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愛原様のたわごと(15年4月12日)






愛原「今回のテーマは【不遇な先駆者】。といっても、中国のロボットの話じゃないぞ。」

鼎「言葉通りの意味で解釈すると、先駆者というのは、草分けとか、開拓者とか、始祖とか、最初に何かを成し遂げたりする人の意味だよね。」

逆沢「英語だとパイオニアね。先駆者という日本語で言うよりも、案外英語の方が意味が通じやすかったりして。」

鼎「で、不遇というのは、力や才能があるにも関わらず、それが認められない不幸な状態の事だよね。」

逆沢「要するに今回のテーマは、ガリレオのような人の話という事か?」

愛原「その通り。ガリレオにしろ、フランス革命の実行者達にしろ、野茂英雄にしろ、先駆者であるが故に、後世の人からは高く評価されるも、当時の人(主に権力者)からは逆に反発を受けたり圧力や迫害を受けざるを得なかった人や事象全体の話をしたい。マルクスや脱原発派なども、もしかしたら現在進行形の不遇な先駆者なのかも知れんな。」

逆沢「先駆者が今までの価値観を否定しようとすると、価値観を否定されたら困る人が全力で押さえつけようとするだろうからねー。そりゃ。」

鼎「先駆者を否定する筆頭となるのは大体、保守派の権力者と決まっているよね。」

愛原「保守派の権力者にとっては、現状維持が最も都合がいいからな。現状に最も適応しているからこそ、現在の権力者になり得ているのであって、それを否定されたら、自分の権力の根拠すら脅かされない以上、そうならざるを得ない場合が多いんだろうな。」

逆沢「天動説を否定されたら既存の宗教基板が揺らぎかねないし、フランスの民主主義が定着したらヨーロッパ全体の王権主義が揺らぎかねないから、近隣諸国は国際的圧力でフランス革命を失敗に追い込まざるを得ないし、野茂英雄に勝手に大リーグに行かれたら日本のプロ野球選手の海外流出がどんどん進みかねないからプロ野球機構としては全力でそれを阻止せざるを得ないし、みたいな流れになるわけね。」

鼎「先駆者にとっては、必ず保守勢力の抵抗が大きな壁になるよね。」

愛原「保守勢力だけに限らず、人間というのは、【お前は間違っている!】と突きつけられるのを基本的に嫌がる生物だからな。ガリレオだけに限った話ではないが、彼ら先駆者が正論を武器に彼らの正義が間違いである事を追求すればする程、保守勢力はますます怒り狂って、先駆者を逆に追い詰めようとする。社会的に孤立させようとしたり、恥をかかせようとしたり、時には抹殺してでも。」

逆沢「野茂英雄さんの時なんかは利権がらみだから、海外流出によって損をする側が激しく抵抗してもおかしくないけど、自分が損をしない立場でも、既存の価値観を否定されると怒る人もいるから困るのよねー。」

鼎「こんにゃくゼリーが問題になった時とか、特にそう思ったかも。今、考えたらモチと比べて、なんでこんにゃくゼリーだけがバッシングされなければならないのかと、すごく理不尽な気持ちになったよ。」

愛原「先駆者に対しては、何となく【得体の知れないもの】という感覚が先に沸くのかもしれないな。」

逆沢「けど既存の価値観にないものを世に出したからこそ先駆者なんだし、得体の知れないものなのは当然なんじゃないの?」

鼎「けど初めてのものに警戒する人は多いよね。特に公務員気質の人とかは、前例のない話を持ち出すと【前例がないので】といって、まず否定から入る人が多いそうだし。」

逆沢「ああ、国会答弁や役所の弁明記者会見でもたまに聞くわね。誰かが初めて何かを成し遂げようと許可を求めたり、不測の事態に備えた仮定の質問をすると、大体【前例がない】事を理由に否定される事が多いというか。」

愛原「原発関連は特に【今まで日本国内で大きな原発事故が起きた前例がない】のを根拠に、無茶苦茶ないい加減な備えしかしておらず、それがああいう災厄を招いたくらいだしな。日本国外なら前例はいくらでもあるし、小さな原発災害なら東海村を初めとして、国内でも至る所に起きているにもかかわらず、根拠のない安全神話を垂れ流して。」

逆沢「前例があっても前例がない事にしてしまえば、現状突破を訴える陣営を全て退けられるって事か?」

鼎「それだったら初めから前例にない事に挑戦しようとする先駆者はどうしようもないよ。前例にない事を成し遂げたいのに、前例にない事を理由に否定されたら。」

愛原「【前例がない】事を理由に否定されたら、前例がある事しかできなくなってしまう。だれかの猿まねだけしか許されない世の中に対して、異常を感じざるを得ない俺はおかしいのか?」

逆沢「前例のない行為を全否定したら、絶対に1番乗りはできないのにね。そんな事をしてる間に、ライバルにどんどん先に行かれたり、権利(特許権や所有権など)をどんどん差し押さえられたりして、状況も不利になっていくだけなのに。」

鼎「特にクリエイターとかアイデア商売の人にとっては致命傷だよね。クリエイターやアイデア商売の人は、誰かが先にやってる事を真似ると盗作にもなりかねないから、誰よりも早く斬新なアイデアを形にして世に出す必要があるのに、頭の固い人にそれを否定されたりすると・・・。」

逆沢「保守勢力とかお役所気質の人とか、色んな人が先駆者の前に立ちはだかるのよねー。」

愛原「先駆者の敵は他にもいるぞ。中でも一番厄介なのは、先駆者が生み出すマイナス部分に非寛容な人。誰だって初めての行為をする時には失敗を伴いがちだが、その失敗に非寛容な人が先駆者を潰す。研究職関係で、特にそれが起こりやすいらしいが。」

逆沢「あー、発明や実験や技術開発には失敗が付きものだしねー。百回千回の失敗にもめげない人だけが偉大な発明を成し遂げたりするんだけど、こらえ性のない第三者が【無駄な事ばかりしやがって。いい加減やめろ!】と否定にかかるのよね。」

鼎「たとえ新製品を世に出しても、初めての時は不具合もつきものだよね。今は当たり前のように普及しているオートマチック車でも、世に出た直後はギア関係などで色々不具合があって問題視もされてたけど。」

愛原「ただオートマチック車の場合は、こんにゃくゼリー程にはバッシングされずに済んだというか、逆に不具合はかなりのレアケースとして報道が矮小化されてた気もする。政府や業界が、オートマチック車が普及する前に潰されないように報道機関に圧力をかけたのかも知れないが。」

逆沢「オートマチック車が潰されて、今でもマニュアル車全盛の日本なんか想像したくもね〜。」

愛原「先駆者に対する世間の理解の差だな。オートマチック車は理解され、こんにゃくゼリーは理解されなかった。どちらも新製品であるが故の不具合が無くもなかったが、それに対する世間の反応が真逆の経緯を辿ったというか。」

鼎「初めてのものが上手くいかないのは、当然だと思うよ。発明段階なら何千回失敗してもおかしくないし、製品化してもしばらくはバグや不具合との戦いになるし、実際に世に出てから、さらに改良の余地の広さに気づく事もあるだろうし。」

逆沢「スポーツでも仕事でも、最初から一流の働きができる人はほぼいないしね。初心者の内から上級者と同じ働きができたら、それはおかしいだろというか?」

愛原「ただ先駆者を嫌う保守勢力からすると、初めてであるが故の失敗は格好の攻撃材料になるからな。フランス革命や野茂英雄が生み出した新しい価値観、すなわち民主主義や大リーグ挑戦とかも、長年の試行錯誤の末に現状があるのだが、最初から決して上手くいってた訳じゃない。周囲に散々迷惑をかけたり、混乱させながらも、万民が試行錯誤して折り合った結果、今の制度があるだけに過ぎない。」

逆沢「つうか保守勢力が先駆者の邪魔しまくってんだから、うまく行かないのは当たり前じゃん。」

鼎「そう言えば少し前に、安倍総理の意向で松井秀喜さんが【日米両国を舞台に世界的な功績と新たな足跡を残した】という理由で国民栄誉賞を受賞したけど、実際にその礎を築いて新たな足跡をつけたのも野茂さんだよね。野茂さんがプロ野球機構のお偉いさん全てを敵に回して孤軍奮闘したからこそ、今の日米プロ野球界の交流もあるのに、実際には野茂さんは未だにプロ野球機構の偉いさんからはそんなに評価されていなさそうだけど。」

愛原「つうか、プロ野球機構のお偉いさん全てを敵に回した遺恨が、まだ残っているのかも知れないな。そう考えると、まだガリレオ程には名誉回復が成されず、まだ現在進行形なのかもしれない。」

逆沢「野茂英雄という先駆者がいてこそ、松井秀喜やイチローの渡米が実現したのに、プロ野球の偉いさんはイチローや松井秀喜のアメリカでの活躍だけを讃えて、野茂とはまだ敵対モードのままだとしたら、こんな理不尽な話はないと思うわ。」

鼎「逆にモンゴルでは、初めて日本の大相撲界に挑戦して先駆者となった旭鷲山関が英雄扱いだそうだよね。番付では朝青龍関や白鵬関には遠く及ばないけど、先駆者としての活躍がすごく高く評価されているというか。」

逆沢「先駆者に対するリスペクトは、そうであって欲しいわ。誰かが作った道を歩くのは簡単だけど、最初に道を作るのはすごく大変なんだから。」

愛原「ところが現実は、そう単純ではない。オートマチック車や旭鷲山関のように幸福な先駆者になれる例もあるが、ガリレオや野茂英雄のように、彼が一生懸命道を切り開こうとすればするほど、激しく妨害され、不当な汚名まで着せられる例の方が多いかも知れない。」

逆沢「で、フランス革命のように志半ばで終わると、保守勢力がここぞとばかりに【それみた事か】みたいな態度に出るのよね。」

愛原「初心者の内から上手くいくはずがないし、権力基盤も財務基盤もしっかりしている保守層から妨害も受けたら、なお上手くいく確率は低くなる。そういう当たり前の事を考慮せず、先駆者を一方的に叩いて潰そうとする流れがあるとすれば、それは社会全体にとって大きな損失であるとも思う。」

鼎「フランス革命がどういう結末を辿ろうと、世界全体の民主化の流れは止まらないし、ガリレオさんがどういう迫害を受けようとも【それでも地球は回っている】事実は変わらないのだから、仮に保守勢力の妨害が無ければ、社会発展のスピードはもっと早くなり、人類はもっと幸福になれて、先駆者である彼らももっと報われてたはずなのに、すごくもったいない話だよね。」

愛原「フランス革命に限らず、明治維新でも小泉政権でも民主党政権でもそうだが、今までと変わった事をやろうとすると、どうしても一定のひずみは出る。道の無い所に無理矢理道を作ろうとしてる訳だから、最初から舗装された綺麗な道にはなり得ないし、綺麗な道にする為にはどうしても時間もかかる。」

逆沢「しかも先駆者が作るその道が、必ずしも正しい方向につながる道とも限らないしね。」

愛原「うむ。特に科学研究分野などの場合は、1本の素晴らしい道にたどり着く前に、1000本の無駄な道を作ってしまう事すら珍しくないからな。だが、それを無意味とか無駄といってしまったら先駆者にはなれないし、別の先駆者に先を越されるだけだろう。」

鼎「本気で先駆者になろうとする人は、多少の失敗や妨害にもへこたれない気概とかはありそうだし、後はそれを支えてくれる人達がいれば、彼らも救われると思うんだけど・・・。」

逆沢「あらかじめ抵抗勢力となりえる人に対して根回しとかできれば、だいぶ変わるんじゃね? オートマチック車が死者を何人も出す程の不祥事を重ねながらも普及できたのは、業界や政府やマスコミに対する根回しが功を奏したような気もするし。」

愛原「うーん。ただ根回しは、相当の権力が背後にないと難しいからなぁ。オートマチック車を開発する自動車メーカーくらいの大企業くらいなら根回しもうまくいくだろうけど、一個人やこんにゃくゼリーのメーカーレベルじゃ、どう宣伝工作をしても、【見苦しい言い訳はやめろ】みたいな感じに非難されて跳ね返されそうな気がする。まして先駆者の大半は、道のない所に道を作る作業に全力で、根回しに気を配れるだけの余力なんて無い場合がほとんどだからな。」

逆沢「あー、なるほど。確かに道のない所に道を作る作業自体が凡人に不可能な難作業なのに、それに比べて根回しまで気を配れという方が無理な相談かもね。」

愛原「仮にガリレオが根回しにも気を配れるような処世術の持ち主なら、教会の強大さや、地動説を提唱する事の無謀さなどを秤にかけて、地動説の提唱自体をしなかった可能性すらあっただろうしな。」

鼎「仮にガリレオさんや野茂さんが世渡り上手なタイプだったら、名声を傷つける事もなかった代わりに、先駆者にもなれずじまいに終わってた可能性が高かったという事だよね。」

逆沢「青色ダイオードを発明してノーベル賞を取った中村氏も、割と強引に研究を進めた部分があって、その結果、偉大な業績と引き替えに会社の首脳部と険悪な関係になったそうだけど、先駆者は根回し作業とはどうしても相性が悪いのかな?」

愛原「人がやらない事をやろうとすると、どうしても【無謀だからやめておけ】とか【予算の無駄だ】とか【権力者の怒りを買う】とか様々な理由で抵抗・反発される。それでも押し切れるからこそ先駆者なんだろうが、彼が先駆者として前に進めば進むほど、それを快く思わない人からの不満も同じくらい増幅してしまうのだろうな。とかいって変に妥協すると、先駆者にはなれない。仮に中村氏が会社の上層部とうまくやれる処世術の持ち主だったとしても、それに時間を割かれたり、妥協を余儀なくされれば、その分だけでも研究は遅れるし、そうすると他国の研究者に先を越されていてもおかしくなくなる。」

鼎「ファンタジーの世界の学者や科学者は、服装や化粧にも構わない不潔な不精者であったり、掃除や後片付けもできない面倒くさたがりであったり、人付き合いの苦手な性格であったりする場合も多いけど、彼らが先駆者としての活動にリソースを全力で割いていると考えたら納得かも。」

逆沢「他人との人付き合いだの、ファッションだの、そんなものに構っている時間すら惜しいというか、自分がやりたい事以外には全く関心無いといったキャラクターが、言われてみれば多そうな気がするわ。」

愛原「まぁ、凡人と同じ事をしていたら、凡人と同じ生き方しかできないと考えたら、それは仕方ない事なんだろうけどな。凡人には実現不可能な偉業を成し遂げるには、何かを犠牲にする必要があるという事かも知れない。」

鼎「私達は、そういう素晴らしい先駆者の人を、もっと大事にできるような社会にしないといけないと思ったかも。先駆者の人が道を作ってくれるからこそ、私達はその道を歩く事ができるのだから。」

逆沢「けど世の中には、その先駆者を大切にしないどころか、【得体の知れない行動をする奴】みたいに不審の目でみたり、露骨に迫害する人すらいるのよねー。」

愛原「まぁ、誰にも理解できないような行動でも選択できるからこそ、先駆者なんだけどな。」

逆沢「誰にも理解してもらえないような行動をする人を認めるというのも、私達凡人には難作業なんだけどねー。」

愛原「ガリレオは、当時の世の中の人の常識では、誰にも理解してもらえないような世界的先駆者だったからこそ、潰されたのかもしれないな。」

鼎「でも誰でも理解できるような事をしても、それは先駆者とはいえないよね?」

逆沢「うーん。先駆者って、本当に孤独ねー。」

愛原「まぁ、先駆者の思想や行動が、必ず凡人には理解できないとは限らないけどな。たとえば野茂英雄の抱いた大リーグ挑戦の夢は、決して誰にも理解不能なものではなかった。だからこそ野茂が渡米に成功した後、次々と多くの日本人選手が海を渡っていった。野茂が作った道は、決して理解不能なものではなく、ただ道がなかったから、今まで誰も歩く事ができなかっただけに過ぎない。」

鼎「けどそんなに需要のある道なら、野茂さん一人に苦労を押しつけるのではなく、松井秀喜さんもイチローさんも、みんなが力を合わせて道を切り開けば良かったと思うのに。」

逆沢「プロ野球機構のお偉いさんにケンカを売るのが、怖かったんじゃないの? ていうか、仮に松井選手が野茂選手と一緒になってナベツネらにケンカ売ったら、絶対国民栄誉賞は受賞できなかったと思うし。あの国民栄誉賞のお膳立てをしたのはナベツネさんだから。」

愛原「まぁ、他人に道だけ作らせて、自分はそれを利用するだけという人が多いのは事実かも知れんな。たとえば今のプロ野球界で当たり前になっているフリーエージェント制度を初めて作ったのは岡田彰布率いる選手会だったが、それを初めて利用したのは落合博満だった。岡田は自分が必死になってフリーエージェント制度を作り上げている間、落合が全くそれを手伝おうとしなかったにもかかわらず、成立後、落合がいち早くそれを利用すべく手を上げた事もあって、岡田は落合とかなり険悪な仲という話は聞いた事がある。」

逆沢「うへぇー。【座りしままに食らう徳川】じゃないけど、先駆者に道だけ作らせて、新品の綺麗な道は自分が最初に使うってか。」

鼎「河野洋平さんや谷垣禎一さんが、自民党復活に向けて必死に道作りをしてたのに、ようやく道ができた途端、橋本龍太郎さんや安倍晋三さんが河野さんや谷垣さんを蹴り落として、権力の椅子に座った構図を思い出したかも。」

逆沢「先駆者が血みどろになって切り開いた道を、とんびが油揚げをかっさらうみたいに奪い取ってしまうというのは、なんかムカつく話ねー。」

愛原「大リーグへの道を切り開いたのは野茂だけど、野茂に対するリスペクトを強く口にするプロ野球選手があまりいないのも、残念な話だな。プロ野球上層部相手に派手にケンカを売った野茂を褒め讃えれば讃えるほど、プロ野球界の上層部に憎まれる危険が高まるからかも知れないけど。」

逆沢「でもちゃっかり、自分は野茂さんが切り開いた大リーグ行きを決めちゃったりするのよねー。松井さんしかり。」

鼎「本当に要領のいい人は、先駆者になるのではなく、先駆者が道を作るのを待って、その後を歩く人なのかなぁ。」

愛原「但しその場合、先駆者が保守勢力の反抗に遭って、道ができないまま終わる可能性もあるけどな。その道を歩きたければ、先駆者と共に道作りに挑むのが正道だと俺は思う。血みどろになって戦う先駆者を見て見ぬ振りして、ようやくできあがった道を見届けた途端、戦いと勝利の安堵感で疲れ果てた先駆者を後ろから蹴り落として、自分がその道を歩くというのは、人としてどうなんだ?という思いはやはり俺としては捨て切れん。せめて先駆者に対するリスペクトくらいはして欲しいというか。」

逆沢「ただ、そうするとどうしても保守層に憎まれるリスクがあるからねー。ガリレオに対して行った教会の裁判が誤りであったと認められたのは、確か1992年でガリレオの死後350年でしょ? 野茂さんもまだ公式に誰かに謝罪された訳じゃないし。地動説の正しさが証明されようが、大リーグ行きが当たり前になろうが、騒ぎを起こした先駆者張本人に対する保守層の恨みだけは、なかなか消えない事を思うと、火中の栗を拾うのはなかなか大変だとは思うんだわ。」

鼎「野茂さんに関しては、当時のルールに即して言えば、それを破ったのは野茂さんの方だから、プロ野球機構の上層部が謝罪する必要は全く無く、謝罪すべきは野茂さんの方という意見もあるようだけど。」

愛原「当時のルールとか言い出したら、例の宗教裁判もガリレオに非がある事になってしまうからなぁ。当時の常識に照らしたら、明らかにガリレオの主張する地動説の方が異端だから。当時としてはそれが常識的に正しかったとか言われたら、先駆者の多くは悪という事になってしまう。今までの常識を覆そうとしてこそ、ある意味先駆者なんだから。」

鼎「先駆者ってすごく大変だよね。当時の常識とか、権力者といった巨大な相手と戦わざるを得ない事もあるし。自分以外に理解者がいない事もあるだろうし。」

愛原「但し、先駆者は、ただの変人とかキチガイではないからな。気が狂っているから非常識な行動を取るのではなく、ある意味では常識人以上に正しいのだ。だからこそ先駆者が切り開いた道を多くの人が歩み、やがてそれが新しい価値観になっていく。」

鼎「ガリレオさんの唱えた地動説の普及には時間がかかったけど、野茂さんが作った大リーグへの道はあっという間に広がったから、本音では多くの人が先駆者の作った道ができるのを待ち望んでいただけかも知れないよね。」

逆沢「先駆者は決して変人奇人でも天才でもなく、勇者なのかも知れないわね。内心では今の状態はおかしいと思っていながらも、それを口に出すと危険だから黙っているのが凡人。危険でもそれに挑むのが先駆者。もしかしたらガリレオの時代でも、何%かの人は内心でガリレオさんの正しさを認めていたかも知れないし。それを口に出すと自分も処罰されるから、黙っていただけで。」

鼎「それは思ったかも。仮にガリレオさんの影響力がゼロなら歴史に名も残らなかっただろうし、放置しておくには危険なくらいの影響力があったからこそ、教会もガリレオさんを処罰せざるを得なかったかも知れないよね。」

愛原「なる程。放置しておくには危険と思わせるくらいの影響力があるとすれば、やはりただの変人奇人ではないだろうな。保守勢力の妨害さえなければ、先駆者としてより偉大な業績を上げてみせた可能性は十分ありそうだ。」

逆沢「うーん。もったいない。先駆者自身に根回しなどを行うだけの余力が無いとすれば、やはり周りの人間が先駆者を支えないとどうにもならないんだと痛感する思いだわ。」

愛原「ガリレオだけに限らず、フランス革命の指導者達にしろ、明治維新の立役者達にしても、野茂英雄にしても、先駆者はみんな全力で必死で現状打破の為に取り組んできた。元々全力で頑張っている先駆者に、さらにあれもやれとか、こちらにも気を配れと言うのはさすがに無茶ぶりだろう。また前例の無い事に挑戦している訳だから、多少の社会的矛盾やひずみが生じてもそれはやむを得ない。そういうものに対する寛容性が社会に求められるんだとは思う。」

逆沢「そういう寛容性があるかないかで、社会全体の未来も変わってくるだろうしね。誰も先駆者の価値を認めようとしなかったり、先駆者を見殺しにして保守勢力に滅ぼされたら歴史も長く停滞するだろうし、先に先駆者の価値を認めて道を切り開いたライバルにも先を越されるだろうし。」

愛原「少し上にお前達が触れてたが、先駆者が行動する前の時点で、内心でその道ができる事を希望する凡人がたくさんいてもおかしくないとは、俺も思った。となると先駆者は必ずしも天才秀才ではなく、むしろ勇者でもあるとは俺も思う。となると鍵となるのは、先駆者の能力うんぬんではなく、先駆者を支える凡人がどれだけ出るかこそが重要になるのかなとも。凡人の多くが保守陣営につくなら先駆者はのたれ死にするだろうし、先駆者側につくなら新しい道ができるのだろうとも。」

鼎「本来の先駆者の意味とは少し違うけど、誰かが最初に何かに巻き込まれた時に、私達がどういう感想を持つかも、同じくらい大事だと思ったよ。たとえば誰かが不幸な事故に巻き込まれた時に、それを人ごとと思って放置していたら、いつか自分もその不幸に巻き込まれるとも思うし。」

逆沢「悪い意味での先駆者ね。不幸にも悪い意味での先駆者が出てしまった時に、それに対して真面目に受け取る度量が私達にあるかどうか?」

愛原「ん? 言ってる意味がイマイチよく分からない。具体例とか出してくれると助かるのだが?」

鼎「たとえば夏の暑い日に運動なり仕事をさせ続けてたら、いずれ誰かが熱中症で倒れたりするよね。で、最初の一人目が熱中症で倒れた時、【あいつは体が弱いから倒れただけだ】で済ませて運動や仕事を継続させたら、次々と他のメンバーも倒れるのは目に見えているよね。」

逆沢「事故や災害でも同じこと。フクシマは運が悪かったから事故になったで済ませてたら、いずれ他の場所でも同じ事が繰り返されても不思議はないというか。」

鼎「最初の一人が不幸に巻き込まれたのを偶然とか、体が弱いからだとか、そういう風に解釈して対策を怠っていると、きっと同じ悲劇は繰り返されるし、いずれ自分の番が来てもおかしくないよね。」

逆沢「先駆者は決して突然変異ではない。ガリレオが死んでも次の地動説主張者は必ず出るし、野茂英雄が仮に渡米に失敗してもいずれ別の者が同じ騒ぎを起こして、遅かれ早かれ今の状態になる。フランス革命の成功失敗に関わらず、いずれ民主主義は世界に広がる。山中伸弥教授や中村修二教授が画期的研究に成功しなくても、その場合はどこかの国の誰かがいずれ同じ発明をしてノーベル賞を取ってもおかしくない。誰かが先駆者として何かを成し遂げようとした時、あるいはとある不幸の最初の一人目が現れた時に、それをどう受けとめるかが大事だと思ったわけよ。言ってる意味分かる?」

愛原「あー、言いたい事は分かった。先駆者の存在をどれだけ消そうとしても、歴史を遅らせたり、不幸を拡散する効果しか無いと言いたい訳だな。」

逆沢「そう。保守勢力がどれだけ先駆者を迫害しても、歴史を停滞させたり、人が幸福になる機会を遠のかせているだけの効果しか無い。なぜなら内心では先駆者の正しさに気づいていたり、応援しているもいるだろうし、そういう人は増える一方だと思うから。だから野茂英雄さんみたいな人が現れて、ひとたび道ができあがったならば、志のある人達は、こぞってその新しい道を歩もうとする。私達凡人には、道を作る能力はないけど、作られた道を歩くくらいの事はできるから、道さえ作られたら、世の中の流れくらいすぐに変えられるのよ。」

鼎「道を作るのは限られた先駆者しかできないけれど、道を歩くくらいは凡人でも十分可能だし、その新しい道をたくさんの人が歩く事で、世の中はすぐにでも変えられると思うよ。」

愛原「なる程なぁ。とすると保守勢力が先駆者を優先して叩くのは、道を作らせない為ともいえそうだな。一旦、道ができてしまうと、松井秀喜やらイチローやらといった大物が大挙してその道を歩き出すから、いくら権力者でもそれを止める事はできない。むしろ彼らに国民栄誉賞などを与えてゴマをすっておいた方が賢明とすら考える者も出る。しかしできた道を歩くたくさんの人を止める事はできないけど、道を作ってるたった一人の先駆者くらいなら力尽くで止められない事もなさそうだから、道ができる前に叩くという事か?」

鼎「東日本大震災で福島原発が悪い意味での日本での先駆者となってしまったけど、保守勢力としてはこの先駆者が国民に見せつけた原発の恐怖をなんとか打ち消したいんだと思うよ。故郷を失った人達の事とか、今では全然報道しないし、ガリレオさんが消されて地動説の正しさを証明する機会が百年単位で遅れたみたいに、原発の不幸な記憶自体も今まさに消されて、それを改善する機会も大きく損なわれようとしているみたいだし。」

愛原「まぁ、原発自体、元々は先駆者が持ち込んだ概念だし、先駆者が持ち込んだ未来技術自体を、一度の大失敗で封印すべきだなんては、これっぽちも考えないが、今の原発は先駆者ではなく保守層が利権や権力保持の為に囲っているだけのものでしかなくなりつつあるからな。たとえばオートマチック車でも、技術者が改善を積極的に進めたからこそ致命的な弱点を克服して普及できた訳だし、そういう姿勢を忘れて、現状維持のために欠点も放置して再稼働なんてのはとても認められない。人を何人も殺すシステムを直す気もないのに、オートマチック車を売り続けるといっても、それでは通用しないようなもので。」

鼎「まず再稼働ありきではなくて、これを教訓として、以前から問題視されていた放射能廃棄物の処理方法の研究とか、核リサイクルの研究とか、安全性の向上とか、そういう方向に注力できれば、まだ前向きなのにね。」

逆沢「今でも、核のゴミを処理する方法がないどころか、福島原発がまき散らした放射能廃棄物や汚染水の置場にも困る有様だし、再稼働してそういうゴミを増やすのではなく、逆にゴミ処理の研究を進めた方がずっと前向きだと思うわ。原発を世界に売るのではなく、核のゴミを処理する技術を世界に売った方がずっと世界全体の利益にも貢献できるだろうし、すさまじい国益になりそうだから。」

鼎「けど現実には、まず再稼働ありきで議論が進められて、民主党政権時代に決められた厳格な再稼働基準がどんどん骨抜きになっているよね。計画節電がどうこう言われてた現状を打破した太陽光発電に関しても、コストがどうとかいって否定的だし。」

愛原「原子力発電自体も、日本初の原発の出力なんか、とてもコストに見合わないひどいものだったんだけどな。先駆者が切り開いていた頃の考え方を、今の自民党は完全に忘れているとしか思えん。」

鼎「そういえば大体20世紀終盤までの日本は、太陽光発電でも世界一のシェアを占めていたんだよね。」

愛原「太陽光発電には無限の可能性がある。原発同様、太陽光発電の効率も昔とは桁違いになってるし、人工衛星なども太陽光発電で回しているし、より技術革新を進めることで再び世界のトップシェアを占める事も夢では無い。もっともそれをやったら、アメリカがカンカンに怒るかもしれないけど。」

逆沢「誰かの反発を怖れてたら先駆者にはなれんだろが。先駆者というのは、いつの時代でも権力者にケンカを売ってナンボのもんだ。」

愛原「俺としては、敵対者は少ないに超した事はないと思うが。先駆者は純粋に道を作りたいだけで、別に誰かにケンカを売りたい訳ではないからな。というか先駆者は、基本的にケンカは弱い。常に孤立無援な状態から始まって、人海戦術に持ち込まれたらまず少数派となって、勝ち目がないから。」

鼎「かつての日本人先駆者が切り開いた太陽光発電シェア1位を復活させて、原発政策も福島原発事故を教訓に技術革新を進めて、世界のどこよりも早く新たに道を切り開ければ、誰にとっても大万歳なのにね。せっかく高度成長期の偉人とか菅さんが先駆者として新たな流れを作ってくれたのだから、安倍総理も先駆者をリスペクトして、現状維持しか考えない保守層と戦って欲しいよ。せっかくできつつある新たな道を塞ぐのではなくて。」

逆沢「いつの世でも、保守勢力は保守する事しか考えないからねー。そんな事をしても、問題の先送りにしかならないのに。つうか保守勢力は問題の先送りも好きよね。そういえば。」

愛原「問題の先送りが長引く程、いずれ現れるであろう先駆者が問題解決に着手した時に、より多くの負担や犠牲をだしかねない。本来なら保守勢力による問題の先送りが諸悪の根源であるにもかかわらず、先駆者による荒療治や初心者であるが故の未熟のせいだけにされては正直かなわん。」

鼎「むしろ最初の先駆者が現れた時点で、保守勢力に惑わされずに適切に手を打てれば、常に世界の最先端でいられるだろうに、もったいないよね。」

原「先駆者は、ただの変人奇人ではない。むしろ社会全体をレベルアップさせるキーマンそのものだ。何しろ、道を切り開く事ができるのは先駆者だけなのだから。いち早く先駆者を見つけ、先駆者によって多くの道を切り開いた勢力こそが最終的に最も成功できる。その先駆者を逆に迫害するなど、俺に言わせれば惨い自爆行為でしかない。というか、もったいなさ過ぎるだろ。」

鼎「時には不幸な先駆者が現れる事もあるけど、これも考えようによっては、過ちを認めて状況を改善するチャンスなんだよね。仮に誰かが熱中症で倒れたならば、それは【これ以上続けると、犠牲者がますます増えるに違いない】というサインになる訳だし、誰かが事故に巻き込まれたならば【今のままだと、これからも似たような事故が必ず繰り返される】というサインになる訳だから。」

逆沢「イレギュラーが現れた時、【あいつは変人だ】とか【あいつは体が弱いだけだ】とか【あいつは運が悪いだけだ】で済ますのでは無く、彼らを先駆者と認めて速やかに対応できる社会だけが発展できるって事ね。逆にもみ消したり、見て見ぬ振りしたり、切り捨てたり、迫害するようだと、その社会は停滞したり腐敗するだけだと。」

鼎「ガリレオさんは一流だったから、それでも歴史に名を残したけど、世の中には歴史に名を残すことも無く、魔女狩りのようなノリで、気の狂った人とか変人とか悪魔に惑わされた人として消された先駆者も多くいたかも知れないよね。」

逆沢「現代の日本でも、役所などで抗議していた人が逮捕された際に【容疑者は意味不明な事を話しており】とか報道される事があるけど、本当は核心を突いた正論なのかも知れないよね。だからこそ意味不明の一言で片付けられて、社会的に抹殺されようとしているだけで。」

鼎「それ、昨日の新聞でも見たよ。淡路島での連続殺人事件の記事で、まさしく【容疑者は意味の分からない事を話しており】と書かれていて、精神鑑定がどうこうとか。」

逆沢「もしもガリレオの時代に新聞とか精神鑑定という概念があったら、意味不明な言動を繰り返す精神鑑定の必要な人で片付けられてそうね。本当は偉大な先駆者なのに。」

愛原「淡路島で事件を起こした平野容疑者の動機などについては、本当に謎だからな。容疑者と被害者は名字も同じでご近所同士だから親戚か何かだと思われるが、そういう基本的な人間関係すら明らかにされていないし(憶測レベルの記事は存在するが)、実際の動機も背景も全く分からない。容疑者が被害者を中傷していたとか、意味不明な言動とだけ記事にされていても、中傷や言動とされるものの具体的な中身がまるで謎だから(得体の知れないネットソースはあるけど信憑性は低そう)、とても真に受けられないというか。」

逆沢「犯した罪の内容がアレだから、強い非難はまず免れないけど、意味不明の言動で片付けられるべきではないと思うわ。こういうのが容認されると、全く犯罪性や事件性のない人も【意味不明な言動】というレッテルが貼られる事で、あたかも犯罪性のある危険な人と同一視されかねないだろうから。」

鼎「その人がただの頭のおかしい人か、先駆者かは、実際に話を聞いてみるまで分からない事も多いけど、もしも保守層による印象操作で頭がおかしい人で片付けられているとしたら、すごく怖いよね。」

愛原「先駆者は貴重な存在だ。彼が玉か石かを見抜くのは難しいかも知れないが、保守層を過度に怖れたり、保守層に惑わされる事無くその存在を見抜き、仮に貴重な存在と感じたならば、できるだけ率先して守るようにしたいものだな。」



















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