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愛原様のたわごと(14年8月24日)






逆沢「先週はお盆休みか?」

愛原「うん。お盆休み。久々にフリゲ三昧の実に有意義な休暇になった。実はまだ一通りクリアした訳ではないので、現在進行形でもあるが。」

鼎「お盆が明けて一週間が経ってもまだクリアしてないってことは、結構な長編なのかな?」

愛原「まぁそんな感じ。といってもこちらのプレイスピードが決して早くない事と、お盆休みが終わった事で、進行速度が一気に遅れてしまっている事情もあるが。まぁクリアしたらまた折りをみて紹介してみてもいいかも知れないとは思っている。」

逆沢「せっかくだから、話の流れで今から紹介してもいいんじゃない?」

愛原「ダメ。クリアしてないから。」

逆沢「それじゃ今回は何の話する気だ?」

愛原「うむ。今回のテーマは【援軍】でいこうと思う。集団的自衛権で盛り上がるご時世にふさわしい、何とも知的なテーマだとは思わないか? フハハ!!」

逆沢「自分で【知的なテーマ】と言い張ったり、頭の悪さを自己申告しているような邪悪な笑いをしてみせる時点で、全てを台無しにしているとしか思えないわ。」

鼎「本当に賢い人は、自分の身の程をわきまえない難しいテーマについて無闇に触れたり、ましてや荒れるようなテーマを調子こいて自分から振ったりしないと思うよ。」

愛原「ひどい事をいう奴らだな。まぁ俺とて難しい話題をするつもりはない。戦略SLGや戦術SRPGなどでよく登場するような【援軍】をまずは思い浮かべながら話を進めていきたいと思う。」

逆沢「そういやウチも7lcwという国盗りゲーム作ったけど、あれには【援軍】という概念はあったっけか?」

鼎「ラストステージとか、一部のイベントではあったような気がするけど、基本的には1国VS1国のガチンコ戦闘形式だったよね。7lcwは。」

愛原「つまり7lcwでは、狭義での集団的自衛権を積極的に行使しないスタイルの世界観という事になる。外交を通じて包囲網を敷いたり、背後を挟撃してもらったりするシーンは無数にあるけど、戦術レベルで多国籍軍が一カ所に集まって、一斉に特定国を攻め立てるようなスタイルは、少なくとも主流ではない。他国の為に戦うのではなく、あくまで自国の為に戦う個別的自衛権(侵略権?)がメイン。」

鼎「広義な意味での集団的自衛権は常に行使しているけど、狭義な意味での集団的自衛権までは積極的に行使する気は無いみたいな世界観という設定だよね。」

愛原「まぁ広義な意味での集団的自衛権に関しては、今の日本も常に行使し続けているけどな。湾岸戦争を含むイラク戦争関連では金銭面での援助は惜しまなかったし、北朝鮮に対する経済制裁なども各国と協調して行使しているし、ウクライナ情勢なども、なるべくロシアと敵対したくない安倍政権の思惑を無視するように、アメリカなどが日本にもロシアに対する制裁を支持するよう圧力を行使し、その結果、日露外交が難しくなりつつあるようだ。」

鼎「永世中立国でもない限りは、広義な意味での集団的自衛権とは無縁でいられないって事かな?」

愛原「人間がいかに群れを作りたがる生き物なのかを痛感する思いでもあるな。人は常に仲間を作ろうとし、仲間にならない者を敵とみなそうともする。かつてブッシュが【テロリストをかくまう者はテロリスト】と発言して、アメリカの戦争行為を支持しない者はアメリカの敵と見なさんとばかりに諸外国を威圧した事があるが、ウクライナ情勢を見る限り、オバマ政権になってもそのアメリカンスタイルは継承されているのだろう。」

逆沢「アメリカ主導によるロシアへの制裁を日本が仮に支持しなかった場合は、日本はロシア寄り、アメリカの敵とみなされる可能性もあるって事か?」

鼎「中立を護り続けるのはすごく難しいって事かなぁ?」

愛原「マキアベリも著書で、中立を選ぶ事の困難さについては触れていたな。中立を選ぶと、両方から敵対されるリスクが高いという事らしい。」

逆沢「そういえば日本でも、かつて応仁の乱とか関ヶ原の戦いというのがあったけど、ほとんどの大名家がどちらか(あるいは両方)を支持していたような気がするわね。まぁ真田家とか九鬼家とか津軽家とか、一族で分かれて両方とよしみを通じる事でどちらについても生き残れるように対処した勢力もあったようだけど。」

鼎「佐竹家とか、あえて中立を守って動かなかった大名家もあるにはあったけど、そういう勢力も、戦役後に転封されたり改易されたりした事を考えると、勝者からすると【俺に味方しなかった事自体が罪】という扱いになるのかなぁ。」

逆沢「まぁブッシュの言動からすると、そういう事になるケースも珍しくないのかもね。」

愛原「さて、そういう広義な意味での集団的自衛権の下に、狭義な意味での集団的自衛権というのが存在する。具体的にいえば、単にどちらかを支持すると意思表明したりするだけにとどまらず、より積極的に自勢力(もしくは自分が味方すると決めた勢力)を勝利に導くために、労力なり犠牲なりを払う行為。」

逆沢「今、国会で話題になっている集団的自衛権議論が、まさにその狭義での集団的自衛権なわけね。」

愛原「さて、ここでゲーム的な視点での話に戻す。まず【援軍】には以下の二つの立場がある。一つは援軍を求める立場。もう一つは援軍を派遣する立場だ。それぞれの立場で考えてもらいたい。自分はなぜ援軍を求めるのか? あるいはなぜ自分は援軍を派遣しようとするのか?

逆沢「援軍を求める理由は簡単ね。単純に勝つ(負けない)確率を高めたいから。あるいはより有利に戦況を運んだり、こちらの被害を抑えたいから。勝算が十分にあるなら、わざわざ援軍を呼んで第三勢力を介入させない方が、勝利後に戦利品(領土や捕虜など)を丸取りできる分、絶対メリットも大きいし。」

愛原「つまり戦勝後に得られるメリットなど二の次で、まずはとにかくより確実に勝ちたい。あるいはこちらの被害をできる限り抑えたい。そういう時に援軍を呼ぶという訳だな。」

鼎「私は外交を有利にする為に援軍を呼ぶ事も検討するよ。たとえばA国が攻めてきた時にこちらがB国に援軍を求めて、B国がこちらの援軍に応じてくれたなら、B国とA国は確実に仲が悪くなるよね。そしたらB国とA国の間で同士討ちさせる事で双方の戦力を消耗させられるかもしれないし、少なくともA国とB国が同盟を結んで、協力してこちらに敵対してくるリスクは大きく軽減できるだろうから。うまくやればこちらとB国との間で、より親密な同盟を結べるかも知れないし。」

愛原「ゲームの世界でも通用する戦法だが、リアルの外交でよりメインとなっている外交戦略だな。」

逆沢「アメリカが世界各国にやたらアメリカを(形だけでもいいから)支持するように圧力をかけるのは、アメリカにとって都合の悪い国を外交的に孤立させる為の策でもあるという事ね。」

愛原「日本自身がロシアに制裁活動をしなくとも、日本がアメリカを支持するように持っていければ、日本とロシアの仲を裂く効果くらいは見込めるようなものだな。援軍の中身自体はどうでもよくて、とにかく援軍に駆けつけた(こちらへの支持を取り付けたandライバルへの敵対行為を表明させた)という実績自体が欲しい際にも、援軍要請は非常に役に立つ。」

鼎「Civilizationシリーズでも、よく使われる外交戦術だよね。狂犬と言われるような戦争大好き国家に攻められないようにする為に、とりあえず適当なかませ犬国家を用意して、援軍を要請する形でも何でもいいから、とにかく戦争大好き国家とかませ犬国家が仲が悪くなるように仕向けて、自国の保身を図る外交戦略というか。」

愛原「援軍を呼びつけるというのは、単にこちらの戦力を補強する効果のみならず、特定勢力と特定勢力の仲を裂くという副次効果をもたらす。というかリアルでは、こちらの戦力を補強する効果の方が副次効果で、仲を裂く方がメインの効果といってもいいくらいだな。」

逆沢「仮に自衛隊員が集団的自衛権の名の元にどこかの国の軍隊と交戦して死者でも出れば、日本国民の相手国に対する憎しみは頂点に達するだろうし、逆に自衛隊員に兵士を殺された相手国民も日本に強い恨みを抱くだろうから、そう考えると、特定勢力間の外交関係をメチャクチャにする事が、援軍要請の最大の目的と言われても納得できなくもないわ。」

愛原「さて今度は視点を逆にしてみよう。今度はこちらが援軍を要請された立場。援軍を派遣するのも拒否するのも、こちらの自由だ。もちろん援軍を派遣したからといって、本気で戦わなくてもいいし、もちろん全力で戦っても構わない。お前らならどうする?」

逆沢「条件にもよるわね。参戦することでそれなりの戦利品(領土・捕虜・金品・名声など)を得られるのなら積極的に参戦するだろうし、デメリットが大きそうなら援軍要請を拒否するだろうし。」

愛原「デメリットというとたとえば?」

逆沢「たとえば大義名分のない戦に参加したら名声が傷つくだろうから、そんな勢力の味方はしたくないでしょ。こちらの被害が大きそうでも、やっぱり積極的に首を突っ込みたくはないし。戦利品がこちらにほとんど回ってこなさそうでも、躊躇くらいはするし。まぁでも、できる事なら、勝ち馬につきたいというのはあるかもね。私達の勢力が十分強大なら、将来の敵になるであろうライバルを少しでも叩く為にあえて不利な側につくのもありだろうけど、そうでなければ強い方にケンカを売るのは色々危険だから。」

鼎「でも世の中には、どちらが勝つか読めない事もあるよね。洞ヶ峠なんて言葉もあるし、そういう時にはしばらく中立を守って、どちらが勝つか見極めてから、勝ち馬につくなんて判断をする人もいるようだけど。」

愛原「まぁ弱小勢力の処世術かも知れんな。決して尊敬はできないけど、そういう行為を否定する事まではできん。自分の活躍次第で勝者が決まるというくらいの強さがあるなら、将来性などを見極めて好きな方についたらいいと思うが、自分がどちらに付こうと戦況に影響を与えない程の力しかないなら、余程考えて態度を決めないと色々危険だ。」

鼎「自分の立場が弱いなら、生き残る事を前提に援軍に応じるかどうかを決めないと危険って事になるのかな?」

逆沢「逆に自分の立場が強いなら、十分打算的に援軍要請をどうするか検討できるって事ね。」

愛原「そうだな。たとえば積極的に援軍を出して、戦利品を全部かっさらうつもりで動くというのも一つの方法論だろう。特にSRPGなどでは、そういうプレイヤーが多くいそうだ。」

逆沢「経験値稼ぎにもなるし、場合によってはアイテムや人材ゲットにもつながるからねー。そりゃもう必死に働かせてもらいますわ。援軍という立場も忘れて、味方のNPCの正規軍の進路も塞いで、戦利品も経験値も最大限ゲットするべく好き放題に動いてご覧に入れますわ♪」

愛原「ゲームの仕様によっては、わざと援軍を遅らせたり、真面目に戦わない事で、味方正規軍の損害を増やすよう策動したり、時には敵が勝つように仕組む事もあるようだ。」

逆沢「同盟破棄のデメリットが大きすぎるゲームの場合は、同盟勢力が滅ぶように立ち回る事もあるだろうし、あと少しで吸収させられそうな同盟勢力があるなら、わざとギリギリまで同盟勢力を弱体化させて、吸収できるようにお膳立てする事もあるかもね♪」

鼎「なんかゲーム的な視点で考えると、無闇に援軍を要請するのも危険な感じがしてきたかも。その同盟勢力に美味しいところを全部もっていかれそうな気もしてきたし。」

愛原「でも逆をいえば、メリットもないのに援軍を引き受けてくれるお人好しも普通はいないだろうからな。リアル世界だと余計に。」

逆沢「自国の兵士を何人も(場合によっては百人単位、千人単位、万人単位になる事も)犠牲にするかも知れない以上、他人同士のケンカに面白半分に首を突っ込む国家なんて普通ないと思うわ。自国民に犠牲を強いてまで他国同士のケンカに首を突っ込む以上は、領土なり、石油利権なり、傀儡政権を擁立しての植民地化なり、軍需産業への利益供与なり、世界各国への武力誇示なり、何かの目的があって当然な気もするし。」

愛原「歴史的にみれば特に援軍要請を受けていないにも関わらず、援軍の名の元に他国同士の紛争に介入する勢力もなくはない。そういう場合は、介入した側が介入された側の政治にまで関与して、いつの間にか国自体を乗っ取ったり、植民地化してしまう事すら無くはない。」

鼎「現代でも、災害支援などの名目で、必ずしも仲の良くない他国に軍を送り込もうとする国はなくもないようだよね。」

愛原「まぁまともな主権国家は、他国の軍隊をやすやすと領内に入れたりしないけどな。また援軍や駐留軍や災害救助の名の元に他国に自国軍を押しつけて居座るような国も、決してボランティアでそれをやってる訳じゃない。」

逆沢「ゲームしてると決して温情や好意だけで他国に援軍を送ろうとか、そんな気にならないし、まぁ打算的になりがちな心理は分かるわ。」

鼎「リアルだと人命とかも関わってくるから、ゲーム以上に打算的になりやすいのもすごく分かるよ。」

愛原「少なくとも援軍という概念を、国家間の友情とか仲間意識とか、そういう綺麗な視点だけでみるのはかなり危険だ。」

逆沢「特に強国が援軍を要請したり、逆に押しつけたりする場合、必ずと言っていいほど、裏があるという事ね。自国だけでも十分敵を圧倒できるのに、それでもあえて援軍を要請するには訳がある。別に自国が危機にさらされているわけでもないのに、他国の紛争に積極的に介入したり、時には特定国間の対立を煽ったりするのにも訳があると。」

愛原「特に織田信長タイプの支配者が強国を治めている場合は、かなり悲惨な事になりそうだな。」

鼎「今年の大河ドラマの軍師官兵衛を観てて、すごく印象的なシーンがあったよ。織田信長政権は部下だけでなく同盟国をも使い捨ての道具としか考えてなくて、【儂に従属したければ儂の役に立て】という考え方なの。で、主人公の官兵衛さんはなんとか織田家の役に立つべく、播磨の諸豪族を説得したり、攻め寄せる毛利家を追い返したり孤軍奮闘するんだけど、肝心の信長さんはそれでも秀吉さんを北陸に派遣したりして全然援軍を播磨に派遣しようとせず、それで播磨の豪族達も織田家と官兵衛さんに不信を抱くようになって、やがて秀吉さんが播磨にやってきた後も、味方の上月城に援軍を全く送らず見捨てたり(史実では一応秀吉軍は一度援軍を送ったけど、毛利軍に一方的大敗を喫して救援に失敗して、その結果、上月城を見殺しにする結果になった。のち秀吉軍は毛利軍とガチンコでやり合う事を避けるようになり、兵糧攻めなどの持久戦術主体に切り替えていく事になる)、播磨の諸豪族を駒扱いしようとした事から、それで別所家をはじめとする諸豪族が一斉に反織田陣営に鞍替えしちゃったりしたんだけど。」

逆沢「ああ、確かそんな描写があったわね。信長は【儂に滅ぼされたくなければ、ひたすら尽くせ】みたいな考え方で、一方的に献身は要求するけど、じゃあ同盟国側が信長に援軍を求めたらちゃんと応じるかというと、全然そんな事はなくて、案外平気で見捨てたりする。御恩と奉公の関係じゃなくて、奉公だけ要求して御恩は与えない、一方的な服従を要求する関係というか(但し、服従を拒否したら、容赦なく滅亡させる)。自分は相手に自分のために命を賭けてまで働けというけど、自分は危険を冒してまで相手のために働く気も無いし助ける気も無い、そんな不毛な関係というか。」

鼎「歴代大河の中でも今年の大河のドラマの信長は割とヒールな印象だったけど、案外実際の信長像に近いかなと思ったよ。」

愛原「ただこの信長像は決して希有な例とまではいえない。俺たちが普通にゲームしてても、自軍の無駄な被害は極力抑えたいし、そうすると援軍に被害部分だけ多くかぶってもらうように行動する事があるように、リアルの支配者達も、被害となる部分はできるだけ他国の軍にかぶって欲しいと考えてもおかしくない。特に自分達が、それを相手に要求できるほど強大であればなおのこと。」

逆沢「同盟国を無理矢理戦いに巻き込むことで、(本来自国だけがかぶる)被害も分散できるし、ついでに(本来自国だけがかぶる)敵国からの憎しみも分散できるというわけね。」

鼎「けど強国からの援軍を断るのも勇気がいるよね。断った結果、恨みを買う怖れもあるし。【テロリストをかくまう者はテロリスト】発言じゃないけど、中立すら敵をかくまう行為とみなされるような例も現実にはあるくらいだから。」

愛原「うん。強国の言いなりになっていたら、ブラック企業で酷使される従業員のごとく、いずれ使い捨てにされて使い潰される。それ故に古来の弱小豪族の主なども、それを避ける為に可能な限り知恵を絞った。病と称して出陣を拒んだり、人質を出さなかったりとか。」

鼎「戦後の日本の場合は、平和憲法が他国の援軍要請を断る大義名分としてうまく機能していた部分もあるって事かな? 外圧ではなく時の政権による憲法解釈の変更によって、その大義名分となる防波堤が内部から破壊されそうとしている気がしなくも無いけど。」

愛原「個人的には、広義であれ狭義であれ、集団的自衛権は自立国家として必要不可欠だと考えているので、安倍総理に対する期待感は非常に大きいのだが、同時にアメリカからの援軍要請を拒む最大の大義名分を失う事による不安も大きく、現時点で評価は控えたい。援軍というか、集団的自衛権というのは、アメリカや中国といった強国に対する合従を機能させる上で最も効力を発揮するというか、不可欠な要素なので、基本スタンスとしては決して反対ではないのだが。」

鼎「EUなども合従思想に基づいて発足した組織だよね。」

逆沢「EU経済圏に対抗するようにTPP経済圏なども生まれつつあるようだけど、こちらはアメリカを核とした連衡型なのが大問題なのよねー。一国だけ場違いに強いのが混じってるせいで、特定国の一存で全てが決まりそうと言うか。読売ジャイアンツに依存する日本プロ野球機構よりも、さらにバランスに問題があるというか。」

愛原「合従体制は、【あいつが滅びれば次は我が身】を基本思想とする相互支援体制であり、自国がたとえ今は安全でも、同盟国が滅ぼされそうであれば、援軍を出さずにはいられない相互支援体制だともいえ、ライバルに同盟関係を切り崩されない限りは非常に手堅い。」

逆沢「仮にイギリスとフランスの仲が良くなかったとしても、どちらかが滅びれば、もう一方が滅ぶのも時間の問題になってしまうので助け合わざるを得ないようなものか。」

鼎「日本と韓国の関係にもいえそうだよね。中国なりアメリカなりロシアなりにどちらかが先に攻め滅ぼされたら、いずれもう一方も消滅は時間の問題になりそうだし。」

愛原「逆に連衡体制は、宗主国が安定している限りは、組織としては非常に強い。但し、宗主国によって従属国がいずれすりつぶされて消滅させられる可能性が高く、宗主国以外にメリットはない。つうか連衡策の出典になった秦自体が、そのパターンで敵国も同盟国も滅ぼし、あるいはすり潰して天下を取った。自国が宗主国になれるのなら積極的に採用すべきだが、そうでないのなら安易に採用すべきでない。織田信長のように勝手に宗主が自滅してくれそうなら、まぁアリかも知れんが。」

鼎「援軍システムも、実際には各国の戦力バランスによってかなり実態が変わるって事だよね。同盟国間での力関係が対等に近ければ、援軍を出す出さないが勝敗を大きく左右する一方で、援軍をどう運用するかは各勢力の判断にゆだねられやすい。逆に特定の勢力を宗主勢力とするようなパターンでは、従属勢力はその宗主勢力が管轄する一部隊的な扱いになり、余程の事がない限り、宗主勢力が出す援軍派遣命令を拒否する事はできないと(宗主勢力が従属勢力が出す援軍派遣要請を拒否する事は可能)。」

愛原「まぁ一般論として同盟勢力が出す援軍要請を無視すると、諸外国からみたその勢力への印象は確実に悪化する。しかし大国からすれば、そんな評判の悪化は大した痛みにも感じないようだ。かつての織田信長の所業や、現代のウクライナ情勢をみる限り。」

鼎「ウクライナ情勢は、確か西側諸国の扇動行為によって反ロシア系のウクライナ国民が武力蜂起して大統領府を襲った事が発端だよね。で、当初は西側諸国のマスコミも、アラブの春報道と同じようにその武力クーデターを賞賛するような報道をしてたんだけど、ウクライナ国内の親ロシア系住民とロシアが反撃を開始するや、安倍総理らが【武力による現状変更は許せない】とばかりに親ロシア派の武力蜂起を激しく非難するようになって。一方、アメリカもイラクやアフガニスタンやユーゴスラビアなどの時と同じように武力支援するかと思えば、そんな事は全然しなくて、扇動された反ロシア系ウクライナ国民だけがやや孤立したような状態になりつつあるというか。」

逆沢「要するに戦国時代でいえば、農民一揆を煽って隣国の大大名寄りの小領主を倒したところまではいいけれど、隣国の大大名自身が直接その領土に侵入してきて、一揆を起こした農民だけが置き去りにされたようなものか?」

愛原「見捨てたというと見栄えが悪いから、経済制裁という名の間接支援はしているようだが、ガスを抑えているロシアに対して西ヨーロッパ勢が本気で敵対などできるわけが無いし、まぁポーズだけだろう。アメリカにしてもロシアと全面戦争になったら困るだろうし、とてもイラクやアフガニスタンと同じような武力参戦に踏み込めるとは思えない。」

逆沢「しかし安倍のダブルスタンダードがよく分からんわ。武力づくで大統領府を襲って国を乗っ取るのはOKで、それをさらに武力でひっくり返すのはNGなのか?」

愛原「まぁそれを言ったら、アラブの春の時の報道も似たようなものだからなぁ。アラブの春現象でも反米国でも親米国でも同様に起こっているのだが、反米独裁政権を倒そうとする民衆は英雄で、親米独裁政権を倒そうとする民衆は過激派みたいな報道になってたし。少なくとも日本国内向け報道に関しては。武力による現状変更も、アメリカやイスラエルなんかは何度でもやってるし、東南アジアやアフリカなどでも武力づくの革命劇や軍事クーデターは珍しくないが、そちらは見て見ぬ振りしてるし、基準が全然よく分からない。」

鼎「ウクライナ情勢を援軍という視点で語ると、反ロシア派は、西側諸国の支援(援軍派遣)とロシアの不参戦(援軍不派遣)を前提に武力蜂起したけど、実際には全く逆になったという事かな? ロシア側は素早くクリミア半島などに援軍を派遣して領土化してしまったし、その一方でアメリカ軍などは実効力があるかないか分からない経済制裁でお茶を濁すだけで全く援軍を派遣しようとしないし。」

逆沢「とするとこれからウクライナはどうなっちゃうのかな? アメリカなどに扇動されて武力蜂起した親米派のウクライナ国民だけが見捨てられて終わりってか? それこそ信長におだてあおられて上月城に入ったのはいいものの、結局信長に使い捨てられた山中鹿之助みたいに。」

愛原「まぁロシア側にこれ以上の領土化の意志はなさそうだから、当面は硬直しそうな気がしなくもないが・・・。クリミア半島は戦略上の要衝だからロシア側も迅速に制圧したけど、それ以外のウクライナ領は、うかつに領土化するとデメリットの方がハンパじゃないし。」

逆沢「ああ、確か領土化すると、色々財政負担が半端ないらしいわね。クリミア半島を領土化しただけでも、ロシア側の財政負担は相当のものになるらしいし。」

愛原「領土化するという事は、新しく加わった新国民にも同じだけの福祉や権利を保証しなくてはならないという事だ。東ドイツと西ドイツが合併した時も、両国民の水準をそろえる為にかなりの財政負担が発生したし、アメリカがイラクなどを領土化せず、植民地化に留めたのも同じ理由。植民地化した土地から搾取はできるけど、本土と同待遇にしてしまうと搾取もできなくなってしまうし、逆に同待遇に押し上げる為にかなりの財政支出をしなくてはならなくなってしまう。」

鼎「ロシアにはこれ以上領土化を進める意志はなくて、ウクライナの連邦化を狙っているという報道も聞いた事があるよ。だからロシア軍がこれ以上積極的にウクライナ本土に武力介入する予定もなくて、親ロシア派に武器などを供与するレベルに留めているらしいし。」

逆沢「まぁロシアが本気になったら、クリミア半島が電撃制圧されたみたいに、ウクライナ本土自体も速攻で電撃制圧されそうだしね〜。」

愛原「なお一部報道で、ロシアが親ロシア派に武器供与している事を非難するような内容も見受けられるが、それは西側諸国も同じだ(日本国内では西側諸国に都合の悪い報道はしないだけ)。西側諸国による武器の供与などがあったからこそ市民の力で国軍もはねのけて大統領府も制圧できたのだろうし、今でも親ロシア派相手に十分に戦えている。ある意味ベトナム戦争と似たような代理戦争の様相すら見受けられるな。儲かるのはアメリカやロシアなどの武器商人だけで、実際に血を流しているのはウクライナ人という構図ともいえる。」

鼎「ウクライナ情勢というのは、ウクライナ国民の側からみれば、武器だけは支給してくれるけどアテにならない援軍を待つだけの悲しい構図という事になるけど、対立を煽っているアメリカやロシアの側からすれば、自分の手を一切汚さずに援軍同士で戦わせている構図と取れなくもないって事かな?」

逆沢「美味しいところは全部大国が持っていく一方で、不毛な自国民同士の殺し合いを強いられているウクライナ国民という構図でもあるって事ね。」

愛原「しかも自国民同士で殺し合いもやって、お互いに憎しみあっていて、今更引くに引けない状況というのが悲しいな。それで喜ぶのは国外にいる大国でしかないのに。」

逆沢「アテにならない援軍をアテにしてドツボにはまった小国の住民と、援軍をちらつかせて小国で憎しみの連鎖を作り上げた大国。大国の影さえなければ、一方の陣営が大統領府を襲う事も、もう一方の陣営が隣国を招き入れる事もなかっただろうに、本当に悔やんでも悔やみきれないわ。」

鼎「ベトナム戦争などもそうだったけど、大国からの支援をアテにしてしまったが故に、国内で激しい殺し合いをせざるを得なくなるって悲しいよね。しかもここまで内戦がひどくなってしまっては、ウクライナ国内の両陣営どちらも、大国に頭を下げて武器などを供与し続けてもらわないと負けてしまうから、大国からの不当な要求すら呑まずにはいられなくなってるし。」

逆沢「援軍をちらつかせて対立を仕組んだのは大国なのに、いつの間にか大国に頭を下げて言いなりにならないと、自分の生命の存続すら怪しい状態にまで追い込まれているなんて悲しすぎるわ。」

愛原「人間誰だって、勝算のない殺しあいなどしたくないから、多少の不満はあっても我慢もできる。しかしそこに大国が援軍をちらつかせる事で一方の勝算が高まると、本来なら起きなかったはずの戦争が始まってしまう。そうなるともう一方も生き残るために別の大国の支援を仰がなくてはならなくなって、別の大国も介入した結果、どちらも勝算が見えない泥沼に陥ってしまう。そして支援によるメリットを見いだせなくなった大国のどちらかが先に支援をやめた(弱めた)時、大国に見捨てられた陣営が破れる形で戦いが終わる。当事者達の戦術能力や敢闘努力とは関係なく、大国の思惑だけで勝敗が決まってしまうのだ。

逆沢「援軍こええ〜!!!」

鼎「もちろんイラク情勢のように、一方だけに特定の大国が肩入れした結果、前政権が倒れて別の新政権(傀儡政権)が立つ事も多いけど、その場合もその新政権は大国の言いなりになって引き続き後ろ盾になってもらわないと、前政権の生き残りの人や別の不満層の住民によって政権を倒されてしまうだけだから、結局大国に振り回される結果だけは変わらないし・・・。」

逆沢「今のイラク情勢がまさにそれね。アメリカが撤退宣言した途端、自力で政権を保てない新政権が早くも窮地に立たされているし。まぁアメリカがフセイン政権を倒すまではなんだかんだでイラク国内はまとまっていたんだから、その前の状態に戻したい住民も少なからずいるだろうし、この機に乗じて一旗揚げたい別の勢力が介入してきてもおかしくはないだろうけど。」

愛原「以前、傭兵の恐ろしさについて語った事があるが、傭兵にしろ援軍にしろ、他者をアテにして戦争をおっぱじめる程、浅はかな事はない。そんな事をしても、他者に主導権を握られて操り人形にされるだけだ。第二次世界大戦で傷つけられた外交関係が未だに修復されないように、一度殺しあいをやって外交関係を破壊してしまったら、その修復は容易ではない。2つに割れたウクライナ国民が1つになって再び信頼関係を取り戻すのもおそらく短期間では不可能だろう(下手するとそう遠くない内に国が分裂する)。仲を裂くのは簡単だが、仲直りするのは難しいのだ。」

鼎「死の商人からすれば、できるだけ世の中がきな臭くなるほどもうかるから、色んな方法で仲を裂こうとするんだろうけど・・・。」

逆沢「そして援軍という方法は、仲を裂いたり、ミリタリーバランスを崩すには最も手早い方法になりうるって事ね。」

愛原「単なる友情だの人道支援だの、美しいお題目につられて援軍に対する判断を誤ると、のちのち大変な事になる。援軍というのは特定勢力間の友情を深める手段である以上に、特定勢力間での信頼関係をメチャクチャに壊しかねないものなのだ。集団的自衛権自体を否定するつもりは全くないが、くれぐれも大国の操り人形になってすりつぶされないように、その運用には慎重でありたいものだ。」



















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