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愛原様のたわごと(15年7月20日)






愛原「【Masters of the World】というゲームをプレイしてみたのだが、なんとも惜しいゲームだと思った。」

逆沢「初めて聞く名前だけど、スクリーンショットつけてくれてんのね。しかし、うーん。これは、なんと評していいゲームなのか??」

愛原「ジャンルとしては、現代の世界各国を舞台にした国家経営シミュレーションゲーム。シムシティと同様、明確な勝利条件はほぼなく、淡々と国家を経営していくゲームスタイルとなる。敗北条件もシムシティと同様、支持率を失ったりして政権を失うとアウト。」

鼎「要するに、支持率を高めに維持していたらOKというスタイルだよね。」

逆沢「シムシティと同じゲームスタイルとすれば、要するに国を栄えさせて国民を幸せにすればOKって事になるわけね。」

愛原「まぁ、それはそうなんだが、これが意外と難しい。貧しい国は、そもそも豊かにする事自体が難しい。豊かな国でも借金まみれだと、借金返済をどうするかで色々悩む。」

鼎「でも、そういうゲームって、リーダーの大好物だよね。」

愛原「そう。ジャンル的にはドンピシャなのだが、いざプレイしてみると、色々残念な部分が多い。なぜこれほど、本格的に作り込まれているにも関わらず、マイナーゲームなんだろうと感じていたが、プレイしてみて納得せざるを得ない程度には。」

逆沢「どういう部分が残念なのだ?」

愛原「うーん。たとえるなら小助官兵衛氏の戦国史。あるいはスーパーファミコンの天舞スピリッツあたりが近いかも知れん。ひたすら本格的に作り込まれていて、データ量も膨大で、資料的価値としては非常に高いのだけど、ゲームとしてみると、無駄に規模が大きすぎるというか、パラメータが無駄に多すぎて整理して把握できないというか、何から手を付けたらいいかよく分からないというか、その他色々面倒くさい仕様だなとか。俺の足りない頭では、Civilizationシリーズでも、なんとかついていけるレベルでしかないのに、その10倍以上くらい要素がありそうで、正直どこから手を付けたらいいか分からないレベルなのだ。」

鼎「ゲームクリエイターがリアリティーを追求すればするほど、壁になる要素だよね。そういうのは。」

愛原「そう。このゲームは、(少なくとも各パラメータの段階においては)恐ろしいほどに、リアリティーを追求している。インフレ率だの為替だの、各環境対策だの災害対策だの、大臣ポストから各業界団体まで、色んな要素がつまりにつまっている。」

鼎「原子力対策の項目が最低になってるけど、これはデフォルト?」

愛原「うん。日本でプレイした際の初期パラメータ。フランスのゲームメーカーが作ったゲームなのだが、彼らの感覚からすると、日本の原発の安全性なんて、こんなものなんだろう。安倍総理や菅官房長官あたりからすると、日本の原発対策は世界一の安全基準らしいけど♪」

逆沢「つうか最初のスクショに載っている国名みてワロたわ。そんな国知らねーってツッコミたくなるようなマイナー国家でも、プレイできるのか?」

愛原「無駄にこっているからな。日本のプレイヤーの大半は、どうせ日本でしかプレイしないだろうけども。あー、でも北朝鮮でプレイするツワモノもいるらしい。」

逆沢「北朝鮮なんか、国家を維持する事自体ムリゲーじゃないのか?」

愛原「北朝鮮は、選挙で退陣するような事はない国体だから、他国からの侵略と、クーデターや暗殺さえ回避できれば、ある意味では日本よりもプレイしやすいかも知れないぞ。【俺が北朝鮮を国際社会に認められる立派な国に立て直してみせる】みたいな野望に燃えるプレイヤーには、案外向いているかも知れん。」

逆沢「つうか侵略されたり、暗殺されたりする事もあるのか?」

愛原「侵略される事もあるぞ。なお日本でプレイしてたら、一度暗殺されてゲームオーバーになった事があったわ。」

逆沢「日本でプレイしながら暗殺されるって、どんな悪政プレイしてたんだよ!」

愛原「このゲーム。ゲームバランスがかなり極端で、すぐにデモや暴動が起きるんだ。んで、油断してたら刺された♪」

逆沢「ワロス♪」

鼎「搭載されているデータは緻密だけど、ゲームバランスは少し残念って事かな? バグに関しては大丈夫?」

愛原「細かいところは色々あるかも知れないが、目立った点はそれほどない。但しパラメータが複雑すぎて、それがバグなのか仕様なのかの区別をつけるのが難しい部分は、割とある。強いて気になる部分をあげるなら、加古川が関西地方に分類されるのに、その西隣の姫路が中国地方になっている事くらいかな? まぁフランスのゲームメーカーが関西地方とか中国地方とか、加古川やら姫路やらなんて地名をいちいちゲーム内に搭載している事自体、感動ものではあるが。人口データも加古川269千人とか姫路534千人とか妙に正確で、どうやってフランス人がそこまで調べたんだ?と、正直驚嘆している。」

鼎「ゲームバランスはともかくとして、データの緻密さだけは、本当に一流の作りになっているという事かな?」

逆沢「そこまで緻密に作っているなら、加古川と姫路の間で関西地方と中国地方の境界線を引くのはやめて差し上げろと、ちょっとだけ思わなくもないけどね。」

愛原「まぁ、それを言ったら、かつての名作の桃太郎電鉄シリーズの中にも、姫路は中国地方だったものがあった気がするが。」

逆沢「桃太郎電鉄でも、そうだったのか?」

愛原「確か桃太郎電鉄の移動系カードの中に近畿カードや中国カードというのがあって、それを使うとそのエリア内にあるいずれかの駅にワープできるのだが、俺がプレイした事があるバージョンで中国カードを使ったら姫路駅に飛ばされた記憶がある。但し、かなり古い記憶なので、勘違いの可能性も無くはないけど。」

逆沢「なんともまぁ。仮にそれが故意で事実なら、博学で知られるさくまあきら氏ですら、そういう認識なんだから、フランス人がどう認識しようと仕方ないかもね。」

鼎「そういえば少し前に、さくまあきらさんが、桃太郎電鉄シリーズが事実上の打ち切りになって残念だと、ネットでコメントしていて話題になっていたよね。」

愛原「名作シリーズなだけに、本当に残念だなぁ。まぁ桃太郎電鉄シリーズを長年手がけてきたハドソンがコナミに吸収されて、当時の開発スタッフがいなくなったり、色々あるんだろうな。」

逆沢「課金ゲーム全盛期だからねー。まぁパワプロが課金ゲームに化ける時代だから、桃太郎電鉄が課金ゲームになって復活する可能性くらいは、残されているかもしれないけど。」

愛原「但し俺は、現時点で課金ゲームをやりたいとは全く思わないので、桃太郎電鉄が課金ゲーム化しても、【あっ、そう】にしかならないけどな。そろそろ話を戻そう。無駄に緻密な割りに色々と残念さを感じた【Masters of the World】であるが、おそらく制作者がリアリティーにこだわったが故に、小さくないウエイトを占める要素の中に、賄賂や脅迫などによる説得工作(正論を用いない説得活動)などがある。今回はこれをテーマにしてみたい。」

鼎「要するに、現実主義者気取りの人が【綺麗事だけで世の中は回らないのだ】と言って正当化するものだよね。」

逆沢「敵対勢力がすると激しく非難するけど、自分の勢力がすると正当化されるものの代表格ね。」

鼎「けど大多数の市民にとっても、不愉快なものだよね。そういうもので世の中が動かされるとするなら、正論が意味を成さなくなるから。」

愛原「ただ、正論で相手を説得するというのは、リアリティーで考えるとなかなか難しい。1+1=2みたいな当たり前の話ですら、人間は容易に自分の間違いを認めたがらない生き物だからだ。【地球が動いている】という今では当たり前の事をどれだけ分かりやすく緻密に説明しても、理解できない人は絶対にできない。というか理解しようともしない。いや、それどころか、正しく理解できている人を迫害して、理解できていない自分の方が正しいと開き直る人すら珍しくない。正論は、メンツや利権といった別の要素によって、たやすくはねのけられるもろさが残念ながら有る。」

逆沢「逆を言えば、筋が通っていない話でも、相手のメンツを立てたり、利権を保証する事で、相手を説得して取り込むことも可能という事ね。」

愛原「そういう事。ちなみに【Masters of the World】の世界では、いわゆる正論は何の役にも立たない。どれほど財政赤字が深刻でも、増税をしたり、年金を減らしたり、公共事業支出を減らしたり、公務員の人件費を削減したり、しようとすれば、必ず国民、あるいは利権団体が反発する仕様になっている。では、それらによる反発を抑えて、好みの政策を押し通すにはどうすれば良いか?」

逆沢「それが賄賂や脅迫という手段になるって事か?」

愛原「うん。各関連団体の代表の中には、賄賂で簡単に転ぶような者が少なからずいる。そういう奴には、賄賂を渡す事で簡単に懐柔できる。また賄賂を受け取らないような堅物に対しては、国家予算の内の諜報関連予算を大幅に上げて、そいつの弱みを握ったりもできそうな感じだ。」

逆沢「ひっでえゲームだな、おい。」

鼎「けど、世の中には、賄賂などにも転ばず、脅されて困るような弱みも無い清廉な人も多いよね。そういう人が代表の組織は、どうやって懐柔するの?」

愛原「正直分からん。色々ネットで検索したところ、暗殺という手段に訴えるプレイヤーは少なからずいるようだが。」

逆沢「殺すのかよ、ますますひでぇゲームだな、おい。」

鼎「けど、そういうのを繰り返していると、関連団体の人は、やがてロクでもない人だらけになるような気がするんだけど。賄賂で転んだり、弱みがあるような人しか残らなくなるというか。」

愛原「当然そうなるな。銀英伝のヤン・ウェンリーの名言ではないが、【政治とか軍事とかが悪魔の管轄に属する事がよく分かるよ】とでも言いたくなる。」

鼎「えっと。確かその場面は、ヤンさんがレンネンカンプ高等弁務官によって軟禁状態に置かれてた時のセリフだよね。」

愛原「そう。レンネンカンプ高等弁務官は、皇帝の期待に応えるべく、自身が危険人物と認識しているヤンを常時監視する体制をとっていた。で、ヤンはそんなレンネンカンプを嫌って、何とかコイツを追い払いたいとも考えるようになる。だが同時に【レンネンカンプ氏にご退場いただくのはいいが、問題は後釜だ。無責任で物欲が強く、皇帝の目が届かないのをいいことに小悪にふけるような佞臣タイプの人物が、こちらにとっては、一番利用しやすい。】という判断とセリフに到り、その総括として、上の悪魔の管轄うんぬんのセリフにつながる。」

逆沢「つまり人を利用したいとか、人を説得したいとか、人を懐柔したいと考える人にとっては、簡単にこちらに買収されるような俗物であるほど、ありがたいという訳ね。」

鼎「この世から、利権政党とか利権政治家とか、利権に群がる人達がなかなか無くならない理由が分かった気がしてきたかも。そういう利権に弱い人が、要人の地位でいてくれた人の方が、お互いに利用しやすいから、そういう人ばかりが出世するようになってしまっているのかも知れないね。」

逆沢「逆に利権にも踊らず、脅しにも屈しないような清廉な人は、説得困難で取り込みにくいから、権力者から抹殺されやすいと。」

愛原「清廉な人間が要人の地位に就くと、裏工作が効かないので、裏工作をしてでも取り込みたい側からすると、すごく厄介だ。なのでそういう清廉な人が出世しないように工作したり、あるいは利権まみれの俗物が出世しやすいように働きかけようという動きは、常に出てもおかしくない。また利権まみれ、あるいは弱みだらけの要人にしても、将来、自分の弱みをばらされたりしたら困るから、後釜も自分と同じようなタイプ(もしくは自分に決して逆らわないタイプ)を任命したがるだろう。かくして国家や組織の上層部は、汚れまくった人だらけになる可能性は十分ある。」

逆沢「弱みを持っている者同士が結託するケースも多そうね。セクハラヤジ騒動の時の都議会自民党のように。」

愛原「【貴方がヤジを飛ばした事を、私は暴露しません。その代わり貴方も、私がヤジを聞いて爆笑していた事を暴露しないで下さいね】みたいな関係だな。」

鼎「なんか【私はA県の無駄な公共工事に賛成します。その代わり、我が県の無駄な公共工事にも賛成して下さいね】みたいな関係だよね。」

逆沢「うーん。利権政党の構図が分かりやすく伝わってくるわねー。」

愛原「現在、東芝がライブドアの数十倍は悪質な粉飾決算(マスコミは犯罪となる粉飾決算ではなく、不適切会計という表現を使っているが)をしている事が明るみに出て話題になってるが、誰一人逮捕されず、上場廃止にもならないのも、同様の裏取引があるんだろうな。」

逆沢「【もしもウチの社長を逮捕したら、政界のために財界が便宜を図るのが困難になりますよ】と政府関係者を脅したり、【ウチの株を上場廃止にしたら、経済不安や株価急落が起こってアベノミクスにマイナスだぞ。それでもいいのか?】と政府関係者を脅したり、【東京電力の原発メンテナンスを請け負っているのはウチですよ。ウチがヤバい事になったら原発再稼働どころじゃなくなりますよ】と政府関係者を脅したり、【これからもスポンサーの立場でマスコミを支えますから、粉飾決算とか騒いで大きく報道しないで下さいね。お互い仲良くしましょう】とマスコミ関係者を懐柔したりしてそうね。」

愛原「お互いに利権まみれ。弱みまみれだからこそ、結託できる構図だな。この集団の中に【私は無駄な公共工事には断固反対します】とか【私は不正は許しません】いう人を混ぜても、排除されるだけなのは、もう目に見えまくっているというか。」

鼎「私達は、無駄な公共工事の全てが一斉に無くなる所まではいかなくても、減ってくれればいいなぁくらいには思うけど、それも難しい理由も見えてきたよ。たとえば今話題の国立競技場の二倍近くの費用がかかる八ッ場ダムが、工事着手から20年経ってもまだ完成しないけど、このたった一つの公共工事でも減らないのは、【ウチの工事に反対するなら、俺もお前の所の工事に反対するぞ】という連鎖につながるからなんだよね。」

逆沢「整備新幹線も、その論理でどんどん広がっているしねー。【○県に新幹線が通るなら、我が県にもあって当然。○県の新幹線事業に賛同したのだから、次はウチの番】みたいな感じで。」

愛原「かくして利権まみれの要人はどんどん増殖し、清廉な人は逆に駆逐される。」

逆沢「悪貨は良貨を駆逐するのね。」

鼎「佞臣は、清廉な要人に自分の罪を暴露されるのを何よりも怖れるから、それで清廉な人ほど佞臣によって駆逐されやすいというのは、なる程と思ったかも。」

愛原「そして佞臣は、佞臣によって増殖するだけではない。たとえば財政再建に燃える真面目なトップが、できるだけ効率的に法案を通そうとした結果、【綺麗事だけで世の中は回らないのだ】と考えて、賄賂で寝返る抵抗勢力には賄賂で懐柔し、頭の固い抵抗勢力は非合法手段に訴えても叩きつぶすみたいな事を考えるくらいは普通にありえる。」

鼎「【目的の為なら手段を選ばない】タイプの人が選びがちだよね。そういうのは。」

逆沢「目的が崇高で立派なものならば、少々汚い手段に訴えてもやむを得ないって考える人は多そうだしね。今の解釈改憲とかも、そんな人達の手によって主導されてる気がするし。」

鼎「けど綺麗な目的を達成する為に汚い手段に頼った結果、周りには汚い人ばかりが集まるようになって、綺麗な人はどんどん駆逐されて、やがて汚い人達が汚い目的を達成する為に汚い手段をやりたい放題するようになったりしたら怖いよね。」

愛原「そうでなくとも、利権に踊るような人間は、こちらが提示した利権にも踊ってくれるが、敵対勢力がより大きな利権を提示したら、簡単に寝返る可能性が高いからな。脅しに屈する人間も同様。自分の脅しに屈するような人間は、別の人間の脅しにも屈してもおかしくない。この手の人間は、明日突然寝返ってもおかしくない人達だという事は、決して忘れてはならない。」

鼎「綺麗な目的を達成する為に汚い人間を利用したら、やがて汚い人間達が手のひらを返して綺麗な自分が駆逐されてもおかしくないって事かな?」

逆沢「そうでなくとも、汚い人間は、いい子ぶってる綺麗な人間がデカい顔してるのを好まないからねー。利用できる内は利用し合う関係で居続けるだろうけど、いずれ反目は避けられないと思うわ。まぁその前に汚い人間の一員として組み込まれてしまう可能性の方が高いとは思うけど。」

愛原「汚い人間というのは、確かに利用しやすい。たとえば我々がテーブルトークRPGなどをプレイしてる際、門番なり衛兵なり店員なりが賄賂に弱い性格だとすごく助かる。そういう汚い人間は、こちらの要求を簡単に呑んで、通してはいけない道を通してくれたり、しゃべってはいけない情報を簡単にしゃべってくれたりするからな。」

鼎「国盗りゲームとかでも、同じ事がいえるよね。たとえば義理が低く裏切りやすい性格の人物が城主をしていたりすると、簡単にこちらに寝返らせたりできるから。」

逆沢「利用する側の人間からすれば、この世の人間は全て欲まみれの人間である方が、扱いやすくて都合がいいとも言えそうね。カネさえ握らせれば、あるいはちょっと脅してやれば、なんでも言いなりになってくれる人ばかりであれば、こんなに楽勝な事はないというか。」

鼎「けどそういう欲まみれの人間は、権力者とか金持ちとか強面の人にとっては都合がいいかも知れないけど、そうでない人にとっては、すごく厄介で迷惑だよね。すぐに欲に釣られて人を裏切ったり、平気で人を傷つけたりもできるだろうから。」

逆沢「権力者や金持ちにとっても、自分よりさらに上手の者がいれば、その者によってひっくり返されるから、一度は懐柔できたとしても、油断できないとは思うけどねー。」

愛原「故に人たらしと言われた秀吉なんかにしても、自分が天下人になった途端に、裏切りは許さないといわんばかりの方針に切り替えたな。自分を頼って味方を裏切って秀吉軍に付いた大道寺政繁などを、戦後裏切り者として切腹に追い込んだり。」

逆沢「自分が若い時は、人たらしらしく、たくさんの人を裏切らせて自分の味方を少しでも増やそうと躍起になってたのに、すごい変貌ぶりねー。」

愛原「別に秀吉だけが例外ではなく、天下人の思考回路は大体同じだな。自分が天下人に成る前は自分自身を含めて平気で裏切りをしたり、自分の味方になるように裏切りを誘ったりするが、天下人になった途端に忠義を強要する。人を裏切らせて味方につけるメリットよりも、人が自分を裏切るデメリットの方が大きくなったと判断したからこその方針転換だろう。」

逆沢「けど結局、秀吉政権は、その死後に簡単に壊れてしまったけどね。」

愛原「利を持って味方をつけた後に、義の大切さを説いても、周りの味方は既に利に転ぶ人の集合体なんだから、無意味って事なんだろうな。秀吉の権勢が強い内は、豊臣家につく利(=秀吉を裏切る不利)によって部下を縛り付けることも可能だったが、秀吉の死によってそれも不可能になったという事だろう。」

逆沢「利で結びつく関係は、互いに結びつく利が無くなった途端に瓦解しかねないはかないものって事ね。」

愛原「秀吉はそれを自覚していたから、天下人になった途端に利で人を釣るやり方から、義に訴える方針に変えたんだろうけど、それで欲深い性格の人が義理堅い性格に変身する訳でも無しって事だな。」

鼎「だから権力者によっては、利で釣って味方に付けた人に義を求める事を諦めて、はじめから使い捨てと割り切る人も多そうだよね。用済みとなった途端にズバッと処分するみたいな感じで。」

逆沢「そりゃ、しゃあない。私が権力者の立場でも、いつ裏切ってもおかしくないような奴を、心から信頼するはずがないしねー。簡単にこちらに寝返るような奴は、簡単にこちらを裏切るようにしか見えないから、用済みになったらできるだけ早く縁を切るなり、処分したいとしか思えないというか。」

鼎「時代劇やヤクザものだったら、正義の味方に殺されるよりも早く、味方と信じていた人に殺される役回りだよね。」

逆沢「利用できる内は利用してやらなくもないけど、見てて情けないタイプだしね。簡単に賄賂受け取ってヘラヘラしてたり、バラされたら困るような軽犯罪まみれの小悪党とかは。」

鼎「誰かに利用されるだけされて、最後に用済みになったら捨てられるだけの小悪党とか、私はなりたくないよ。」

逆沢「大悪党ならまだしも、私も小悪党なんか嫌だわ。まぁ小悪党でも好き放題に生きている内は幸せかも知れないけど、誰かに弱みを握られて言いなりにさせられたりみたいな小悪党は、さすがにねぇ〜。」

愛原「けど欲まみれの人間は、小悪党になりやすい。賄賂を受け取ってしまったり、非合法な接待を受けたり、色仕掛けに引っかかったり、で、そういうチンケな小犯罪に手を出してしまったり、バレたら困るスキャンダルを抱えてしまった結果、今度は脅しのネタにされる。」

鼎「公務員の人は、特に要注意らしいよね。ほんの些細な接待を受けてしまったせいで、以後、それをネタにゆすられたりする事もあるらしいから。」

逆沢「で、一度でも賄賂を受け取ってしまったら、もう開き直って、賄賂を受け取って当たり前みたいな、小悪党な生き方しかできなくなると。」

鼎「あるいは賛成すべきでない法案に賛成してしまった結果、お互いに相手の利権を満たし合うだけの汚い関係になってしまったりとか。一度、犯罪を見て見ぬ振りをしてしまった結果、今後も見て見ぬ振りを続けざるを得なくなったりとか。」

逆沢「そういう小悪党が政界や財界の中枢部を占めるようになると、大変な事になりそうね。お互いに悪い事を、見て見ぬ振りしたり、やりたい放題みたいになっちゃうから。」

鼎「そうならないようにするには、どうすればいいのかなぁ?」

愛原「アメリカの司法取引みたいなものが必要になるかも知れない。まぁ一番、理想なのは、改心した上で告発に踏み切ってくれる事なのだが。たとえばセクハラヤジ騒動なり政務調査費問題なりが起こった際に、誰かがちゃんと自分が知っている限りの全てを告発する事で、お前もやっただろとか、あいつもやったみたいに拡散して、全容が明らかになる可能性はある。」

逆沢「お互いにかばいあってる状態を破壊するって事ね。」

鼎「【貴方の県の無駄な公共工事に賛成しますから、私の県の無駄な公共工事に賛成して下さいね】という悪の助け合いシステムをやめて、【貴方の県の無駄な公共工事に反対します。その代わり私の県にも無駄な公共工事はいりません】という清廉な状態にもっていければいいという事だね。」

愛原「有権者がそういう清廉な候補者を勝たせるかどうか次第だな。自分の地区だけを豊かに出来る政治家なんてのは極めてまれで、仮に自分の地区に利権をもたらそうとするならば、他地区にも利権を配らねばならなくなるだろうから。」

逆沢「自分だけが有利になるような裏取引ってのは、あまりないだろうからねー。自分が利権を享受するなら、相手にもそれなりの見返りを用意しないと取引自体が成立しないだろうから。」

鼎「でもそういう汚い裏取引に応じてしまうと、それ自体が弱みになってしまうよね。」

愛原「かくして国家も組織も腐敗する。賄賂や裏取引が横行し、清廉な人間がどんどん隅に追いやられていく。」

鼎「確かに交渉する分には、賄賂や裏工作にもすんなり応じてくれる相手の方が、スムーズにいくかも知れないけど・・・。」

愛原「野心や信念を持って何かをやり遂げようとする際に、反対者や抵抗勢力が出るのはやむを得ない。でもそこで、彼らに抵抗される事を嫌がって、手強い清廉な抵抗者を排除し、利権を提示する事で簡単に取引に応じる欲深い人間だけを優遇するようになると、社会はきっと駄目になる。清廉な抵抗者には汚い裏工作が効かないため、交渉相手としては面倒くさいかも知れないが、だからといって安易な排除は考えものだとおもう。」

鼎「清廉な抵抗者は、味方に付けるのは難しいかも知れないけど、うまく味方につけられたら、すごく頼もしいよね。敵対勢力の裏工作によって再び寝返る可能性も低いし、きっと筋を通してくれるだろうから。」

逆沢「国盗りSLGでも、義理堅い設定になっている人物ほど、登用は難しいけど、その代わり、一度味方につける事に成功したなら、安心して起用できるようなものね。」

愛原「手間を惜しんで、欲深い者だけで周りを固めるか? 手間をかけても義理堅く清廉な者で周りを固めるか? 要はそれだけの差ともいえる。」

逆沢「もっとも自分自身が欲深い側の人種だと、清廉な人間だけで周りを固めるのは難しそうな気もするけどね。無駄な公共工事を地元に誘致する事しか頭にない人間が、無駄な公共工事を嫌う清廉な人間を周りに集められるとも思えないし。」

愛原「自分自身が欲深い側の人間ならば、自分と同じタイプを周りに固めて【貴方の地区にも利権を回しますから、私の地区にも利権を回して下さい】みたいな黒い友情を築くしかなくなるだろうな。但し、黒い友情は、相手に利用価値が無くなったらそれまでだけど。」

鼎「汚い目的を持つ人が汚い手段を用いても不思議には思わないけど、綺麗な目的を持つ人が手間を惜しんだ結果、汚い手段を用いるのだけは、さすがに残念な結果になりかねないからやめた方がいいという事だけは分かったかも。」

愛原「悪党は、相手の弱みを見つけるべく、常に虎視眈々とそのチャンスを狙っているからな。自分自身にやましい所がないのなら、あせって自らの手を汚すべきではない。それはあまりにもったいない。生まれついて汚れた人間はいないけど、一度ついた汚れは簡単には落ちないのだから、もしもまだ自身が真っ黒でないのなら、安易に自分を汚しかねない選択は、極力選びたくないものだな。」














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