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愛原様のたわごと(15年10月25日)





愛原「前回、人助けをいとわない優しい人と、そういう人を食い物にする悪い奴の話をしたが、その延長。まず、優しい人とは、そもそもどういう人の事を指すのだろうか?」

逆沢「前回の続きの印象でいえば、やはり誰かのために快く奉仕できるような器量の大きな人を指すんじゃないの?」

鼎「でも、それはかなり一面的な見方のような気もするけどなぁ。そういう側面もあるとは思うけど。」

愛原「人助けに後ろ向きな人を指して【冷たい人】と言うけど、そもそも冷たいの対義語はまず温かいであって、優しいでは無いからな。」

鼎「優しいの対義語は厳しいだよね。」

逆沢「あー、そうか。対義語ねー。そういう見方をすれば、優しい人というのは、厳しい人の反対な訳だから、寛容な人という方がより正確なのかな?」

愛原「器量の大きな人も、他人に奉仕できる余裕のある人も、他人に対する寛容という精神から派生したものだと考えると、優しい人の具体例としては正しいと思う。ただそれだけではないというだけで。」

鼎「とすると今回のテーマは、優しい人という事でいいのかな?」

愛原「それでも構わないが、ちょっと範囲が広すぎるので、今回は【優しい指導者】というテーマでいきたいと思う。」

逆沢「優しい指導者か。そういえば、阪神タイガースの和田豊前監督が、まさにそういうタイプだったらしいわね。」

鼎「選手や関係者の多くが、優しすぎると口をそろえる程らしいけど、それがマイナスに作用したと総括する向きもあるそうだよね。」

愛原「象徴的な出来事として、西岡選手の三塁手コンバートを和田監督が企図して、それを西岡選手に持ちかけたのはいいものの、西岡選手に最終的に拒否されて、結局和田監督がそのコンバート案を諦めたというのがあったらしいな。」

逆沢「阿部慎之助を捕手から一塁手に強制コンバートした巨人の原監督とは正反対の対応ねー。」

愛原「誰を二軍に落とし、誰をスタメンに起用し、誰を何番に打たせ、誰をどこに守らせ、誰を抑えに起用するかなど、そういうのは監督の構想次第で決定されるものなのだが、だからこそ監督の構想を一選手が拒否し、しかも監督がそれを受け容れたという事件は、かなり異例に受けとめられたらしい。」

逆沢「そんな感じだから、特に外国人選手にはナメられるようになって、マートンは機嫌が悪くなると露骨な怠慢プレーを繰り返すようになるし、ゴメスも練習中にドローン飛ばしたり、メッセンジャーは王様と呼ばれたり、学級崩壊とまではいわないけど、かなり締まりの緩い状態になってたらしいわね。」

鼎「中畑監督とかだったら、怠慢プレーは絶対に許さないだろうけど、和田監督はとにかく優しすぎるからそういう対応も出来なかったらしいよね。ドローンの時も、本当は監督ら首脳陣が先に止めないと駄目だったと思うけど、それをせず、最終的に球団の建物にドローンが当たった事で、フロントが現場介入して厳重注意処分になったらしいけど。」

逆沢「優しいのか、臆病なのか、よく分からないけど、上司が何も言わない事をいいことに、部下が好き放題やってる構図ってのはよく分かるわ。」

愛原「それでも和田監督は名将だったという見方もある。データをみる限り、今季の阪神タイガースは、投手の防御率も、野手の打率や本塁打数も、リーグ最低クラス。得失点差に到っては(時期によるが)マイナス80点くらいの惨状でありながら、セパ交流戦では唯一パリーグに勝ち越し、最も長くセリーグ1位に君臨していたわけだから、【貧弱な戦力でも、チームを勝たせる作戦上手】という意味でな。」

鼎「和田さんは、かつて野村克也監督時代にもその下でコーチを務めてたけど、野球理論などに関して、相当高く評価されていたらしいよ。」

逆沢「今季、ネットの野球板では【名将ポイント】というのが話題にされてて、それは【名将ポイント=勝率÷得点率 (得点÷得失点の和) ×100 】で算出される、この値が高いほど【この得失点差にも関わらずよくやっており、名将である】と評価されるものなんだけど、和田監督はセパ12球団の監督の中でも、この値が突出して高いのよねー。これだけ弱いチームなのに、どうやってこんなに勝てるんだ?みたいな感じで。」

愛原「よくよく考えたら、WBCに確実に選ばれるような選手は、阪神では藤波くらいしかいないし、それくらい層の薄い貧弱なチームでありながら、あれだけ長く1位に君臨し、唯一パリーグにも勝ち越したという意味では、和田監督は名将の部類に入れても、そう的外れではない印象も受ける。」

逆沢「数字と結果がはっきり示しているからねー。和田監督の作戦上手ぶりに関しては。」

鼎「部下を引き締めたり、育てたりする意味では、イマイチかも知れないけど、作戦能力でそれらを補えるタイプという事かな?」

逆沢「いや、補えてないから、後半失速したんじゃないかな? 作戦能力はすごく高いかも知れないけど、統率力が全然無いから、どんどんチームが学級崩壊状態に崩れていって、終盤にはそれが目に見える程むごくなって、ついに高い作戦能力でもカバーできない程になって、大崩れしてしまったという方が的確というか。」

鼎「なんか線の細い名参謀が総大将になったら、部下が好き放題するようになって、組織が崩壊しましたみたいな感じかな?」

逆沢「作戦能力はすごく高そうだし、参謀としては優秀な部類なんだろうけど、肝心の部下が、作戦通りに動かないからこうなりましたみたいな感じかな?」

愛原「和田監督は就任中、一貫して【熱くなれ!】をチームスローガンに掲げていたが、和田監督の理想は、チームの為にメンバー一人一人が強い自覚を持って監督の下で結束するスポ根漫画的チームだったんだろう。そういう熱いチームに自分の作戦能力を上乗せする事でチームを優勝に導くという構想。」

鼎「そういえば和田監督は、就任会見の時にも【今の戦力に少しのスパイスを加えれば優勝争いできる】と言ってたけど、そのスパイスが作戦という事だったのかな?」

逆沢「けど悲しいかな。チームは全然熱くなってまとまろうとせず、作戦通りにチームが動く事もなかったと。」

鼎「なんか銀英伝のヤンさんの部下が貴族連合のメンバーだったらこうなるみたいな感じだよね。」

愛原「銀英伝では、メルカッツ上級大将も、シュターデン中将も、作戦通りに動かない馬鹿な貴族達に振りまわされてるシーンがあったが、作戦に従わない仲間に囲まれた参謀がどれだけ悲惨かを考えさせられる思いだな。」

逆沢「ただ和田さんの場合は、同情で済まない部分もあるのよねー。ふてくされて怠慢プレーをするような選手に対しても、何もものを言えないから、他の真面目にやってる選手のストレスもたまる。作戦通りに動かない選手が増えれば、当然勝率も下がるし、勝率が下がれば【無能采配】という事になって、ますます選手達は監督が信用できなくなる。信用できない監督の采配通りに馬鹿正直に動く気にもなれないし、好き放題に動いてもおとがめもないなら、ますます選手もコーチも自分の好きなように動くようになっていくみたいな感じで。」

愛原「ファンタジーの世界では、線の細い名軍師といわれるキャラクターが血気盛んな武人達を従えて、組織を勝利に導く光景も珍しくないが、現実には線の細い軍師が笛を吹いたからと言って、それで素直に皆が踊ってくれるとは限らないんだよな。」

逆沢「特に野球などのスポーツ競技の場合は、開幕前のキャンプなど地道なトレーニングの成否が重要な鍵を握る場合が多いから、ここで選手達にしっかり体を鍛え上げさせ、必要な選手に必要な練習(サードの守りをさせたい選手にはサードの守備練習。バントを仕込みたい選手にはバントの練習など)をさせておかないと、いざ本番になって、作戦の幅が狭まる事にもなりかねないしねー。」

愛原「作戦は、思いつきとその場のノリだけで何とかできるマジックではないからな。作戦を上手く進めるには、それなりに長い時間をかけた準備が必要になるし。部下にもそれだけ長い時間、忠実に動いてもらう必要がある。」

逆沢「作戦を成功させるには、作戦立案者の頭脳以上に、作戦通りに部下を動かせるカリスマ性が必要になるって事かねー?」

鼎「指導者に頭脳とカリスマ性の両方があればいいんだけど、そうでない場合が問題だよね。頭脳が足りないと大日本帝国化しちゃうし、カリスマ性が足りないと作戦が機能しないし。」

逆沢「カリスマ性担当と頭脳担当を、リーダーとナンバー2に分担するみたいな方法が、問題解決の手法としては一般的だけど、実際には仲違いする例も珍しくないのが難点なのよねー。」

鼎「リーダーが、決して仲違いしないような相性の良い人を参謀とかに任ずれば、その問題は解決できるかな?」

愛原「それは最悪パターンと紙一重だな。独裁者がイエスマンだけで側近を固めるとどうなるかは、ちょっと想像してみたら分かるだろ? 仲違いや組織内対立を怖れて、決して反発しないような部下だけで組織を固めると、組織は必ずといっていいほど、腐敗する。矯正も自浄作用も働かず、劣化の一途になるからな。」

鼎「【三人寄れば文殊の知恵】ということわざもあるし、独裁者が自分の思い通りに運ぶような組織よりも、色んな人の意見を幅広く採用した方が、組織もうまく回りやすいよね。」

逆沢「【船頭多くして船山に上る】ということわざもあるけどね。」

愛原「優しい指導者と厳しい指導者には、それぞれ一長一短ある。仮に指導を厳しくした場合は、命令が遵守されやすくなる代わりに、部下の緊張やストレスの増幅を招きやすい。また指導者の指導方針が適切でない場合、矯正作用が全く働かず、組織がホロボロになりやすい。」

鼎「ウサギ跳びの練習をどれだけ無理矢理させても、故障を増やすだけで、何の益ももたらさないようなものだよね。」

逆沢「人を見る目のない人間がリーダーになると、おべっか使いの無能ばかり重用しかねない弊害もあるだろうしね。」

愛原「政治の世界では、有能な政敵は徹底して冷遇し、無能なイエスマンばかり優遇する傾向が強いみたいだけどな。」

逆沢「有能な政敵は自分の地位を脅かすからじゃないの? 逆にリーダーより実力は劣るけど足を引っ張らないレベルのイエスマンは、一番扱いやすいから優遇するみたいな感じで。ああいう世界の住人は、自分よりも有能そうな人間のにおいを感じ取ると、一種の嫉妬心を越えた警戒心が働いて、そいつが自分より前を歩かないように、本能的に足を引っ張り合うらしいから。」

愛原「日本は昔から【政治は三流】と言われてるが、自分より有能な人間の出世を阻害する風潮が残る限り、三流しか出世できない流れは矯正できそうにないかも知れんな。かつて小沢一郎が【神輿は軽くてパーがいい】とも発言してたとも噂されてるが、支配者階級の人間からすれば、部下や傀儡は支配しやすい人間の方が絶対的に好まれて、逆に御しがたい部下やライバルは最も嫌われるという事かも知れない。」

鼎「何となくだけど、支配欲の強い人ほど、他人に対して非寛容というか、厳しい指導スタイルを好むような気がするよ。」

愛原「支配欲が強すぎる人からすれば、【何のために支配するのか?】よりも【支配そのもの】が重要になって、自分の思い通りに動かない人が許せなくなるのだろう。たとえ功績を挙げても、その功績が自分の指揮から外れたものであれば、許せなく感じるというか。命令違反による功績が許せないのは当然として、そうでない内容であっても、許せない人もそれなりにいるからな。」

鼎「野球のコーチなどでも、自分が推奨する投球スタイルや打撃スタイルを拒んだ選手がブレイクすると、露骨に不快な態度を取るコーチとかいるそうだよね。」

愛原「野球選手も、長く不調になると、いつクビになるか分からないから、あまりに説得力に欠ける指導方針を掲げるコーチの命令は、さすがに拒否する事もある。コーチの中には【俺の言う通りにやれ。俺の言う通りにやっても駄目なら、お前はクビだ】的な態度を平気で取る人もいるそうだが、【お前の言う通りにやったら確実に俺は潰れる】と感じた場合、それを避けるのはまぁ当然だ。ちなみに政界でも、ライバル潰しの手段として、無理難題を突きつけて、できなければ左遷、命令を拒否しても左遷みたいな事は、普通に行われるらしいが。」

鼎「それは企業組織などでも、割とあるそうだよ。特にリストラを進める際に、よく行われる方法らしいけど。無理難題を突きつけて、どっちにしても最終的にクビになるように誘導する手口ってのは。」

愛原「厳しい指導者が率いる組織の場合、特にその指導者の出来が悪いと、かなり悲惨な事になる。指導者の指導方針が悪くても、それを指摘したり非難する事も許されないから、誰も指導者の暴走が止められないし。それこそ戦争に反対する者を治安維持法の名の元にとらえ続け、暴走して止められなくなった大日本帝国のようにな。」

逆沢「実際問題、専制政治的なやり方をする国はほとんど衰退し、民主政治的なやり方を好む国ほど成功している点からしても、人の意見を取り入れる組織の方が強いとは、私も思うわ。」

愛原「うん。実際に厳しい指導者とは正反対に、人の意見をなるべく取り入れ、できるだけ寛容に努める優しい指導者も、世の中には少なからずいる。」

鼎「けど特にスポーツ界では、優しい指導者は少数派で、むしろ体罰上等の厳しい指導者の方が今でも全盛な気がするけど、これはどうしてかなぁ?」

逆沢「和田監督のエピソードをみる限り、優しくすると、調子に乗ってつけあがる部下が続出しかねないからという懸念があるからじゃない? そうでなくとも体育会系の人には、理論で説明して納得させるよりも、権力や暴力で威圧して服従させる方が手っ取り早そうな感じもするし。」

愛原「指導者と言われる人の大半は、自分の指導方針にそれなりに自信を持っているからこそ、指導者を引き受けている。つまり今更他人に意見を求める必要はあまりなく、他人に自分の指導方針をどれだけ浸透させるかが重要になってくるというのもあるかも知れんな。」

逆沢「既に自分の理想ができあがっている指導者からすれば、他人の意見を取り入れる程、自分が思い描いてる理想像からズレていく確率が高くなるから、他人の意見にはなるだけ耳を貸さない方が都合がいいって事ね。」

愛原「特に成功実績のある指導者の場合、それが自信になって、いつまでも改められないようになる。さらに体罰でチームを勝利に導いたような指導者なら、それが勝因の一つと考えているから、絶対にその方針を改めようとは思わないだろう。」

鼎「人は間違いを認めるのが苦手な生き物だから、思うように結果が出なくても、プライドの高い指導者ほど、無理押しを続ける可能性もあると思うよ。」

逆沢「厳しい指導者と言われる人は、大抵プライドが高いから、その傾向がなお強い気もするわ。調子がいいときはそれなりに上手くいくけど、歯車が狂い出すと、末期の大日本帝国並に地獄に直滑降していくというか。」

愛原「修正能力という意味では、他人の意見に耳を傾ける指導者の方が望ましい。もちろん自分にこびへつらうようなイエスマンの意見に耳を傾けても意味はないから、ぶっちゃけていえば、自分の意見にノーを突きつける人の意見をどれだけ取り入れられるかという話になるわけだが。」

逆沢「政敵にポイントを稼がれたら困るから、政敵の意見を無視しがちな日本の三流政治家には絶対できない話でもあるけどね。」

愛原「冒頭で触れたが、優しい対応をするという事は、寛容、もっといえば我慢を強いられる。誰だって自分の好き放題をやる方がストレスもたまらないが、他人の意見に譲歩して、自分の方針を曲げるという事は、それなりに勇気も我慢も必要になる。優しい人は、必ずしもひ弱でも軟弱でもない。特に指導者と呼ばれる人は、自分の指導方針に自信を持ってるからこそ、それを曲げるには大変な精神的労力を要するからな。」

逆沢「まぁ中には、臆病ゆえに妥協を強いられるというか、優しいのではなく、ただ単にひ弱なだけの人もいるけどねー。」

鼎「でも、考えてみれば、それはちょっと不思議な光景だと思うよ。立場の弱い人が、誰かに妥協や我慢を強いられるのはおかしくないけど、指導者という立場にある以上、部下よりも明らかに立場は上なんだから、少なくとも部下相手に妥協や我慢を強いられるという事はあまりなさそうに思えるんだけど。」

愛原「指導者なのに、部下を統制できないシチュエーションか・・・。会社組織などで一番多いのは、実質的な地位が逆転しているパターンが多そうだな。役職上は部下だけど、その部下は実は社長の息子であるとか、大物政治家の紹介であるとか、親会社から派遣された監視役であるとか。政治の世界でも、公的な役職上はヒラ議員でしかないけど、実際は派閥のボスとか、政界のフィクサーであるとか、そういう類いは多い。」

逆沢「スポーツの世界では、超一流の選手になると、監督よりも発言力が高くなる例も無くはないらしいわね。権限的には監督の方が上のはずだけど、そのエース選手がサボったらチームが機能しなくなるから、監督もその選手のご機嫌を取らざるを得ないみたいな感じで。」

鼎「和田監督がマートン選手らの怠慢プレーにも寛容だったのは、マートン選手の代わりを務められるような選手がいなかったからかな?」

愛原「少し前に、厚生労働省の官僚がマイナンバー関連の贈収賄罪で捕まったけど、その官僚も、特定方面のスキルでずば抜けていたから、普通なら数年ごとに行われる配置換えもされず、出勤状態が曖昧なVIP待遇も許されてたらしいな。替わりが効かないスキルを持っている事を振りかざされると、上司も統制しきれなくなるという典型かな?」

逆沢「漫画家でも、大物になると、自分の都合次第で休載したりできるみたいだしね〜♪」

愛原「ただ、この例に関しては、指導者の判断の問題なんだよな。横浜ベイスターズの中畑前監督なんかなら、一軍でバリバリやっていた中村ノリ選手すら、自分に逆らったという理由で問答無用に二軍に落としたし。どれだけ貢献度が高くとも、命令通りに動かない者は問答無用に処罰すると考える指導者も多い。一方で、あくまで結果を出す事が最優先であり、結果を出す以上は自分も組織の一員として彼を支えるべきと考える指導者もいる。」

鼎「指導者も組織の為に存在する要員の一人だと考えたら、後者の考えも悪いとまでは言えないと思うよ。一流の選手を招く際に、豪華なホテルを用意したり、通訳をつけてあげたり、年俸をはずんであげたりするのは、ある意味当然の処遇だとも思うし。活躍する人も活躍しない人も、年俸も待遇も同じとするなら、その方がむしろ不平等だとも思えるから。」

逆沢「厳しくても優しくても、重要なのは公平さだと思うわ。ある部下に対してはとことん甘いけど、別の部下に対しては異様に厳しいとかだと、そりゃ不満が高まっても不思議はないと思うし。」

鼎「厳しさをウリにする指導者の中には、残念ながら自分にはとことん甘い人も多いよね。よくよくみてみれば、指導者自身は何の責任も取っていないケースとか、全然珍しくないし。」

愛原「結果がちゃんと出ていれば、厳しい指導の下でも部下もそれなりに我慢できるが、結果が伴っていないのに偉そうにしている上司には殺意がわいてもおかしくないからな。近年ブラック企業が話題になってるが、ブラック企業が嫌われるのも、勤務条件に対する報酬という名の結果が全く釣り合ってないからだろう。高度成長期だったら、勤務条件はそこそこハードでも、結果が伴っていたから、そう社会問題にもならずに済んでたが。」

鼎「他人に厳しいのに自分には甘いとか、えこひいきが惨すぎるとか、能力や実績や努力を全く考慮しないとか、そういうのが続くと、誰しもそんな指導者には強い不信感を抱くようになるよね。」

愛原「優しい指導者と厳しい指導者のどちらが良いか以前の問題として、一番良くないのは、相手や状況によってコロコロ態度を変える指導者だな。自分には優しいけど、他人には厳しいとか、自分の気に入った部下には優しいけど、そうでない部下には厳しいとか。」

鼎「同じ事をしてるのに、あの人は褒められて、自分は叱られたみたいな事が続いたら、誰だって指導者に不信感を抱かずにはいられなくなると思うよ。」

逆沢「政治家は、相手が仲間か、そうでないかで、露骨に態度を変えるけどね。内容は全く同じでも、自党や自派閥が提出した法案なら賛成、他党や政敵が提出した法案なら全力で反対みたいな。」

愛原「政治不信の元凶だな。会社組織でも、スポーツチームでも、政治の世界でも、相手次第でコロコロ変える奴は信用できない。」

鼎「政治の世界では、言ってる意見が正しいかどうかが重要ではなく、誰に味方するのが得策かが重要らしいけど・・・。」

逆沢「大企業の組織なんかでも、自分の所属する学閥の部下ばかり優先的に出世できるように働きかけたりする類いもいるらしいけど、こいつらにとっては、その部下がどれだけ会社に貢献してきたかとか、どれだけ仕事ができるのかよりも、自分の所属する派閥を守る方が大切なのかと思ったりするわ。」

愛原「そういう政治力学的な考えで、勝負の世界に臨むような指導者が率いる組織は、いずれ遠からず悲惨な結果を招く。大日本帝国があれだけ悲惨な末路を辿ったのも、たとえば戦艦大和の無謀な特攻を誰も止められなかったというか、それを止めるような意見をしたら間違いなく干されるみたいな政治力学が働いたからこそだろう。ここで戦争反対を口にしたら、間違いなく左遷させられるとか。」

鼎「今年のデーブ大久保監督が率いる楽天イーグルスがまさにそれだったそうだよね。現場の采配よりも、オーナーの三木谷さんの意向を、デーブ監督が優先してしまって、それで怒ったコーチが辞める羽目になったり、結果もリーグ最下位とひどい結末になってしまって。」

愛原「オーナーは監督を辞めさせる権限はあるが、采配に口を出す権限までは本来ない。デーブ監督は、三木谷オーナーの横槍が邪魔だと思ったら、それをはっきりと拒絶すれば良かった。仮にそれで結果が出れば、世間はデーブ監督を認める可能性の方が高いだろうし。にも関わらず、オーナーの横槍を真に受けて、あげくチームは最下位に終わって、それで最下位の責任を取って辞めるハメになるなんて、もう救いようがない。」

鼎「和田監督も、そういう意味では悔いが残ったかな? 自分の思い通りに選手を動かして、その結果、うまくいかなければ仕方ないけど、選手が思い通りに動かなくて、それで優勝に届かなかったみたいな部分はありそうだから。」

逆沢「でもその悔いを残さないという発想が、体罰を含めた理不尽な対応につながる可能性もあるけどね。悔いを残したくないから、自分がやりたいようになる。言う事を聞かない奴はぶち回す。気に入らない奴は干し上げる。おべっか使って可愛い事を言ってくる奴だけは重用してやるみたいになっちゃうと。」

愛原「その辺は、指導者の高潔さに期待するしかないな。指導者として、何をやるべきか。好き放題をやりたいだけなのか? 組織を勝利に導きたいのか? そこを間違わなければ、そう変な事にはならないと信じたいが。」

逆沢「日本の政治家が終わってるのは、私利私欲とか党利党略とか、そういう自分達の保身しか考えてない人ばかりだからの気もするわ。自分達の保身しか考えてないから、自分を失脚させかねない者は、この国の利益になろうがなるまいが優先的に叩きつぶさなければならないみたいな発想になるし、出す意見の内容はよくよく聞いたら同じでも、あいつが言ったら反対して、あいつなら賛成するみたいな二枚舌だらけにもなっちゃうし。」

愛原「少なくとも日本の政治家の中に、優しい政治家はほとんどいないな。政敵は徹底的に叩きつぶすみたいな政治家と、相手によって優しさと厳しさを使い分けるみたいな政治家は腐るほどいるが。」

逆沢「ただ優しい指導者と、優柔不断な指導者と、臆病な指導者は、別物だと認識しておかないとまずいだろうけどね。」

愛原「指導者は、多くの人から意見を募るだけでなく、最終的に意見をまとめて決断しなければならないからな。船が山に登ったり小田原評定にならないようにする為にも。」

鼎「ワンマンな指導者は、理由も説明せずに一方的に命令するだけの事が多いから、部下にしてみれば理不尽な命令と受けとられる事も少なく無さそうだけど、そこにちゃんとした説明があるだけでも、きっと結果は違うよね。」

逆沢「政治の世界では説明責任とかいわれる奴ね。これを怠って、大衆の納得を得ないまま強行すると、独裁とかワンマンと呼ばれたりすると。」

愛原「優しい指導者は、何かを決断・実行する際、可能な限り、相手に理解してもらおうととするだろう。」


逆沢「ただ実際に相手に納得してもらえるかどうかは分からないけどね。」

愛原「こればかりは過去の実績とか、日頃の信頼関係とか、カリスマ性とか、力関係とか、相手の性格とか、取引条件とか、色んな要員がからむから何ともいえんなぁ。たとえば欲深い相手だと、自分が損をするような提案は、どれだけ公益性が高くともまず受け容れないだろうから、説得は難航するだろう。まともな相手なら、優しい指導者には、日頃から優しい対応をしてくれている指導者に感謝しててもおかしくないが、残念ながら優しくされる度につけあがる部類もいるからな。」

逆沢「スポーツの世界では、自分のペースで練習した方が伸びるから寛容な指導者の方が有り難いという選手も多いけど、自由行動を認められると徹底的にサボリ倒すタイプの選手もいなくはないからねー。」

愛原「プロアスリートクラスになると、自分がプロで通用しなくなる=失業するという事に他ならないから、普通は他人にしごかれなくとも、自主的に練習するタイプも多い。というか他人にあれこれ指図されて、自分の練習ペースを乱される事を嫌うタイプの選手も多い。しかし一方で、上から適切に指示をしてやらないと、とことんサボリ倒すタイプや、スパルタ指導に慣れすぎて、誰かの指示がないと動けない指示待ちタイプもいるからな。」

逆沢「選手を信じて放任プレーをしていたら、いつのまにか野球賭博に手を出してたとかになったらシャレにもならないからねー。大の大人相手に口うるさく対応したくはないけど、それでも口出しせざるを得ない事はあるかもね。」

愛原「あとチームプレーの観点から、本人が普段やらないような練習を、監督やコーチが無理矢理やらせる必要が生じる事もある。抑え投手がいないなら、誰かを抑えにコンバートする必要も出てくるだろうし、特定のポジションに有力選手が固まっているなら、何人かを手薄なポジションにコンバートさせる必要も出てくるだろう。」

鼎「和田監督の場合は、そこで優しすぎる対応をしてしまったから、作戦に支障を来してしまったという事かな?」

逆沢「ファンタジーの世界では、【優しいだけでなく、強さも必要】みたいな台詞をはくキャラクターがいるが、そういう事なのかもしれないわね。」

愛原「たとえば、誰かを助けるためには行動しなくてはならない。また仮に、チームの和を明らかに乱す者がいるならば、それを止める器量が指導者には求められて当然だ。そこでイジメが起きているのを知りながら、見て見ぬふりをするようなのは【優しい】とは言わない。優しさを形にする為には、強さというか勇気も必要になってくるのかも知れない。」

鼎「少し前に、優しい対応をする為には我慢も必要になるって触れてたけど、他にも勇気とか強さも必要だとすれば、本当の優しさは、貧弱とか臆病という概念と正反対の所にあるのかも知れないね。」

愛原「人助けをするのにもそれなりの手間や労力はかかるし、怠惰な人は、なかなか優しくはなれない。優しくある為には、強さ、我慢、忍耐、寛容性、勇気、行動力、気配り・・・色んなものが必要だ。冷酷であるのに抵抗がないのなら、他人に無関心、無抵抗、非寛容、臆病、ワンマン、怠惰であっても問題ないが。」

逆沢「和田監督は優しかったのか、臆病だったのか? 自分の作戦能力に絶対の自信があって、少々選手達に譲歩しても何とかなると考えたのなら、寛容かつ勇猛な気もするし。事を荒立てたくないから、やむなく譲歩したと言うだけなら臆病な気もするし。」

愛原「まぁ強引な監督に酷使された結果、肩を壊して若くしてすぐに引退を余儀なくされたような投手もいるし、選手達もそういう事例をよく知っているから、いくら監督の命令であっても、ほいほい言いなりにはならない。だがそれでも、厳しいタイプの監督は、無理矢理選手を酷使しようとする事もあるだろう。命令に従わなければ即2軍と言われたら、それを拒否するのは簡単ではない。高校野球の監督なんかだと、信じられないレベルの酷使をする監督もいて、【この監督は己の名声のためなら、生徒を平気で使い潰すなぁ】と感じる事もある。」

逆沢「けど優しい対応をすればしたで、平気で好き放題する選手も出るし、扱いが難しいと感じる事もあるわね。」

鼎「一番理想なのは、お互いがお互いを信頼できて、相手の期待を裏切らないようにお互いに頑張れるような状態だと思うけど、これはどうかな?」

愛原「和田監督が目指したのは、おそらくそこなんだろうな。厳しく独裁的な手法をせずとも、選手達は監督や仲間を信じ、お互いに自分を信じてくれる者のためにたゆまぬ努力を続けるみたいな。」

鼎「けど金本監督に替わったからには、そこは大きく改められそうだよね。少なくとも練習はかなり厳しくなるような印象だし。」

愛原「緩みきったネジをまずは締め直したいという、フロントの強い意志が感じられる。だが厳しい対応は、実績が伴わないと、やがて強い不満を産むから、その点は覚悟せざるを得ないだろう。誰だって厳しい対応はされたくないし、練習は厳しいわ、結果は出ないわでは、ブラック企業と大差なくなってしまうからな。」

逆沢「優しいようにみえて、臆病だったり、優柔不断なだけの指導者も困るし、私利私欲や党利党略しか考えない指導者は論外だし、優しくても厳しくても、信頼関係を維持できるような関係が大事になりそうね。」

鼎「金本監督は人を信頼するというよりは、思い込みで盲信するところがあって、数年前に詐欺師にほぼ全財産巻き上げられたり、ほんの数日前のドラフト会議でも、ヤクルトの真中監督のガッツポーズを見て、自分が引いたくじの中身も確認しないままだったみたいな甘さがあるから、思い込みで突っ走らないで欲しいなとは思ったかも。」

逆沢「仲間の意見に耳を傾けられるだけの寛容性と我慢を心がけながら、強く、優しく、信頼関係もあるチーム作りをして欲しいわね。」















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