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愛原様のたわごと(16年7月24日)




愛原「今回のテーマは、現実に起きてもおかしくない近未来SF世界設定シリーズ第3弾だ。」

鼎「えーと、前々回が少子化社会という近未来設定。前回が格差拡大による社会的弱者が増加した世界がテーマだったかな?」

逆沢「近未来SFなんてものは、大なり小なり夢と希望があふれた世界であって欲しいのに、あまりにもネガティブな設定ばかり続いてるのは、気のせいか?」

愛原「核戦争で文明が崩壊した世界とか、環境汚染で地球に住めなくなった地球人のお話よりは、よっぽどポジティブだと思うけどな。グフフ。」

逆沢「いや、少子化社会とか格差社会とかは、近い内に起こりえる可能性が高い分、ずっとタチが悪いネタなんだけど。」

愛原「SFというのは、空想世界であっても、現実逃避をやたら推奨すべきものではないと、俺は考えているんだけどな。良きにしろ悪しきにしろ、そう遠くない未来の内に現実に起きてもおかしくないテーマについて、深く掘り下げるのも俺は割とアリだと考えているんだが。」

逆沢「へいへい。そんな設定が世間に受けるとは思えないけど、まぁあんたがどう思おうと、それ自体は自由だから、好きにすればいいわ。」

愛原「では今回も、俺の好きにさせてもらおう。今回のテーマは、【超便利社会(=超疲弊社会)】だ。」

鼎「前々回、前回とネガティブな未来世界ネタが続いたけど、今回は超便利がテーマだから、ちょっとはポジティブな未来ネタという形になるのかな?」

逆沢「けど、かっこ内の超疲弊社会というのは何なんだ? 私にはポジティブ系に見せかけて、実はネガティブ系というオチしか予想できないんだけど。」

愛原「ポジティブ100%の世界だと、そもそも物語が成立しないだろう。様々な障害や困難を乗り越えてこそドラマが生まれる訳で、当然ながら超便利社会にも、実は大きな落とし穴があったりするぞ。」

鼎「便利な世の中になればなる程、ハッピーになれるような気しかしないけど、どういう落とし穴があるって言いたいのかな?」

愛原「便利な社会を作る際に払うコストについて考えてもらいたい。これは石油や鉄鉱石や石材・木材などといった物質的な資源コストだけでなく、人的コストも多く含む。といっても漠然としていて分かりにくいだろうから、いくつか具体例を出してみよう。たとえば町の至る所にあるコンビニ。たくさんあればある程、近くで買い物が出来て便利ではあるが、ではそんなコンビニの収益及びバイト達の労働環境についてはどうだろうか?」

逆沢「コンピニの本社自体はかなり儲かってるかも知れないけど、一個一個のコンビニ単体で言えば、とても経営が楽とは言いにくそうね。廃業するフランチャイズオーナーも結構いるし、バイトの時給も、労働内容と比較すれば、決して高いとはいえないし。そんな労働環境だから、なかなかバイトが集まらないというか、ブラックバイト化してるような所も中にはあるらしいから。」

愛原「ファストフード店や居酒屋チェーンやスーパー等に関しても、同様の事が言えるわな。」

鼎「全てのお店がそうとはいえないけど、ブラックバイトとして割と名前が出やすい業界ってイメージくらいはあるかも。」

愛原「介護業界や託児所業界や運送業界などにしても、仕事の大変さの割に給料がイマイチという印象はないか?」

逆沢「仕事の大変さと報酬がまるで釣り合ってないから、常に人手不足な所も多いらしいわね。保育所や介護業界に関しては、国会でも何度か問題視されてたみたいだけど。」

鼎「けど、これってよく考えたら、経済学で言うところの需要と供給のバランスが崩壊しているよね。たとえば保育士不足とか、よく言われているけど、保育士の数が足りないなら、需要に対して供給不足の状態な訳だから、もっと保育士さんの給料が跳ね上がってもいいと思うけど、なぜかそうなっていないみたいだし。」

逆沢「介護士にしろ、大型トラックや大型バスの運転士にしろ、社会全体として慢性的に労働力不足であるにも関わらず、なぜか給料が上がらないままだから、労働者需要の不足に対して供給がまるで追いついてないいびつな状態が続いているともいえそうね。」

愛原「そして最初の例として触れた、小売業界や飲食業界でも、慢性的な労働力不足状態にあるにも関わらず、バイトに対する給料もさして上がらないままなので、一向に労働力不足が解消されない状態が続いている。そこで問おう。介護業界、保育業界、運送業界、小売業界、飲食業界・・・、なぜ労働力不足なのに、社員やバイトに対する給料を上げようとしないのだろう?」

逆沢「そりゃ、単純に儲けが出てないからだろ? 収益が出ないのに、人件費を上げられる訳がないし。」

愛原「需要があるなら、単価をつり上げたら、いくらでも儲けを伸ばすことは可能じゃないのか? たとえば保育所が足りないと騒いでいる人が多いなら、保育所の利用料金を値上げして、それを労働者の賃金に還元するとか。」

逆沢「甘い甘い。運送業界の人手不足をあざ笑うかのように、アマゾンが配送料無料(条件あり)やってるくらいだし。小売業界や飲食業界は、ライバル店との競合があるから、自分のお店だけ単価をつり上げる事なんて出来ないし。介護業界や保育業界にしてみても、国が決めた枠組みとかあるし。需要があっても、単価を上げられない大人の事情ってのは、色々あるわけよ。」

愛原「やっぱりそうか。つまり我々は客の立場でみる限りは、近くにどんどんお店が建つ事でより便利になり、アマゾンを始めとする通販業界がシェアを広げる事でより便利になり、子供を預けられる施設や、介護の手伝いをしてくれる施設が増える事でさらに便利にはなっているが、その便利になった分だけ、別の誰かがコストを払っているという形になる訳だな。」

鼎「私達は客であると同時に労働者でもある訳だから、つまり便利になった分だけ、実は別の所でコストも払っているという形になるのかな?」

愛原「そういう事だろう。たとえば最近、国会でも話題に上り始めた保育所不足問題だが、よくよく考えると、今は超少子化社会な訳だから、本来、保育所は閑古鳥が鳴いてないとおかしいわけだ。子供の数は減っているのに、保育所の数は足りないとか言い出す矛盾。この矛盾はどうして起こるのか?」

鼎「安倍首相が、一億総活躍とか、女性も社会で活躍の場をみたいな事を言ってるけど、要するに政府の政策などの要因もあって、減った子供の数以上に、自分の子供の面倒もみれない程に多忙な共働き家庭が増えすぎたという事かなぁ?」

愛原「ではなぜ多忙な共働き家庭が増えたのか?」

逆沢「そりゃ旦那の稼ぎだけで家庭を維持できないレベルまで、労働単価が減ったという事じゃないの? あるいは生活コストが増えたか? まぁ今の日本は慢性的な労働力不足状態だし、安倍も一億総活躍とか言ってる有様だから、共働きしろっていう、ある種の圧力もあるのかもしれないけど。」

鼎「よくよく考えたら、これって負の連鎖だよね。昔なら一人でできていた事も一人で出来なくなった結果、他人に仕事を任せざるを得なくて、その結果、互いに他人に仕事を押しつけあうようになって、その仕事を押しつけられた人はますます忙しくなって、さらに他人にもっと仕事を押しつけざるを得なくなるみたいな。」

逆沢「仕事が忙しくなって、自炊ができなくなると、その分だけ弁当屋さんや惣菜屋が忙しくなる。子供の世話ができなくなると、その分だけ保育所や塾が忙しくなる。移動時間も惜しくなると、交通機関の需要もさらに高まる。そういう風に回り回って、気がついたらみんなが、昔よりより忙しくなっちゃってる気がしなくもないわね。」

愛原「昔は、24時間営業なんて店はほぼ無かった。公共交通機関の操業時間帯などももっと短かった。だが今は違う。俺が知ってる某公営駐輪場にしたって、昔はもっと営業時間が短かったんだが、少しずつ営業時間が延びて、気がついたらほぼ24時間営業になってるし、これを【便利になった】と喜ぶのはたやすいが、実際はその分、誰かがより忙しくなったり、人的コスト、経済コスト、資源コストなどを余分に払っている。回り回って、気がついたら自分自身もコストを負担させられている事もあるだろう。」

逆沢「まぁ携帯電話が普及して便利になった反面、その携帯電話のせいで、仕事をさぼりにくくなった営業マンとかも案外いそうではあるわね♪ あと24時間営業のお店が近くにできたおかげで、徹夜仕事を強制されやすくなったりとか♪」

鼎「ちょっと気になったんだけど、昔の人は、今と比べるとやっぱり暇というか、そんなには忙しくなかったのかな?」

愛原「まぁ昔から、人民に無理強いするような暴君みたいなのはいたが、そういうケースを除けば、今ほど、仕事に追われてなかったのは間違いないぞ。たとえば夜になったら、単純に暗くなるというか、明かりを長く灯すのももったいないから、みんな寝る以外の事をする選択肢は無くなるしな。」

逆沢「今は、明かりを灯すのに必要なコストが極端に安いから、いわゆる夜型人間とかも割といるけど、江戸時代の人とかだったら、まず考えられなかっただろうしね。」

愛原「中世以前を例に取れば、農耕民族といえど、一年中田畑を耕しているのはまれで、たとえば冬などはほとんどお休みになるケースも多い。狩猟民族であれば、自分達が食べる分と商売用の分さえ調達できれば十分なので、ノルマさえ果たせたら当分、狩りは中止。余分に狩っても、どうせ肉を腐らせるだけだし、狩りすぎると後で獲物がいなくなって自分が後で困るだけだしな。」

鼎「そういえば21世紀に入った今でも、アフリカなどではお金が無くなったらその時だけ働くみたいな人が、割と多いらしいよね。いわゆる定職というか、毎日通勤しなければならない状態などではなくて、お金が足りなくなったら出稼ぎ。ある程度お金が貯まったら家に帰って、またしばらくは自由に暮らすみたいな。」

愛原「日本でも、昭和の頃は、まだ生活にゆとりがあった。学校が終わった後で家に帰っても誰も居ない家庭の子供は【鍵っ子】などと呼ばれてた程だしな。家庭で自炊は当然として、ミシンや裁縫による自家製のぞうきん作りなども普通に家庭で行われていて、故に新学期が始まると、各家庭から学校に各生徒がぞうきんを持っていくみたいな事も普通に行われていたりもした。」

逆沢「今、平成以降に誕生した家庭でミシンが家に置いてあるところって、何%くらいなのか興味あるわ♪」

愛原「今は親の介護とごろか、自分の子供の面倒まで、社会任せだからな。特に0歳児保育とか、昭和の頃なら、まず考えられなかったというか、極めてまれな概念だったと思われる。」

鼎「子供が小さな時くらいは、母親にしろ祖父母にしろ、誰かは常に家にいるような状態だったって事かな?」

愛原「今と違って個人商店や町工場の比率も高かったし、赤ん坊背負った店員さんや職人さんみたいなのもいたような気もする。まぁ今と違って、同じ仕事するにしても、割とおおらかだったかもな。」

鼎「昭和の時代は、今よりも専業主婦とかも多かったのかな?」

逆沢「有閑マダムって言葉があったくらいだから、今よりは多かったんじゃないの?」

愛原「実際は、個人商店や町工場などを夫婦一体で経営していたり、パートに出てる主婦も多くいたようだから、純粋な専業主婦の割合は必ずしも高くなかったようにも思うけどな。ただ今時のブラックバイトみたいに、正社員並の労働時間を強制したりする事はほぼなく、むしろ年末調整の名の元に、パート自身が自主的に労働時間などを自己管理して一方的に決めるような例の方が一般的だった。」

逆沢「うーん。今時の労働環境がいかにおかしいか、考えさせられる思いだわ。」

愛原「ちなみに昭和の頃の土方や大型トラック運転手などは、割と高給取りでもあったぞ。」

逆沢「それも分かる。昔は、最も簡単なカネ稼ぎの方法として、男は土方、女は風俗なんて言われてたくらいには高給が期待できたみたいだし、大型トラックの運転手達にしても、デコトラというのかな? 今時の痛車なんか比にならないレベルの魔改造を施した大型トラックを競い合うように走らせては配送先の飲み屋などで豪遊してたくらいには、お金に余裕があったみたいだから。」

鼎「トラック野郎シリーズの頃は、花形職業だったみたいだよね。それなりに忙しくて、高度の運転技術や荷造り技術や腕力なども要求されるけど、その分だけ見返りも大きかったみたいな。」

愛原「特別なスキルを要求される職人や、大変な仕事の従事者には、それなりの報酬が当然のように用意されていた。故に低学歴でもそれなりの仕事に就けば、人並み以上の生活もできた。今は大学進学率が増えすぎたせいもあって、少数派においやられた低学歴層向きの仕事扱いで高給が得られるものは、かなり少なくなった印象だが。」

逆沢「あー、昔は学歴に関係なく仕事の大変さに応じて報酬が決まりやすかったのに対し、今は学歴を問わない仕事は、たとえ仕事が大変でも報酬が低く抑え込まれがちみたいな傾向に変わっちゃってるのかねー?」

鼎「低学歴でも雇ってやってるだけでも感謝しろ、的な感覚に変わっちゃってるのかな?」

愛原「学歴差別がいかに不毛か、分かる思いだな。今、同一労働同一賃金というキーワードがささやかれているが、正社員試験に受かった正社員と、派遣労働者や契約社員とは、労働内容が全く同じでも、給料や待遇に大きな差があるケースが増えているらしい。」

逆沢「労働内容や労働の成果によって賃金が決まるのではなく、あらかじめ会社が決めた階級によって賃金が決められるってか。」

愛原「会社というか、民間企業だけでなく、公的組織でもやってるところがあるらしいからな。一般に好待遇の代表格とされがちな公務員だが、実際には同じ役場で同様に働いていても、いわゆる終身雇用を前提にした従来の公務員試験を通過した層と、派遣や契約待遇の職員とでは、実際にもらう額が大きく異なるというか、後者はかなり悲惨らしい。公営から民営に変わった郵便局なんかはより待遇格差が露骨とか。」

逆沢「首相自身が(口先だけだけど)同一労働同一賃金に向けて呼びかけている状態なのに、役場がそんな差別的待遇したら駄目だろ。」

鼎「役所も、以前よりは財政条件は厳しいし、正規の公務員に対する貴族的待遇を維持しようとすれば、それに属さない労働者に対する待遇をギリギリまで切り詰めないと歳出が抑えられないという事なのかも。」

逆沢「いや、一部というか、大半かも知れないけど、ともかく貴族層に対する待遇を少し下げれば、もう一方の層がその分だけ救われるから。」

愛原「プロ野球でいえば、いわゆる助っ人外国人は、いつ契約を切られてもおかしくないハンデを背負っている代わりに、総じて年俸が高めに設定されている。同様に、いつクビが飛ばされてもおかしくない契約社員などの給料こそ、正社員より高めに設定してもいいくらいだと、俺なんかは思うけどな。もちろん正社員にだけ転勤の可能性があるとか、正社員と契約社員としでは仕事の内容や習熟度自体が違うとかだったら、正社員の方が好待遇であっても当然だけど。」

逆沢「でもそれだったら、腕のいい労働者ほど、正社員をやめてどんどん契約社員になっていったりしないかな?」

愛原「アメリカ的だが、むしろその方がいいんじゃないのか? プロ野球の世界だけでなく、アナウンサーなどの世界でも、自分の商品価値に自信がある者ほど、どんどんフリーになっていくようなもので(会社にいられなくなって、やむなくフリー化する人もいるけど)。優れた労働者の流動性を高めることは、社会全体の発展にも大きく寄与すると俺なんかは思うぞ。」

鼎「そう考えると、今の日本の労働市場のゆがみは、相当ひどくなってる気もするよね。派遣労働者制度も、本来は優秀な労働者の流動性を高める名目で推進されたはずなのに、気がついたら国民の階級差別化に使われている気すらするし。正社員と契約社員や派遣社員の差が、士官と下士官、あるいはキャリア官僚とノンキャリアとの間にある埋めがたい階級差別の象徴みたいになっていて、後者はどれだけ前者より優れた働きをみせても、決して容易には前者の地位を上回れないみたいな。」

逆沢「そう考えると、トラックの運転手とか介護士とか保育士とかコンビニやファストフードや居酒屋のバイトさん達の給料が低めなのは、労働内容の大変さではなく、社会全体が勝手に決めた階層格差というか、職業差別のせいともいえそうね。学歴が重要視されない職場という理由だけで、本人の能力や貢献度と関係なく、低待遇のまま固定されてしまってるとしたら。」

愛原「そうかも知れん。だが仮にこの階層格差を放置しづけた場合、日本経済はこれからますます悲惨な事になるぞ。なぜなら誰だって低階層の住人にはなりたくないから、低階層扱いされる職業には誰も就きたがらなくなって、ますます労働者不足が加速するからだ。」

鼎「今、問題になっている少子化問題も、この学歴差別や職業差別が効いてるかも知れないね。子供に十分な教育費を投入できずに低学歴になってしまった場合、子供がどうやっても報われがたい低階層になる可能性が出てくる。だったらたくさんの子供を作ってたくさんの子供を低階層にするくらいなら、一人の子供にできる限りの教育費をつぎ込んでその一人を高階層の地位につけたいと考えてもおかしくないだろうから。」

逆沢「日本よりもさらに少子化がむごい韓国では、学歴による格差もやはり日本よりさらにひどい有様らしいわね。学歴で人生が決まるから、たくさんの子供を作って一人あたりの教育費を抑えるなんて事はとてもできず、どうしても一人の子供に全力投球みたいになっちゃうというか。」

鼎「でも高偏差値の高校や大学に合格できる割合は決まってるから、仮に全家庭の全ての子供が必死に勉強しても、決まった割合の子供は低学歴に甘んじざるを得ないし。そういう現実と親の期待というプレッシャーに挟まれて、心を病む人達も増え続ける子供達もやはり後を絶たないみたいだよね。」

逆沢「あと、子供を塾や私立にやれないなど、十分な教育費がない貧しい家庭の子供は、事実上、戦う前から不戦敗状態で、生まれた時点で将来の格差まで運命づけられているとかね。まぁこれは、奨学金問題が年々大きくなっている日本でも他人事じゃないんだけど。」

愛原「もっとも学歴差別などに端を発する職業差別っぽい考え方自体は、昭和の頃でもあったけどな。特に高度成長期が終わった以降になると、いわゆるホワイトカラー上位の流れが出てきて、工場労働者を始めとするブルーカラーを忌避する流れが目立つように変わってきた。その結果、戦後日本経済を大きく躍進させた第二次産業の劣化を招いたともいわれているし。あと、建設業界のパワーダウンも著しい。」

逆沢「あー、建設業界の労働者不足も、かなり深刻らしいわねー。東日本大震災のせいで建設関連の相場が跳ね上がり、にも関わらず東京オリンピックの開催が決定された事で、さらに建設相場が高騰して、国立競技場を始めとする各費用も跳ね上がり、さらに震災復興が後回しになってるとかなんとか。」

鼎「東京オリンピックを優先したせいで、震災復興ペースが大きく遅れている事を悟られないように、東日本大震災はもちろん、熊本地震についても、ほとんどメディアに触れられなくなったとも聞いた事があるけど・・・。」

逆沢「けどテレビでは報道されなくなっても、東北の地元の人達は、復興に携わっていた人員の多くが東京オリンピックなどの為に引き抜かれてしまった事を肌で実感しているからか、この前の参院選挙でも、青森・岩手・福島全部で与党が負けてる有様だったけどね。普通、地方ほど与党は強いにも関わらず。」

愛原「で、今度はリニア新幹線の建設ペースアップに予算追加とか言われてるが、そんな事をしたら、元々不足している建設作業員の奪い合いがますます加速して、震災復興などがさらに遅れるだけだろと、俺なんかは思ったけどな。そうでなくとも今は労働力不足がたたって、手抜き工事が蔓延して、この前も神戸で新名神高速道路の橋桁落としたり、その翌月にも今度は大阪の箕面でやっぱり新名神の橋桁の借受け台落としたり、色々劣化がむごい有様なのに。」

鼎「大型バスの運転手とかでも過労で事故を起こす例は珍しくないし、他の業界でも労働力不足が深刻な職場ほど過労死などが起きやすいし、労働力不足を放置してるとロクな事にならないよね。」

逆沢「リニアを作ったり、高速道路を作る事で、人々の生活はますます便利になるかも知れないけど、それで快適になるかというとそうではなくて、むしろその分だけ、人々はますます忙しくなって、追い詰められるともいえそうね。」

愛原「高速道路を一本余分に作れば、その維持や改修にも、多くの人員がさらに必要になる。【人口が減っていくのに、さらに新しい道路の維持の為に労働者を多くつぎこむ人的余裕があるのか?】と、問いただしたい気分でもある。」

鼎「あ、そうか。コンビニが一つ余分にできれば、その分だけ新たに労働力が必要になるようなものだよね。」

愛原「欧米などでは移民政策を導入する事で、なんとか労働者不足を補っているが、日本はそうはいかない。限られた労働力をできるだけ効率的に回さなければならない。といっても、老人も女性もみんなつぎこんで一億総活躍政策をやれといってんじゃないぞ。そんな事をしたら、保育所だけでなく、あらゆる分野でますます需要が増加し、逆に労働者不足が加速する。」

鼎「限られた労働力の効率的な運用というと、具体的にはどういう事をすればいいのかな?」

愛原「需要の高い仕事や、大変な仕事には高報酬を出してでも、そちらに労働者が多く流れるようにする。今の日本は、大変な仕事は低学歴や落ちこぼれに押しつけろ的な発想故に、逆にそういった仕事から労働者がどんどん逃げ続ける状態になっており、大変良くない。」

逆沢「今は、優秀な人材ほど、楽な仕事に逃げたがるような気もするし、すごくもったいないとも思うわ。」

愛原「同感だな。仮に勉強もできて大型トラックも華麗に運転できて保育士や介護士の資格も持っててみたいな優秀な人材がいたとしても、そんな人間に限って、大型トラックの運転手になる事もなく、介護士や保育士になる事も無く、もっと楽で高収入の仕事に就いてしまうからな。」

鼎「一般の事務員さんの代わりはいくらでもいるけど、大型トラックの運転手とか保育士とか介護士とか、人手が足りない仕事はたくさんあるんだから、どちらもこなせる人には、できるだけ人手が足りない仕事に回って欲しいよね。」

逆沢「そうそう。東京電力の事務員とか、市役所の事務員とかは、募集をかければ代わりはいくらでもいるだろうし。限られた優秀な人材が、人手が余ってる仕事に回っちゃうのは社会にとって大きな損失だと思うわ。」

鼎「といっても、東京電力の事務員にも採用される力があって、東京電力の方が待遇もいいなら、その人が保育士や介護士として優れた才能があったとしても、東京電力を仕事先として選んじゃう可能性もあるから、そうならないようにする工夫はしたいところだよね。」

愛原「誰だって、より楽して稼げる仕事があれば、そちらを優先してしまいがちだからな。大変だが需要の高い仕事をやってもらうには、それに負けないだけの報酬は当然必要になると思われる。逆を言えば、募集をかければいくらでも人が集まる職場に関しては、もっともっと賃金を減らしても良い。というかそうしないと、労働者が余っている市場から、労働者が足りない市場への、労働力の移転は難しいだろう。」

鼎「カネ余りの民間企業に、賃金を減らせというのは難しくとも、公務員とか、東京電力のような公的支援を受けている企業に対してなら、そういった対応もしやすいと思うよ。人材が余っている分野への人件費を抑え込めば、その分だけでも、安月給で苦しんでいる高需要市場の振興に予算を回せるだろうから。」

愛原「もっとも一番理想なのは、労働力の移転作業だけでなく、そもそも労働力不足が起きにくい環境にもっていく事だろうけどもな。具体的に言えば、不採算事業への投資を極力控えること。」

逆沢「まぁ不採算事業の整理自体は、民間企業でもよくやってる話だけどね。」

愛原「ところが、国はそういうのをやらないんだよな。たとえばリニア新幹線や新東名高速道路を作る事で、東京大阪間の移動人数が2倍になるなど、利用者増が多く見込めるなら、積極的に投資する意味はある。しかし従来からある東海道新幹線や東名高速道路の利用客を奪うだけなら、それは無駄な事業と言わざるを得なくなるわけだ。もちろん老朽化していく東海道新幹線や東名高速道路の補修をせず、機を見て廃止する意向なら、場合によっては意味も出てくるが。」

鼎「従来からある路線の補修費用と、新規建設費用及び廃止後の撤去費用等も、天秤にかけて判断する必要もありそうだよね。共存するにしても、一方を将来廃止するにしても。」

逆沢「従来の新幹線と共存していく予定なら、リニアを京都に止める意味合いはほとんどないけど、将来、新幹線を廃止していく腹づもりなら、京都スルーはちょっと残念かもね。もっとも共存していくなら、利用客を相当増やさないと、共倒れになる危険性もありそうだけど。まぁこの辺は、もう少し政府かJR東海による説明が欲しいところかな?」

愛原「まぁ、コンビニの数を2倍にする事で、利用客も2倍以上に増えるのなら、コンビニ店舗数の増強も意味があるが、それを大幅に割るようなら、店舗維持費が約2倍になるだけで、意味がないようなものだな。利益が2倍にならないのに、経費だけが2倍になったら、その差は、別の所で埋めなくてはならなくなる。労働者の賃金を削るか、そもそも労働者の数自体を減らして、残った労働者に切った労働者の分まで仕事を多くやらせるか?」

逆沢「そんな会社、割と良く聞くわ。今まで2人でやってた仕事を1人でやるようになるみたいな話は。そういう流れで、どんどん会社がブラック企業化していくのよね。」

愛原「高速道路が増えてより便利になる。お店が近くにできてより便利になる。電車の本数が増えてより便利になる。営業時間が延びてより便利になる。しかしその便利さに見合うだけの採算が取れるのか? それが問題なのだ。採算が取れないのに便利さだけを追求すれば、そのしわ寄せはまず現場の労働者に。そして回り回って社会全体にも波及する。」

逆沢「世の中が便利になる事で国民の負担が軽減するかと思ったら、実は便利な世の中を維持する為に働く時間の方がもっと増えて、むしろ国民の負担が増加する一方というケースも考慮する必要があるって事ね。」

鼎「0歳児とか、小さな子供まで外に預けなければならないほど、国民の負担が増加してるのに、それを埋め合わせる為にさらに保育士に負担を押しつけてみたいに、今の世の中は、互いに負担を押しつけあって、悪循環になってる気がしなくもないよ。」

逆沢「しかも一億総活躍とか、馬鹿なこといって、安倍総理自身が、その悪循環を加速させているからねー。労働力不足の建設現場に対して、さらに東京オリンピックだの、リニアの前倒しだの、傷口に塩を塗りまくるような真似も平気でやるし。」

愛原「ロクに利用者もいないのに、24時間営業にしたところで、電気代だの人件費だの、色んなものを無駄に浪費するだけに過ぎない。そのような採算性の悪い便利さの助長は、むしろ社会全体に深刻な悪影響をもたらす。また便利になったら自由時間が増えるかといったらむしろ逆で、移動時間が短くなったらなった分だけ、さらに余分に働く羽目になったり、携帯電話が普及して連絡が密になったらなった分だけ、やはり余分に働かされるようになったりという事もある。」

逆沢「そしてその繰り返しで、人はどんどん疲れていくのよね。」

愛原「そうでなくとも、今は結婚や子育てにすら後ろ向きにならざるを得ない程、労働者は時間に追いまくられているからな。便利な世の中になる程、実際には人々は社会に拘束され、疲弊していくとは皮肉なものである。」

鼎「便利と言っても、その便利さを享受していくにもコストがかかるから、それがさらに生活を厳しくしたり、格差を助長している側面もありそうだよね。」

逆沢「分かる分かる。たとえば携帯電話一つとっても、これを維持するには安くない電話代が毎月かかるし。とかいって今は、携帯電話がないと大学生の就職活動もままならない有様だしね。」

鼎「塾が増えて便利になったとか、保育所が増えて便利になったとかいっても、実際にそれらを利用しようと思えば安くない利用料金がかかるし、それでも利用しないと色んな面で不利になるという思いがある人も多いだろうし。」

愛原「便利なものが普及すればするほど、その便利なものを利用するのが普通になって、それを利用できない者が相対的に不利になっていく。しかし便利なものを利用するにも実際にはお金がかかるし、特に携帯電話代だの学費だのといったそれらが固定費として上乗せられていくと、ますます生活は苦しくなる。便利なものが必須なものに変わっていく事で、その必須なものを利用できない貧しい者は下の階層に落とされ、利用できる者もその大半は苦しい状況に追い込まれるのだ。」

逆沢「なんかそこまでして便利な世の中を追い求めていく価値があるのか?って疑問すらわいてきたわ。」

愛原「便利さの追求自体は、人間が持つ欲求の方向として正しいと思うが、今のやり方は代償が大きすぎるわな。今の日本や韓国のやり方は、ある意味、国民を火室にぶち込むことで機関車を無理矢理加速させているような危険な状態だ。無論、アメリカやヨーロッパのように移民を大量に連れて来て、労働者不足を補う方法が正しいとも思えないが。」

鼎「人々が便利さを追求するのは、早い話、もっと楽をしたいからとか、もっと余暇を満喫したいからだから、その原点を忘れずにいたいよね。便利さを追求した結果、もっと余暇が減ったり、もっと貧しくなったりするのは、本末転倒だから。」

愛原「つまり採算性の希求。メルケル首相らが言うところの構造改革でもあり、本来の成長戦略であるものだろうが、少なくとも日本政府の場合は、実際にやってる事がムチャクチャだからなぁ。お店の数を2倍にしたからといって、利用客が2倍になる保証もないというか、下手すると客の奪い合いになるだけなのに、労働者を無駄に酷使させようとしているのが実に腹立たしい。派遣法も改悪して、国民の階層格差も拡大させるばかりだし、それが少子化と将来の労働力不足も深刻化させてもいるし、おまけに劣悪な金融政策による悪性インフレによる物価高まで(まず富裕層を豊かにするトリクルダウン政策により、富裕層だけはインフレに見合う収入増の恩恵を受けられたが、下々にはほとんど浸透せず、むしろ格差拡大と物価高による被害だけが深刻化した)。」

鼎「見た目は便利さがさらに増しているけど、実はそれによって人々の生活がますます疲弊しているとすれば、それは典型的なディストピアだよね。」

逆沢「ディストピアというのは、SFの舞台としては面白いけど、現実にされたらたまらんわ。」

愛原「この手の文明疲弊型ディストピアの場合、段階を経て徐々に文明が廃墟化していく。たとえば、工事業者や修理業者の数が足りなくなり、インフラの補修や修理が間に合わなくなる。また腕のいい職人が足りなくなったり、予算や工期不足で手抜きなども慢性化していく。その結果、街の至る所で、事故なども相次ぐようになっていく。やがて採算性が悪い施設や老朽化が深刻な施設から徐々に廃止されるものの、その廃止施設の撤去作業等も多くは放置され、やがてスラム化する。」

逆沢「そしてスラム化した施設や地域では、チンピラ達がテリトリーを形成するようになって、治安を悪化させたりする訳ね。」

鼎「町の人々の表情もさえなくなって、どこか重苦しい雰囲気を漂わせてたりするのかな? 通勤時間の電車の乗ってるサラリーマンの表情にも、常に慢性的な疲労感が漂っていたり。」

逆沢「今でも、ブラック企業の従業員の顔とか見てると、死んだ魚の目みたいなのがいるけど、あんなのばかりになるんじゃね?」

愛原「今の日本は、過度な戦線拡大を無謀に推進している点において、戦中末期の日本に似ている。しっかりと地に足を付けて着実に戦線を拡大していくのではなく、無駄に兵員ならぬ人民を疲弊・消費しながら、無意味に戦線だけを広げようとしている危険な状態だ。オリンピックやリニアが悪いとまでいうつもりはないが、国力の増加ペースをはるかに超過するペースで、事業の幅ばかり広げるから、国民の負担がその分だけでも大きくなってしまっている。」

逆沢「八ッ場ダムをはじめとして全国の公共工事の多くが、中途半端に手がけた状態で虫食いになってる現状をみる限り、過剰な戦線拡大状態になってるのは、もう20年以上前からの気がしなくもないけどね。ただ最近までは、人口減の流れまではなってなかったから、それほど目に見えて悪影響を感じられなかっただけで。」

鼎「けど安倍さんは、今までのアベノミクスの失敗を取り戻すべく、さらに20兆円規模の追加事業をしようとしているらしいし、これ以上、戦線拡大を加速されたらと思うと恐ろしいよ。」

愛原「思えば戦時中も、岸信介が東条英機を首相の座から追い落として傀儡政権を操り出してから、カミカゼ特攻だのインパール作戦だの大和特攻だの嘘っぱちの大本営発表ラッシュだの、日本はムチャクチャな方向に向かっていった。あれと同じ事を、日本を操る黒幕だった岸信介を尊敬する安倍総理もやろうとしているのかもしれない。尊敬する岸信介の歩んだ道と同じ拡大路線を。」

逆沢「やめろ〜っ。岸信介を尊敬するのも、岸信介と同じ路線を歩むのも!!」

鼎「思えば戦前も、変な夢を国民に見せることで、国民を戦争にかり出させるべく煽ったんだよね。今ではオリンピックやリニアが国民をあおる夢状態になってて、それを成功に導くべく、国民が一億総活躍ならぬ一億総動員されつつあるけど。」

愛原「個人的には当初の計画が既に破綻している東京オリンピックもやめてもらいたいんだけどな。このまま突っ込んでも、アテネオリンピックをやった後のギリシャやリオオリンピックをやろうとしている今のブラジル状態になりそうだ。今なら安倍が【全ての責任は私にある】とかいって首を差し出せば、まだ間に合うだろう。安倍が首を差し出すということは、危険なバラマキ路線も拡大経済路線も中止に追い込める名目が立つという事だから、その意味でも都合が良い。」

逆沢「けど安倍総理は、アメリカのスパイになる条件でA級戦犯状態から解放された祖父の岸信介もそうだったけど、自分の体調がまずいと思ったらいきなり政権を投げ出すなど、祖父同様、自分の身が一番可愛いって点では徹底してるからねー。国民を火だるまにする事で自らの安泰を確保するのと、自らが火だるまになる事で国民を救うのとだったら、間違いなく前者を選ぶ気がしてならないんだけど。」

鼎「そもそも安倍総理に責任感があるなら、最初の2年か、悪くても3年でアベノミクスを成功させられなかった時点で既に潔く辞任してたと思うよ。それが最初の約束だったんだがら。」

逆沢「それどころか、内閣改造まで企んでいるという噂もあるし。内閣改造をするということは、まだしばらくは居座る腹づもりという事だろ?」

愛原「困るなぁ。俺が思うに、国を滅ぼすのは、外敵である前に、自ら自身による自滅の方が多いような気がするし。今回も日本政府が日本政府の意思で、国を無駄に疲弊させているようにしか感じない。かつてネットで、新国立競技場の事を森喜朗古墳とか揶揄されているのをみた事があるが、本当に東京オリンピック自体が、安倍政権の栄光を誇示するモニュメントみたいになりそうだ。実際には、中国の歴代王朝や世界の独裁者達にしてもそうだが、自らの権勢を誇るために豪華な宮殿や巨大な彫像を作らせて、国民を酷使した政権は、大抵その後、衰退に向かうんだけど。」

鼎「つまり安倍総理は、ピラミッドを作った王家みたいに、自分の権勢を示すレガシーさえ遺せれば、その後、国民が疲弊して、国が倒れても構わないと思っているということかな?」

逆沢「つまり俺が誘致して俺が成功させたオリンピックという業績さえ遺せれば、その無理がたたって、その後の日本がどうなろうと知ったこっちゃないと考えているという事か? 逆を言えばオリンピック成功という功績を遺すためには、今後もいかに震災復興が後回しになろうが、貴重な労働力が消耗しようが、さらに必要な予算がどれだけふくれあがろうが、臆することなく邁進するだろうと。」

愛原「多くの人民を酷使する事で豪華な宮殿を建築した結果、当時の臣民や近隣国家は、おそらくその国の発展と威勢を感じ取った事だろう。同様に、便利な国を作る事で、見た目的には進んだ恵まれた国という印象を与えられる事は容易に想像できる。しかし実際には、人民を酷使して無理矢理見た目を飾っただけでしかないので、国民に無茶を要求した分のツケは後で必ず払わされることになる。今の日本でも、相次ぐ事故や不祥事、あるいは少子化現象、あるいは財政難、あるいは全国で放置されている虫食いの事業から増え続ける空き家から限界集落まで、様々な形で無理を続けてきた反動が顕在化しつつある。」

逆沢「超便利社会の危険性かくもありって感じね。」

愛原「地に足を付けて無理なく発展していった結果の便利社会なら素晴らしいが、超がついてる時点で既に身の程を超えてしまってる状態ともいえるからな。年収200万円の人間が年収1000万円の暮らしを続けたらいずれ破綻するように、身の程を超えた便利さの追求は、いずれ自らの首を絞める。言われてみれば、ごく当たり前の事を、俺は言ってるだけに過ぎん。」

鼎「つまり便利さとかカッコよさとか甘い目算とか、そういうのに惑わされて甘い言葉に惑わされたら駄目って事だよね。」

愛原「SF世界では、落ちぶれていったかつての文明国みたいなものもよく登場するが、なぜその優れていたはずの文明が落ちぶれていったのか? そういう視点があっても面白い。現実世界でもSF世界でも、優れた文明を持っていたはずなのに落ちぶれた文明には、何かしらの特徴があるはずだ。環境を汚染したのか、資源を食いつぶしたか、あるいは労働力をすりつぶしたか、あるいはただの慢心か。」

逆沢「大日本帝国の場合は、どうみても国が持つ労働力を上回るほどの戦線拡大が原因ね。戦線が拡大し続けて、防衛も行き届かず、食糧や武器の生産や輸送も追いつかず、さらに特攻隊とか、国民の無駄遣いとしか思えない事ばかりやってたようだし。」

鼎「日米開戦当初は、日本の空軍の方がアメリカの空軍よりも強かったらしいけど、撃墜されたら死亡確実な日本のゼロ戦に対して、アメリカ軍は可能な限りパイロットを生還させる設備を整えてたから、撃墜される度に有能なパイロットが減っていく日本軍に対し、何度撃墜されても復活するアメリカ軍が、いつの間にか優勢になってやがて立場が逆転したという話も聞いた事もあるよ。確か湾岸戦争を引き起こしたブッシュ大統領(父の方)も、かつて太平洋戦争でパイロットをやってて2回も撃墜されたそうだけど、それでも生き残ったからこそ、やがて大統領になれたわけだし。」

逆沢「国力の差うんぬん以上に、人を無駄にすりつぶした国と、そうではなかった国との差が現れたともいえそうね。大和特攻とかインパール作戦とか、当時のアメリカなら、まずやりそうにないし。」

愛原「紀元前の頃より、文明は常に発展の方向で進んだ来た。無理さえしなければ、人々の生活は自然と良い方向に向かっていく。だが不幸にも暴君などが現れて人々に無理を要求しだしたり、今さえ良ければそれでいいとばかりに大衆が度を超えた快楽や便利さをを追及しだしたときのみ、文明は逆流して衰退に向かう(大抵は暴君が退場したり、財政が破綻する事で逆流状態は解消されるが)。物語の中では、いわゆる悪い見本としてこのようなディストピアを登場させるのも悪くないが、現実でその当事者になりたくはないものだな。」

鼎「若い人達が家庭を持つのもためらわれるほどに余裕の無い世の中は、長い日本の歴史でも今くらいだと思うし、そんな世の中は絶対どこか間違ってるよね。」




















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