラの方が絶対に使いやすいと思うけど。【使える魔法のジャンルは限定されるけど、その分、威力は高い】とか、【魔法は一切使えないけど、通常攻撃の威力がそもそも高い】とか、【戦闘にはさっぱり向かないけど、様々な盗賊系技能を習得していて、旅に一人いるといないでは快適性が大違い】とか。どう考えても、器用貧乏で似たり寄ったりな人を3人そろえるよりも、何かに特化した人を3人そろえた方が有利だし楽しいよね?」

逆沢「分かる分かる。威力は並ながら炎と氷と雷の攻撃を3種類とも使える人材を3人そろえるよりも、炎と氷と雷の攻撃のエキスパートをそろぞれ一人ずつそろえた方が楽しいし、戦闘効率もいいと思うわ。」

愛原「様々な特技を持つ人をバランス良く集める事ができるなら、鼎の指摘通りだな。器用貧乏タイプなんかに用はない。」

逆沢「とするとバランスよく集める事が出来なかった場合を想定すれば、器用貧乏タイプも必要になり得るという事か?」

愛原「たとえば野球やサッカーの世界では、いわゆるユーティリティープレイヤーというのが存在する。要は内野も外野も守れるとか、ディフェンダーもMFもうまくこなせるとか。総合力でみれば、決して一流選手とはいえないけど、状況に応じて柔軟に穴を埋められる選手というか。」

逆沢「けどそんな選手が必要なのは、ポジションも安定させられないような弱いチームのような気もするけどねー。本当に強いチームは、各ポジションごとに一流を安定して配置できるだろうから。」

愛原「まぁ、その側面は否定しない。ただRPGで、単独主人公プレイをするケースを想像して欲しい。仮に一人しか旅に出れないなら、お前らはどの職業の者を選ぶだろうかと。」

逆沢「あー、なるほど。そうなるとまず打たれ弱いのは、どれだけ一芸に秀でていても困るわねー。もちろん一撃で敵を確実にしとめられるなら、殺られるよりも殺れの戦略もアリだと思うけど。」

鼎「ある程度は回復能力とかは欲しいし、攻撃力も多少は欲しいよね。」

愛原「つまり人員が足りない場合、一芸職人よりも器用貧乏が有益になる事もある。戦国SLGなどでも、安全地帯の後方に器用貧乏タイプの人材を一人(少数)だけ残して、後方を任せる戦略などは存在する。」

逆沢「なんかコンビニや牛丼屋の深夜バイトみたいな感じねー。お客も数も少ないから店員の数も少なくていいけど、その代わり、少ない店員でも店を切り盛りできるだけの総合力は必要にされるみたいなー?」

鼎「フリゲの作者さんも、そんな感じだよね。お金もうけを目的としていない以上、たくさんの人に製作を手伝ってもらうのは困難だし、そもそも他のメンバーを混ぜると、意思疎通に手間取ったり、(他のメンバーに対しても譲歩した結果)自分が作りたい作品にならない事も多いから、結局一人で作った方が気楽だと思う事も多いし。でもその代わり、一人で企画からプログラムからCG素材からシナリオ作成からデバッグ作業まで全部やらなくてはならなくなるし。そうなるとなかなか一芸職人では通用しなくなってくるというか。」

逆沢「つまり器用貧乏と一芸職人のどちらが望ましいかは、集められる人材の層によって変わるという事ね。色んな人材を集められるなら、一芸職人を多くそろえて適性に応じてバランス良く配置するのが望ましい。しかしそうでないなら、一人で二役でも三役でもこなせる器用貧乏な人材の方が望ましいと。」

愛原「但し、リアル社会全体の労働条件だけでみれば、一芸職人の方が報酬や待遇面で有利なのは間違いない。たとえば野球の才能しか無くても、それさえ一流なら野球の道で飯を食っていける。漫画家の才でも芸能の才でも、その他の職人としての才でも同様。」

逆沢「仮に漫画家の才と野球の才の両方があったとしても、プロ野球選手と売れっ子漫画家を同時にやってのけるのは不可能だから、それだったらどちらかの才能をより伸ばして、そっちに専念した方がいいという理屈も分かるわ。両方とも伸ばそうとして器用貧乏なまま終わるよりは、絶対に一芸を磨き上げた方が有益というか。」

愛原「幸か不幸か、誰にでもできるとされる職業は、残念ながら報酬も少なく、待遇も劣悪な事が多い。どれだけ大変な仕事かどうかではなく、どれだけレアな職能かで年俸や待遇に差がみられる傾向もみられる。逆に誰にでもできない仕事なら、それがどれだけ楽な仕事だったとしても、需要さえあればそれなりの年収や待遇は確保しやすい。そして多くの職業に必要なスキルは、大ざっぱにいえば(本当に大ざっぱに大分類的にいえば)基本的に1つだけだ。」

逆沢「そうなのよねー。たとえ知力70武力70だったとしても、一度にできるのは一つの仕事だけなのよねー? 知力系の仕事も武力系の仕事も両方こなせるかも知れないけど、実際に一度にできるのは一つだけ。そしてライバルに知力85武力25みたいな人がいて、その人が常に知力系の仕事をしているのなら、自分がどれだけ万能型であったとしても、絶対に知力85の人より高い功績を上げる事はできないのよねー・・・。とかいって武力系の仕事を引き受けても、やっぱり武力バカの人には仕事ぶりで負けるだろうし。結局の所、器用貧乏タイプは、その組織の中で一番手薄な部署を暫定的に穴埋めするだけの存在でしか無いのよねー。組織としては手薄な部署を補強できるメドが立つまでの一時的なつなぎでしかないというか。」

愛原「少なくとも日本には1億人以上の人間が住んでいる。国民は応援する漫画家やプロ野球選手を自由に選べるし、企業も従業員を選ぶくらいの余裕はある(もちろん求める水準と企業収益がかみ合わなければ倒産するけど)。選び放題の社会である以上、一芸型がもてはやされるのはやむを得ない。」

鼎「けど現実には、器用貧乏型も需要はあると思うよ。たとえば婚活市場とかでは、アクの強い人ではなく、いわゆる【普通】の人が喜ばれているそうだよね。」

逆沢「でも彼女らのいう普通は、身長170以上、年収400万以上、ハゲとデブはダメみたいなものも含まれているからねー。一つ一つは必ずしも高くないハードルかも知れないけど、全部満たす人なんてほとんどいないだろみたいな。」

鼎「でもそれは、男の人でもいえると思うよ。特定の宗教や思想にはまっていないとか、浪費癖や暴力癖や浮気癖がないとか、育った家庭環境に問題が無いとか、一つ一つのハードルはそんなに高くないんだけど、全部を満たす人に限れば、半分以上の人が脱落する例は珍しくないというか。」

逆沢「そんな無難すぎる人間のどこがいいのかねー? まぁ管理する分には楽かも知れないけど。」

愛原「管理したい人にとっては、器用貧乏型は打って付けだろう。マニュアルの枠にもはめ込みやすいし。相手があまりに優秀すぎると、自分が支配される側に回りかねないから嫌だという人もいるし、適度に無能だけど、こちらの足も引っ張らない程度には有能であって欲しいという願望が、【普通】特需になっているのかも知れない。あと最大の理由として、結婚相手は(少なくとも同時には)一人しか選べないというのがあげられると思う。」

逆沢「様々な長所を持つ人をバランス良く集めるというゲーム的発想が通用しないってか。まぁ当たり前っちゃ当たり前だけど♪」

愛原「一芸職人は集められる人材に余裕があれば特に需要の高い存在になるが、そうでない場合は、途端に人気が無くなる。労働市場みたいに、ウン千万人の中から必要なだけ選ぶみたいな状況ならば、一芸を磨かないと低待遇に甘んじる可能性も高くなるが、逆にたった一人しか選べないような状況だと、どれだけ欠点が少ないかの方が重要視されてくる。一撃で倒されるような紙防御力とか、物理攻撃がヘナチョコなので魔法耐性のある敵にはダメージが全く通らないとか、そういう決定的な苦手分野が一つでもあると、その時点でたった一人の選抜からは漏れてもやむ無しというか。」

鼎「複数人の中から必要な数だけ選べるのなら長所を重視されるけど、たった一人しか選べないなら短所を重視して見ざるを得ない事も多くなるって事かな? その結果、前者なら一芸職人型が望まれ、後者なら器用貧乏型が望まれると。(もちろん完璧超人であるに超した事は無いけど、今回のテーマから外れるので除外)」

愛原「もちろん個人的な好みの差はあるだろうけど、全体としてみればそんな傾向はみられそうな気もする。あとさっき、労働環境全体としてみれば一芸職人の方が需要が高いという話をしたが、経営者や国の指導者層自体は、決して一芸職人型を優遇したがっている訳ではない事も触れておく。」

逆沢「ん? なんでだ?」

愛原「経営者や指導者が最も望むのは、いつの時代でも【替わりの効く歯車】だ。【コイツに去ら(死な)れたら組織がもたない】というのではなく、【お前の代わりなどいくらでもいる】という状況を常に求めている。そうする事で、コスト(報酬や待遇)を抑えられ、歯車でしかない人間をさらに酷使できるようにもなるからだ。10年かけて一人前の職人に育てるという発想は、それしか方法がない時の価値観でしかなく、新人を簡単に現場に投入できるようなシステム(マニュアル化や機械化など)ができあがったならば、すばしっこい支配者達は、直ちにそれを取り入れる。」

鼎「でもそういう世の中になると、労働者もつぶしの効かない一芸職人を目指しにくくなるよね。」

逆沢「10年かけて一人前に育てるような職場だったら、一時的な不景気で有能な職人を解雇すると後ですごく後悔する事になるから、経営者側もなんとか必死でつなぎ止めようとするけど、人をマニュアルや機械で即戦力化して使い捨てるような世の中だと、景気が悪くなる度に労働調整の名の元に失業率が急激に上がりかねないわね。実際、景気に応じていつでもクビを切れる派遣労働者の割合も増える一方だし。」

愛原「そうなると労働者側も、いつ解雇されてもおかしくない状況に備えて、ある程度は器用貧乏化せざるを得なくなる。というか大企業のホワイトカラーや官僚機構の場合だと、文字通りの総合職(ゼネラリスト)タイプが尊ばれ、一芸に秀でてはいなくとも、どの部署に回してもそれなりには通用するようなアクのない人間ばかり優先採用されるようになっている。」

逆沢「まー、それを言ったら、実は学生時代からゼネラリスト優遇状況だしねー。一教科でも赤点だと、他教科でどれだけ優秀でも落第とか、センター試験で特定教科だけ満点とっても、一教科でも極端な苦手教科があれば大きく不利とか、どうみても。」

鼎「いつの時代でも、国を飛躍的に発展させるのは革命児とかスペシャリストと言われる人なんだから、人の短所を見てふるい落とすシステムではなく、長所をみて引き上げるシステムにすればいいのに・・・。」

逆沢「凡人からしたら変わった思考をしてるからこそ革命児なのに、変わった思考をしてるという理由でそれを短所扱いにしてふるい落とす社会は、緩慢な腐敗を招くだけだと思うわ。」

鼎「変わった考えをしている事が短所扱いされるとするなら、短所のない人よりも短所のある人の方が将来性が高そうな気もするよ。」

愛原「ただ、そういう発想が出来るか否かも、余裕の心のなせる技だからな。短所とされる要素を飲み込める余裕があるか? 一芸職人タイプは、自分の弱点となる部分を別の誰かに補ってもらえることで最大のパフォーマンスを発揮できるから、せめてそれだけの余裕は欲しい。少し前に婚活の話題が出たが、これも相手に全てを求めるからこそ、【普通】のいう名のハイスペックゼネラリスト志向になるだけの話であって、自分のスペックと組み合わせるという発想をすれば、何も相手がハイスペックゼネラリストである必要性が皆無である事に気づくはずだ。」

鼎「あ、そうか? 結婚で選べる相手は一人だけだけど、実際は自分と相手の二人での生活になるから、相手に短所があっても自分にそれを埋められるだけのスペックがあったら大丈夫なんだよね。」

逆沢「でも自分が全能力低スペックのカスで、相手の短所を埋められないようなレベルならどうなる? やっぱり相手にそれなりのハイスペックゼネラルを期待せざるを得ないんじゃない? 自分というお荷物を扶養してもらうためにも♪」

愛原「そんなカススペックの人間が高望みしてる方が間違ってるわ。結婚も(多少以上の縁がない限り)大抵は総合力で釣り合う相手しか見つからないもんだ。って、せっかく鼎が割といい感じのオチに持っていこうとしたのに、テメーがいらんツッコミするから、ひどいオチになったじゃねえか。」

























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