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愛原様のたわごと(15年9月27日)






愛原「今回は集団的自衛権関連の法案が通ったので、【兵站】をテーマにしてみたいと思う。」

鼎「ええと兵站というのは、確か軍の後方支援部門を指した言葉だったかな?」

逆沢「要するに軍の後方支援全般について、今回は取り扱うという事か? けど今回の集団的自衛権関連法案とどういう関係があるのだ?」

愛原「今回の集団的自衛権法案に関しては、法案提出側である与党、それに抵抗する一部反対勢力、そしてマスコミ。いずれのミスリードも非常にむごかった。今回の法案の趣旨は、ぶっちゃけていえば他国軍の後方支援を常時可能にする目的にあったはずだが、与党は与党で【同盟国がやられている時に助けに行かなくていいのか?】と【集団的自衛権】を前面に押し出すミスリードをかまし、一部反対勢力の中には徴兵制復活とか、妙な妄想理論を展開し、マスコミの大半は与党の思惑通り、与党に都合のいい【集団的自衛権】というタイトルで広く印象づけを行った。また野党の中では、民主党の対応がずば抜けてひどい。一昔の社会党さながらの、パフォーマンス反対の姿勢が露骨すぎて、吐き気がしそうになったわ。」

逆沢「ま、仮に民主党が政権を奪還したとしても、じゃあ今回強行採決された集団的自衛権関連法案を白紙にするかといえば、まずそんな事は考えられないしねー。本音では必ずしも反対じゃないけど、自民党に対する対抗勢力の受け皿となるべく、今回の法案に反対する国民受けを狙ったパフォーマンスの一環として、強行裁決時の乱闘騒ぎとか、精一杯与党に抵抗するふりをしてみせましたって姿勢が露骨過ぎたのは、私にも不快だったわ。維新の党も、よく分からない対案だして、お茶を濁すだけだったし。」

鼎「そんな事は私的にはどうでもいいけど、結局、今回の法案のポイントは、集団的自衛権の名の元に、他国軍をいつでも後方支援できるようになりましたって事でいいのかな?」

愛原「ま、そういう事。実際には今までも、空中給油機などを使った後方支援のパフォーマンスとかもやってたし、今までやっていた事が、これからはより大っぴらにできるようになるってだけで、【日本が戦争できるようになる法案】というレッテルは誤りといえば誤りなのだが。」

逆沢「ただ今までは、憲法より上位の特別法を、アメリカが戦争する度に制定する事で、それを可能にしていたけど、今後は特別法なしでそれが大っぴらにできるように変わったって事か?」

鼎「憲法より上位の特別法なんてものが認められるって時点で、今までの法解釈も色々狂っていると思うけど・・・。」

愛原「日本の憲法は昔から、骨抜きだからなぁ。陸海空その他の戦力の保持を認めない事になっているにも関わらず、そういうのも何十年前からあるし、集団的自衛権も憲法9条ではっきり否定されているのに、今回もそれが憲法より下位の法律によって覆された事で、ますます骨抜き化が進んだ気がしなくもない。」

逆沢「だったら私も、税金関係の法律くらいは骨抜きにしたいわ。」

愛原「破産宣告受けても、税金と罰金の滞納金だけはチャラにならんくらい、税金関係の法律は強いから、脱税やりたい放題の政治家や大富豪以外は、税金からはどうやっても逃げられないと思った方がいい。今回の集団的自衛権関連法案もそうだけど、政治家は憲法ですら簡単に踏みにじれるが、庶民はたった1%の消費税からも逃れられないようになってるからな。仮にスーパーに行って、7%分の消費税しか払わなければ、きっとそのスーパーには二度と出入りできなくなるだろうし。」

逆沢「ひでえ国だ。小渕優子も自民党神戸もやりたい放題なのに、私達はたった1%の消費税すら、逃れられねえのかよ。」

愛原「また話が本題からずれようとしてるから、ここで軌道修正を図る。さて何はともあれ、集団的自衛権関連法案という名の、兵站支援法案が今回可決した訳だが、日本及び自衛隊が兵站や輜重活動に積極的に参加する事で、何がどう変わるのだろうか? 安倍政権が何度も念を押した通り、【後方支援なんだから安全(orよりリスクが高まることはない)】というのは本当なのだろうか? まずはこの部分から切り込んでみたい。」

逆沢「いや、切り込むも何も、結論出てるから。後方支援なんだから安全とか、低リスクとか、そんな事絶対にないし。つうか、自民党はどこまで軍事に無知やねん。お前らが集団的自衛権とか、軍事に口出ししたらあかんやろ。いくら文民統制つつっても、ドがつく程のシロートが首ツッコんでいいジャンルじゃねえし。」

鼎「私達もシロートさんなのは一緒なんだけど・・・。」

逆沢「いや、それでも後方支援が安全とか低リスクとか、妄想が過ぎるだろ? 中世までの戦争形態ならともかく、近世以降は、いかに相手の兵站を潰すかで勝敗が決まるくらいだし。」

愛原「食糧を現地調達できれば事足りた中世以前と異なり、近世以降は、いかに優れた生産拠点を確保し、かつ生産拠点と最前線を結ぶ補給網を構築できるかが最重要になった。太平洋戦争なんかもそうで、日本からみれば石油をどうやって調達するか? つまりシーレーンをアメリカ軍によって寸断された時点で、日本軍に勝ち目はない。逆にアメリカ軍からすれば、遠い本土と日本を結ぶハワイやサイパンなどの地域をいかに守るかが重要であり、緒戦の真珠湾攻撃でハワイが大ダメージを受けた事は、格下日本と戦う上で数年間の我慢を強いられる程の影響を与えたほどだ。」

鼎「現代の戦争は、ある意味、陣取りゲームだよね。いかに敵の生産拠点を破壊するか? いかに敵の輸送ルートを寸断するか? みたいな感じで。」

逆沢「逆を言うと、相手の兵站にダメージを与えない限り、どれだけ相手にダメージを与え続けても、なかなか戦争が終わらないという事でもあるしね。」

愛原「日本は中国を攻めて攻めて攻めまくったが、日本がポツダム宣言を受け容れて無条件降伏する日まで、最後まで中国が抗戦できた理由もそれだな。ドイツがソビエトをどれだけ攻めまくっても、ソビエトの戦力が衰えなかったのも同様。もっといえば、ベトナム戦争も、アメリカの兵站が先に行き詰まったから、ベトナムはアメリカに勝てたという形になる。」

鼎「今は、昔以上に戦争を続けるのに、大きな資金が必要になるよね。で、それを輸送するコストとかも莫大になるから、補給線が伸びる遠方への遠征になると、それだけですごいお金が飛んでいくことになるし。」

愛原「そう。ベトナム戦争でアメリカが負けたのは、これ以上戦争を継続できるだけの経済的余力が尽きたという方が大きい。そしてこの経済的余力というのは、自国の経済力が敵国の経済力より上かどうかは関係ないから厄介だ。いかにアメリカが大国で、ベトナムの何十倍の経済力があったとしても、自国内の経済的余裕が無くなると、戦争は継続不可能になるからな。」

逆沢「経済大国という事は、兵士の給料から燃料コストに到るまで全てが高く付くという事だからねー。」

鼎「もっともアメリカの場合は、自分の国の本土(ハワイなどの飛び地は除く)が外国に攻められた事は無いし、今後もその歴史を続けられるとしたら、生産拠点を敵国に襲われることはないというのは、すごく大きなアドバンテージだよね。」

愛原「アメリカが最も怖れているのは、テロ等による本土攻撃の方だろうな。だからこそ、本土に対するテロ攻撃に対しては、アメリカは極めて強い報復姿勢を取るという事だろうけども。」

逆沢「仮にアメリカに対して本土攻撃が不可能だとすれば、アメリカの兵站を潰すには、真珠湾攻撃の時みたいに、輸送ルートを潰すしか方法はないって事かな? あるいはベトナム戦争の時のように、アメリカの経済力が尽きるのをじっと何年も耐えて待つか?」

愛原「ちなみにベトナム戦争の失敗を教訓としたアメリカは、それ以降、大規模な軍事活動を行う際に国際社会の協力を乞う事で、兵站を大きく補うようになっている。日本もアメリカの言いなりになるべく、毎回毎回特別法を制定しては、金銭面や補給面・輸送面などでアメリカの兵站の一部を強くカバーするようになった。」

鼎「どう考えても日本は、昔から集団的自衛権を行使しまくっているよね。特別法の名の元に。」

愛原「前線と後方がかみあって初めて軍事作戦が成立するのに、前線任務じゃないから、これは軍事活動じゃないと言い張る歴代自民党の軍事オンチぶりは、あまりにひどいと言わざるを得ない。あるいは本当は軍事活動そのものである事を知っていながら、国民を騙す為にそう言い張っているだけかも知れんが。」

逆沢「国際社会の協力という武器を得て、ますますアメリカの兵站が強固に変わっているとしたら、アメリカに敵対する側としたら、輸送ルートを寸断するなり、戦術レベルで挽回するしかないか? まぁ一番理想なのは、アメリカの外交関係を破壊する事だけど、これは簡単じゃないから。」

愛原「ま、敵の輸送ルートを潰すというのは、古代から現代まで通じて極めて実用的かつ常識的戦術手段ではあるな。特に太平洋戦争の日米は、まさにそれのつぶし合いだった。序盤はハワイという最重要中継拠点の港を潰す事で日本側が非常に優位に立った。ここの機能が麻痺したアメリカは、フィリピン等でも孤立し、マッカーサーをして有名な【アイ・シャル・リターン】を言わしめたほどだ。だが日本はその後、アメリカ軍の兵站をさらに潰す事ができないばかりか、その機能回復も許し、やがて逆に日本の補給中継拠点がどんどん奪われていき、ついに日本の石油輸送ルートまでが寸断される。そして石油ルートまで寸断された日本軍は、いよいよ劣勢に陥り、反転攻勢の糸口もつかめず、逆に制海権と制空権をほぼ握ったアメリカ軍は、日本列島近郊にまで空母を寄せて、そこを拠点にB29などを投入し、ついに日本の生産拠点を空爆し放題。後はみんなの知っての通り。」

逆沢「敵の輸送ルート潰す事で、敵の前線は孤立する。逆に味方の輸送ルートを伸ばす事ができれば、それだけ敵に奥深く迫り、ついには敵の生産拠点そのものまで攻撃可能になる。戦争を有利にするってのは、敵の兵士をたくさん殺す事ではなくて、いかに陣地取りゲームを有利に進められるかって事ね。」

愛原「特に日本のように、自国でエネルギーを自給自足できない国の場合、日本列島だけを守り切れれば勝てるという訳にはいかない。石油などを運ぶ輸送ルートが寸断されたら、そう遠くない内に必ず崩壊する。コンバイン一つ動かなくなるから、米すら今までのようには作れなくなるぞ。」

鼎「今の日本は、平和状態が崩れて、輸出入が止まるだけでいろいろヤバい状態にあるって事かな?」

愛原「正直な話、今の日本は、米露中のように軍事力で覇権を築くのは無理。自給自足ができないので、戦争が始まった時点で、輸送ルートが切られてしまうから。仮に日本が戦争を長く継続したいのなら、急いで石油が出る国をぶんどって、かつそことの輸送ルートも万全にしないと駄目だが、それは現実的な選択肢ではない(ちなみに太平洋戦争の時に日本が真っ先に東南アジアに攻め入ったのは、インドネシアのバタヴィア油田などを抑えるため。しかし今の日本で仮にアメリカや中国に戦争をしかけられたからといって、いきなり無関係の東南アジアに攻め込むのは非現実過ぎるだろう)。」

逆沢「仮に日本が戦争に巻き込まれた場合は、中東にしろ東南アジアにしろアメリカにしろ、他国から資源を輸出入できるだけの制海権だけは、絶対に死守しないと駄目って事か? けど一番近い東南アジアまでのシーレーンすら、死守するのは簡単ではなさそうだし・・・。」

愛原「アメリカ・中国・ロシア。この3国のいずれかと本気でもめると、日本は補給網すら満足に保てなくなる。日本は軍事力を高めれば何とかなる自給自足可能国というわけではないので、平和外交のウエイトはどうしても高くならざるを得ない。秀吉の朝鮮出兵の頃のイメージで現代の軍事を考えると、とんでもない事になるぞ。」

鼎「とするとアメリカなどの軍事大国でも、兵站を侮ると、いつでもベトナム戦争の二の舞になる危険もあるって事かなぁ?」

愛原「アメリカが世界中に駐留軍用地を置いているのは、兵站網をできるだけ広く保ちたいからだ。逆を言うとロシアや中国は、国外に駐留軍用地を持たないため、近隣国以外に戦争を売るのは容易ではない。もっとも中国は南沙諸島に軍用地を一つ建造中らしいが、これが機能するようになれば、中国が東南アジアに軍事的プレッシャーをかける上で、大きなアドバンテージにはなるだろう。」

鼎「アメリカの兵站に対するこだわりはすごいよね。アフガニスタンと戦争状態になった途端に、かつて核問題で制裁対象だったパキスタンと修好して空港まで借りて、そこを拠点に空爆を繰り返すようになったりとか、戦争を始める度に、最優先で中継補給拠点を構築してしまう辺り。」

愛原「いかに大国アメリカとて、本国から直接飛行機を飛ばす訳にはいかないし、空母の移動スピードや輸送量にも限界はある。特にベトナム戦争で痛い目にあったアメリカとしては、万全の兵站で準備するのは基本中の基本なんだろう。どんな世界最強の軍隊でも、兵站で失敗したら、戦争には勝てないという事を身をもって知っている国だからな。現代の軍事活動は、戦闘機や戦車といった前線向きのハードだけで勝てる程、甘くはない。兵站のウエイトがむしろ大きくなっている。」

逆沢「日本も、それを身をもって知っている国のはずなんだけどね。どんな格下国であっても、相手の兵站をつぶせない限りは、絶対に勝利できないのが近代軍事の常識って事は。」

愛原「兵站の重要性に関して言えば、三国志で有名な官途の戦いの頃以前でも言える話だが、現代ではその重要性はさらに増している。軍隊と軍隊がガチでぶつかるような、大艦巨砲主義的形態の戦争の比率は明らかに減っており、軍隊が民間人の経営する生産拠点を襲ったり、航路や鉄道を寸断するタイプの戦争の比率の方がはるかに高まっているともいえる。」

鼎「特にアメリカ軍は、その傾向が強いよね。イスラム国に対しても、メインはひたすら空爆空爆で、直接白兵戦闘するのは雇ったクルド人とか、そんな感じになってるみたいだし。」

逆沢「イスラム国側がアメリカ側の民間拠点を奇襲したらテロという報道になって、アメリカ軍がイスラム国側の石油施設や経済拠点を襲っても正義の空爆扱いの報道は、すごく疑問ではあるけどね。」

愛原「多くの空爆死没者を出した日本人なら、どこの国の住民よりも、空爆という攻撃手段に対して嫌悪感を持っていいはずだが、アメリカが最も嫌がるテロを最も嫌い、アメリカが最も好む空爆に最も寛容な今の日本の国民性が、俺にはどうも不思議でならない。」

鼎「今の日本は空爆という攻撃手段手段に寛容だとしても、でも実は日本の自衛隊は空爆という攻撃手段を自前で遂行できないんだよね。なぜなら戦後、日本の航空産業は、アメリカによって強制的に廃業に追い込まれたから。」

逆沢「あ、そうか。かつてゼロ戦を初めとして世界を震撼させた航空技術を持った日本も、今では一機の戦闘機も作れなくなったのか・・・。民間の航空機も軍用機も、今はみーんな外国産ばかりなのよねー。」

愛原「いざ戦争になったら、日本は航空機を軸とした戦闘形態も、まともに取れなくなる可能性がある(既にアメリカなどから買って保有している軍用機が尽きたら終わりな為)。つまり制空権も確保できないし、空爆戦術も取りがたい。というか爆撃機自体持ってないだろう。制空権が取れないので、爆撃機を持ってても意味ないけど。」

鼎「空爆戦術を得意とする国が空爆にポジティブなら話も分かるけど、逆に空爆戦術を使えない国なら最も空爆に嫌悪感をもって当然なのに、アメリカに都合のいい世論形成がされているみたいですごく怖いよ。」

愛原「ちなみに日本がアメリカから買った一部戦闘機には、遠距離攻撃性能に秀でたものもあるにはあるが、日本国内にそれを命中させたり訓練する広い場所自体がない為、一部の訓練はアメリカに渡ってするそうだ。」

逆沢「日本は自前で戦闘機も作れないし、仮に作れても訓練も国内だけで完結できないのかよ。終わってるわ。」

愛原「アメリカや北朝鮮なら、ミサイルでも核兵器でも平気で海にぶっ放して訓練や実験を繰り返すけど、日本がそれをやったら、多分国際社会から袋叩きになるだろうな。」

逆沢「北朝鮮は国際社会から袋叩きに遭う覚悟でやってるからともかく、アメリカは汚い。すごく汚い。つうか日本はフランスが海で核実験したらアタック25のパリ旅行を止める程、猛抗議したのに、アメリカが海で核実験して第5福竜丸を被爆させてもへっぴり腰対応だったし、日本の二枚舌外交が全然理解できねー。」

愛原「ま、日本の国防を語る上で石油の輸送を止められないように対策するのは必須だが、そのシーレーンを確保する上で、制空権を確保するという選択肢自体は有効だ。その制空権を確保する為にも、日本は自前で戦闘機を作れるようにならないと駄目だとは思う。まして日本の場合、かつて世界を驚かさせた航空技術を持ってたくらいなんだから。別にきな臭い理由だけで無く、航空産業の振興は経済政策としても有用だと思うし。アメリカは激怒するかも知れないけど。」

鼎「そういえば昨日か一昨日か、中国がアメリカの軍用機を爆買いしたってニュースあったよね。それで互いのサイバー攻撃に対する非難合戦もやめるとかもニュースになってたけど。」

愛原「中国は自前でも航空機は持ってるけど、あえてアメリカから買う事で、アメリカのご機嫌を取ったという所だろう。中国経済に余裕がある事を示すアピールも含まれているかも知れないが、アメリカにとって航空産業はすごく大きな柱の一つだし、アメリカとしては懐柔されたと分かってても、まいどおおきに!と良い笑顔をせざるを得ないという所だろうな。」

逆沢「そこまでアメリカが航空産業を重視しているならなおのこと、日本が航空産業に名乗りを上げたら、ますますアメリカの機嫌を損ねる気がするわ。そんな事されたら、アメリカの航空産業のシェアが減って、ダメージも与えかねないし。」

鼎「アメリカの顔色ばかり伺っているから、日本の立場はどんどん悪くなる一方の気がするよ。家康さんの言いなりになっていたら、どんどん堀を埋め立てられていくみたいな感じで。」

逆沢「そしてリスクが大きな割りに見返りの少ない兵站の手伝いまで、今後さらに当たり前のように加担させられていくと。」

愛原「兵站確保は軍務を遂行する上で極めて重要な任務だが、正直、苦労が大きな割りに見返りに乏しいからな。兵站任務だけで敵の領土を奪える事もないし、派手な軍功を稼げる事もない。かつて海部政権の時の湾岸戦争で、日本は90億ドルもの支援をしたが、それでも感謝すらされなかったように、後方支援というのは、本当に感謝されにくい。そのくせ、補給部隊が襲われたり、兵站維持任務に失敗したら、まず一番に叩かれる。故に出世したいタイプの軍人は、そういう任務には就きたがらないし、大将級が兵站任務に携わる事もあまりない。」

鼎「兵站任務は、苦労の割りにおいしくないから、日本やその他の国際社会に押しつけるって事かな? で、美味しいところだけアメリカが持っていって、派手に敵を滅ぼし、機密情報や領土などの戦利品を自分が自由にするみたいな。」

愛原「仮に安倍がしつこく主張したとおり、後方支援が安全で低リスクなら、ローリスク・ローリターンで釣り合いがとれるが、実際はそうじゃないしな。」

逆沢「お互いに敵の兵站をつぶし合うのが現代の戦い方である以上、兵站は最も敵の攻撃の的になるという覚悟も必要になるしね。」

愛原「そう。敵の輸送ルート。可能なら敵の生産拠点も含めて、兵站を最優先で潰すのは、軍事において最優先のミッションだ。というか敵兵が銃を並べて待っている所に、まともに突っ込むような戦争は今時まずしない。」

逆沢「昔でも、それは普通しないだろ♪ 例外は長篠の戦いくらいのもので。」

鼎「無謀に突っ込んだりはしなくとも、お互いに撃ち合うような展開なら、関ヶ原の戦いとか、色んな例が中世以前ではあったような気もするけど。」

愛原「戦線を突破しないと先に進めないとか、そういう時代の戦い方だな。だがそういうのは、長州藩の大村益次郎が軍船を動かして仙台藩の背後を突いて以降、日本でも徐々に古い戦い方と化していった。高火力の船や飛行機があれば、後方拠点をいきなり強襲する事も難しくないし、拠点や兵站を破壊すれば前線も機能しなくなる以上、生産拠点から無限に沸いてくる前線でいつまでも耐え続けるより、可能なら拠点を先についた方が決着も早く付くからな。」

鼎「旧日本軍がアメリカ軍に勝てなかったのは、アメリカの拠点にダメージを与えられなかったから、無限に沸いてくるアメリカの戦力の前に力尽きたとも言えそうだよね。逆に日本はシーレーンが寸断された事で、減る一方の現有戦力での戦いを余儀なくされて・・・。」

愛原「それくらい現代では、兵站破壊の意味は大きい。故に今後、仮に日本がアメリカの兵站の一部をより積極的に引き受けるとするなら、日本が敵の攻撃の的になる事も意味する。兵站を破壊する以外にアメリカに勝つ方法がないとするなら、敵とすれば、最優先で兵站の破壊に戦力を集中させてくるのは目に見えて明らかだからな。」

逆沢「後方支援が最も危険なのは、三国志の時代から変わらんと思うわ。そこを破壊すれば一発逆転ができると思ったら、敵がそこを狙ってくるのは明らかすぎるほど明らかだろうし。」

鼎「後方基地が複数あったとして、日本の軍が守る後方基地が一番弱いと敵が判断したなら、日本の基地が最優先で狙われてもおかしくないよね。」

愛原「日本が守る後方基地。もしくは輸送部隊が恐ろしく強いとか、報復が恐ろしいといった噂が広まれば、襲われるリスクも下がると思うが、それだけの威圧力が今の日本にあるかといえば・・・。」

逆沢「アメリカ軍も自衛隊の戦闘力には一目置くレベルとかなら期待できそうだけど、ポチである内は、とても期待できそうに無いわね。つうかそうでなくとも、後方部隊は前線部隊よりも弱いというのは、ある意味常識でもあるから、敵の弱い所を突くという意味でも、後方ほど襲われやすいのは、ある意味当たり前だし。」

愛原「特に現代では、最前線の兵士同士が殴り合う時代ではなく、互いの最前線が互いの兵站を襲い合う時代なので、後方のリスクも増大する一方だ。アメリカ軍はよく民間人を狙ったテロを非難するけど、自分達は空爆という手段で平気で民間人が働く経済拠点を破壊するし、報道が偏っているだけで、血祭りにした民間人の数も、多分アメリカ陣営の方が多いだろう。以前、親米のレバノンのパイロットがイスラム国側に拘束された際に、そのパイロットが空爆で焼き払った映像が流出した事があったけど、これだけの被害を与えたらそりゃあ死刑にされても仕方ないだろとも。」

逆沢「一方の日本は、東京大空襲を含む対日無差別空爆を指揮した当時のアメリカの空軍司令官に、後に勲一等旭日章を授与しているけどね。確かノーベル平和賞をもらった佐藤栄作が与えたんだっけか? おそらく世界一の空爆死没者を出したであろう、日本の政府のやることとは思えんわ。靖国の英霊を慰霊する気持ちはあっても、空爆死没者を慰霊する気持ちなど、欠片も無さそうと言うか。」

鼎「日本は昔から、兵站を軽くみる傾向があったと言われがちだけど、空爆死没者と戦没者の扱いの差一つとっても、後方支援に携わって支えていた人達をすごく軽く考える傾向があって悲しいよ。」

愛原「兵站業務に関わっている人が、武器や食糧を作ったり、それを運んだりしてるから、前線が活躍できる。現地調達である程度は間に合う中世以前と異なり、今の時代に、それをやっても牟田口廉也中将のようになるだけだ。にも関わらず、多くの民間人を含む、後方で支える人々が、日本では未だに軽く見られている気がしてならない。」

逆沢「兵站を軽くみているからこそ、【後方支援なら安全】とか【後方支援程度なら】といった軽い意識で、アメリカの言いなりになれるんだろうけどねー。兵站の重要性を知っているアメリカにしてみれば、他人に押しつけたくなるくらい重い役割なのに見返りが少ないから、他国に押しつけているだけだろうに。」

鼎「けど私達も、似たような認識かも知れないよ。たとえばSRPGでは【勝利条件〜敵の全滅】というのが多くて、敵を全滅さえさせたら、それで勝負が付くんだから、兵站だの後方支援だのは二の次で、とにかく敵を全滅させるような編成で臨むプレイヤーとかも多いでしょ?」

逆沢「いや、それはゲームだから♪ つうかSRPGで兵站を表現するのは難しいし。」

愛原「そういう意味では、かつてKOEIが出した【毛利元就〜誓いの三矢】は、兵站の重要性がよく表現されていたSRPGだった気もする。」

逆沢「ん? そうだったか?」

愛原「このSRPGでは、中盤以降、敵の無限増殖が当たり前になっていて、特定のマスを占領するまで、永久に敵が沸いてくるんだ。かつてのアメリカや中国やソビエトばりに。」

逆沢「なる程。敵の生産拠点を占拠しない限り、永久に勝利できないシステムって訳ね。」

鼎「でも敵が永久に沸いてくるって事は、経験値稼ぎし放題って事じゃないのかな?」

愛原「まぁ、それはそうだが、実はこのSRPGは、味方が低レベルでクリアする程、有利な仕様になっていてだな。ステージごとに目標レベルが設定してあって、その目標レベルより低いレベルのユニットを訓練モードで目標レベルまでいつでも引き上げる事が可能なんだが、訓練モードを使用する度に、色んなボーナスがもらえたりするんだ。」

逆沢「つまり本ステージで経験値を上げすぎると、訓練モードを使用できなくなるから、ボーナスももらえなくなるって事ね。」

愛原「そういう事。知将と名高い毛利元就をテーマにしたSRPGだけあって、敵をたくさん殺す事は好まれず、いかに効率的に敵の陣地を奪い、省エネでステージをクリアするかが重要になってくる。なかなか意欲的なシステムのSRPGだと思った。」

鼎「でも現代の軍事事情とマッチした作風の気もするよね。現代では、いたずらに無差別爆撃や大量殺戮をするような戦い方は好まれないし、そういう戦いをしても、敵の兵站を破壊しない限り、無限に敵が沸いてくる怖れもあるし。実際、イスラム国にしてもアフガニスタンにしてもテロ組織にしても、敵の無限増殖モードになりつつあるし。」

逆沢「現代は、【勝利条件〜敵の全滅】という考え自体が、ある意味、通用しない時代だからねー。」

愛原「故に資金源を断つ、生産拠点を断つ、輸送ルートを断つ、といった兵站破壊作戦が、勝利条件を満たす上で有効になってくる。逆を言えば、カネが尽きたり、補給を断たれたら、いかにアメリカ程の大国でも戦争は継続できない。そういう時代なのだ。」

逆沢「兵站を語らずに軍事は語れない。兵站がいかに重要かという話ね。」

愛原「こういう機会だし、偽りと虚飾に満ちた与党の説明に惑わされず、色々自分なりに考えてみるのもいいんじゃないかな? 9条を語るだけでは平和は守れないかも知れないが、【後方支援は安全】とかデタラメを語るだけでは平和はより遠ざかる一方だからな。」















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