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愛原様のたわごと(16年6月26日)




愛原「エロゲやエロ漫画では、主人公が異常なまでに性欲絶倫な事が普通だよな。」

逆沢「いよいよ参院選って時に、いきなりなんちゅう話すんねん。」

鼎「ウチのサイトは基本的に非エロ路線だから、そういう話題はあまりしない傾向だと思ったんだけど。」

愛原「いやいや。すごく政治的な話題だぞ。少子化問題ネタというのは。憲法改正よりも、余程真剣に取り組まないといけない話題だろ。」

鼎「一応、少子化担当大臣という役職もあるよね。少子化担当大臣が今までどんな活躍をして、どれだけ役に立ったかとかは、全然伝わってこないけど。」

逆沢「いや。話の論点がそもそもおかしいだろ。主人公が性欲絶倫である事と、少子化問題は、根本的に関係ないから。」

愛原「日本男児の性欲が弱くなったから少子化が加速していると、お前は思わないのか? エロゲなどでは、性欲もしくは精力が著しく衰えた男性だらけの世界で、一人(性的に)大暴れする主人公なんてストーリーの作品もあったりするらしいのだが。」

逆沢「知らん知らん。エロゲ脳の人の発想はよく分からんけど、少なくとも日本人の性欲や精力が衰えたなんて統計自体、存在しないだろ? まぁそんなマニアックな統計調査自体、この世に存在するのかどうかすら、知らないけど。」

鼎「歴代の少子化担当大臣さんは、そういう統計調査とかには、あまり関心無かったのかな?」

愛原「日本国民の性欲や精力に関する統計調査なんてものは聞いた事もないが、性風俗産業の経済規模自体は、近年大きく減退しているそうだぞ。ぶっちゃけて言えば、性風俗を利用している男性の総量が、年々減少していってるって事。また性的サービスを行う女性側が得られる所得額も、近年、大きく減少しているらしい。昔は【多額の借金を返す為に性風俗で働く】というか【借金返済の為に(ソープなどに)沈める】みたいな表現もよくされたりしたが、今は昔と比べると全然稼げなくなってるようだ。」

逆沢「それは、今時の若者の性欲が落ちたからではなく、単に貧乏になったから、性風俗の利用もしんどくなっただけじゃね?」

鼎「近年は、エロ同人誌とか、エロゲとか、性風俗以外の性欲解消手段が多様化したから、それで性風俗のシェアが相対的に下がったような気はしなくもないよ。」

逆沢「少子化問題は、性欲や精力どうこうじゃなく、純粋に経済問題だろ。いきなり見当違いの訳分からねーネタ振ってんじゃねえよ。ブタ!」

愛原「ブタは余計だろ。抗議のブーイングしてやる。ブーブー!!」

逆沢「ブタ野郎がブーイングしても、余計に物笑いのネタにしかならないからやめろって。」

愛原「ブーイングというのは、英語ではbooingで、抗議や非難の意思を示す際に行われる表現であって、豚の鳴き声じゃねえんだけどな。語源までは知らんけど。」

逆沢「ブーイングしたいのはこっちだわ。エロゲ脳的論理で少子化問題語るんじゃねえよ。ふざけんなって感じで。」

愛原「悪い悪い。正直、ふざけてました。でも大真面目な話として、少子化社会というのは、近未来SFのネタとして、なかなかの舞台設定とは思わないか?」

逆沢「全然思わねえよ! つうかそんな舞台設定の作品自体、聞いた事ねえよ!」

鼎「近未来SFでは、色んな舞台設定の作品があるよね。大まかに分けると、現代よりさらに技術も進歩して豊かに発展した世界の場合と、逆に災害や戦災などにより大きく荒廃した世界の場合。」

逆沢「けどどっちの世界でも、主人公を悩ませる問題を抱えていたりすわよね。荒廃した世界なら世界自体が悩みの種になるし、豊かな世界でも、その場合は悪の組織が暗躍していたり、国家間対立が激しくなっていたり、社会自体がディストピアと化していたりして、物質的にはより豊かになっていても素直に喜べない状態になってたりして。」

鼎「でも最初から大団円だと、物語自体が成立しないから、主人公が何らかの悩みを抱えている事自体は、何もおかしくないと思うよ。」

逆沢「私達は未来になるほど、技術も進歩して、人々が抱く相互理解と権利も拡充して、より良い未来になったらいいなと期待もするけど、物語的にはそれは困るって事かな?」

愛原「ただ【事実は小説より奇なり】じゃないけど、現実世界をベースにしても、近未来は必ずしも明るいとは言い切れないんだよなぁ。少子化問題もそうだが、地球温暖化を始めとした環境問題もあるし、財政問題もあるし、資源や領土などを巡って国際的対立が先鋭化するリスクもあるし。」

逆沢「国際的対立がテーマなら、圧倒的な武力やカリスマ性を持つ主人公が頑張る事で改善される可能性もあるだろうけど、少子化問題や環境問題や財政問題は、さすがに一個人レベルで解決できる問題じゃないだろ?」

鼎「けど少子化問題も環境問題も財政問題も、どれも放置しておくと、やがて社会全体の荒廃につながる可能性があるとは思うよ。」

逆沢「大災害や戦災がきっかけで、ヒャッハーな世界観になるなら分かりやすいけど、少子化や環境破壊や財政破綻からヒャッハーな世界に至る道筋っつうのが、さすがに私には想像できんわ。」

鼎「財政破綻すると、なんとなくソ連が破綻した時みたいな状態になるようなイメージくらいはあるけど。」

逆沢「まぁ、そうなったら、チンピラが沸きやすくなるような気はするわね。チンピラが闊歩するような世界観なら、まぁ物語を動かす上では都合が悪くはないかな? そう考えると財政破綻が招く近未来像くらいはまだイメージ沸かなくもないか?」

愛原「環境破壊が原因で主人公達に災いをもたらすタイプの作品も、意外にあるぞ。公害が深刻だった時代で特にメジャーな作品もあるし、他にも汚染物質や放射能などが原因で生み出された変異物質やミュータントが出現して問題を引き起こす作品。あるいは自分の母星が環境汚染で住めなくなった為に、地球を新たな母星とするべくやってきた宇宙人と戦う作品とか。」

鼎「環境汚染も、大きな災いを引き起こす引き金になりやすいよね。」

逆沢「OKOK。国家間対立だけでなく、財政破綻や環境汚染が災いを引き起こす近未来SFも実は意外にあったという事も認めるわ。けど、少子化問題が進行した事で災いを引き起こす近未来SFだけは、マジで想像できねえんだけど。あー、エロゲは別にして。」

鼎「色んな近未来SF作品があるけど、少子化社会という舞台設計だけは、言われてみれば、本当に見当たらない気がするかも。」

愛原「ある意味、地球に巨大な隕石が落ちてくる確率や、宇宙人が来訪する確率よりも、少子化社会が深刻化する可能性の方が高そうなのにな。という訳で、今回のテーマは【少子化社会という舞台設定】。アベノミクスや憲法改正よりも、よっぽど参議院選挙の争点にしてもらいたい程の超真面目ネタだぞ。あと近未来SFものの中でも、極めて現実的な課題でありながらファンタジー的には比較的レアな方なので、上手く使用できれば既視感のない斬新な作品にもなりえる可能性も秘めている。」

逆沢「一応、念入りに断っておくけど、エロゲ脳的視点で語るのはノーサンキューな。」

愛原「・・・ちっ。まぁいいか。それじゃまず、基本的なおさらい。まず少子化が進行する原因について考えてみよう。」

鼎「エロゲ的視点なら、謎の病原菌が蔓延して、性欲が減退したとか、妊娠しにくくなったとか、死産しやすくなったとか、色んな基本設定が考えられるけど、そういうエロゲ的視点以外で考えられる設定としては、どんな要因がありそうかな?」

愛原「その前に、ちょっと異議を唱えさせて欲しい。王道の中世魔法ファンタジーの世界でも、種族特性として性欲や受胎率に問題があるせいで、種族全体の増加が見込めない設定自体は珍しくない。なんでもかんでもエロゲ視点で切り捨てるのではなく、まずはそういう部分にも目を向けて欲しい。」

逆沢「うーん。まぁ言われてみれば、そういう種族も中世ファンタジーでは珍しくないか。特にエルフ系とか、長寿の種族ほどそんな傾向はあるかもしれないわね。」

鼎「長寿の上に受胎率なども高いと、人間を上回る勢いで、あっという間に数がふえちゃって、世界設定上都合が悪いから、長寿の種族ほど、子供ができにくい設定にしてるような気はするよね。」

愛原「まぁそれをいったら、リアル世界の生物学でも、その原則(?)は、割と当てはまりそうではあるけどな。大人になるまでに死滅する可能性が高い動物ほど、たくさんの子供(or卵)を産む傾向は、案外ありそうだし。」

鼎「食物連鎖の関係で、そうならざるを得ない側面もあるよね。たとえばライオンがたくさんの子供を産んだと仮定して、それらが全て元気に大人になるように考えると、それだけ多くのエサが必要になる。けど自然界のエサの量は決まっているから、ライオンの子供が増えすぎて、それらがエサを食べ尽くそうものなら、やがてライオンにとって慢性的な食糧不足状態になって、その結局、エサにありつけなかったライオンは次々餓死してしまい、本来の個体数に戻っていくみたいな。」

愛原「動物の世界では、ある一定以上に個体数が増えすぎると、種族全体に食糧が行き渡らなくなる為、結局、それなりの個体数に収束していくという大原則があるからな。無論、この大原則は人間にも当てはまり、仮に地球上に生きる人間の数が上限を突破してしまった場合は、食糧が行き渡らず餓死する人間が大量に出るか、食糧を巡って人間同士で殺し合うか、いずれにしろ最終的に、世界全体で供給される食糧に見合う一定数まで、人間の数も減って戻っていくと思われる。」

逆沢「うへえー。所詮、人間もアニマルの一種に過ぎず、その因果からは逃れられないって事か?」

鼎「でも増えすぎても一定量まで減るって事は、逆に減りすぎても一定量までは戻るって事は期待していいのかな?」

愛原「残念ながら、それは保証できない。たとえば絶滅危惧種といわれる動物の場合、元の個体数自体が少なすぎるため、繁殖の選択肢及び機会が限られ、放っておくとさらに減り続け、やがて絶滅する。特に自然界のあるがままに放置しておいた場合、個体数が一定数を下回ると、適齢かつ好相性のオスとメスが出会う確率自体が加速度的に下がるからな。どんな動物にも相性やタイミングや仲良くなれるきっかけのようなものがあるから、出会ったらそれで必ず上手くいくって話でもないし、出会いのチャンスが少なくなればなる程、種が衰亡に向かうのは至って当然の話だ。」

逆沢「なんか過疎地の嫁探しみたいな話ねー。せつないわ。」

鼎「つまり種の保存という視点で考えた場合、増えすぎた場合は自然に淘汰されて一定量まで戻るから問題ないとして、逆に減りすぎた場合の方が怖いという形になるのかな?」

愛原「ま、そんな感じだな。ちなみに地球上に住む人間全体として考えた場合、数自体は近年爆発的に増加中だが、これは平均寿命がここ百年ほどの間で爆発的に伸びた影響が大きく、出生率自体がそこまで伸びているわけではない。」

鼎「たとえば日本限定で人口に関する統計をみた場合、終戦間もない頃の日本の人口は約8000万人で、1970年代に1億人に達して、2000年くらいに1億2000万人に達して、以後は大体横ばいらしいけど、これはただ単に、平均寿命が延びたから人口が爆発的に増えただけで、産まれてくる子供の数自体は、全然増えてないんだよね。」

愛原「1970年代前半の第2次ベビーブームまでの子供の出生数は、マクロでみる限りはほぼ横ばいだが、それ以降は、順調に減り続けているわな。その影響もあって、2000年あたりから2010年あたりにかけては、人口はほぼ横ばい。つまりこの時期は、減り続ける子供の数と増え続けるお年寄りの数で相殺してる状態といえる。そして2010年以降は、これ以上の平均寿命の増加が見込めにくい事もあり、減り続ける子供の分だけ人口が減少し続け、2050年頃には戦後間もない頃の8000万人台に戻るとも言われている。」

逆沢「2045年にリニアモーターカーが大阪まで開通予定と言われてるけど、つまりその頃には、人口が今の7割くらいに減ってるって事ね。」

愛原「まぁリニアが大阪まで届く頃には、俺も死んでそうな気がするけどな♪ ちなみに現時点では、14歳未満の子供1人あたり65歳以上のお年寄り2人という割合だが、2050年頃には子供1人あたりお年寄り4人くらいになるそうだ。」

鼎「今でも、学生寮が老人ホームに化けたりする例は珍しくない世の中だけど、すごい世の中になりそうだよね。」

逆沢「少子化担当大臣、全然仕事してね〜。つうか、どうしてこうなった?」

鼎「世間一般では、給料が安すぎて結婚できないとか、仕事が忙しくて育児ができないから子供を作れないとか、そんな声を割と聞くけど・・・。」

逆沢「けど給料が安かろうが仕事が忙しかろうが、江戸時代の日本人や、アフリカの住人は、普通に子供作って育ててるだろ。あれだけ極貧で食糧不足で多忙だった太平洋戦争中の日本人でさえ。」

愛原「子供の養育コストとコストの回収分岐点が、昔とは全く違うからなぁ。」

逆沢「養育コスト回収分岐点?」

愛原「うん。まず養育コスト。要するに子供を一人前に育てるのに必要な費用。昔は、極端な話、食費代(+わずかな衣服代等)くらいしかかからなかったが、今は教育費や交際費が半端なくかかるからな。特に塾や大学まで通わせようとすれば莫大な資金が必要になるし、子供が人間関係で困らないように、一定水準の服を着せたり、ゲームや携帯電話を買ってあげたりもしようものなら、さらにいくらでもお金がかかる。」

逆沢「回収分岐点というのは?」

愛原「たとえば江戸時代の農民なら、10歳にもなれば農作業の手伝いをさせるだけでも、十分養育費の元は取れる。つうか長い目で見れば、子供をたくさん作れば作るほど農作業もはかどるなど、要するに子供の存在自体がカネの成る木ともいえた。これはアフリカなどの発展途上国なら、今でもそれなりには当てはまる。また戦前戦後の日本でも、15歳で働きに出るか、高卒で働きに出るか、大学卒業まで働かないのでは、親が負担する養育コストと、子供が稼ぎ始める回収ラインで明確な差が出る。」

鼎「つまり昔なら、子供は決してコストのかかる存在ではなくて、むしろコストを大きく上回る稼ぎが期待できる、とても頼もしい存在だったって事かな?」

逆沢「まー、少なくとも、貧しいから子供も作れないなんて悩みはほとんどなかったかも知れないわね。つうか貧しくても子だくさんの家はたくさんあったというか、昔の方が、一家庭あたりの子供の数もずっと多そうな気もするし。」

愛原「子供が高コストなんてのは、主に戦後の先進国などに限定された特異社会現象といってもいいかも知れんな。」

鼎「けど日本ほど極端に少子化が進んだ先進国は、世界全体でもまれだと思うけど・・・。」

愛原「まぁ、それはいえる。同じ先進国でも、欧米では出生率が2近くある国も多く、それらと日本の1.4とは比較にならない。」

逆沢「出生率が2って事は、2人の親から平均2人の子供ができるって事だから、別に少子化でも何でもないんじゃね? 日本の1.4はさすがにヤバいと思うけど。」

愛原「うん。だから欧米では、少子化問題は必ずしも懸念される問題とまでは受けとめられていない。むしろアジアの方がヤバい国が多くて、韓国やシンガポールや台湾などでは、日本よりもさらにひどい少子化状態になっている。」

逆沢「長年、一人っ子政策やってきた中国とか、特に深刻なんじゃね?」

愛原「中国は1.7くらいあるから、実はそんなにヤバくない。」

逆沢「一人っ子政策、全然機能してねえじゃねえか?」

愛原「一人っ子政策自体が、元々機能してなかったのか、近年の緩和から廃止に向けた政策変更で数字が上向いたのか、詳しい事は分からない。ただ現時点では、中国は日本や韓国などよりはるかにマシとも言えるし、それでも2近くあるアメリカやイギリス・フランス・北欧などと比べれば、まだまだ足りないとも言える。」

鼎「元々貧富の差が激しいアメリカはともかくとして、ヨーロッパでも意外と出生率が低くない国が多いというのは少し意外かな?」

愛原「【ゆりかごから墓場まで】ではないが、ヨーロッパでは福祉政策が充実している国も多く、そういう国では、教育費のほとんどを公費で負担している例も多いからな。だから安心して子育てができるんだろうと思われる。逆を言うと、ドイツやイタリアなど、福祉国家色の薄い国の場合は、同じヨーロッパでも出生率は日本にかなり近くなる。」

逆沢「日本も一応、かつて【世界で最も成功した社会主義国】と言われてた時代があったんだけどねー・・・。」

愛原「それは一億総中流システムと、年金や健康保険制度のおかげだろう。しかし総中流システムは小泉政権時代に派遣社員制度が一気に投入されて完全に崩壊したし、年金制度も、本税と別会計にした事と問題先送りによる弊害が出ている。またそれらのいずれも、主に老後に焦点に充てた高齢者向け福祉であり、決して子供や子育て世代向けの福祉ではないからな。」

鼎「同じ福祉でも、重点に置く部分が全然違うという事かな?」

愛原「ヨーロッパでは、ドイツやイタリアだけでなく、ギリシャやスペイン、スイスなども出生率は日本と大差ない。特にヨーロッパでも1.2を争うほど出生率の低いギリシャなどは、社会保障が手厚すぎて去年財政危機にも見舞われたが、その手厚いはずの社会保障費が主にどこに流れたか、知ってる人も多いだろう?」

逆沢「若者が働く気が無くなる程に高い年金と公務員給与ね。若者が働いて稼ぐお金よりも、親の年金の額の方がはるかに多いというか、親の年金が家計の支えなんて家庭もかなり多いらしいというか。」

鼎「日本でも、年収300万円切る派遣労働者がたくさんいる一方で、年金月30万円とか月50万円とか言われるお年寄りの方も多くて、かなりいびつな構図になっているよね。」

愛原「ヨーロッパでも、ギリシャ型の財政+社会保障システムを敷いている国は、大体似たような国情になっている。スペインやイタリアも、同じような悩みで財政も深刻化しているし。スイスの場合は、確か今月5日だったか、今までの福祉制度を見直し、ベーシックインカムを導入するか否かの国民投票が行われてたな。」

逆沢「ベーシックインカムとは、なんぞな?」

愛原「【国民に日本円にして毎月約28万円ずつお金を配ります。でもこれ以外の福祉は無しな】みたいな内容。4人家族なら毎月100万円を超えるお金が、自動的に国からもらえる。その代わり、税金による医療費負担だの、年金だの生活保護だの障害者支援だの、学費支援だの、失業手当だの、そういったものは原則カット。」

逆沢「それはなんとも斬新な社会制度改革ねー。働かなくても一定の収入が確保できるし、ぐうたらな人には喜ばれそうな制度のような気がするけど、で、国民投票結果はどうなった?」

愛原「7割を超える圧倒的大差で否決されたよ。」

逆沢「へー。意外っちゃ意外。」

愛原「スイスだけではなく、日本やギリシャみたいな国の場合でも、ベーシックインカムを導入した方が、もしかしたら財政にもプラスの可能性はあるけどな。なんだかんだ言っても、年金や医療費にかかる歳出額は馬鹿にできん。ハローワークなどに代表されるサービス窓口も閉鎖する事で、公務員の人件費を始めとした行政の費用も削減が見込まれるというのもあるだろう。」

逆沢「要するに、最初に決まった額のカネをくれてやる代わりに、後は全部自己責任って考え方ね。病気しようが、失業しようが、地震や火事で一文無しになろうが、後は全部自分で何とかしろって事で。」

愛原「うん。ベーシックインカムは、元々社会主義者とは対極に位置する新自由主義者のアイデアだからな。生活に困窮している人を救うためにある生活保護制度などと違い、大富豪だろうが貧乏人だろうが【同じ額のお金を最初に配って後は自己責任】という方法なので、実は富裕層に有利な社会保障制度ともいわれている。というか新自由主義者の発想なんだから、そりゃそうなるわな。」

鼎「日本の年金制度も、それに近いか、もっとひどい気もするよ。みんな同じ額だったらまだ公平な分だけはマシだけど、日本の場合は、国民年金だけの人と、共済年金の人とでもだいぶ差があるし。」

逆沢「どっちにしろ、現金を配って後は自己責任ってやり方は、私的には賛同できんわ。せっかくのお金を酒だのタバコだのバクチだのに使い切ってしまう奴もいるし、逆に貧困ビジネスに利用されてしまう可能性もあるし。」

鼎「せっかくの生活保護費が、その人の生活のためではなくて、悪い人に上納される資金源に回される可能性もあるんだよね。」

愛原「お金に色はついてないからな。自分の意思で無駄遣いしてしまう奴もいるし、悪い他人にそのお金を根こそぎ巻き上げられる可能性もある。それ故に、現金ではなくサービス内容で福祉を充実させるべきという声もある。医療費や学費、介護費用、就職や法律に関する相談費用、家賃などの助成といった方向にな。ベーシックインカムとは真逆の形にはなるが。」

鼎「そういえば日本政府は、少子化対策のために【第3子以上には一時金支給】みたいなアイデアを提示しているらしいけど・・・。」

愛原「イギリス・フランス・スウェーデンなどとは正反対のやり方だな。少子化対策ができているそれらの国の場合は、一時金などではなく、育休の環境を整えたり、保育所を整備したり、教育費の無料化など、サービス方面で対策していたりするのだが。」

逆沢「日本の場合、保育所一つ建てようとしても、子供の声がうるさいとか言って、反対運動が起きるからねー。そういう方向での改善は難しいんじゃないの?」

愛原「昭和の頃なら、子供の声で騒がしいのは当たり前で、そんな苦情で学校や保育所が建てられないなんて事はまず無かったと思うが。」

逆沢「子育て世代が多数派なら、少数派が反対しても押しつぶせるけど、子育て世代が少数になったら、逆に多数派を占める反対派に押しつぶされるって事なんじゃないの? 自分の子や孫が幼いなら、それらの為に養育環境の充実を第一に考えるだろうけど、自分の子も孫も既に大きくなってるか、もしくはいない場合は、よその子供の声はただの騒音でしかないから。」

鼎「つまり少子化が進んで子供が減って、逆に独身世帯やお年寄りが増えると、ますます少数派である子供や子育て世代に厳しい世の中になりやすいって事かな?」

愛原「少し前の大阪都構想を巡る住民投票の時、都構想賛成派が多い若者票より、反対派が多い高齢票が多かった為、最終的に都構想が否決に追い込まれたという話があるけど、まぁ若者より老人の方が多い構造で、世代間対立のある選挙をしたらそうなるわな。」

鼎「数日前に行われたイギリスのEU離脱の是非を巡る選挙も、若者が多数を占める残留派票に対して、年配の方が多数を占める離脱派票が勝った結果、否決という結果になったみたいだけど・・・。」

逆沢「イギリスはまだ日本と比べればずっと出生率も高いけど、それでもこういう結末なんだから、日本で世代間対立のある話題で選挙したら、若者は全敗するような気がするわ。というか、だからこそ未来志向の少子化対策よりも、高齢者向けの政策ばかりが重視され続けているような気がするし。」

愛原「若者より高齢者を優遇した政策を取った結果、さらに少子化が進行し、若者が減る。そしてさらに高齢者層が幅をきかすという悪循環だな。富裕層を優遇する政策を進めた結果、さらに貧富の差が広がり、さらに富裕層の発言力が強化される構図と同じかも知れん。」

逆沢「絶滅危惧種がなぜ絶滅に至るかを、改めて理解させられたわ。少数派になると、ますます立場が悪くなり、さらに少数になって衰亡ループに入るからって事ね。」

鼎「とすると今のような多数決型民主主義的システムを取り続ける限り、一度少数派に追い込まれると、逆転は相当厳しくなるって事かなぁ?」

逆沢「とするとこのままいくと、日本はますます老人天国になっていくって事か? なんかその内、若者がキレて老人に大逆襲かましそうな気もするけど。」

愛原「その頃、俺も逆襲を食らう老人側なんだろうけどな。ただ体力や知能に劣る老人とはいえ、数は力だ。2013年の7月に山口県周南市で起きた連続放火殺人事件などを振り返ると、改めてそう思う。」

逆沢「確か加害者は両親の介護のために、高齢者だらけの過疎の村に帰郷したものの、そこで稀少な若者という事で、村の仕事をなんでもかんでも押しつけられて、イジメのような仕打ちも村ぐるみで受けて、ついに加害者が村の老人に対して復讐した事件だったか?」

愛原「高齢者の全てがそうだとは言わないが、若者は年配の人を尊重すべきみたいな価値観の持ち主は案外多い。無論、それだけなら古い日本の伝統で済まされるかも知れんが、数の上で圧倒的多数派を占める老人がこんな価値観を当然視するようになると、少数派の若者はひたすら押しつぶされそうだ。」

逆沢「うえ〜。これからの若者はますます大変だわ。」

愛原「政府は有効求人倍率が増えたからアベノミクスは上手くいってるみたいに言ってはしゃいでいるが、実質賃金が下がり続けている(物価の上昇に賃金の上昇が追いついていない為、相対的には賃金がどんどん減っている状態。消費増税などによる支出も増加すれば、実質収入はさらに下がる)上、失業率もさほど上向かないのに、有効求人倍率だけが増えるというのが、何を意味するのか、よく考えて欲しい。」

鼎「えーと。求人だけは増えてるのに、失業者の数はあまり変わらず、実質賃金も下がっているという事は・・・。」

逆沢「要するに、劣悪な環境を前提とした労働者の募集だけが増えたって事か? 派遣労働者とブラック企業が増えただけというか。」

愛原「自爆営業当たり前とか、サービス残業などで実質賃金が最低賃金を下回る状態のブラック企業とか、ひどい所になると雇用条件に【当社の車(レクサス以上)を購入】とか【個人の車を会社に提供する事】とか書いている所すらあるからな。」

逆沢「雇う気あるのか? そういうの。実際は雇う気ないけど、有効求人倍率上げる為のダミー求人じゃねえのか?」

鼎「私は割と本気だと思うよ。求人広告見てると、【この会社、いつも募集してるなぁ】みたいな所も割とあるし。あまりにひどい労働待遇だから労働者が慢性的に不足してるか、あるいは最初から使い捨てにするつもりでしかないか。そういう会社は多いと思うよ。百人を超える新卒を採用して、1年後に残ったのは半分以下。3年後には1割も残らないみたいな所も珍しくないし。」

愛原「昭和の時代から【選り好みしなければ、働く所なんていくらでもあるんだ】と吹聴する人は少なからずいた。それは今でもそうだろう。但し、最低賃金未満で働かされたり、自爆営業させられたり、過労死寸前に追い込まれたりするリスクは覚悟しなければならん。ましてこれから若者の数が少なくなれば、若者にのし掛かる仕事量や重圧は相当のものになる可能性もある。」

逆沢「高度成長期に入るまでの世の中なら、中卒でもそんなに大きなハンデにはならなかったけど、今では高卒でもハンデになる場合があるし、そうなると教育費も馬鹿にならないし、今は子供自身にとっても、その親にとっても大変な世の中だと思うわ。」

鼎「子供一人を育てるお金がかかりすぎるのも問題だけど、子育てに必要な時間が確保しにくいのも問題だよね。昭和時代なら、母親が長く家にいたり、近所に祖父母がいたりする場合も多かったけど、今は核家族化と共働き化が進んで、それも難しくなりつつあるから。」

愛原「少子化で、子供の数はどんどん減っているのに、保育所の数はさらに足りないとか言ってる有様だもんなぁ。家で子供の面倒を見られない家庭がそれだけ増えているのかな? もっとも地方では、テレビや国会で騒いでいる程の深刻な実感はないけど。」

逆沢「まぁ半分以上は、恒例の東京目線だろうけどね。」

鼎「けどこうしてみると、少子化社会というのは、高齢化社会とセットで考えた方が良さげな部分もありそうだよね。子供とお年寄りのどちらに、限られた福祉予算を多く振り分けるかという事にもつながるし、その結果、どちらがより勢力を増して、どちらが社会で大きな影響力を占めるかみたいな構図にもなるだろうし。」

愛原「世代間対立に持ち込みたくはないが、そうなりかねない不安はあるわな。」

逆沢「あー、なる程。少子高齢化をテーマにした作品があまり見られない理由が見えてきたわ。要するに悪玉を使いづらいのよ。」

鼎「悪玉が、異星人とか、外国の独裁者とか、社会を裏で牛耳る秘密結社なり富裕層であるとか、悪徳政治家であるとか、ヤクザやマフィアであるとか、街の不良であるとかなら、使いやすいと思うけど。」

逆沢「少子高齢化社会だと、ほら、悪玉が社会の多数派を占める老人になりかねないから。けどこれは、やっつけるにしても後味悪そうだし。」

愛原「だよなぁ。老人も、なりたくて老人になってる訳じゃないしなぁ。」

逆沢「ただ一人一人の老人に悪意はなくても、結果として、社会を歪める側に加担する事はあるからねー。やっぱり年金は減らされたくない。自分達が働けない分、若者にはいっぱい働いて国内総生産に貢献して欲しい。税金もたくさん納めて欲しい。町内会の力仕事にも協力して欲しいみたいな。あと老い先短い事もあって、今さえ良ければそれでいいみたいな変革を嫌う考え方とか、排他的な考え方とか、先の先を見据えた視野ができない欠点もありそうだし。」

愛原「紀元前の昔から【今時の若者は・・・】みたいな事は言われてたらしいが、そういう感覚で若者を下に見る年配層が多く居ればいるほど、少数派の若者にとっては息苦しく感じるかもしれんな。対応を間違えると、山口県周南市の悲劇みたいな事がまた起こりかねん。俺個人としては、どれだけ歳を重ねても、青臭い側の人間でありたいとは思うが、望まずともやはり歳は取っていく。子供時代には戻れない。考え方も年々古くなっていってるなぁとも感じる。」

逆沢「で、やがて老害となっていくと。」

愛原「誰だって望んで老人になるわけじゃない。まして望んで老害になる奴なんかいないだろう。しかし今の日本は、老人をさらに増長させる流れの上にはあると思う。社会保障一つとってもそうだけど、日本人全体の貯金額の大半は、60歳以上が保有しているという統計もあるし。」

鼎「麻生さんも、度々口にしている問題だよね。高齢者層がたくさんお金を貯め込んで使わないから、経済がいつまでも活性化しないみたいな。」

逆沢「まー、でも貯め込むのが悪いとも言えないけどね。日本はヨーロッパの福祉国家と違って、セーフティーネットがしっかりしてるわけじゃないから。共済年金もらってる人とかなら老後は安泰だろうけど、国民年金オンリーの人とかは必ずしも安泰とはいえないし、ましてこれからの世代は、ますます厳しくなるだろうし。」

鼎「どっちにしろ、それらを解決する鍵は見えてきた気がするよ。若い人が子供を作らないのも、お年寄りの人がお金を使わないのも、その理由は、どちらも金銭面での将来の不安なわけだから、セーフティーネットを整備とか、養育環境支援など、サービス面での福祉を重視すれば、かなり状況は変わる気がするし。」

愛原「だよなぁ。それらの主張は決して夢物語でも皮算用でもなく、既にいくつもの先進国で実現してきている事柄でもあるしな。」

逆沢「ただその覚悟があるかどうか? 同じヨーロッパでも、スウェーデンや英仏のように上手く少子化を克服した国もあれば、ギリシャなどのように財政危機まで転落して、ついに身動き取れなくなった国もあるようだし。」

愛原「日本の年金制度は、貧しい人だけでなく、当面の生活に困らないような、それこそ何千万円もの預貯金を持っている人までがもらえる制度になっている為、福祉予算面でも無駄が多すぎるんだよな。言ってみれば、子供のいない世帯にまで、子ども手当を配ってるようなもので。」

逆沢「いずれにしろそうすると、全ての根源は、政治家や官僚になりそうではあるわね。とすると少子化問題が深刻化した場合、真の悪玉は老人ではなくて、そういう世の中にした政治家と官僚という事になりそうか?」

愛原「但し、消えた年金に深く関わった世代の多くが既に世を去っているように、少子化問題を悪化させた時代の政治家や官僚は、既にその頃、世を去っている可能性は否定できないけどな。」

逆沢「損害賠償は相続放棄しない限りは相続対象になるし、当時の政治家や官僚が死んでた場合は、その子孫に責任取らせるわ♪」

鼎「事は社会制度の問題だし、ちゃんと問題解決に取り組んでいる国もある訳だから、日本の政治家さんも、手遅れになるまでにすぐにでも制度の見直しに取りかかって欲しいよね。」

愛原「ちょっと前に騒がれた保育所問題なんて、少子化問題全体からすれば些末な一部分でしかないのだが、その些末な部分ですら、匿名のブログがどうこういって、真面目に対策に動こうとしなかったのが今の与党だからな。日本がギリシャ路線に向かわないように、政権は【この道しかない】なんて事を言って問題を先送りにする事も無く、しっかりと現状を反省してあやまちを見直して、断固たる方針転換に取り組んで欲しいと思う。少子化問題は、悪玉を倒せばそれで良くなる質のものではなく、改善されるまで最低でも15年はかかる国家長久の計だからな。」

鼎「解決まで最低15年もかかるような問題だから、少子化ワールドがはやらないと思ったかも。」

逆沢「あと、老人だらけの世の中なんて、絵にならないだろってのもあるかもね。大半の漫画やアニメは、やはり若者がたくさん登場して、彼らが中心になって暴れ回るからこそ絵になるわけだから。」

愛原「若者がどれだけ活躍できるかが、社会の活力を示すバロメーターというのは、やはり否定できないからな。登場人物がやたら一人っ子だらけで、周りの光景は年上や老人ばかりというのは、まー、絵的にもアレなのは分かる気がする。」

逆沢「つーか、そんな世界観の作品。売れる気もしねー。」

愛原「今の日本の政治家が少子化問題に後ろ向きなのも、票にならねー。カネにならねー。と思ってるからかも知れんな。悪玉としては小物過ぎる気もするが、亡国政治家というのは、案外そんなものなのかも知れん。」

鼎「悪玉が小物過ぎるから、少子化問題を作品に投入するのは不向きというのもあるかな?」

愛原「ある意味、最も現実的な最悪の脅威がテーマなのに、解決に時間がかかるから、悪玉が老人や小物だと盛り上がらないから、カネにならないから、絵にならないからと、見て見ぬふりをされるのは悲しいなぁ。」













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