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愛原様のたわごと(16年1月10日)





愛原「明けましておめでとう。ここ数年、ずっと波瀾万丈な一年が続いてる感じがしなくもないが、そのせいか、今年は例年にない平穏が欲しいと思わなくもない。」

鼎「とりあえず景気の急悪化と、衆参同時選挙と、トランプ大統領誕生だけは、避けてくれたらいいなと思ったかも。」

逆沢「景気はギリシャショックだのチャイナショックだのリーマンショックだの、海外の要因のせいもあるからともかく、国内でこれ以上ゴタゴタやって欲しくないってのはあるわ。安保だのマイナンバーだの。」

愛原「平穏な期間が長く続くと、色々刺激も欲しくなるが、刺激ばかりでも疲れるからなぁ。今年は癒しの一年にしたい。」

逆沢「おおっ。それが今年の抱負ってところか?」

愛原「抱負というか、願望だな。癒しの一年にしたいと個人的に思っても、世の中がそうさせてくれない可能性は十分にあるからな。」

鼎「私達がのんびりしたいと思っても、世の中には、やたら煽ったり、周囲に刺激を与え続けたくて仕方ない人もいるから困るよね。」

逆沢「でも前回のテーマじゃないけど、不祥事や不安要素をもみ消す事で無理矢理安心させようとする人もいるからねー。誰だって気苦労は嫌だけど、自分の身を守ったり、社会の平穏を維持する為にも、ある程度の気苦労は必要だと私は思うけどね。」

愛原「だな。平穏を維持する為に、一定の気苦労は常にしょって立つ必要がある。もっとも偉大な独裁者が俺達のために素晴らしい善政を敷き続けてくれるのなら、俺達大衆は、何の気苦労もなく毎日を過ごせるんだろうけどな。」

鼎「銀英伝の最大のテーマの一つだよね。腐敗した民主国家と、素晴らしい為政者が治める独裁国家のどちらが良いかという命題は。」

愛原「民主主義国家だと、国民の一人一人が自覚と責任を持って国家を運営していかねばならない。それを怠ると、私利私欲にまみれた悪徳政治家が跋扈して、世の中を際限なく腐らせていくことだろう。一方、独裁国家の場合、国民が何もしなくても、独裁者が勝手に政治をやってくれるが、その独裁者が無能であったり、邪悪であったりすると、世の中が恐ろしい事になる。また独裁者が能力的にも人格的にも思想面でも素晴らしい善政家であったとしても、それが永遠に続く保証はないし、その寿命が永遠であるはずがないという問題もつきまとうだろう。」

逆沢「まぁ、為政者が善政家なら、国民は何も難しい事を考えず、その人に全権を与えて任せておけばいいと考えたくなる気持ち自体は分かるけどね。誰だって小難しい事を考えたり、面倒くさい事は嫌いだし。」

鼎「でも根本的な疑問があるよ。そもそも善政家ってどういう為政者の事を指すのかなぁ?」

逆沢「あー、言われてみればそれはあるかも。ファンタジー小説などの登場人物紹介欄で、善政家と紹介されるキャラクターとかも、見ないことはないけど、そもそも善政家って何やねんと、今更ながらに思ったわ。」

鼎「与党支持者にとっては善政家であっても、野党支持者からみれば悪徳政治家とか無能な為政者でしかない事も珍しくないし、国民の誰から見ても善政家みたいな人はちょっといないよね。」

逆沢「つうか支持率や人気取り目的で、しょうもない商品券ばらまいたり、狂った軽減税率採用するような政治家が善政家とも思えないしねー。未来のことを何も考えず、今現在の人気取りしか考えないバラマキ政治家としか映らないというか。」

鼎「でもそういう選挙目当ての人気取りをやるような政治家は、大体選挙が終わったら手のひらを返すよね。争点にもなっていなかった安保法案に熱をあげたり、今度も選挙が終わった途端に、突然悪い方向の憲法改正とかに前のめりになる展開だけは嫌だよ。」

愛原「という訳で、新年最初のテーマは【善政家】だ。」

鼎「ファンタジーの世界では、善政家というカテゴリーに含まれている為政者は、大体国民に支持されていて、悪政も行わず、国民に平穏な毎日を提供している善人キャラみたいな感じでまとまっている感じだよね。」

逆沢「ある意味、ユートピアそのものね。現実世界では、オバマ大統領やメルケル首相レベルでも、善政家として世界から認知されるランクまではなかなか届かないのに。」

愛原「まぁそこはファンタジーだからな。ちなみに7lcwでも、黒藤以外の各国リーダーは、基本的には善政家という設定にはなっている。」

逆沢「嘘こけ。お前はどう見ても善政家ではないだろうが! つうかそんな設定、ゲーム内のどこにも表記されてないぞ!」

愛原「う・・・。俺も一生懸命頑張っているのに。」

逆沢「つうか一生懸命頑張って、国民の為に働いているような描写すらないぞ。お前、どう見てもおふざけキャラじゃねえか?! 他の主人公と比べても、一人だけ明らかに格落ちというか。」

愛原「ひどいひどいひどい・・・。無能な貴族達が力を失って俺の時代が来たからこそ、我が国が再建されていくというシナリオのゲームなのに。」

鼎「でもその無能な貴族達を制御できなかったからこそ、宮田軍が独立したり、貴族達が無謀な戦を起こして、国力が大きく減退した状態でゲームが始まってるわけだから、客観的に見ても、とても有能な為政者という感じはしないんだけど。」

愛原「うがーっ!! 新年早々、自分のリーダーをこき下ろすんじゃない!!」

逆沢「まぁ、あんたが善政家キャラかどうかと聞かれたら、私達としては疑問符をつけざるを得ないけど、宮田や婆娑羅が善政家というのなら、話は分からなくもないわ。」

鼎「宮田さんに関しては、典型的な善政家キャラだよね。悪政からの脱出を掲げて旗揚げした経緯といい、その後、実際に民心をつかんでいる事といい、ちゃんと新国家としてまとめ上げている点からいっても。」

愛原「民主主義志向という設定も、善政家という名のシールを貼る上では有効かもしれんな。仮に自分自身が皇帝になってこの国を治めようという思想の持ち主だったならば、どれだけ民のことを大切に思っていても、善政家キャラとしてはややマイナスだったかもしれん。」

鼎「タイやサウジアラビアのような王様が治める国の国民からみれば、また違った印象があるかも知れないよね。日本人的目線だと、民主主義志向の方が印象良さげだけど。」

逆沢「一方、婆娑羅軍の場合は、王制国家だけど、ここもギルドを中心とした民間人の力が強いせいか、独裁国家的な印象を感じさせないわね。こちらも王家に対しては、割と国民も好意的な印象をもってるみたいだし。」

愛原「リアル世界的な価値観でいうと、王制国家の多くで不敬罪のようなものが制定されている為、公然と王家を批判しにくいという一面はあるから、その辺は割り引いて考える必要があるけどな。」

逆沢「象徴天皇制の日本でも、そうだからねー。総理大臣の批判をしてもそう問題にならないけど、皇室に対する批判はちょっとためらわれる雰囲気もあるし。」

愛原「王家が実権を持たない戦後日本やイギリスでもそうなんだから、実際に王家が政治的干渉力を持っている国家で、王家の批判がしにくいのは、ある意味当然といえば当然ではある。なので北朝鮮ほどとまではいかなくとも、大多数の国民が心の底で王家を支持しているかどうかは、別問題と考えておく必要がある。バーレーンみたいに、国民の大半はシーア派だけど、王家自体はスンニ派みたいなややこしい国もあるし。」

鼎「とすると婆娑羅国王に関して、国民が実際のところ、どのような印象を持っているかは、実際は未知数って事かな?」

愛原「いや。そこはファンタジーだから、変な勘ぐりはしなくても大丈夫だ。婆娑羅国王は、多くの国民からそれなりには支持されている設定になっているぞ。熱狂的に支持されている程ではないが、特に国民が不満を感じないレベルくらいには。」

逆沢「要するに、それなりに無難に治めているって感じか?」

愛原「【それなりに無難に】という表現をされると、いかにも凡庸ってイメージだが、今年は癒しの一年にしたい自分としては、善政家として最大級の賛辞かも知れんぞ。むしろ国民の大多数が熱狂的にマンセーして為政者を賛美して、為政者批判を許さないような空気の方が、俺的にはずっと窮屈で怖すぎるというか。」

鼎「政権を批判できない空気というのは、結構息苦しいよね。たとえどれだけその人が善政家であったとしても。」

愛原「婆娑羅は国王だが、それがない。カリスマ性に欠けるといえばその通りだが、庶民からすれば、息苦しさを感じさせないという意味で、善政家だ。」

逆沢「黒藤以外の為政者は、基本的に善政家設定と聞いたけど、それは大神や辰巳や門司らにも当てはまるのか?」

愛原「まぁ一応な。但し、善政家としての視点は大きく異なる。たとえば門司の場合は、あくまで家臣団からみて良い当主という評価でしかない。まぁ戦国ものでは、そういうタイプの君主も珍しくないけどな。」

逆沢「民からみて善政家かどうかは分からないけど、少なくとも家臣団からは強い支持があるってタイプね。」

鼎「現代でも、そういう政治家は珍しくないよね。森喜朗さんとか。国民から見て善政家かどうかはともかくとして、党や派閥からは強く支持されているタイプというか。」

逆沢「あー、いるいる。国民人気は散々なのに、なぜか党内での人気は高いというか、謎の政治的影響力があるというか。歴代の首相の顔ぶれを見ても、国民人気が元々高かったのは小泉純一郎さんなど一握りで、大抵は党や派閥内での人気だけで押し上げられたような人達ばかりだしねー。」

愛原「政治の世界でも、企業でも同じだが、組織では庶民向けのカリスマ性が高い人物よりも、調整力などのあるリーダーが望まれる局面も多いからな。その結果、見た目はぱっとせず、能力的にも凡庸な人物が、トップに任命される例は珍しくないし、それでもそういう凡庸な人物が、凡庸なりに組織を無難にまとめている例は珍しくない。」

鼎「複数の派閥が対立しているような組織では、派閥間調整がうまい人物がリーダーに推される事も珍しくないそうだよ。」

逆沢「特定の派閥だけを擁護するような人間がリーダーになったら、反主流派が怒って、組織が空中分解しかねないからねー。」

愛原「大門司軍の場合は、組織の結束が最優先事項になっている。なので極端な話をすれば、民政は二の次。民衆からみて理想的なリーダーかどうかは重要ではなく、家臣団から支持される事が最重要になってくる。逆を言えば、民衆に人気があっても、家臣団に嫌われると、即座に地位を追われかねないという事だな。」

逆沢「自民党の構図と同じね。いかに国民人気が高かろうと、党からの支持がなければ公認も取れないし、出世も出来ないし、仮にトップになっても、長続きはできないみたいな。」

愛原「次に辰巳軍。ここはカリスマ独裁者が率いるタイプの国家といえる。辰巳という個人的カリスマが率いる国家であり、仮に辰巳が戦死するなり、ご乱心するなりしたら、国家自体が一気に危うくなる危険性を孕んでいる。銀英伝のローエングラム王朝に、ある意味、最も近いかも知れない。」

逆沢「こっちは全然知性的じゃないけどね。」

愛原「うん。だけど、だからこそ上手く回っている部分もある。彼自身、政治が得意とも持っていないし、興味もないから、良くも悪くも基本ほったらかし。しかし基本的に善玉で、地方の総督なり代官なりが悪政を敷いた結果、領民が反乱を起こしたり、直訴してこようものなら、容赦なくその悪代官なり総督なりをぶった切るだろうから、結果的に地方領主なども悪い事はできない状態になっている。野川や勝山ら、側近の政治的資質も高い為、それらも上手く機能して、結果的に上手く回っているみたいな感じだな。」

逆沢「基本的に部下任せの放任主義政治だけど、部下が悪い事をしたら容赦なくたたき切るから、結果的に部下も真面目に仕事をするってタイプね。」

愛原「漫画的展開といえばそれまでだが、現実的にもそれに近い体制の企業などは案外あるぞ。特定のオーナーが社長に全てを委任し、オーナーは経営自体にはほとんど口出ししない。その代わり、その代わり経営が悪化したなら、その社長をばっさり切るみたいな。」

鼎「オーナー経営で割とみられるスタイルだよね。社長とか工場長とか店長に普段は任せっきりで、ほぼ経営にはノータッチだけど、経営が上手くいってないと感じたら、経営責任者のクビをさっさとつげ変える方式というか。」

愛原「オーナー自体が、腹黒い腹心の口から出任せを信じるような愚鈍だとヤバいが、そういう要素もなく、断固たる判断力と決断力が取れるならば、意外に強いシステムである。そして辰巳は、馬鹿ではあるが、決して愚鈍ではなく、ああみえても直感的に人の善し悪しを見抜く才能があり、邪悪もしくは無能な人間を近くに寄せ付けない天性の人物鑑識眼がある。なので他人任せでも、案外上手くいく。」

鼎「そういえば、辰巳さんの周りは、案外優秀な人ばかりが集まっている感じだよね。」

愛原「こういうトップは、歴史的にもたまにみられる。幕末長州藩の毛利敬親公とか、まさにその典型だな。」

逆沢「あー、本人は【そうせい公】とあだ名されていたくらい他人任せで、自分自身が決して陣頭指揮に立つことは無いタイプだけど、実際には少年時代の吉田松陰を抜擢したり、尊攘派の伊藤博文や井上馨を海外視察に派遣したり、高杉晋作にイギリスとの交渉を託したり、有能な人物を即座に見抜いて、その人に仕事を全振りするような才能が、ずば抜けていたらしいわね。」

愛原「外部からみると、常に他人任せで何もしない無能なトップに見えるけど、実際には有能な人間を見抜いて働かせられるという、最も重要な才能をもっているタイプともいえる。将の将と評された劉邦なんかも、そのクチだろうな。」

鼎「トップ自身がスーパー営業マンやスーパー職人である必要は無くて、スーパー営業マンやスーパー職人を見いだして、彼らに仕事をさせられれば、何も問題はないって事だよね。」

愛原「そういう事。辰巳自身に行政事務などをやらせても、おそらく凡人未満かも知れないが、奴はその代わり、有能な人間に仕事を任す事ができるので、そういう意味では、十分に善政家としての資質を持っているといえる。」

逆沢「善政家といっても、色んなパターンがあるって事ね。」

愛原「一方、善政家の反対の典型として、黒藤があげられるが、彼はなぜ善政家と対極にある悪政家扱いされるのか? その理由について検証してみよう。」

鼎「黒藤さんが悪政家扱いされる理由は、国内事情以上に、対外的なイメージがあると思うよ。ある意味、私達が北朝鮮の政治を見て感じた印象が強いというか。」

逆沢「黒藤軍は、利権まみれの政治をやったり、ダークビショップ教団の組織票と利権団体の政治献金で万年与党を維持したり、積極財政で財政を真っ赤にしたり、戦争を賛美して積極的に軍事行動を起こしたり、そのあげく戦況が不利になると、和平派を弾圧したり特攻隊を組織したりと、対外的には悪玉一直線なんだけど、国内的にみれば、それでも万年与党を維持できる程度には支持があるのよねー。不思議な事に。」

鼎「ゲーム内の設定で言えば、ダークビショップ教団の組織票が強すぎるようだよね。しかも彼ら信者達は戦場でも勇猛果敢で、愛国戦隊という捨て身の兵団まで組織できる程だし。」

愛原「黒藤軍の国は、民主主義国家でありながら、内実としては神権国家としての側面も強く持っている。一つの万年与党を維持できる程に特定教団の影響力が強すぎるからだ。」

鼎「そしてその教団の信者達は、黒藤さんの政治を盲信している訳だよね。つまり信者から見たら、神と変わらないレベルの究極の善政家にしか映らないというか。」

逆沢「あー、そうか。私達の目線では悪政家だけど、教団信徒からみたら、黒藤がどんな政治をやっても、自動的に善政家扱いになっちゃうわけね。」

愛原「利権団体との癒着。積極財政による財政悪化というのも、重要なポイントだ。要するに【なぜ利権団体は黒藤を支持するか?】という事だな。」

逆沢「財政を悪化させる程のバラマキを黒藤が利権団体に行う。そしてそんな黒藤を利権団体が支持する。そういう構図ね。」

鼎「つまり利権団体の人達にとっても、黒藤さんは自分達の利権を満たして生活を豊かにしてくれる善政家でしかないって事かな?」

逆沢「おいおい。とするとまさか、黒藤もまた違った形の善政家でしかないって事かよ?」

愛原「利権とも教団とも無縁の一般国民からすれば、悪徳政治家でしかないけどな。ある意味、国民を分断して、一方の国民だけを優遇しているタイプともいえる。戦争反対思想を持つ国民を弾圧するシーンなどもある事を考えると、自分を支持しない国民層に対しては、徹底的な搾取なり抑圧なりをしているのかも知れない。重税を課す事で得た税収を、利権団体などの支持者にしか還元しないとするならば、不支持層からみれば、税の名の元に一方的に巻き上げられているだけに過ぎないわけだしな。」

逆沢「まぁ利権政治をやろうとしたら、構造的にどうしてもそうなっちゃうだろうしねー。特定の誰かを儲けさせようとすれば、別の誰かからその分、奪い取らないと駄目な訳だから。」

鼎「私達は、悪政家というと、三国志の董卓さんみたいなイメージで考えちゃうけど、実際には一部の人にとっての善政家であろうとした結果、それ以外の人にとっての悪政家になったと考える方が正しいって事かな?」

愛原「実際の董卓も、いわゆる自分の属する涼州軍閥を優遇した結果、ああなったという側面もあるからなぁ。董卓が己一人の欲望だけを優先したとも言いがたくはある。」

逆沢「まぁ己一人の欲望だけを優遇して、自分の所属する組織まで冷遇したら、さすがに組織自体が持たないだろうしねー。さすがに自分の組織だけは優遇しないと。」

鼎「こうしてみると、黒藤軍というのは、大門司軍と性質の根幹で似通っている部分もありそうだよね。どちらも自分を支持してくれる組織を最優先に考えるという意味で。」

逆沢「けど結果として、黒藤軍は明らかな悪玉勢力だけど、大門司軍に悪政のイメージがあまりないのはどうしてかな?」

愛原「大門司軍の場合は、実際に悪政をしてないからな。より具体的に言うと、黒藤軍にとって(支持者以外の)民衆は搾取の対象でしかないが、大門司軍はそうではない。あと黒藤軍にとって最大の敵は国内の野党勢力であり、野党を支持したり反戦思想を標榜する民衆こそが最大の敵として弾圧・抑圧・搾取対象になりやすいが、大門司軍にとっての敵は、いわゆる旧主家筋であったり、婆娑羅軍や黒藤軍であったりで、決して民衆ではないからな。」

逆沢「あー、なるほど。自分を支持しない国民そのものを敵と認識する黒藤軍と、民衆を敵に回す必要が無い大門司軍の差って事ね。」

愛原「あと搾取対象の差もあるかもしれん。黒藤軍にとっての搾取対象はまず税収源となる国民そのものとなるが、大門司軍にとっての搾取源は第一に、恨み重なる旧主家であったり、婆娑羅軍などとなる。銀英伝のローエングラム王朝が、国民ではなくゴールデンバウム王朝(特にブラウンシュヴァイク派等)に与して私腹を肥やした貴族達から財産を巻き上げる事で国家を立て直したのと同じ構図だな。大門司軍は敵側の富裕層から金品を巻き上げて当面の軍資金に回すと同時に、筆頭奉行の石田ら優秀な文官を使った商業振興や新田開発にも熱心だから、民衆からわざわざ不当な搾取をする必要が無い。軍事活動も、武士階級と専業兵士がメインだから、市民兵がメインの黒藤軍ほどには、民間を圧迫もしないしな。」

鼎「逆に黒藤軍の場合は、利権団体の懐を優遇する為に、無駄な公共事業を繰り返すイベントもあるし、自国の経済を悪化させるような事しかやらないから、利権団体と特定の信者以外の国民には嫌われても当然って事かな?」

愛原「ああ、そうそう。黒藤軍と大門司軍の最も決定的な差が大門司軍のエンディングで触れられていたのも思い出した。」

逆沢「大門司軍のエンディングってどんなんだったっけ?」

愛原「戦後処理の項目であっただろ? 大門司軍では敗戦の責はトップが負う。別所長治や吉川経家がそうであったように、トップや将が全責任を負う代わりに、城兵などに決して罪を背負わせないと考えるのが大門司軍流。ところがその大門司軍流の作法に対して黒藤軍の池田が真っ向から否定するシーンが。」

逆沢「ああ、思い出した。池田は、トップを守る為に一人一人の国民が命を捧げるべき。偉大なるトップを守る為なら国民の命など惜しくはないというか、国家が敗北したなら国民は総懺悔すべきというか、自分の命は惜しくないが、トップである黒藤だけは許して欲しいとか、そういう事を言ってた気がするわ。」

愛原「そう。責任の所在が正反対なのだ。どちらも組織を優先はするが、大門司軍では組織を守れなかった場合、組織のトップが責任をとる事で、末端の組織員を守るべきと考える。一方、黒藤軍では、組織トップ>組織の末端>組織外の国民一般の構図で、組織を守る為ならその他の国民は一番に切り捨てられるべきだし、それでも足りないなら、組織の下っ端から切り捨てていき、それでも足りない場合のみ、組織の上層部も順次切り捨てていく事で、組織のトップだけは絶対に守ろうと考える。」

鼎「会社が傾いたとき、まず誰のクビを切るかの基準が正反対って事だよね。大門司軍なら、会社を傾かせた責任がトップにあると考え、まずトップのクビを切る。一方、黒藤軍の場合は、下っ端の社員から順番にリストラしていって、何が何でもオーナー一族の社会的地位と財産だけは死守するみたいな。」

逆沢「なる程。黒藤軍にとっての組織は、あくまでトップを守るべきものでしかないから、組織ですらトップにとっては使い捨てでしかないし、組織が傾いたなら、トップは組織すら平気で切り捨てられるって事ね。」

鼎「トップがクビを差し出しても部下を守ろうとする大門司軍と、秘書や末端兵をトカゲの尻尾のごとく切り捨ててもトップだけは守ろうとする黒藤軍では、責任の所在が正反対って事かな?」

愛原「大門司軍の場合、【君は船、心は水】的な思想が根底にある。これは“家臣は水であり、その水が無いと船は浮かばない。また、水は簡単に船をひっくり返す。だからこそ君臣の関係は大切にしなければならない”というものだな。民に対してもおそらくその延長だろう。」

鼎「そういえば、大門司軍の当主の門司さんは、武家政権のトップにしてはあまり独裁的でないというか、比較的家臣団の意見に公平に耳を傾けるタイプだった気がするかも。」

愛原「大門司軍では、無能なトップは部下からいつ愛想をつかされてもおかしくない緊張感があるからな。部下は部下で、タカ派とかハト派とか官僚派とか、色んなライバル関係があるから、やはり緩慢な行動はできない。まして悪政など敷いて知行地で民に反乱でもされたら、失脚やむなしになりかねないので、結果的に善政が維持しやすい側面もある。」

鼎「誰かの目線があるから、悪い事はできないという意味では、辰巳軍にも似てそうだよね。個人のカリスマで支えられている辰巳軍と違って、こちらは組織のシステムでそうなってる分、より強靱とも思ったかも。」

愛原「逆に黒藤軍の場合は、利権擁護団体である為、お互いに不正を見て見ぬふりをするというか、不正をして誰かに便宜を図る事で組織を強化できるというか、下手に不正を糾弾すると、自分が先に消されかねないというか、自浄作用が全く働かないどころか、腐敗を促進させる事しか出来ないような組織的宿命がある。」

逆沢「利権政党が利権のばらまきを拒否したら、利権団体が愛想を尽かして、献金とかしてくれなくなっちゃうだろうからねー♪ そりゃ、不正がなくなる訳ないし、不正も増える一方になると思うわ。自分達の不正を暴こうとする正義の味方も見つけ次第、駆除していないと組織がもたないから、その結果、まともな人がどんどん弾圧されるなどして減っていって、自浄作用も効かなくなる一方だろうし。」

鼎「黒藤軍が悪政組織にしかなり得ないのは、悪政を助長させて、かつ善政家を駆除するなり無力化する事でしか権力を維持できないという、利権誘導組織特有の問題もあるって事だよね。」

逆沢「悪い事をしたら、容赦なくたたき切られる辰巳軍や大門司軍と比べたら、その点でも正反対って事ね。」

愛原「そして最後に大神軍。騎士団長である大神も、無論作者の意図として善政家のカテゴリーに入っているが、ここは伝統や慣習といった要素がウエイトを占めていて、一筋縄ではいかなくなっている。」

鼎「伝統や慣習?」

愛原「うん。たとえば騎士団領では、専守防衛の伝統があったりして、その伝統をどの程度重んじるかで、少なからずの葛藤がある。」

逆沢「あー、なるほど。確か大神編のオープニングで、専守防衛の伝統を破棄する部分からゲームが始まるけど、これ一つとっても、善政家としての評価は分かれるかも知れないわね。」

愛原「そう。大神という人物は、基本的には伝統重視の保守思想の持ち主だが、それだけに専守防衛の伝統を破棄する決断には、少なからずの葛藤があっただろうと思われる。かつこれが正しい判断だったかどうかも、おそらく評価が分かれるだろう。伝統を重視する国民からすれば、伝統の破壊者にしか見えないだろうし。」

鼎「去年盛り上がった安保論争とか、TPPとか、マイナンバーとかもそうだけど、国論を二分するようなものをどう評価するかは難しいよね。ある人にとっては善政家でも、別の人にとっては悪政家でしかないだろうから。」

逆沢「難民を受け容れようとした結果、問題も起きて、一部の住民から不満の声が出たりするイベントもあるし、大神さんは国論を二分しかねない難しい問題にいくつもぶつかっている印象があるわ。」

愛原「こういう難しい二択問題にさしかかった場合、大神に関しては、世界的目線からみて国家の名声を損なわないような判断を優先しがちな気がする。本ゲームの大神軍は、辰巳軍や愛原軍にも一方的にケンカを売られる理不尽展開満載にも関わらず、それらに対して変な憎悪を煽らないし、卑劣な謀略なども使わないし、どれだけ貧しても、決して鈍しない高潔さを大切にしているというか。」

逆沢「そのせいか、辰巳軍や愛原軍などに一度は破れても、すぐに再独立を許されたり、なんだかんだ優遇されている気がするわ。大門司軍にも婆娑羅軍にも宮田軍にも、ある種、尊敬の念をもたれてる国体みたいだし。」

愛原「難民を容赦なく追い出したりすれば、その場での国民の不満は抑えられるかも知れないが、その代わり、高潔な騎士団領としての名声は損なわれるだろう。たとえ辰巳軍などから理不尽な宣戦布告を受けても、安直なネガキャンなどに走らなかった事も、国家の品位を守る上では堂々たる判断だったといえる。たとえ今は苦しくても、国際的な視点で尊敬される国家であり続けようとした大神の姿勢は、安直な人気取り政治家とは対極の位置にある、また別種の善政家といって差し支えないかも知れない。」

鼎「国民に支持される事だけが善政家の条件ではないって事かな?」

逆沢「その場だけの人気取り政策をやるような政治家が、善政家であるとも思えないしね。というか黒藤軍がまさにそうなんだろうけど。」

愛原「財政が真っ赤になるほどの積極財政って、どれだけのバラマキを過去にやってたんだよって感じだしな。おそらく万年与党を維持する為に、バラマキで国民をだまして、その間に密かにどんどん法律を改悪して、政権交代が起こりにくいようなシステムや状況を作り上げ、そうこうしてる間に与党の闇を糾弾する事も許されないような状態になってしまったんだろうな。」

逆沢「そんなクリーンな政治に戻れない程に汚れてしまった黒藤軍のメンバーからすれば、外面のいい騎士団領なんかは、特に鼻につく存在に映ったかもね。利権政党を率いる黒藤軍からみて、清廉な騎士団領はまさしく真逆の存在そのものだから。」

鼎「黒藤軍は、特に騎士団領に対して強い憎悪をぶつけて、正義の名の元に騎士団領を蹂躙して、特に黒藤編では騎士団領を滅ぼした後も、同地でひどい戦後処理をしてたみたいだけど、これはもしかしたら嫉妬だったのかな?」

逆沢「自国民に対しても酷薄な黒藤軍からすれば、難民も追い返さず、敵対国へのネガキャンも無闇にしない大神軍は、“綺麗事ばかりのうっとうしい奴”でしかなかったのかもね。しかもそんな国がすぐ隣にあったら。」

愛原「黒く汚れきって世界中から嫌われている国が嫉妬に狂って、急いで攻め入る必要も無い騎士団領に攻め入ったととらえる事も可能かもしれん。大体、戦略的にいえば、黒藤軍にとっての第一攻略目標は遠隔発射装置を開発する為に必要な因幡であり、決して騎士団領ではないからな。」

逆沢「あ、そうか。言われてみればそうだった。黒藤編以外でプレイした場合のゲームオーバー条件も、黒藤軍が因幡を制圧する事だったしね。黒藤軍の立場からすれば、騎士団領の滅亡は決して必須条件じゃないというか。」

鼎「頭脳派っぽい黒藤さんや池田さんですら、嫉妬は抑えられなかったって事かな?」

愛原「嫉妬だけじゃないかも知れないけどな。黒藤軍にとっての理想は、利権まみれの黒い世界であり、賄賂もなかなか受けとらない真面目な国体の騎士団領は、外交上も色々面倒な存在だったかも知れないし。」

逆沢「あー、そういう設定もあったわね。騎士団領は、公務員に対する罰則が特に厳しいから、他国からすると諜報活動などがやりにくい国だとも。」

愛原「去年7月20日のたわごとで取り上げたが、脅しにも利権にも屈しない清廉な人物は、裏工作主体の組織からすると、極めて面倒な交渉相手になりがちだ。黒藤軍は、そういう外交相手の存在を前々から嫌っていたのかもしれん。」

鼎「けどそれは、黒い人間にとってはの話であって、真っ当な人達からすれば、清廉な人が交渉相手の方が信頼できるよね。清廉な人間は、ひどい裏切りや騙し討ちはしてこないだろうから。」

愛原「そう信じているからこそ、大神は難民を受け容れたり、誇り高い方針を貫く事ができたのだろう。これもまた善政家の一つの形だと思う。」

逆沢「こうしてみると善政家といっても、色んなパターンがある事が分かるわね。」

鼎「誰から見ても善政家で、熱狂的な支持もある宮田さん。逆に特に高く評価されている程ではないけど、国民の一人一人が遠慮無く政治批判する事も許されて、それでいて誰も大きな不満を抱く事もなく平穏な毎日を国民に保障している婆娑羅さん。常に責任感と緊張感をもって一国を運営し、失敗した際に責任を取る覚悟も強く持つ大門司軍。難しい話は一切抜きでとにかく自由だけど、締めるべき時はちゃんと締める辰巳さん。一時の国民の不満も怖れず国論を二分するような決断にも臆さず、他国からも常に尊敬されるような国作りを貫く大神さん。本当に色々だよね。」

逆沢「その一方で、反面教師として黒藤軍の存在も参考になるわね。利権政治を続けたりしてると、それを維持する為にまともな人を排除し続けないといけない状態になるし、まともな人が減ってくれば、無謀な戦争に突入したり、愚かなバラマキも平然と行われるような状態になってしまう。悪循環が悪循環を産んで、国内はもちろん、周辺地域も巻き込んで、いずれ世界中に災厄をまき散らしかねないと。」

鼎「黒藤軍の不幸は、ダークビショップ教団信徒のような盲目なイエスマンの存在にもあると思うよ。どれだけ自分の支持する為政者がひどい事をやってても、思考停止して信じて支持する事しかできない人達の存在こそが、状況をさらに悪化させているというか。」

愛原「という訳で今回は、色んな角度から善政家のパターンについて検証してみた。善政家の対極にある悪政家の一典型についてもセットでな。俺も善政家グループの一員として恥じないスタンスを今年も堅持していきたいと思う。」

逆沢「いや、だからお前は、善政家じゃねえから。善政家グループにしれっと紛れ込むなって。」

鼎「どう見ても、ただのおかしなたわごと垂れ流すだけの、しょうもないオッサンだよね。」

愛原「うがーっ。俺にだって利権政治を憎んだり、信者による組織票を疎んじたり、責任を取らず保身やエゴばかり優先する為政者を非難できるくらいの矜持はあるぞ。」

逆沢「いや。そういう矜持くらいは、普通のまともな国民なら誰だって持ってるから。」

鼎「そういう普通のまともな国民が、強い不満を感じたり、息苦しくならない一年になったらいいよね。」


























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