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愛原様のたわごと(16年1月24日)





愛原「今回のテーマは【裏切り者】。」

逆沢「なんじゃ、そのテーマは? というか何でまた、そんな物騒なテーマを思い浮かんだ?」

愛原「SMAPとかいう国民的アイドルグループ関連のニュースをみてて、ふとそんな気分になった。」

鼎「リーダーは芸能ニュースにはあんまり関心なさそうだけど、それでもSMAPくらいの大物グループになると、やっぱりそれなりには関心があったりするのかな?」

愛原「関心というか、まぁあれだけ露出があると、自然と記憶には残ってしまうからなぁ。ああ、別に彼らに対する不快感とか嫌悪感のようなものは特にない。俺のように元々アイドルグループに対する関心度自体が低い人間にまで、名前と顔が一致するレベルで認知されているくらいなんだから、まぁ国民的アイドルと呼ばれても、納得なんじゃないかな?」

逆沢「ネットの声を聞く限りでは、彼らがジャニーズの支配下から逃れて独立するのを支持する声の方が多数派みたいだけどね。実際、メンバー5人中4人が独立劇に乗っかる動きを見せたりもしたようだけど、残り一人がそれに同調しなかった事や、ジャニーズ事務所などの圧力もあってか、結局泣きを入れる形で出戻りするオチになっちゃったみたいだけど。」

鼎「テレビを通じて謝罪させられる4人が公開処刑同然と、同情する声も多く出たみたいだよ。」

愛原「まぁ独立うんぬんに到るまでのSMAPメンバーと事務所側の確執に関しては、何ヶ月も前の週刊誌にも普通に載ってたから、俺からすると【ああ、あの芸能記事は根も葉もないゴシップではなく、スクープ級の真相そのものだったんだ】と、今更ながらにその記事を書いたジャーナリストに喝采を送りたい心境ではある。」

逆沢「つうかお前、週刊誌なんか読むのか? わたしゃてっきり、新聞の広告欄に載ってる週刊誌の広告だけみて、読んだ気になってるだけと思ってたんだけど。」

愛原「買ってまで読む習慣はないが、床屋とかで時間つぶしに読むくらいは普通にするぞ。SMAP関連の記事は、確か献血ルームで読んだ記憶がある。SMAPグループは元々ジャニーズ事務所の中では異端扱いで、敏腕マネージャーがほとんど独力でSMAPを国民的アイドルグループにまで育て上げたらしいけど、その敏腕マネージャーがジャニーズ事務所の後継者派閥に目の敵にされていて、一触即発状態だとかなんとか。」

鼎「ジャニーズ事務所のトップもすでにかなりの高齢になってて、副社長の娘さんがその後継者と目されているらしいけど、その副社長グループと敏腕マネージャーが、あからさまな対立状態になってて、結局、その敏腕マネージャーがジャニーズ事務所から追放される形になったらしいけど、それで敏腕マネージャに恩義を感じていたSMAPのメンバー(一人除く)が、そのマネージャーについていこうとして、今回のお家騒動になったそうだよ。」

逆沢「記事によっては、ジャニーズ事務所はひたすら善玉で、敏腕マネージャーを円満退社させようとしたんだけど、調子に乗ってSMAPのメンバーも巻き込んで暴れ出したみたいな書かれ方されてるものもあるみたいだけどね。」

鼎「けどネットの声では、そういう提灯記事も含めて事務所の圧力といぶかる声も強いと感じたよ。どんな大物芸能人でも、あえてジャニーズ事務所を敵に回すようなコメントは出さないし、安倍総理や石破さんまでもが出戻りを支持するようなコメントをしたり、マネージャー一人を悪役にする提灯記事も出て来たり、どれだけジャニーズ事務所の力は強いんだみたいな感じで。」

逆沢「ちゅうか公共の電波を使ってまで、国民的アイドルグループを公開処刑してしまうジャニーズ事務所のヤクザぶりに、あたしゃ驚かずにはいられなかったわ。」

愛原「まぁ昔から芸能界では、事務所に盾突いた芸能人を容赦なく干し上げたり、痛めつける例は珍しくないからなぁ。あとジャニーズ事務所はどうか知らんが、元々芸能界とヤクザの関係は深い。かつて山口組直営の芸能事務所である神戸芸能社に、美空ひばり、田端義夫、里見浩太朗、 山城新伍、橋幸夫、三波春夫ら、昭和を代表するような大物芸能人らが多く所属していた事などは、割と有名だろうけど。」

逆沢「おいおい。美空ひばりとか、国民栄誉賞をもらった程の超大物芸能人じゃねえか。つうか他のメンツも一時代を築いた大物ばかりだし。」

鼎「最近は国民栄誉賞の基準が怪しくなってる気がするけど、実は昔から怪しげだったのかな?」

愛原「単に国民を顕彰したいだけなら、昔からある旭日なんとか賞とか文化勲章とか人間国宝とか、色んなものがある。だが時の政権が日本国籍を持たない王貞治になんとか勲章を与えたいと画策するようになって、その結果できたのが国民栄誉賞という新概念だ。国民栄誉賞の元々の設立動機自体が、従来の顕彰基準に当てはまらないグレー層向けな訳だから、王貞治とか美空ひばりとかなでしこジャパンとか松井秀喜とか、もう何でもアリ状態であっても不思議はない。」

逆沢「もしかして日本政府自体が、一番ヤクザっぽいんじゃねえか♪」

鼎「政治家と書いてヤクザと読むような人もいるよね。実際、ハマコーさんなんかはヤクザ出身らしいし、小泉純一郎さんの祖父も元港湾ヤクザらしいから。」

愛原「と、これ以上、ヤクザの話を続けると、今回のテーマがヤクザになりかねないから、ヤクザの話はここで終わりにしよう。」

逆沢「この際、ヤクザのテーマで突き進んだ方が面白いんじゃね?」

愛原「個人的には山口組関連のネタとかも嫌いではないし、まぁヤクザと芸能界、あるいはヤクザと政界のつながりみたいなものも、いずれテーマにしても面白そうだとは思うが、今回は時事ネタに沿っていきたいので勘弁な。」

逆沢「あー、そういや元々SMAPの話が最初だったわね。えーと、裏切り者がテーマという事は、要するにキムタクが裏切り者といいたい訳か? ネットでもそういう声はそこそこ見るけど。」

愛原「そうだな。SMAPメンバーがジャニーズから独立した欲しいと考えた層からみれば、たった一人、グループの意向に背いたキムタクは裏切り者にしかみえないだろう。だがジャニーズ事務所側からみれば、キムタクだけが忠臣で、残り4人こそが裏切り者に見えたんじゃないか? だからこそ抜け忍状態になった4人が逃げ切る前に捕縛し、公開処刑という形でお仕置きもしてみせたと。」

鼎「あ、そうか。裏切り者というのは、あくまで主観でしかないんだよね。」

愛原「そう。裏切り者というのは、ある意味、レッテルそのものだ。忠誠というか隷属というか、とにかく相手に同じグループに所属し続ける事を期待し、それに対して相手が拒めば、それは期待している側にとって【裏切り者】となる。たとえば、サボリグループのメンバーの一人が真面目になって、サボるのをやめれば、そいつはメンバーからみれば裏切り者。ブラック企業で働いている従業員の一人が会社を辞めると言えば、そいつもブラック企業に残る者からみれば裏切り者。そんな感じになる。」

逆沢「つまりグループに所属している(あるいは支配している)者からみれば、そのグループから抜け出そうとする者は、裏切り者にしか見えなくてもおかしくないって事ね。」

鼎「だからSMAP、あるいはSMAPを応援している人にとっては、SMAPのメンバーと行動を共にしなかったキムタクさんは裏切り者という事になるし、ジャニーズ事務所側からみれば、ジャニーズ事務所から抜け出そうとするSMAPのメンバー(一人除く)こそが裏切り者に見えちゃうという事かな?」

逆沢「けど私からみりゃあ、【去る者追わず】でいいと思うけど、どうして人に裏切り者というレッテルを貼ってまで、人を組織に縛り付けたがるのかねー?」

鼎「逆に組織のために長年尽くしてきた社員に対しても、容赦なくリストラするような所も多いのにね。」

逆沢「組織が個人を切り捨てるのは構わないけど、個人が組織を見限るのは許せないって事か?」

愛原「さっき、抜け忍という表現も使ってみせたが、そうでなくとも組織というのは、離脱者を嫌う傾向があるからな。」

鼎「忍者組織が抜け忍を許さないのは、忍者組織が持つ機密などが外部に漏れないようにする為だと思うけど、これは当たっているかな?」

愛原「まぁ間違いではないだろう。だがそれだけの理由ではないような気もする。俺的には、一人でも離脱者を許せば、離脱者が相次ぎかねないからと感じているのだが。」

逆沢「脱北者を許さない北朝鮮みたいなものか?」

鼎「仮に北朝鮮という国が、脱北に寛容な国柄だったら、かなりの数の北朝鮮国民が難民申請する為に韓国や中国などに押し寄せそうな印象が私にはあるけど・・・。」

逆沢「つまり忍者組織も、北朝鮮のような過酷な支配をしている可能性があるって事か? まぁ過酷な環境でないと、一人前の忍者にはなれないかも知れないけど。」

愛原「まぁ普通に考えても、離脱者が相次ぎやすい環境であり、かつ人材の確保に苦労している組織ほど、人材が離脱しないように、色々締め付けようとする傾向はあるだろうな。ブラック企業なんかは特にそうだし。」

鼎「そういう組織は、なんとか組織のメンバーが離脱しないように、隣の芝が青くないと思い込ませたり、組織を見限るのは不忠であるとか軟弱者であると洗脳しようとしたり、時には離脱希望者を痛めつけて見せしめにしたり、転職活動を妨害するなどして、とにかくあらゆる方法で、メンバーが組織を離脱しようなどと思わないように仕組む傾向がありそうだよね。」

逆沢「SMAPが出戻りする事になったのも、業界に圧力をかけて、他の事務所に鞍替えできないようにしたり、業界から干し上げる動きを見せる事で、転職活動を妨害されたからと見る向きもあるみたいね。」

愛原「組織からの離脱者を出さない為の洗脳工作というか奴隷教育といえば、新入社員を洗脳するために、一般社会から隔絶された遠方の研修センターとやらに送り込んで、そこで何日も合宿させる所もあるらしいしな。」

逆沢「で、事情を知らない第三者が見たら色々と異様で恥ずかしいフレーズを、延々と唱和させたりする訳ね。」

鼎「なんか外界から遮断されたサティアンとかいう建物の中で、延々と【修行するぞ】と唱和させられる宗教組織を思い出したかも。」

逆沢「なる程。そうやって忍者の里も、優秀な暗殺マシーンを育成していく訳ね。忍者の里が、外界から遮断された場所にあるのも、そこの住人が一般人と大きく異なる価値観を持ってるのも、閉鎖的な組織で洗脳された結果って事か?」

愛原「そして洗脳された結果、【組織のために働くというのが当たり前。組織を去ろうとする者は、不遇な扱いを受けて当然】という価値観を当たり前に思うようになる。」

鼎「私からすると、【組織は私達に忠誠を強要するけど、組織は私達のために何をやってくれたのか?】みたいな疑問を抱かなくもないけど。」

愛原「御恩と奉公の関係だな。まぁ普通の人ならそう思うのが普通だが、洗脳された人、及び支配者層はそうは考えない。組織は既にメンバーに十分な恩恵を与えているはずだと過大評価していたり、無償の奉仕や滅私奉公こそ最大の美徳ととらえていたり。」

逆沢「ああ、過大評価か? 【雇ってやってるだけでも有り難く思え】とか【俺様が管理してやっているからお前らも飯食えているんだから、お前らはその俺に感謝して当然だ】的な価値観ね。で、【組織がリストラするまで、無限の忠誠を誓って当然】な程度には既に御恩を与えている訳だがら、にもかかわらず組織を離脱しようとする者は不義理な裏切り者でしかなく、罵詈雑言かされたり、痛い目に遭わされても当然と考えていると。。」

鼎「滅私奉公というのは、儒教的な価値観でもあるよね。為政者にとって都合のいい思想という事もあって、中国でも朝鮮でも政権側主導で広められたし、日本でも徳川幕府などが積極的に取り入れてたよね。」

愛原「かくして組織を離脱しようとする者は、不忠な裏切り者としてのレッテルを貼られるようになったともいえそうだな。」

鼎「私達は裏切り者と聞くだけで、悪い奴という印象を抱きがちだけど、それも含めて、大衆の奴隷化を望む世の中の支配層に洗脳されていたという事かな?」

愛原「俺はデビルマンの主題歌を割と気に入ってた事もあって、裏切り者という言葉そのものには、必ずしも嫌悪感はないけどな。むしろワクワクする。」

逆沢「おいおい。デビルマンって。今の若い子らに言っても分かるかねー?」

愛原「ちなみに作者が中学時代にお世話になった先生の中にも、やたらデビルマンの主題歌が好きで、突然それを歌い出す先生もいたぞ。」

逆沢「ユニークな中学教師だな。」

愛原「今ももし御尊命なら、80歳近いかも知れん。」

鼎「デビルマンというのは、実は漫画版とアニメ版でかなり設定が違うんだけど、どちらも主人公のデビルマンがデーモン族から裏切り者扱いされて、次々刺客を送り込まれる設定では共通していたかな?」

逆沢「要するに抜け忍と同じような立場という事か?」

愛原「うん。主題歌で歌われている通り、【裏切り者の名を受けて全てを捨てて戦う男】、【悪魔の力(を)身につけた正義のヒーロー、デビルマン】だ。」

逆沢「正義のヒーローのくせに、なんでデビルなんだよと突っ込みたくなるけど、悪魔のグループを裏切って正義のヒーローになったという設定らしいから、それはそれでいいのかな? だったら改名すればいいのにとは思うけど。」

愛原「wikipediaによるとアニメ版デビルマンは、【中国大陸で脱走した日本兵が、娘を守って日本軍をやっつける話】が根底にあるとも触れられているみたいだけど、これはこれで子供向けとは思えないくらい深い背景がある作品だなとは、今更ながらに思う。実際問題、我々は安易に裏切り者を安易に非難するけど、誰かを守ろうとしたり、誰かに対する恩義を優先した結果、もう一方を切り捨てざるを得ないシチュエーションというのは存在するからな。」

逆沢「恩人が二人いて、でもその二人が仲が悪くて、最終的にどっちかを取らざるを得ないような場合ね。」

鼎「SMAP関連の騒動も、そういう側面があるよね。自分達を育ててくれたマネージャーと事務所のどちらを取るかみたいな感じで。」

逆沢「で、最終的に4人はマネージャーさんに対する恩義を優先し、キムタクさんだけは事務所との恩義を優先したとも解釈できる訳ね。もちろん打算とかも背景にあるかも知れないけど、少なくとも建前上は。」

愛原「けど事務所派とマネージャー派全体からみると、解釈は少し異なる。マネージャー派からみれば、キムタクは大恩あるマネージャーを見捨てて保身に走った裏切り者に見えるし、事務所派からみれば4人組の方が事務所の恩を忘れて野心を抱いた裏切り者に見えたりもするわけだ。」

逆沢「どちらも自分なりに考え抜いた結果、より恩義ある相手に対して義理を貫いただけなのに、不義理者呼ばわりされる理不尽を味あわされているだけとも、とらえられるという事ね。」

鼎「一方に対して義理を貫いた結果、もう一方から不義理扱いされるとすると、そもそも義理とは何なのか?という気もするよ。」

逆沢「裏切り者の正体は、実は忠義者だったとか、とんでもないオチね。」

愛原「でも、実際、そういうシチュエーションは多い。会社と家庭のどちらを取るかとか。恋愛と友情のどちらを取るかとか。父親と母親のどちらについていくかとか。政治の世界では特に露骨で、よく裏切り者に冷や飯を食わせるみたいな表現も使われるけど、裏切り者扱いされた当人にしてみれば、別の誰かに義理を貫いた結果である事も珍しくないからな。」

逆沢「国民の代弁者としての立場を優先するか、自分を応援してくれる後援会の意向を優先するか、自分の所属する派閥の意向を優先するか、党としての決定を優先するか、あくまで自分の信じる政治信念を優先するか、みたいな感じね。」

愛原「我々は安易に裏切り者というレッテルを貼って、自分の意に沿わぬ組織の離脱者を糾弾するが、離脱者には離脱者なりの事情があるという事だ。もちろん世間から後ろ指を指されても仕方ないような、極めて自分勝手な動機である事もあるだろうが、群れたがる動物である人間が、あえて群れから離れようとする以上は、それなりに重い理由である事も珍しくない。」

鼎「私達があえて日本国籍を捨てたいと思わないように、あるいは会社からリストラされそうになっても、それでも会社にしがみつこうとする従業員もいるように、特に大きな不満が無ければ、あえて群れから出ようと思わないのが普通の心理だし、にも関わらず群れから出ようとするからには、ちゃんとした理由があってもおかしくないって事だよね。」

逆沢「組織の扱いがむごいとか、もっと大切な存在ができたとか、究極の二者択一を迫られたとか、その人なりに重い理由があるって事ね。」

愛原「そういう事。確かに世の中には、はじめから騙す目的で人に接近したあげく、強烈な裏切り行為をかまして、心理面・財産面などで他者にダメージを与えるような人間のクズみたいな人種も少なからずいるが、必ずしもそうではない。むしろ組織の方が、はじめから騙す目的で、ハローワークなどに嘘の好条件を提示したあげく、のこのこやってきた新人に強烈な裏切り行為をかますような例も多い。」

逆沢「でもそんなブラック企業でも、従業員が逃げようとしたら、裏切り者のレッテルを貼って逃がすまいとするわけね。第三者からみると、裏切ってるのはテメーの方だろと思うけど。」

鼎「でも世の中には、人を騙すお仕事みたいなものも多いよね。」

愛原「詐欺グループとか、スパイ組織とかだな。スパイに関しては、【キャラクター・コレクション】に掲載されている挿入話で、すごく強烈に記憶に残っている小話がある。」

鼎「それはどんなお話なのかな?」

愛原「国家に命じられてスパイとして活動する事になった男の話だ。その男はうまく敵国に侵入し、そこの大商人に雇われ、そこの主人の信頼も勝ち得て順調に出世していった。そこの経営者の娘とも仲良くなって、このまま何事も起こらなければその娘と結婚して、その大商人の跡取りになるのもいいなと考えるようになっていたが、不幸な事に祖国とその国が戦争状態になってしまった。で、この頃大商人の幹部にまで出世していたその男は、多くの武器なども取り扱い、職業上、重要な軍事機密も知り得る立場だったのだろう。その情報を祖国に伝えた。で、祖国は男のもたらした情報のおかげで大勝したが、報酬は一袋の金貨だけ。後で急いで商家に戻ると、既に人々が穏やかに暮らしていたその街は廃墟になってて、商家も当然ながら壊滅。そこの娘も既に強姦されて死んでた。で、男が激しく後悔して、というお話。」

逆沢「うーん。忠義や裏切りの業の深さを感じる話ねー。」

愛原「うん。男は、祖国に対する忠義を優先して、はじめから騙す目的で大商人に取り入った訳だが、敵国にあるその街はすごく穏やかで美しく、主人の家族なども自分を信頼して重要な仕事を任せてくれるなど、客観的にみれば、野蛮な祖国に対して忠義を貫き通す意味などないようにも思う。実際、男は忠義を貫いた結果、何ら報われた訳ではなく、わずかの金貨だけを手土産に放り出されたのか、みじめな酔っ払いとして最後に姿をみせる有様だしな。」

逆沢「客観的にみれば、祖国に義理立てて商家を裏切りのではなく、祖国を裏切って商家に尽くした方が良かったと思うわ。その話。ちゅうかリアルの世界だったら、そのスパイ、証拠隠滅のために祖国に消されていてもおかしくないと思うし。うん。私ならそうするわ♪ どうせ冷たい仕打ちをした祖国に、いずれ恨みを持つのは間違いだろうから。」

愛原「そのスパイが重要な情報を元々持っていないか、決して裏切ることはないと確信できるだけの忠誠心を感じさせるか、あるいはそいつが裏切らないと思わせるだけの弱みを握っているのなら、二束三文の報酬だけを与えて放逐するのもアリだが・・・。ピラミッドの秘密の部屋の設計に関わった人間は、最終的にピラミッドに閉じ込められるか、殺されるがごとく、大抵は口封じに消される運命にあるからな。そう考えると男は、その点ではまだ祖国からマシな扱いをされたのかも知れないが・・・。」

鼎「スパイというのは、多くの場合は、使い捨ての運命だよね。下手に生かしておくと、重要な秘密を外部に漏らしたり、あるいは【秘密を漏らすぞ】と依頼主を脅してくる危険もあるから。」

愛原「だから普通の場合、スパイを育成するというよりは、弱みを握った人間をスパイ化するケースの方が、リアルでは多くなる。特定の公務員の秘密を握った上で、そいつに個人情報や入札情報の漏洩をさせるみたいな形でな。あるいは好待遇で迎える事を条件で産業スパイを依頼した後に、【お前は産業スパイという犯罪に加担した。バラされたくなければ、今後も俺の言う通りに働け】みたいな感じで。」

逆沢「公務員や政治家に賄賂を受けとらせた後に、【この事をバラされたくなければ、便宜を図れ。拒否したらバラす】と脅して、手駒に加えるようなものね。今もバラされて面倒な事になってる大臣がいるけど。」

鼎「その小話の男が、祖国に消されずに済んだのは、もしかしたら弱みを握られた上でやむなくスパイになってたからかなぁ? もろちんこれは、妄想でしかないけど。」

愛原「弱みを握られてやむなくというならともかく、そうでないなら、義理をつくす相手を間違うと悲惨な事になるという好例だな。まさに。」

逆沢「まぁどんな事情があれ、人に忠義だの隷属だのを強要する組織に、ロクなものはないわ。忠義や隷属を強要するのではなく、【去る者追わず】の組織の方が絶対にまともだろうし。脱北者を許さない国よりも、(相手国さえ受け容れれば)いつでも他国籍を取らせてもらえたり、今辞めたら損害賠償請求するぞみたいな感じで無理矢理従業員を縛り付ける会社よりは、いつでも転職させてもらえるような会社の方が健全だと思うし。」

愛原「人を裏切り者呼ばわりすると、そいつを懲らしめなくてはならないような気分にさせられるのも問題だな。デビルマンの話にしたって、よくよく考えたら、デーモン族がデビルマンに対して抜け忍狩りみたいな事をしなければ、デーモン族も次々幹部がデビルマンに倒されるなど、余計な被害を出さずに済んだわけだから。」

逆沢「あー、なる程。言われてみればそうね。特にアニメ版の場合は、本当にそれだけの話だから。特にデビルマン側は、デーモン族に危害を加える意思はないから、デーモン族が余計な制裁などをしようと企まなければ、みんな丸く収まるわけで。」

鼎「よくよく考えたら、裏切り者呼ばわれされている人の多くは、放っておけば無害だよね。仮に会社を辞めたらからといって、(余程、強い恨みでもないかぎり)その人がわざわざ手間をかけて元いた会社に復讐を企むケースなんてまれだろうから。」

愛原「はじめから危害を加える目的で近づいてくる詐欺師などはその限りではないが、いわゆる普通(?)の裏切り者とレッテルを貼られている人達に関してはそうだな。そいつが脱北しようが、会社を辞めようが、サボリグループから抜け出そうが、ジャニーズ辞めようが、それは単にそれだけの話で、元々いた組織に積極的に危害を加えてやろうと企んでいる訳ではないからな。」

逆沢「誰だって、降りかかる火の粉ははらわざるを得ないけど、抜け忍狩りみたいな余計な事さえしてこなければ、お互いにもめる必要も無く終わりになる話だからねー。うまく円満退社みたいな形に出来れば、いずれ何かの縁で、双方にとってチャンスが巡ってくる可能性すらあるし。」

愛原「そう。最初から【去る者追わず】みたいな態度であれば、お互いにもめずに終わる。円満に別れる事ができたならば、幸せな形の再会もあり得るだろう。しかし逆に裏切り者は許さないとばかりに、離脱したいメンバーを無理矢理縛り付けようとすると、その者は密かに強い不満を持つようになり、やがて手痛い一撃を食らわすような不穏分子と化す。」

逆沢「円満に離脱させてもらえないなら、騙してでも脱走しなければならなくなるし、あるいは戦って傷つけあっても無理矢理決別するしかなくなるようなものね。」

鼎「ブラック企業みたいな組織に長く閉じ込められていたら、それこそいずれ復讐したくなるような人が出てもおかしくないかも。あ、なる程。本来なら無害であるはずの離脱希望者が、危険な裏切り者になるとしたら、裏切り者呼ばわりして、その人を抑圧してきた側にこそ理由があるかも知れないって事だよね。」

愛原「関ヶ原の戦いでも、西軍側で多くの裏切り者やサボタージュが発生したが、妻子を人質に取って無理矢理西軍に加担させるような事をしたら、そりゃあ、土壇場で裏切り者が出ても仕方ないと思う。それと同じだな。」

鼎「そういえば数日前に、秀吉さんから脇坂安治さんへ充てた貴重な文書が多く公開されてニュースになってたけど、脇坂安治さんも、関ヶ原の戦いの時に土壇場で東軍に寝返った事で知られる人物だよね。」

愛原「脇坂安治からすれば、はじめから徳川方とよしみを通じていて文書も交わしているのだが、(人質を取られたかどうかしらんが)成り行きでやむなく西軍につかざるを得なくなっただけだからな。実際問題、脇坂は文書などでその証拠もちゃんと取っていたから、赤座や小川ら他の寝返り組と異なり、領土を召し上げられることもなく普通に処遇されている。もっともそれでも儒教文化の影響か、子孫は裏切り者の一族とのレッテルを貼られて、苦労したようだが。ちなみに余談だが、脇坂家は後に外様大名ながら唯一老中にも就き【5万石でも脇坂様は花のお江戸で知恵頭】と謳われるなど、相当の傑物を出している。家全体で汚名回復のために相当努力されたのだろう。」

鼎「脇坂家は明治に入ってからも戦後まで長く藩領である竜野に留まる義理固さを示した事で、今でも竜野での評判はいいらしいよ。脇坂家の治める竜野ではうすくち醤油などの特産品にも恵まれて、それなりに善政が行われたせいもあるからかも知れないけど。」

逆沢「西軍側も生死と日本の未来がかかっているから、人質を逃がしてやるみたいな甘い態度は取れないのは分かるけど、ブラック企業みたいに無理矢理人を縛り付けたせいで、肝心な場面で裏切り者が出て、それが致命傷になったとしたら皮肉だよね。」

愛原「はじめから危害を加える気マンマンで近づいてくる詐欺師のような裏切り者に関しては、そりゃあぶちのめしてやるべきだとも思うが、裏切り者のレッテルを人に貼ろうとしているのなら、ちょっと冷静に考えて欲しい。そいつは本当に許されない悪なのか? 放っておけば無害じゃないのか? むしろ下手に縛り付けようとしたり、痛めつけようとすると、かえって恨みを買ったり、手痛い反撃を被る事もある。自分から見たら裏切りに感じても、別の誰かに義理立ててそうなっただけかも知れないし、やむを得ない事情もあるだろう。また自分では十分な御恩を施しているつもりでも、相手はむしろ不満や不審を抱いているかも知れない。また大韓航空機を爆破した北朝鮮の工作員のように、誰かに洗脳されている可能性もある。裏切り者という単語を聞いて、パブロフの犬みたいに直感的に嫌悪感を感じるのではなく、むしろ裏切り者のレッテルを貼って、不快感を煽っている者の存在に気付くくらいの余裕が欲しいな。」

















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