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愛原様のたわごと(14年10月19日)







愛原「先週、クローズアップ現代にて防犯カメラが誤認逮捕を招く事例が紹介されていて、大変興味深かった。」

鼎「防犯カメラって、これ以上ないくらい証拠として価値が高いような気がするけど、それでも誤認逮捕って起こりえるのかな?」

愛原「番組内で取り上げられた最もありがちな誤認逮捕事例として取り上げられたのは、まず防犯カメラ内の映像の一部しか確認せずに、その一部を根拠に犯人を決めつける図式だったな。」

逆沢「一部でも決定的な映像なら、何も問題ないんじゃね? 犯行を起こしたその場面の映像とか?」

愛原「決定的な映像ならまだしも、そうじゃないから誤認逮捕が起こるのだ。たとえば容疑者がその場所にいた事だけが、防犯カメラによって判明しているに過ぎないとか。」

逆沢「犯行が行われた時間帯にいたのがその容疑者だけなら、それだけでも証拠としては十分なんじゃないの?」

愛原「番組を進めていくと、警察がノーチェックだった別の時間帯の防犯カメラに、別の容疑者によるより疑わしいシーンが映っていたり、その容疑者の潔白性を証明できそうな(容疑者の犯人性を打ち消すような)シーンがあって、結果的に誤認逮捕と認定された場面があった。容疑者とされた人物の指紋が検出されたけど、その指紋は全く犯行とは関係ない時間帯の防犯カメラにその容疑者が自然につけた指紋でしかない事が映ってたりとか、全く別の容疑者が窃盗済の財布(中身は抜き取り済み)を捨ててるシーンが映ってたりとか。」

逆沢「それ、全然防犯カメラが悪くないんじゃね? むしろ防犯カメラが容疑者のえん罪を証明する働きすらしてる訳で。防犯カメラの一部だけを見て、勝手に犯人と決めつけて逮捕した警察連中がおっちょこちょいというか、その捜査を担当した警察官が間抜けなだけで。」

愛原「うん。誤認逮捕で捕まえられた容疑者自身も、【もしも自分の無罪を証明する新証拠が見つからないままだったら、自分はこのまま犯人と決めつけられたままだったのだろうか?】と憂慮するコメントをインタビューでしていた。中には300日以上、誤認逮捕で拘留されていた容疑者もいたようだ。」

逆沢「うーん。もしも自分が同じように妙な疑いかけられて逮捕されたらと思ったら、怖くて振るえてしまう思いねー。」

愛原「警察は、容疑者が映っている防犯カメラの映像の一部だけを切り取って、その映像を根拠に【この通り、防犯カメラにお前が映っているんだ! 防犯カメラにお前が映っている以上、どんな言い逃れもできねえぞゴラアッ!!】みたいな感じで容疑者を追い詰めていくらしい。確かに映っているのは自分自身という事もあって、容疑者は激しくショックを受けるらしい。」

逆沢「でもよくよく考えたら、その【自分に都合のいい一部だけを切り取って、ドヤ顔で相手を追い詰める手口】って、ネットで暴れてるカスどもの常套手段じゃね? そんなものに惑わされるなと言いたくもなるというか・・・。」

鼎「でも警察の人にそれをやられると、すごく怖いと思うよ。番組の例では、防犯カメラ全体を調べ直してみる事で、別の容疑者が犯行を行っているより決定的な姿が映ってるとかで、容疑者のえん罪を証明する事ができたみたいだけど、そんな幸運に恵まれる事は滅多にないと思うし。警察や他の関係者が証拠の防犯カメラを再チェックさせてくれるかどうかも、微妙な気もするから。」

逆沢「痴漢えん罪と一緒ねー。【疑われた者が悪い。お前が無罪と言うなら、無罪である事を証明してみせろ。できなければお前が犯人だ】って事か? シャレにもならんわ。」

愛原「防犯カメラに容疑者が映っていると言う事で、警察はそれを最有力証拠として容疑者を責め立てるが、実際にはその分析がずさん極まりない事も多いらしい。そもそも撮影した日時自体がちゃんと把握できておらず、犯行時間と関係ない時間帯の映像をドヤ顔で根拠にする事すら珍しくないらしいし。また画質などが良くない防犯カメラでは、子供をあやしているはずの映像が、揺さぶって虐待しているようにしか見えない事もあって、それが虐待の証拠と勘違いされたり。時には、他人と取り間違う事もあるようだ。警察は何となく似てると思い込んで容疑者を決めつけ、目撃者の店員に【この人ですか?】と聞いてみると、【言われてみると特徴が似ているかも知れない】との供述も得られたからといって、防犯カメラという物証と目撃証言の二段構えで犯人と決めつけて、容疑者を拘束したり。」

鼎「なんか昔見た【相棒】という刑事ドラマの一場面を思い出したかも。実際には目撃証言なんてものはすごく曖昧で、警察から確認を求められても【言われてみればそうかも知れない】と応えるしか無さそうなケースも多いらしいよ。」

逆沢「痴漢えん罪もそうだけど、正確に犯人の顔を覚えるなんて難しいと思うわ。つーか、目の前で交通事故が起きても、即座に事故をひき起こした車のナンバープレートを記憶できる人自体、意外と多くないと思うし。」

愛原「他人の車のナンバープレートどころか、自分が運転する車のナンバープレートすら、正確に即座に答えられない人も、少なからずいるからな。かつて昭和の犯罪史で有名なグリコ森永事件か何かで、犯行現場近くにいた怪しい車の運転手に自車のナンバープレートを問いただしたら、そいつが答えられなかった事からそれが盗難車で運転手が犯人と判断したものの、結果的には全くの別人で、結局、そのゴタゴタの隙に真犯人に逃げられたなんて逸話も聞いた事はある。」

逆沢「うーん。自分が運転する車のナンバープレートくらい覚えておかないと、いざという時に盗難車泥棒扱いされて、面倒くさい事になりかねないって事か?」

鼎「でも現代では、自分の自宅の電話番号や自分が手に持つ携帯の番号すら、素で言えない人もいるそうだから、自分の車のナンバープレートを知らない人が多くいてもおかしくないだろうし、そういう捜査自体あまりやらないような気がするかも。」

逆沢「自分自身の持ち物である事を証明する電話番号やナンバープレートすら知らない人が、他人の顔や電話番号やナンバープレートに関心を払うはずがないかもね。警察による聞き込み捜査が困難になって、防犯カメラが主流の世の中になってもやむを得ない気もするわ。」

鼎「都会では、隣の家(マンションであれば部屋)の住民の名前も顔も知らない人も、珍しくなくなりつつあるようだよ。防犯カメラに依存せざるを得ない世の中になっても仕方ないと思ったかも。」

逆沢「私達も防犯カメラの映像を頼りにするし、防犯カメラに犯人が映っていたという報道が流れたら、これでもう犯人は特定され、後は追い詰めるだけと思っちゃうくらいだしね。」

愛原「しかし実際の所、防犯カメラは証拠として必ずしも絶対ではない。画質がイマイチであれば別人の疑いも出てくるし、決定的な場面でなければ【たまたまそこを通りがかっただけ】の人の可能性もある。また取調官がおっちょこちょいであれば、そもそも犯行時間と無関係の時間帯だけしか調べていなかったり、あるいは犯行時間の内の一部の時間の分だけしか調べていないのに、【この時間帯に映っていたのはコイツだけだから、コイツが犯人だ】と勘違いする可能性もある。まぁクローズアップ現代の解説者は、警察の人員不足の結果、たくさんある防犯カメラの内、一部だけしか調べてなかったり、一部の時間だけしか調べないままの例や、怪しい容疑者が一人現れた時点で(そいつを犯人と決めつけて)防犯カメラのチェックを中断してしまう例などは、しばしば起こりえるという旨を説明されてたが。」

鼎「思い込みって怖いよね。長い長い時間をかけて防犯カメラをチェックしてて、苦労の末にようやく一人の容疑者の映像を見つけた時点で【ついに犯人を見つけたぞ♪】って錯覚して、それで犯人と確信しちゃうとすると。」

逆沢「思い込まれた方は大迷惑だわ。」

愛原「という訳で今回のテーマは、【真相にたどり着けない者】だ。」

鼎「今回は推理ものネタで行くって事かな?」

愛原「推理ものは大好きだ。といっても自分で作る気はないし、作る技量も知能もないけれど。」

逆沢「あはは。推理ものは、センスと教養がないと到底面白い作品は作れないと思うわ。」

鼎「推理ものは、誰が真犯人か分からない。何が動機か分からない。アリバイを崩せない。トリックが分からない。そういう状態からそれらの謎を解き明かす工程がすごく楽しいよね。」

逆沢「作品によっては、いきなり容疑者が特定されている事も多いけど、そういうのは大抵は真犯人じゃないわね。真犯人がそいつに罪をなすりつけてる場合が多いというか。」

愛原「間抜けな脇役刑事などが、真犯人じゃない容疑者を犯人と決めつけて拘束してしまうケースも珍しくないよな。」

逆沢「その間抜けな脇役刑事などが、今回のテーマとなるって事か?」

愛原「彼らはなぜ真相にたどり着けないのだろうか? まぁ主人公のそばにいれば、いずれタナボタで真相にたどり着ける事にはなるが、少なくとも自力では決して真相にたどり着けないタイプというか。」

逆沢「上の誤認逮捕の例じゃないけど、結局の所、思い込みが激しすぎるんじゃね? そいつが犯人と思い込んだら、絶対にそれを疑わないタイプというか。本人の頭の中ではそいつが犯人である事は確定していて、後はどう犯人を料理するかで頭がいっぱいになってるというか。だから自白を強要したり、そいつを犯人と決めつけるのに都合のいい情報や証拠だけを採用したりとか。無論、そいつを犯人と決めつけるには都合の悪い情報や証拠は、見なかった事にして。」

愛原「上のクローズアップ現代でも、容疑者には犯行時間のアリバイ(その時間帯は友人と通信していた)等があって、携帯の通信記録にもそれがあったにも関わらず、警察側がそれを無視して300日拘留してた件が放映されていて、ガチでこういうえげつない真似が行われるのだなと改めて感じた。足利事件などもそうだけど、一度犯人と決めつけたら、どれだけ反証が出てこようとも容易にその認識を改めない人種や組織というのは、間違いなく存在するらしい。」

逆沢「彼らは間違いを認める事を、恥と考えているみたいだからねー。あるいは誰にも頭を下げたくない考えているというか。間違いを認めると謝罪や訂正をしなくてはならないけど、間違いを認めなければ(それがどれだけ過ちであろうと)自分はまだそれを信じているという理由で謝罪や訂正を拒否し続ける事ができるから。」

愛原「まぁ今回のテーマは謝罪や訂正の話ではなく、あくまで真相にたどり着けない理由の方だから、少し話を戻そう。上のクローズアップ現代の例でいえば、警察自身に必ずしも悪意はないと思われる。誤認逮捕やえん罪を好んで出したいと考える捜査官なんて普通はいないと思うし、にも関わらず間違えてしまう。なぜ、間違えるつもりがないにも関わらず間違えてしまうのか? こちらについて少し考えてみたい。」

鼎「その理由も番組内で答えは出てるよね。たった一人の容疑者を発見するのも簡単ではないし、長い時間をかけて目を皿にして防犯カメラもくまなくチェックして、苦労のあげくようやく一人の容疑者を見つけたら、それで安心しちゃうというのはあるんじゃないかなぁ。これだけ苦労してたった一人なら、その人が真犯人で間違いないと。」

逆沢「実際にはもっともっと時間をかけて調べたら、他の容疑者が見つかったり、その容疑者の犯人性を打ち消す証拠も見つかる可能性もあるんだけどね。」

鼎「別のより有力な容疑者が見つかった場合は、警察も割と早く誤認逮捕を認めるようだけど、単に容疑者が犯人と決めつけるには不利な証拠が出ただけの場合は、警察はなかなか誤認逮捕を認めないようだよね。足利事件にしろ、パソコン遠隔操作事件にしろ、最初に疑われた犯人がシロという証拠があっても、別の容疑者が明らかにならない限りは、警察はなかなか誤認逮捕を認めないというか。」

愛原「クローズアップ現代で300日拘留された容疑者も、裁判所で判決が出るまで警察は決して誤認逮捕を認めなかったようだしな。痴漢えん罪でも同じ事だけど、別の容疑者が現れない限りは、とりあえずそいつを犯人という事にしておきたいという心理が働くのかな? 別の容疑者が現れない時点でそいつを釈放するという事は、事件の迷宮入りにしかならないから。」

逆沢「事件を迷宮入りさせるくらいなら、適当な誰かを犯人という事にしておいた方がマシと思っているという事か? 彼らは。」

愛原「まぁ我々一般市民にしても、誰が犯人かも分からない落ち着かない状態が続くよりは、(そいつが真犯人かどうかは別にして)とりあえず犯人が判明した方がスッキリできるだろうからな。どうせ我々庶民は、報道や警察発表を信じるだけで、そいつが真犯人かどうかなんて分かりっこないから。」

鼎「もしもオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こさなければ、河野義行さんは今でも犯人扱いされているのかなぁ?」

愛原「それを言ったら、和歌山カレー事件も全く同ケースだからな。昔、カレー事件の真犯人が別にいる可能性を指摘した本を読んだ事もあるが、なる程と思った事がある。河野義行氏が疑われて逮捕されたパターンとも何となく似てるなぁとも感じたりとか。」

逆沢「ん? お前はまさかあのおばさんが無罪とでも主張したいのか?」

愛原「そういう善悪二元論は嫌いだな。俺は特定の人物を指して無罪だ有罪だを断言したいのではなく、小さくないレベルの疑義があると言っているだけだ。STAP騒動にしてもパソコン遠隔操作事件にしろ、やれ【あいつは犯人だ】とか【いや、えん罪だ】とか騒がしくてイライラしたが、俺は証拠もそろわない段階で予想屋ぶって、シロクロを明言する事自体嫌いだ。分からない事は分からないというし、疑義があれば疑義があると言う。もちろん【疑義がある=えん罪】というのではなく、単に証拠不十分状態に過ぎず、新証拠が集まれば評価を変えていくという事でもある。証拠が不十分だから逮捕も事情聴取も一切すべきでないとまでは言わないが、犯人と決めつけて無理矢理に自白を強要するようなのはさすがにどうか?というのが俺のスタンスだ。」

鼎「そういえばこの前、神戸で起きた小学一年女児行方不明事件で、まだ女児の遺体が発見されていなかった頃の話だけど、全て知ってるような口調で【母親が怪しい】とか【長田区ではいつそんな事が起きても不思議はない】とか、偏見で物事を決めつけるような書き込みをみて残念な気持ちになった事があるよ。」

愛原「女の子ではなく、お前が○されてたらいいのにって思えるレベルだな。ドラマで出てくる誤認逮捕しまくりの三流刑事でも、そこまでゲスなコメントはそう滅多に吐かんわ。大体、人口3万人未満の町村でも隣保や校区ごとに色んな顔があるのに、10万人近くいる長田区を一括りにする時点でおかしいし、そもそも阪神大震災で最も大きな被害を受けて、再開発で町並みも住民も最も大きく入れ替わった長田区の何が分かるというのだ。失礼極まりないというか、極めて不快だ。」

逆沢「まー、事件が起きる度に、先にシロクロ決めたがる輩ってのは、どこにでもいるからねー。」

愛原「そういう思い込みが、誤認逮捕やえん罪を招く。仮に結果的に真犯人で間違いなかったとしても、それはきちんとした証拠にのっとって判断したものではなく、ただの期待や憶測でしかないから、動機や犯行の中身において重要な錯誤をしている可能性も高くなる。裏を取らないまま犯人と決めつけているだけだと、緻密なトリックや反証を用意している犯人側にそれを突きつけられたあげく、そのトリックや弁論を突破できないまま、証拠不十分で逃げ切られる可能性も高くなる。」

鼎「刑事ドラマでも、そういうシーンはあるよね。真犯人は分かっていても、犯人が用意したアリバイやトリックを崩せないまま、立ち往生するシーンとか。」

愛原「結果的にそいつが真犯人であろうがえん罪であろうが、思い込みだけで証拠も突き詰めぬままに結論だけ先に出す奴は、捜査官としては三流という事だな。」

逆沢「長田区だからとか家庭環境がどうとか、訳の分からない理屈だけで親が犯人だと言い放つような輩は、推理ドラマの見過ぎにしては、あまりにレベルが低すぎるって事か?」

愛原「大津いじめ事件でも、教育長が家庭環境がどうこういって被害者遺族をおとしめていたが、あれと同じだな。個人的な妄想だけで勝手に憶測を公共の電波(ネット含む)に垂れ流し、さらに被害者を苦しめる。」

鼎「彼らが真相にたどり着けない最大の理由は、【真相にたどり着いた】と思い込んで満足して、証拠固めを中断したり、判断が間違っている可能性を否定してしまうからかも知れないね。」

逆沢「満足してしまうのが、まずいって事か?」

愛原「結論にたどり着かない内は、結論に達する為に色々探究もできる。しかし結論を出してしまうと、もうそこで話の大部分が終わってしまうからな。」

鼎「結論を急ぐ人も危ないよね。結論を急ぐ人は、その根拠が薄弱なまま、その薄弱な根拠を理由にしてさっさと結論を出してしまう事も多いだろうから。」

愛原「かつて小早川隆景が黒田官兵衛に対して【貴殿はあまりに頭がよく、物事を即断即決してしまうことから、後悔することも多いだろう。私は、貴殿ほどの切れ者ではないから、十分に時間をかけたうえで判断するので、後悔することが少ない】と評した事があるらしいが、黒田官兵衛程の大英雄でも決断を急ぎすぎると失敗する事があるのに、凡人が結論を急いだら、そりゃあおかしな結果になっても不思議はないわ。」

逆沢「でも結論を急いでしまったり、思い込みが激しいからこそ凡人なんだという気もするけどね。」

愛原「そういえば以前ここで紹介した【悲湯〜遺伝子レベルの殺意】は、そういう意味で大変よく練られたシナリオだった。【ようやく真相にたどり着いた】と安直に思い込んでしまうと、60点のエンドにしかならないからな。」

逆沢「そのゲーム。事件が起きるまでの前置きがやたら長いのが欠点なのよねー。結構長いから、60点のエンドでもとりあえず満足して終わっちゃうプレイヤーはいるような気がするわ。」

鼎「それ、冒頭のクローズアップ現代で、誤認逮捕した警察の対応と同じなんだけど・・・。長くてだるい防犯カメラを調べてようやく一人の容疑者が現れたから、それで満足して、そいつを逮捕して捜査終了というのは・・・。」

逆沢「まぁゲームだからねー。リアルでとりあえず真犯人っぽい容疑者を逮捕したからそれで満足して終了ってのは、いくらなんでも怖すぎると思うけど・・・。」

愛原「【悲湯〜遺伝子レベルの殺意】の作者さんは、推理もの系のシナリオデザインにセンスがあるらしく、ウディタ製SRPGのセドールでも、一つ含蓄のある言葉を残している。【原因と結果を逆にすれば、真相が見えてくる】というものだが。」

逆沢「は? 原因があるから、結果が起きるんじゃないの?」

愛原「俺も通常はそう思う。いや、そういう基本思考で長く生きてきた。因果応報というか、原因があるから結果が生じるという理系的発想に忠実にな。しかし言われてみれば納得できる部分も多いのだ。なぜなら人は、望む理想(結果)を実現する為に、その理想に至る状況(原因)を作り上げようとする生き物だから。」

逆沢「ちょっと難しい。もっと分かりやすく説明しろ。」

愛原「冒頭の防犯カメラによる誤認逮捕を例に取ろう。まず警察にとって望ましい結果は何だ?」

逆沢「もちろん真犯人を捕まえる事ね。」

愛原「その結果に至るには、何が必要だ?」

逆沢「証拠ね。防犯カメラみたいな有力な証拠があれば、一番理想というか。」

愛原「その防犯カメラに容疑者らしい人が映っていたとしたら?」

逆沢「それは一番理想の形ね。これ以上ない有力な証拠と共に犯人が特定できた訳だから。犯人が特定できた以上、これ以上の捜査も継続しなくて済むし、大万歳だわ。」

愛原「そして他の有力な証拠は調べられず、全くの別人を逮捕して物語は終わる。望む結果を実現しようとした結果、偏った証拠だけが用意されて、より真相に迫る証拠は無視されたまま。」

鼎「つまり望む結果になるように原因が後付けされると言いたいのかな?」

愛原「上の例は警察に悪意のないタイプだが、実際の人間には悪意もあるからな。望む結果になるように、証拠をねつ造したり恣意的に取捨選択して、コイツが犯人という事にしてしまう事もあるだろう。犯人は犯人で証拠を隠蔽したりアリバイを工作して、俺が犯人じゃないという事にしたがるだろう。」

逆沢「嘘の原因を作り上げたり、自分に都合のいい偏った原因だけを抽出して、望み通りの結果を実現する訳ね。本当なら迷宮入りになるような難事件でも、本来ならシロとなる容疑者のアリバイを握りつぶす事で、そいつを犯人に仕立て上げて、事件解決という結果を実現してしまうとか。」

愛原「原発再稼働派の主張なんかもその典型だな。彼らは原発再稼働を成し遂げるという望む結果だけが先にあって、それを実現する為に【原発再稼働が必要な理由】とやらを、後付け設定でポンポン出してくる。山本弘氏発案の【無敵くん】そのものになってな。」

鼎「確か最初は、電力が足りないから原発再稼働をすべきとか言ってたよね。でも実際はそんな事は全然無くて、今は太陽光発電の電力供給が多すぎるから受け入れを制限する程にもなってるけど。」

逆沢「【それどころか原発を否定するなら電気を使うな】みたいな無茶を言う人までいたわね。今は全く逆の状況だけど、彼らは恥知らずにも未だに電気を使ってるのかな?」

鼎「報道では、太陽光は昼間しか供給できない不安定なエネルギーだから、安定供給可能な原発や地熱などに切り替えていくべきという偉いさんの主張もあったけど、これもかつての状況を考えたら矛盾しまくりだよね。」

愛原「原子力は24時間常時発電で、細かな出力調整ができない為、夜間電力が余りまくる問題があった。その問題を解決する為に夜間発電分を揚水発電で蓄電したり、火力発電の側で需給調整していた。東日本大震災が起きた直後で、まだ太陽光のシェアが低く火力発電の再稼働が間に合わなかった頃は、消費電力が多い昼間をメインに節電や計画停電も議論されていたが、不足しがちな昼間に強い太陽光発電が広がるにつれて、節電も計画停電も死語になっていった。仮に太陽光が余りすぎているなら、その分、火力を減らして調整するか、揚水で蓄電すれば済む話なのに、なぜかそういう話は全く出ない。」

鼎「原子力も止めて、火力のシェアまで低くなったら、電力会社の儲けがほとんど飛んでしまうから、それだけは避けたいのかも知れないけど。」

逆沢「つまり総括原価方式で放漫経営やりたい放題だった昔のような状態に戻したいから、外注買い取りを抑制して、原発を回したいというのが真相って事か? あと東京電力株が紙くずになるのを避けたい経団連や、原子力ムラの利権などもからんで。」

鼎「もたらされる情報が恣意的と思える点では、原子力発電にかかる設備コストや維持コストなどの懸念話は政権側や電力会社側からでないのに、なぜか太陽光や他の発電コストの話ばかりがやたら強調されるのも気になるところだよね。関西電力や原電など(正確には中部電力以外のほとんどの電力会社)は、廃炉費用も捻出困難だから回し続けるしかないみたいな論法だけど、耐用年数を超えれば廃炉はいずれは避けられないし、彼らが廃炉コストの大きさを強調すればする程、実際には原発のコスト効率の悪さが強調されるだけなのに。」

愛原「中部電力が所有する浜岡原発は、東海道新幹線や東名高速が近くを走っている上、東海大地震の懸念も大きい事などから、他の原発以上にこまめな廃炉を繰り返すなどして、特に管理に気を遣われているからな。原発のシェアも他の電力会社と比べて低いが、そのおかげで東日本大震災以降は電力不足などの懸念もほとんどなく、今では東京電力管内への売電にも積極的に動いている程、強気なくらいだ。」

逆沢「一年前は火力発電のコストがどうだのシェールガスがどうだの騒いでたけど、無敵くんは状況が変わる度に、思いついた【再稼働が必要な理由】を後付け設定で次から次へとしつこく出してくるから面倒くさいわ。」

鼎「アベノミクスのインフレで牛丼やその他の製品の単価が上がれば従業員の給料も上がって景気も良くなると叫ぶ一方で、売電による民間参入によって電力料金が上がれば景気を悪化させるとか、どうみても二枚舌そのものだし。」

逆沢「鉄道から郵便まで何でもかんでも民営化で経済は良くなると言い続けた一方で、発電事業の民間参入だけは逆なのか? 本当に二枚舌が惨すぎるだろ。」

愛原「まぁ後付けで出すのはともかく、こちらが前々から主張する問題点に関して無回答という方が心底困る(過去のたわごとで大文字で何回も書いてるから、ここでもしつこく同じ事は書かないけど)。容疑者がシロという証拠を握りつぶして、クロっぽい証拠だけを声高に出して、無理矢理犯人に仕立て上げようとするクソ警察官並に困る。」

鼎「【原因と結果を逆にすれば、真相が見えてくる】の意味がすごくよく分かったよ。私達は、かくかくしかじかの事情があるから原発再稼働を急ぐべきだと考えがちだけど、実際には原発再稼働を急ぎたい人がいるから、そうなるようにもっともらしい理由だけがクローズアップされたり、原発再稼働をせざるを得ない状況に持ち込まれたりするって事だよね。」

愛原「原子力規制委員会のメンツが政権の思惑で大きく入れ替わって再稼働に対して寛容になった事。太陽光発電の受け入れを制限して外部からの電力供給を抑制する方向にした事。電力会社自身が新規の発電所建設に後ろ向きで再稼働以外の新規発電を全く考えていないこと。原子力の維持コストだけは主に税金で、他は電気料金に転嫁する事で原子力以外は割高と国民に認識させる事。原発の安全性を強くアピールする事。それらを積み重ねて、原発を再稼働しないと日本経済にマイナスだからという原因を作り出して、望み通りの結果を得ようとしている。そう考えると【原因と結果を逆にすれば、真相が見えてくる】の意味がよく分かるはずだ。」

逆沢「なる程。上の防犯カメラが誤認逮捕を生む不思議についても、ようやく真相にたどり着いた気分だわ。私達は警察がおっちょこちょいだから誤認逮捕になったと考えがちだけど、犯人逮捕という結果を急いだ結果を原因としてとらえればよかったって事ね。」

鼎「でもそう考えると、すごく怖い想像もしちゃうよ。たまたま新証拠が見つかったりしてえん罪が証明された人はいいけど、そうでない人が実はたくさんいるんじゃないかとか。犯人は既に捕まって事件は解決した事になってるけど、実は無関係の人が犯人として処罰されている例も多いんじゃないかとか。実際、裁判所で無罪と言われない限り、容疑者がどれだけ声を上げても、その声は私達に届かないし。」

逆沢「中国と日本の差は、自国の悪い部分に国民自身が気づいているかどうかの差という人の話を聞いた事もあるけど、なんか分かるわ。日本ではおかしな事が起きても、誰も気づかないから、見た目はすごくまともに見えるし、国民が不満を持ちにくいだけかも知れないというか。」

愛原「ホリエモンは悪い事をしたから逮捕されたとも言われるが、実際に彼が有罪を受けた容疑は【風説の流布】という通常ならまず実刑になりようもない罪状であり(おそらく彼が初めての実刑例だと思われる)、オリンパスなど、当時のライブドアとは桁違いで同種の犯罪を犯した企業で同様の処罰をされた例がまれな事を考えると、まずホリエモンを逮捕するという結論だけが先にあって、容疑が後付けされたと思われても仕方ないと思う。」

逆沢「ああ、その矛盾というか理不尽を指摘したTシャツとかも有名ね。やっぱホリエモンは、経団連のお偉いさんとかに嫌われていたから潰されたのかね〜。逆に森喜朗の息子とか、最低でも飲酒運転で罰せられるべきなのに放免される例もあるし、この国の警察や司法は何なのかと考えされられなくも無いわ。」

鼎「私達が真相にたどり着きたいのなら、原因と結果を逆に考える発想も必要って事かな? そうでないと真相を隠して、望み通りの結果に導こうとする人の影にすら気づけないだろうから。」

愛原「俺たち自身、期待する結果というのはあるからな。そして善良な警察官一人一人にも、真犯人を一人でも多く捕まえたいという純粋な思いはあるだろう。だがその期待する結果が、真相を見抜く目を曇らせる。犯人をなんとしても捕まえたいとか、迷宮入りだけは避けたいという真面目な使命感が、誤認逮捕やえん罪を生む。俺たち自身も、期待する結果と、その結果を臭わせる情報があれば、ついその結果が真相と思いたくもなる。」

逆沢「つまり神戸の女児失踪事件の時に長田区がどうだの親が殺しただの言うような人は、内心でそういう結果を期待していた可能性があるって事か? 実際には最有力の容疑者は長田区とはほとんど無関係のヨソ者で、親も無関係っぽいけど。」

鼎「けどこの前のセクハラヤジの時のセカンドレイパーじゃないけど、未だに後付け設定を次々盛り込んで長田区ネガキャンをする人もいて、こういう人種は望み通りの結果(しかも特定の人を不幸にする以外の効果はない)を得る為なら手段を選ばないというか、世の中には黒い心にまみれた人もいるんだなと残念な気持ちになったよ。」

愛原「本人の中では、それが最も血湧き肉躍るドラマチックな展開なんだろうな。ネタになるとでも思ったかも知れないし、そういう結果になればネットでも盛り上がれると心の深層で思ったかも知れない。まぁどんな人間にも黒い心はあるし、心の中でどう思おうと勝手だが、それを理性で抑え込まずに欲望のままにネットで拡散するようでは、自分の価値を下げるだけにしかならんと思うけどな。」

鼎「期待する結果があったとしても、それに捕らわれてしまうようでは駄目だよね。」

愛原「うん。でも正直惑わされないというのは、なかなか難しいとも思う。たとえば先日【危険!なぜネットがあなたの好みを決めるのか?】という記事を読んで、納得すると同時に愕然ともさせられた。俺自身はできるだけ中立に物事を考えようとしてるが、仮にネットでどれだけ検索しても、自分好みの記事しか上位に現れない世の中になったら、自分は果たして冷静に判断できるかとも。」

逆沢「自分と同意見の持ち主が多数派を占めていると思ったら、ただ単に同意見の持ち主のコメントばかりが検索で表に出てくる可能性もあるって事か?」

愛原「まぁどんな不人気政治家であっても、地元の後援会の会合では支持者しか集まらないだろうし、どんなマイナー教団に所属していても、教団施設内では仲間しかいないだろうから、そういう所に閉じこもっていると色々錯覚してもおかしくない。ネットで検索しても、自分好みの記事ばかり現れる世の中になったら、大半の人間は多分勘違いせずにはいられないだろうな。」

鼎「私達はどうしても、自分に都合の悪い記事は避けたがるし、都合のいい記事ばかり鵜呑みにしたくなるから、もしも都合のいい記事ばかりしか検索できなくなったら、簡単に洗脳されてしまう可能性もあるよね。」

逆沢「ビッグデータだかリコメンデーションだか知らないけど、余計な事はするなと言いたくなったわ。」

愛原「【真相というのは、必ずしも自分に都合のいい物ばかりとは限らない】という事を余程強く意識しないと、とても真相にはたどり着けないと改めて感じた。冒頭のケースに限らず、都合のいい事(容疑者が見つかる等)が起きると、思わずそれを鵜呑みにして、そこで結論を出して終わりにしたくなるが、そこで終わりにしたら駄目なのだ。世の中には悪意のある人もいる。悪意のある人に【こいつが犯人です】と吹き込まれて、それを信じて自分の中でハッピーエンドにしまったら、大変な事になる。」

鼎「本人達は【犯人が捕まって事件は解決!】と思い込んでるかも知れないけど、実際には事件は全然解決してないんだよね。真犯人は全然別の所にいて、無実の人が人生を狂わされて・・・。」

逆沢「信じている人は色々幸せになってるかも知れないけど、なすりつけられた人にとっては地獄そのものだわ。」

愛原「世の中には【お前が犯人に違いない!】とか【世間は認めなくても、俺だけは真相を知っている!】などと推理ドラマの主人公ばりに酔いしれている人もいるけど、真相にたどり着いたと思い込んでいる人ほど、実際は危うい。かつ迷惑だ。本人にとっては既に結論が出てるから、それに抗う奴は【往生際の悪い奴】でしかないかも知れんが。」

鼎「そういえば相棒というドラマで、何度誤認逮捕を繰り返してるか分からないような駄目刑事さんが毎回登場するけど、彼の頭の中では主人公の事も、【既に俺が結論が出しているにも関わらず、余計な事ばかりする邪魔な奴】であったり、【自分の出した結論をことごとく否定しては、恥をかかせる嫌な奴】であったり、【既に終わった事件を何度も蒸し返す面倒な奴】でしかないかも知れないと思ったかも。」

逆沢「自分の中では真相も明らかになってハッピーエンドで終わろうとしている段階なのに、それを無かった事にされようものなら、さすがに面白くないって事かな? まぁその人の頭の中でハッピーエンドで終わるって事は、別の誰かが無実の罪で人生を狂わされるって事だけど。」

愛原「そういえば昔観た相棒シリーズの中で、いい加減な目撃証言を信じた刑事のせいで無実の罪で服役までさせられた人が、出所後に偶然目撃証言をした人物と会ったんだけど、その目撃証言をした人が顔も覚えてなくて(作品内では実際にははっきり目撃した訳ではないから、顔を覚えていなくても当たり前という設定になっていた)、【あんた誰?】的対応をしてみせた為に、さすがに激高して【お前が嘘の目撃証言をしたせいで、俺の人生はメチャクチャになった】と怒りにまかせてぶっ殺したというものもあったな。主人公はそのぶっ殺した人を【無実の罪で服役させられた件については同情するけど、だからといって復讐するのは良くない】とばかりに非難してたけど、俺的には微妙な回だった。誰だって泣き寝入りしたくはないし、そりゃあ復讐してもおかしくないだろうと感じたというか。まぁ主人公は、誤認逮捕をしたまま実刑まで追い込んだ上、その点に関して【我々はそれが仕事だ】とばかりに開き直って反省しようともしない刑事に対しても強い非難をしていて、その点は共感したけど。ちなみに目撃証言をした人自身に悪意はなく、周りの人にそそのかされてそう証言するように誘導されたみたいな設定になっていて、目撃証言をした人自身は、決して殺されても仕方ないような邪悪ではなかったというシナリオにはなっていた。」

鼎「かつての目撃証言が、今の防犯カメラ的な扱いになってるような気もするけど、目撃証言も防犯カメラも、不確かな部分も多いから、それを過信するのは危険だよね。」

逆沢「つまりそのシナリオでは、強引に無実の人を牢にぶち込んだ刑事が真のワルって事か? まぁ尼崎連続変死事件に関しても、危機を切実に訴える被害者の父親に【お前が先に行くべきは警察ではなくハローワークだ】とばかりにハローワーク紹介するだけで事件そのものを無視したり、そのくせに主犯から逃亡中の被害者の身柄を拘束して主犯に引き渡したり、主犯容疑者の拘置所内で自殺させたり、訳分からないことばかりする香川県警や兵庫県警は、捜査は適正だったとばかりに誰一人警官を罰しないまま検証を終わりにしたけど、もしも【我々はそれが仕事だ】と思っているなら恐ろしいプロ意識だとは思うわ。」

鼎「せめて相手の主張には耳を傾けたいよね。思い込みをしない人はいないけど、自分の思い込みに激しく抵抗する人が現れたならば、何かおかしいと感じるくらいの感性は欲しいというか。変なプロ意識に捕らわれずに。」

逆沢「とりあえず自分にとって都合の悪い証拠や主張を聞かなかったことにして、スルーする奴だけはなりたくないし、関わりたくもないわね。そんな奴に犯人扱いされたり敵対されたら、こちらがどれだけ正当性を訴えても全部スルーして、自分にとって都合のいい論理だけを展開して、自分にとって都合のいい結果だけを実現しようとするだろうから。」

愛原「世の中には、望む結果を実現する為には原因のねつ造や恣意的運用や後付け設定も辞さない者も多い。自分自身もその一人になりかねない点を自戒しつつ、かつそういう相手に惑わされないようにはしたい。」

逆沢「どうせならそういう偏屈に巻き込まれない方法も教えて欲しいんだけど。私はえん罪なんかで人生を終了させられたくないし。」

愛原「そんな方法が編み出せるくらいなら、俺もノーベル賞確実だな。」

逆沢「いや、物理にも化学にも平和にも文学にも当てはまらないし、ノーベル賞は無理だろ。」
















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