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愛原様のたわごと(14年4月6日)






愛原「今回のテーマは【防御力】。」

逆沢「うちのサイト的には、今までテーマにならなかった事が不思議なくらいの大きなテーマね。なんで今頃と思えるくらいに。」

鼎「防御力というのは、たくさんのゲームで登場する概念だよね。格闘ゲームでも、戦闘SLGでも、王道RPGでも。」

逆沢「まぁ防御力に相当するパラメータが個別に用意されているゲームもあるし、体力やHPや兵力といったパラメータだけで打たれ強さを表現するゲームもあるし、実際の運用は作品ごとに違うけどね。」

愛原「運用に差はあれど、防御力といえば、打たれ強さとか、粘り強さとか、生命力とか、耐久力とか、そういった概念で使用される。そして一般的には、攻撃力と対になる存在になる。」

鼎「攻撃力といえば、相手にダメージ(被害)を与える力の事だよね。大ざっぱに言えば。」

逆沢「つまり攻撃力と対になる防御力というのは、相手から受けるダメージ(被害)を抑える力と考えていいと言う事かな? 防御力が高いほど、相手の攻撃に対して長く粘れるというか。」

愛原「そう。まさにそんな感じだ。」

逆沢「けどよくよく考えたら、どれだけ防御力が高くとも、それだけでは攻撃相手にダメージを与える事はできないわけよねー。防御力が高いほど、長く耐えられるといっても、逆を言えば相手に時間をかけられたら、いずれやられてしまうのは同じというか。」

鼎「だから【攻撃は最大の防御】という言い方をする人もいるよね。あるいは【殺られる前に殺れ】とか。」

逆沢「どこぞの政治家が【先制攻撃による自衛権行使】なんて言い方もしてたわね。相手に攻撃される前に攻撃するのも自衛権とか。それ、もう自衛でも何でもないだろと私なんかは思っちゃうんだけど。」

鼎「【あの人は将来きっと悪い事をするに違いないから、悪い事をする前に先に罰しちゃおう】みたいな考え方だよね。先制攻撃による自衛権の行使って。」

愛原「まぁ、【自分に敵対する可能性のある者を片っ端から事前に滅ぼしていくことが、最大の防御(自衛)】と考える者は、間違いなくいるだろうな。豊臣秀頼を滅ぼした徳川家康しかり。」

逆沢「だったら攻撃力防御力のどちらが重要かと問われたら、間違いなく攻撃力という事になりそうね。防御力をいくら高めても耐えられる時間が長くなるだけで、攻撃相手を躊躇させる要素にはならないだろうし。逆に攻撃力さえ高く保っていれば、実際に攻撃という手段にでなくとも、攻撃力を保有しているという事実だけで、敵対相手に対する威嚇効果はあるだろうし。」

鼎「攻撃力を保有している事自体が、相手が自分を攻撃するのを躊躇させる抑止力として機能するという考え方だよね。」

逆沢「そうそう。シェルターや城塞で守りの堅さをアピールするよりも、ミサイルや核兵器を配備する方が余程、防御や自衛に資するという考え方ね。」

愛原「危ない考え方だなぁ。そういうノーガード戦法は、こちらが先制攻撃できた場合はそれなりに有効かも知れんが、相手に先制攻撃された場合は、反撃する間もなく一方的に相手に押し切られてしまう危険性が極めて高かったりするんだぞ。」

逆沢「だから【先制攻撃による自衛権発動】になるわけで♪ いかにも危なそうな雰囲気の人が近づいてきたなら、相手が殴ってくる前に、こっちから殴っちゃえみたいな。」

愛原「とするとお前は、相手が罪を犯す前に警察に突き出しちゃえ。ウイルスが体内に入って病気になる前に薬飲んじゃえと。」

逆沢「いやあ、それはそれ、これはこれという事で♪」

愛原「♪で誤魔化すな。いわゆるタカ派といわれる人は軽々しく、【攻撃は最大の防御】だの【先制攻撃による自衛権行使】だの威勢良く主張するが、実際にはパタフライナイフを持って街を歩くようなキチガイと言ってる事は変わらないんだぞ。本人は自分の身を守るためとか、いかにももっともらしい事を言ってるけど、そういう人間が実際に、そのナイフを持ってたおかげで正当防衛に成功した例なんてどれだけあるんだ? 実際には全く逆だろが。」

鼎「報道でよくみかけるのは、何かのきっかけでケンカなりもめ事が起きて、それでカッとなって相手を刺したとか、そういう例ばかりだよね。相手が先に凶器を振り回してきたから、自分があらかじめ持ってたナイフで巧みに応戦して、ついに正当防衛に成功しましたなんて例は、全然聞いた事が無いよ。」

愛原「人は武器を手に持つと、ついつい使いたくなってしまう生き物だ。本来なら使う必要もないのに、ついつい使ってしまう。本来ならカッとなったからって、相手を刺す必要までも無い場面でも、そこにナイフがあればついつい使ってしまう。もちろんそうならない強い意志を持つ人間もたくさんいるけど、そういう人間は、はじめから凶器を持ち歩く習慣自体もたないし。」

鼎「でも実際に暴漢に襲われた場合は、私達はどうすればいいのかなぁ?」

愛原「暴漢に対する攻撃を優先するなら、ナイフでも木の棒でも道端に転がっている小石でもなんでもいいから、適当に武器を手にとって応戦する。もしくは得意の格闘技で応戦するという形になるだろう。逆に防御を優先するなら、大声をあげて人を呼ぶ。携帯電話などを使って110番する。とにかく全力でその場を逃げ出す。そのどれも不可能なら、説得を試みるなり取引を持ちかける(金銭を差し出すなど)なりして、とにかく被害を最小限に抑えるという形になると思われる。」

鼎「最近はアスファルトなどで綺麗に道路も舗装されているから、小石も木の棒も簡単には見つからないと思うよ。」

愛原「まぁ街の中であれば、そこらにある店の商品なり備品なり手にとって、緊急避難的に応戦する方法も、不可能ではないけどな。ただこの場合も、向かってきた相手を追い払う事を目的にした防御の一環であり、相手を返り討ちにする(攻撃する)事を目的に使用する者は少ないと思われる。」

逆沢「最近は物騒な世の中になりつつあるとも言われてるけど、実際にそういう暴漢とかと出会った事はある?」

愛原「なんだかんだ言っても日本は治安がすごくいいと言う事か、俺の知る限りは一回しかないな。もう10年くらい前だと思うが、12月頃で晩飯タイムくらいの時間帯だったのは覚えてる。とある繁華街でいきなり若い男数人(4〜5人くらい?)がボックスカーから降りてきて、目の前にいる若いカップルの男の方をいきなり集団暴行しだしてだな。」

逆沢「ひぃー。バイオレンスイベント発生か。それでどうした? ちゃんと正義の味方らしく、暴行の仲裁に入ったか?」

愛原「いや。速攻で路地裏に退避してから、110番した。」

逆沢「こらっ! なんで路地裏に退避する? 目の前で事件が起きているんだぞ。なぜ現場から走り去る?」

愛原「俺に集団暴行を力ずくで止められる戦闘力があれば話は別だが、そんなものはないもん。だから集団暴行してる集団にからまれない範囲まで退避した上で、110番したんだ。」

逆沢「しょっぺ〜!! ダセー!! 全然男らしくね〜!! そういう時は、さっと割って入って【殴るなら俺を殴れ! 俺がテメーら全員、俺が相手してやるぜ!!】とかタンカ切るのが真の漢でしょ!」

愛原「ちなみに現場は会社からの帰宅者も多い時間帯の繁華街だったから、俺以外にもたくさんの通行人がいたけど、【テメーら全員相手してやるぜ!】みたいなセリフを堂々と吐いて集団暴行を止めさせようとする勇猛な日本男児は一人もいなかったぞ。というか警察がかけつけるまで、誰一人割って入らなんだわ。カップルの女の方も含めて。」

逆沢「ああ、そういや女の方は、その間どうしてたんだ?」

愛原「女の方はあんまり観察してなかったから、詳しくは分からん。けど警察の取り調べの際に、ボックスカーのナンバープレートを控えた紙を警察官に渡してたわ。」

逆沢「冷静ねー。お前と同じタイプか? カップルのお相手が殴る蹴るの暴行を受けてる間、全然割って入ろうとせずに、そういう方にばかり頭回してた事を思うと。」

鼎「なんかその女の人、冷たいね。せめて大声で助けを呼んだりとかはしてなかったの?」

愛原「大声出さなくても、周りははじめから通行人だらけだったけどな。無言で通り過ぎるか、遠巻きに野次馬してるかのどちらかばっかりだったけど。」

鼎「その男の人が集団暴行を受けた原因がよく分からないけど、カップルだったら、せめてその女の人だけでも、割って入ってかばってあげるくらいしても良かった気もするけど。一通行人とは置かれた状況が全然違うんだから。」

逆沢「案外、その女が暴行事件の原因だったりして。だから積極的に割っては入れなかったとか。」

愛原「原因は最後まで分からんかった。第一通報者としてその女と一緒に警察から色々聞かれたけど、肝心の暴行犯自体は警察の接近に気づくやいなやボックスカーに飛び乗って、急ぐように走り去ってしまったし。」

逆沢「その加害者どもがどうなったかも分からないのか?」

愛原「あれから10年くらい経つけど、いまだに警察からは何の連絡もないぞ。取り調べ時に人様の個人情報あれこれ聞きまくってた割に。まぁ一通報者に過ぎない人間に、事件の経過や顛末をいちいち報告する義務自体ないから、しょうがないといえばないんだが。」

鼎「警察から後日に連絡があるという事は、警察から疑われている事でもあるだろうから、それはそれで良かったと思った方がいいかも知れないよ。」

逆沢「けど第一通報者っていうのも、つまんない役割ねー。現場の説明から、個人情報まで色々聞きまくられて、それで終わりってか。」

愛原「今思えば、時間を拘束されただけかも知れん。が、そんな事に見返りを求めるのもおかしいし、第一通報者だけが体験できるレアイベントに遭遇した事自体は、前向きにとらえるべきだろう。別に被害者の立場として巻き込まれた訳でもないし、帰宅が少し遅くなった以外の実害もなかったわけだから。」

鼎「事件が解決したのかどうか分からないままなのはモヤモヤするけど、貴重な体験ができた事自体はすごく良かったと思うよ。もちろんそういう事件が起きないのが一番なのは言うまでも無いけど。」

愛原「同感。ちなみに人生で110番したのは、この時一回だけ。ちょっと緊張しながら携帯電話を開いた瞬間、頭の中で【ムーン・プリズム・パワー・メイクアップ】とか鳴り響いたわ。変身ヒーローが裏路地に入って変身グッズを握りしめた時の興奮がなんとなく実感できたというか。」

逆沢「変身ヒーローが人気の無い裏路地に入って変身するシーンは珍しくないけど、なんでムーンプリズムパワーなのかは、よく分からんわ。」

愛原「厳密には人気の無い裏路地なんて、そうご都合的にはないけどな。俺も暴漢にからまれない場所で110番する目的で裏路地に緊急退避しただけで、裏路地にも人はたくさんいたし。」

鼎「ところでこれ、何の話?」

愛原「そうそう。話を戻そう。とにかく人は、いつどこで襲われてもおかしくない。だからといって【先制攻撃による自衛権行使】なんて姿勢を取る事が最善なのか?と言いたいわけだ。いつ誰が襲ってくるか分からないからといって、近寄ってくる通行人を片っ端から殴って歩いていく訳にはいかんだろう。」

逆沢「つうかそんな事をしたら、確実に捕まる上に、精神異常者扱いされるわ。」

鼎「本人は自己防衛の為だと思っていても、第三者からしたら単なる被害妄想狂の狂人にしか思えないよね。」

愛原「我々、庶民のレベルでも、危険は無数にうずまいている。暴漢に襲われる危険。強盗犯や窃盗犯や詐欺師や放火魔などから被害を被る可能性。だからといって、じゃあ彼らに対して【攻撃】を企図する事が、果たして有効な手段となり得るのか? 正直、難しいだろう。そりゃあ暴漢や放火魔が犯行に及ぶ前に捕まえる事が出来れば、それが最善なのは言う間もないが、実際にそれを成功させるのはかなり難しい。罪を犯す前に【こいつはいずれ罪を犯すに違いないから】とか言って警察に告発したりはできないし、個人的にそう決めつけて私刑(リンチ)にする訳にもいかないし、じゃあ現行犯のタイミングで相手に逆撃を加えられるかと言えば、そんな絶妙のタイミングに遭遇する事自体難しい。そして仮に遭遇した所で、攻撃して見事勝てる保証もない。」

鼎「漫画の世界なら、悪い人が罪を犯している最中に颯爽と正義の味方が現れて、バッタバッタと悪人をなぎ倒したりもできるのにね。」

逆沢「実際の悪人は、誰も見ていないような場所でこっそり悪事を行ったり、警察などの邪魔が入りにくい場所などを選んで被害者を追い込んだりするもんねー。あるいは最初から弱そうな人(お年寄りとか子供とか女性とかオタクっぽい人など)ばかりをターゲットにして、恐喝や引ったくりなどをするようなタイプもいるし。」

鼎「本当にずるいよね。いかにも自分より強そうな人にだけ正々堂々と正面から戦いを挑むような暴行犯とか、堂々と犯行予告をしてみせた上で盗みに入るような窃盗犯とか、そういう正々堂々(?)戦うスタイルの悪人は、漫画の世界にしかいないというか。」

逆沢「振り込め詐欺グループや覚醒剤の売人グループの主犯とかも、トカゲの尻尾を出し子や受取人にして、自分だけは安全なところから犯行を指揮したりしてるもんねー。男なら下っ端に割の合わない危険な仕事を任せずに、仮に下っ端が捕まりそうになっても、黒幕自身が身代わりになるくらいの覚悟をみせろとか思うのに。」

愛原「そういう汚い人間を相手に、攻撃という手段で撃退するのが最善の手段か? 俺はそんな所にリソースを割くくらいなら、防御を固める方が先だと思う。たとえば引ったくりを追いかけるのはあくまで最後の手段で、まずは引ったくりに遭いにくい工夫をする。自転車の前かごに大事なカバンをポンと入れたままにしない。街の駐輪場に自転車を止めておく際には、きっちりカギをかけておく。そういったごく基本的な防御を心がける。確かに防御一辺倒では、悪い奴は捕まえられないけど、少なくとも自分が被害に遭うリスクは軽減できるだろ?」

逆沢「一番理想なのは、自転車ドロや引ったくりを捕まえて懲らしめる事なんだろうけど、そんな事が一庶民の人間にできるかといえば、かなり難しいだろうからねー。」

愛原「我々庶民の力だけでは、ヤクザ組織や悪徳新興宗教を撲滅させる事はできないかも知れない。しかし自分がヤクザ組織や悪徳新興宗教に食い物にされないように対策を打つ事くらいはできるだろ?」

鼎「けど若い人は、一度や二度くらいは、そういう組織をギャフンと言わせたいと思ったりもするよね。たとえば怪しい宗教団体の人の勧誘を受けた時、素直に断ったら5分で終わるのに、下手に色気を出して、こいつを逆説得してやろうとか、論破してやろうとか、みんなの前で恥をかかせてやろうとか思って、のこのこ相手の事務所までついていったあげく、無理矢理高額な壺のローン契約にサインさせられたり、場合によっては感化されたりとか。」

逆沢「自分の身を守ることだけに専念してたら簡単に危険を回避できるのに、下手に色気を出して相手をギャフンと言わせてやろうとした結果、返り討ちに遭う訳ね。」

愛原「自分の思惑通り、相手をやっつける事ができれば最高にハッピーなのは間違いない。しかし現実にはかなり難しい。たとえば自分のガタイなら、ケンカの仲裁に入ったらきっと相手は応じるだろうと思ったら、相手はメンチ切りながら至近距離まで寄ってきて、こちらの一瞬を突く形でいきなり腹にパンチを入れてきたり、ひどい場合は近くにあるビール瓶を手にとって、不意打ち同然のタイミングでこちらの頭をかち割ろうとして来たり。」

鼎「たまに新聞報道で、ケンカの仲裁に入った人が大怪我させられるような記事もみるけど、そういうパターンも多いのかなぁ?」

愛原「誠意を持って説得すれば相手も応じてくれるはずだとか、どう見ても俺の方が強そうに見えるからとか、安易な思いでケンカの仲裁に入ったあげく、悲惨な結果に終わる事も多い。もちろんそういう正義の味方的振る舞いは敬意に値するが、それで相手がこちらの思惑通りに動いてくれるとは限らない事は頭に置いておくべきだ。少なくとも、相手はこちらが思っているよりもずっとしたたかなケースも多い。悪人というのは一見バカに見えても、ちゃんと自分の逃げ道や逃げる方法くらいは事前に準備してる事は多いし、見た目は貧弱でもケンカ慣れしてる事も多い(たとえ腕力は弱そうでも、不意打ちの仕掛け方とか、ブラフのかけ方とか、色んな要素でそれを彼らは補って対応してくる事が多い)。」

鼎「悪い人を攻撃して追い詰めるのは、警察や行政のプロに任せて、素人はまず自分の身を守る事に専念するべきって事かな?」

愛原「たとえば銀行がまずやるべき事は、泥棒を捕まえる事ではなく、どんな凄腕の泥棒が金庫への侵入を試みようと、それを阻止できるだけの防犯システムを構築できる事のようなものだな。現金輸送車がまずすべき事も同様。もちろん金庫への侵入を試みた泥棒や、現金輸送車の襲撃を試みた凶悪犯を捕まえる努力も大事だが、最優先事項は犯人を捕まえる事以上に、犯行自体を絶対に阻止する事。犯人を捕まえるのは、あくまでそれを任せられたプロの役割。それと一緒。」

逆沢「もちろん守り切ったらそれでOKって訳にもいかないだろうけどね。自分達を襲った悪人を野放しにはできないだろうし。」

愛原「まぁ、それは同感。誰もが凶悪犯の報復を怖れて警察に通報しないなんて事になったら、それはそれで凶悪犯を野放しにする事になるからな。別に自分自身が正義のヒーローになって凶悪犯に戦いを挑めなんて事は言わないが、自分が被害に遭わなければそれでいいとか、見て見ぬ振りというのは全く褒められない。もしも誰かが悪人の攻撃を受けたならば、その攻撃による被害があろうとなかろうと、同じような事件が起きないようにする為にも、しかるべき手は打っておきたい。ただ優先順位は存在するけどな。」

鼎「どういう優先順位が望ましいかな?」

愛原「まず防御。相手が暴漢であれ、大災害であれ、疾病であれ、迫り来る脅威は基本的に先制攻撃してくる(暴漢が犯行予告を事前にしてくる事も、災害を事前予知できる事も、病気になる前にそれを先に察知できる事もまずないため)。この先制攻撃に耐えられるだけの防御力がないと、攻撃力がいくら高くとも意味がない。どんな最強の武器や治療・回復手段を保有していても、敵の先制攻撃によって、こちらの武器が破壊されたり、こちらのライフがゼロになったら全く無意味だからな。」

逆沢「ゲームの世界では、防御にリソースを割る事自体が無意味な事も多いのにねー。特に、後半、イケイケドンドンになっていくと。」

愛原「自分が常に先制攻撃する側というか、【ずっと俺のターン】で押し切れる状態なら、それでもいいだろう。相手に反撃させるゆとりを与えず、どんどん押し切ってしまうのも有効な戦術ではある。しかしこれは、こちらの方が明確に力が上であり、かつ敵の存在と所在が明確に絞り切れている場合にのみ機能する。たとえば敵が所在不明の暗殺者であると仮定して、攻撃一辺倒で押し切れると思うか?」

逆沢「最近は、暗殺者が登場する漫画とかも人気らしいけど、暗殺者タイプが敵に回ったら困るわねー。敵はいつどこから襲いかかってくるか分からない。こちらから反撃したくとも、どこの誰が暗殺者かも分からない。攻撃したくとも、攻撃相手が分からないと本当に困るわ。」

愛原「しかしリアル社会は、まさにこういう状態なんだ。どこの誰が暴漢で、どこの誰が放火魔で、どこの誰が詐欺師で、どこの誰が窃盗犯かなんて、そんな事が事前に分かるわけがない。街を歩いていても、そんな印はどこにもないし、まさに遭遇するその瞬間まで分からないのが現実だ。つまりどんな攻撃手段を持っていようが、攻撃相手が特定できない以上、そんなものは全く役に立たない。視界に入った人間全てを、とりあえず全てしばくというなら別だけど。」

鼎「だから銀行は金庫の警備を現状にするし、私達は留守時に鍵をかけたりするんだよね。誰が悪い人かも、その人がいつ近づいてくるかも分からないから。」

愛原「また通常の場合、敵はこちらよりはるかに強い場合が多い。暴漢は子供やかよわそうな女性を優先的に襲うし、詐欺師は騙しやすそうなお年寄りを優先的に狙う。つまり襲われた時点で、相手は自分より明らかに強い場合も多く、攻撃に転じても無意味な事も多い。まぁこれも軍事でも同じだが。第二次世界大戦以降のアメリカなんかも、戦争をしかけるのは常に、本国にミサイルを打ち込む国力も無い下位軍事力しかない国ばかりだろ?」

逆沢「自分より強い国に進んで戦争をしかける国なんか、聞いた事はないわ。挑発行為なり経済制裁なりを受けて、こちらから戦争をしかけざるを得ない状態に追い込まれたとか、そういう特異な事情でもない限り、弱い側から強い側に戦争をふっかける例なんてほとんどないというか。」

愛原「相手を攻撃して、そのまま押し切れるだけの余裕があるなら、攻撃力にリソースを振る事は決して無意味ではない。しかし限りあるリソースを攻撃に割り振るか、防御に割り振るか迷わなければならない程、乏しいリソースしかないなら、攻撃に割り振った所でまず勝ち目はないし、防御がおろそかになった分、より状況が悪くなるだけだ。」

逆沢「ただ問題は、防御力だけにリソースを割り振った場合、戦いを長引かせたり、敵を追い返すくらいまではできるかも知れないけど、それだけでは敵にダメージを与える事はできないし、またいつ攻撃を受けるかも分からない事なのよねー?」

愛原「その問いは、【籠城戦は果たして無意味か?】という命題そのものだな。」

鼎「世間的には、【援軍のない籠城は無意味】なんて主張する人達もいるようだけど。」

愛原「それだったら上杉謙信に小田原城を包囲された時に籠城策を選んだ北条氏康や、大内義隆に月山富田城を包囲された時に籠城策を選んだ尼子晴久らは、そろって無意味だった事になるのか?」

逆沢「ああ、なるほど。攻撃側が根負けする状態まで粘るだけでも、とりあえず意味はあるって事か?」

愛原「もちろん援軍のアテがないと、籠城戦は厳しい。しかし敵の状態が盤石でない場合ならば、粘るだけでも十分意味はある。【こんな所の攻略に時間をかけるくらいなら、他の攻略に労力を回した方が有意義だ】と思わせる事が出来たならば、敵はこっちの攻略を諦めて別の方面に向かうかも知れない。つまり敵に【割に合わない】と思わせる程度の防御力があれば、それだけでも十分防御にリソースを割く意味が出てくる。」

鼎「【割に合わない】と思わせるのは、防犯の基本でもあるよね。」

愛原「自転車泥棒の視点でみれば、街中で複数の自転車が止まっていた場合、鍵がかかってない自転車と鍵がかかっている自転車の両方が止まっていれば、わざわざ鍵がかかっている自転車を盗む行為は、相対的に割に合わない選択になる。空き巣にしても、侵入しやすい家を選んで盗みに入る。詐欺師も騙しやすい人に標的を選んでだましにかかる。わざわざ手強い相手をターゲットに選ぶ愚は犯さない。そりゃあ鍵をかけても、盗まれる時は盗まれるが、盗まれる確率はぐっと下がる。防御にリソースを割く行為は、攻撃側に割に合わない事を知らしめ、こちらに攻撃される可能性自体も下げる副次効果も生む。」

逆沢「攻撃力を抑止力として機能させる事もできるけど、防御力もより直接的に抑止力として機能するって事ね。」

愛原「攻撃力を抑止力として使用する場合は、先制攻撃によってこちらの攻撃手段を破壊されない事が大前提になる。そしてこれを抑止力として機能させるのは、意外と難しい。なぜなら先制攻撃する側は、敵の反撃手段を優先的に叩きつぶそうと企画するからだ。」

逆沢「つまり舞鶴港に強力な攻撃戦力をどれだけ集めて威嚇したところで、若狭湾の原発が先制奇襲攻撃によって破壊されたら、そんな攻撃力は全く無意味なものになってしまう以上、実際には抑止力として機能し得ないようなものね。」

愛原「その点、防御力は直接的に抑止力としても簡単に機能する。鍵をかけるだけで窃盗に遭う危険性が格段に減るようなノリで。あるいは合い言葉を決めるだけで振り込め詐欺のリスクを大きく軽減できるようなノリで。もちろん攻撃力もあるに超した事は無いが、それは攻撃力にリソースを割く余裕のある者が注力すべき事であり、お年寄りに体を鍛えろと要求するような無茶は、少なくとも俺は薦めない。」

鼎「結局の所、弱者が取れる戦術は、まず防御を固めて、相手が根負けするか、援軍が到着するまで粘るのが基本になるのかな?」

逆沢「ファンタジーの世界なら【寡兵をもって敵を討つ】のがセオリーだけどねー。不利を承知で攻撃に打って出て、それでも圧倒的に強い敵を討ち取ってしまったりとか。」

愛原「そういう勇者が現実にはほとんどいないんだよなぁー。通り魔事件やコンビニ強盗事件などがニュースになる事はあるが、その際に通りすがりのサラリーマンなりが、暴漢に戦いを挑んで見事撃破して、警察から感謝状をもらったなんて報道はあまり聞いた事がない。仲裁に入った第三者がケンカに巻き込まれて重傷という報道の方なら、たまにあるけど。」

逆沢「店員とかが何らかの護身具なりを手に取って、暴漢を店外に追い出すのに成功したというニュースなら、たまに聞かない事もないけどね。」

愛原「捕まえる事を目的にしておらず、追い返すことを目的にしている以上、典型的な上手な防御戦法の一例といえるな。マニュアル通りに対策した結果なのか、店員が独自に機転を利かせた結果なのかは知らんが。」

鼎「銀行などは、強盗に備えてかなり細かくマニュアル化されてるらしいよね。」

愛原「そのせいか昭和時代には珍しくなかった銀行強盗が、今ではほとんど見られなくなったな。」

逆沢「本当に悪人というのはずる賢いわねー。防御が固いところを襲おうとせずに、隙だらけの所や、弱い所ばかり襲いまくって! マジムカつくわ!」

愛原「悪人がずるくて汚くて卑怯だからこそ、防御の有無は大事になってくる。相手がアホばかりなら、防御の有無にかかわらず一定の確率で襲ってくるだろうが、実際には防御力の低い部分から狙い撃ちしてくるからな。我々がゲームをプレイしてても、相手の攻撃力や撃破時の報酬が同じなら、防御力が低い方から潰していくだろう?」

逆沢「アホなAIの場合は、ランダムでこちらのキャラをバラバラに攻撃してくるけど、まともなプレイヤーは、絶対にそんな事はしないからね。集中攻撃で確実に敵を一体ずつ潰していくのが基本セオリーだし。」

愛原「現実世界の悪人も、お年寄りに絞って振り込み詐欺や引ったくりをしかけたり、資金繰りに苦しんでる中小企業の社長さんやスイーツ脳の女性に絞って高利貸しをしたりと、ターゲットを絞ってこちらの隙につけ込んでくる。防御の弱い所ばかり狙って確実に攻めてくる。なので狙われたくなければ、防御力はあらかじめ高くしておくに超した事は無い。」

逆沢「逆を言えば、わざと特定の部分だけ防御力を低くして、敵をそこに引きつける高等戦術もアリかな?」

愛原「まぁアリだとは思うけど、逆をいえば引きつけるオトリ以外の防御力は、オトリよりも高く保ち続ける必要があるから、トータルとして防御力を軽視していい理由にはならない。あとオトリをオトリとして機能させる為には、意外とコストや知謀が必要になる事も忘れてはならない。そんなコストや知謀が最初からあるなら、攻撃にリソースを割いた方がいいかも知れないって程度には。」

逆沢「結局、弱い人間は、まず防御にリソースを割かざるを得ないって点は変わらないって事か?」

愛原「警察や軍隊は、強力な攻撃手段を持っているが、それでも国民一人一人を24時間ボディーガードする訳にもいかないからな。誰かに守ってもらおうというのではなく、自分の身は自分で守るのが大原則。警察や軍隊などの武力組織は、悪い人を捕まえてくれたり復讐してくれるかも知れないが、我々個人を守ってくれる訳ではない(抑止力としての機能はあるため、結果的に守りを兼ねてくれる一面はあるが、あくまでそれが本目的の組織ではない)。少なくとも通り魔に突然襲われた時に、すぐそばに警察官がいる事はほぼないし(はじめから捕まることが目的ならともかく、そうでなければわざわざ警官などがいる場所で事件を起こすはずがないから)、同盟国が助けに入ってくれる保証もない(攻める側からすれば勝算もないのに攻めてくる事はほとんどなく、同盟国もろともねじ伏せる算段があるか、もしくは密約を結ぶなり、何らかの方法であらかじめ同盟国の動きを封じてから攻めかかるだろう)。また警察や同盟国の援軍が期待できる状況であっても、それまでにやられたら意味が無い。防御だけは他人任せにできない事くらいは知っておいた方がいいだろう。」

逆沢「少なくとも詐欺師や自転車泥棒による被害を回避したいのなら、警察任せではなく、自分自身が備えておくしかない事くらいは分かったわ。」



















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