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愛原様のたわごと(15年8月30日)






愛原「前回、盗作とゴーストの話をしたが、今回はその続き。カイゼンの話をしてみたいと思う。」

鼎「カタカナでカイゼンという事は、トヨタ自動車が世界に広めた【改善】の事かな?」

逆沢「だったら、わざわざカタカナ使わなくとも、普通に改善でいいだろ? 意味も同じなんだから。」

愛原「そう。意味はほとんど同じ。誤りを正したり、品質や効率性を向上させる為に行う改変を改善という。」

鼎「けどその日本式改善の考え方が世界に広まる過程で、カイゼンという単語自体がそのままアメリカなどでも使われるようになったらしいよ。」

逆沢「シンカンセンとか、オタクとか、そういう単語が、日本語読みそのままに世界に広まったようなものか?」

愛原「まぁ、そんな感じ。シンカンセンやオタクと同様、カイゼンという単語も、そのまま世界で通用する事もあるんだそうだ。」

逆沢「ま、日本人は、割とそういうのは得意な印象はあるけどね。画期的な発明とか、無から有を生み出すような発想とかは、そんなに得意とまでは言えないかも知れないけど、既にあるものに手を加えて品質を改善していく方が、何となく向いてそうというか。」

鼎「二次創作なんか、まさにその典型だよね。誰かが生み出した作品に手を加えたり、新たな世界観やストーリーを付加する事で、本来の作品にはなかった新たな商品価値を構築したという意味で。」

逆沢「けど、それ一歩間違えたら、重大な著作権侵害になる危険性をはらんでは、いそうだけどね。」

愛原「だから、余程の事が無い限り、日本ではこの手の権利問題にはおおむね寛大だ。日本人からカイゼンを奪うのは、自らの手足を縛るに等しいともいえるからな。日本は、加工貿易の国だけあって、既に存在する物に何らかの手を加えて商品価値を高める事で、多くの富を生み出してきたし。故に技術大国とも言われ続けてきた。」

鼎「自動車も、テレビを初めとした多くの電化製品も、決して日本初という訳ではないけど、外国の人が発明した新概念に、高い商品価値を付加する事で、日本は戦後経済を急成長させてきたともいえそうだよね。」

愛原「ちゅうか戦後だけで無く、戦前からずっとそうだけどな。明治維新の時には欧米から多くの技術を輸入したし、中世以前では中国・朝鮮から、多くの技術を輸入してきた。我々が普通に使う漢字にしろ、建築技術にしろ、陶磁器や鉄器などの製造技術にしろ。」

逆沢「日本人には自覚はないだろうけど、もしかしたら世界に冠たるパクリ大国だったのか? 日本は。」

愛原「産業スパイに技術を盗ませたとか、そういう事はほとんどないだろうから、誰かにどうこう言われる筋合いまではないと思うが、発祥地の国民からすれば、少しやきもきさせられる事はあるかも知れんな。」

鼎「けど技術を盗むといったら言葉が悪いけど、それを吸収する速度は、昔からすごかったらしいよ。たとえば戦国時代に輸入した鉄砲にしても、外国の人が予想もしない速度で、日本人が鉄砲を大量に自力生産しだしたから、それで植民地支配計画が狂ったというか、東南アジアなどと同じ道を辿らずに済んだという主張もみた事があるし。」

逆沢「中国やインドのような大国ですら植民地化された中で、ある意味中国よりも遅れていた日本が、明治維新以降に急速に力をつけるのに成功したのも、外国の人の予想を超える速度で欧米の先進技術を吸収できたというのはありそうね。」

愛原「戦後の復興にしても同様だな。敗戦当時間もない日本は、ブラジルやアルゼンチンやメキシコと同様、単なる新興国の一つに過ぎないという扱いで、実際にブラジルなどに移住した日本人も多くいたくらいなんだが、その中で急成長を実現したのは日本と韓国くらいのものだからな。」

鼎「激動の昭和を生きてきた職人肌の人の中には、【技術は盗むものだ】と言って憚らない人も多いけど、それくらい貪欲な精神があって初めてそれだけの事が実現できたって事かなぁ?」

愛原「ま、手取り足取り親切に教えてもらおうなんて魂胆では、人並み以上の速度で技術を習得できる事は無いだろうし、さらにカイゼンしてやろうとまではなりにくいかも知れんな。」

鼎「世界に広めたトヨタのカイゼン方式も、上からのマニュアルに応じて改良していく方式では無く、現場の職人さんが独自に知恵を出して積極的に改善していくものだよね。」

愛原「そう。上から言われた事しかやらないマニュアル人間にはできないものだ。より良い方法になりえると思えば、積極的に試し、積極的に方法を改めて改良・改善していく。未知の方策であろうが他人のやり方であろうが、役に立つと思えば積極的に試し、役に立つと思えるようなら取り入れる。そしてその為の手間や努力は決して惜しまない。」

鼎「変なプライドにとらわれず、役に立つと思ったら、ポルトガル人の技術だろうが、イギリス人の流儀だろうが、アメリカ人の文化だろうが、なんでもかんでも試して吸収して自分のものにしてしまい、さらに独自のカイゼンにたどり着くくらいの貪欲さがあったからこそ、日本人の成功があったともいえそうだよね。」

逆沢「その貪欲さの延長が、人様の作品の登場キャラクターを脱がせて銭にする二次創作かと思ったら、ちょっと複雑な気持ちにならなくもないけどねー。」

愛原「ま、良く言えば他者の尊厳や権利を大切にできるアメリカ人的発想とはかけ離れているような気がしなくもないわな。一方の日本人は、人の手法を簡単に盗む。さらに手を加える。そして(特に昔気質の職人さんは)それが常識になっているから、手取り足取り教えてもらって当然とは思わない代わりに、勝手に盗んで勝手に自分のものにして勝手に手を加えても構わないとお互いに考えている。」

鼎「逆に公務員気質の人は、他人の許可も無く勝手に人のものを使用しないとか、人のアイデアを我が物顔で使用するのに抵抗を覚えるとか、そういう傾向はあるかも知れないと感じたかも。」

逆沢「ま、どっちも言い分はあるだろうけどねー。ただ無断で真似されたと感じた側の心理も分からなくもないから、その辺の配慮は私達も考えていかないとダメだと思うわ。私達日本人は、高い性能の自動車や家電製品を他国に売って大きな顔をしてるけど、それを初めて世に出した人達に対するリスペクトも忘れずにいたいというか。二次創作も、本来は一時創作者をリスペクトする前提があって成り立つものでしょ?」

愛原「まぁ【他人の持ち物をカイゼンして、勝手に売ったらどうなるか?】というのは、なかなか興味深い命題ではある。」

逆沢「たとえばウチのゲームの素材グラを、オリジナルの美麗グラに差し替えただけの作品を、誰かが無断で公開したら、アンタはどう思うかって話ね?」

愛原「そんな奇特な奴はまず現れないだろうし、現れても俺としては別に構わないけどな。ただ理想としては、テキストファイルの隅っこにでもいいから、ウチのゲームの二次創作ですくらい書いてもらえると、かなり嬉しくはなりそうだ。」

逆沢「ま、アンタならそう思うかも知れないけど、快く思わないというか、激怒するタイプの作者もいるんじゃないの? たとえば既存の漫画の表紙だけを差し替えて、【オリジナルです】と大きな顔して売り出すようなものだから。」

鼎「でも、カイゼンの精神って、本来はそういうものだよね? ゲームでいえば、バランスブレイカーになっているキャラクターのパラメータをまともなものに改造するとか、明らかに雰囲気に合わないBGMやイラストを差し替えるとか、【俺なら、ここの部分をこう変えて、もっと作品を良くしてみせるのに】という思いが、カイゼンにつながっていく訳だから。」

愛原「その通りだな。というかフリゲの作者には、そういうタイプもかなり多い。既存の作品に何らかの不満があって、【俺なら、こういう作品にしてみせるのに】という動機があって、それで既存の作品に近くもあるけど、その作者なりの味わいや独自性も発揮されてる作品とかも、ちょくちょく見受ける。ちゅうか、何から何まで完全オリジナルみたいな作品を作るのは、正直ちょっと困難だ。」

逆沢「オリンピックのエンブレム問題じゃないけど、世界のどこにも類似品のない完全オリジナル作品を創造するのは、なかなか至難だろうからねー。特にシンプルなデザインになればなるほど。」

鼎「それは、今の地球上で、人類がまだ誰も足を踏み入れたことのない大秘境を探すくらいの難作業のような気がするよ。」

愛原「名前の付けようがないくらい、誰も見た事が無い新メニューを開発するくらい難しいともいえる。人はよりおいしい料理を目指して、一流の料理人達が競い合って、おのおののやり方でカイゼンし続けているであろうが、それらはいずれも何かの料理の改善品であって、完全オリジナルの新メニューとまでは、なかなかいえないだろうからな。」

鼎「オリジナルを創作するのは、本当に難しいよね。」

愛原「故に、自動車であれ、電話であれ、青色ダイオードであれ、ナントカ細胞であれ、新しい新概念を初めて世に出した人は、もっと尊敬されるべきだと、俺は思う。」

鼎「でも、カイゼンする人も、それなりには立派だとは思うよ。オリジナルが世に出た段階では実用性はゼロでも、誰かがカイゼンした結果、実用性が出てくるものもいっぱいあるだろうから。」

愛原「その通りだな。たとえば電気自動車やクロマグロの養殖にしても、現段階ではまだ採算性や実用性で弱い部分もあるが、そう遠くない将来の内に、広く実用化される可能性は十分あるだろう。火力・原子力・太陽光といった発電技術にしてもそうだが、研究者達がカイゼン策を絶えず考え続ける事によって、実用性に乏しかったものが実用的になったり、さらに安全・便利に変わっていく事は十分考えられる。カイゼンする人もまた、立派だという主張はよく分かる。」

逆沢「カイゼンする人達によって技術がどんどん進歩したり、欠陥が補われたりする部分は認めるわ。但し、オリジナルを世に出した人をないがしろにするのは、さすがにまずいと思わなくもないけどね。特にお金や名誉がからんできた場合は。」

鼎「法律がどうこうの問題ではないではなく、人として相手に敬意をもてるかどうかという部分だよね。」

愛原「俺自身。エディタをいじったりするのも好きな側なので、惜しい作品とか、もっと面白くなりそうな作品を見つけたら、色々改造したくなる気持ちはまぁ分かる。カイゼンが大好きな古き日本の職人達も、【俺だったらこうする】と思ったら即座に行動を起こす気質だからこそ、飛躍的な技術革新に貢献できたのだろう。ただ古く劣悪な手法や技術であっても、先人をないがしろにするのは、さすがにまずいというのは同感だ。芸能界の世界でも、弟子や後輩が、師匠や先輩を追い抜く光景は珍しくないが、それでも師匠や先輩をいたずらにないがしろにする話は普通聞かない。彼らは時代遅れの古い人達かも知れないが、彼らがいたからこそそれを学び(盗み)、それを元にして今風の形にカイゼンできたからに過ぎないからな。」

鼎「私達は他人の作品をみて【こうすればもっと面白く出来るのに】とは思えるけど、一から新しいものを作れる人はほとんどいないよね。だから【じゃあお前が、あいつより面白いものを作ってみろ】と言われたら、どうにもならないというか。」

逆沢「【今時のテレビはつまらない】とか【最近の芸人は面白くない】とか、相手を腐すのは簡単だけど、じゃあ自分ならもっと面白くできるかと言われたら、全く別問題だからねー。」

愛原「結局、我々凡人は、【ここをこう変えたら、もっとマシになるのに】みたいな小手先のカイゼンを提案する事はできるけど、一から既存のそれより素晴らしいものを創作する能力なんて無いって事だな。まぁ日本人自体が、独創よりも改善に向いていると言われたら、それまでだが。」

逆沢「ただ、オリジナリティーを主張できるレベルのカイゼンならいいけど、誰がどうみてもパクリにしか見えないような小手先のカイゼンは、困るけどね。その場合は、しっかりとオリジナルの改造品である事を表明して、敬意を表す事くらいはしないと。」

愛原「【俺のアイデアで、この商品(作品)は、こんなに素晴らしいものになった】と誇らしげに言った所で、所詮、他人の商品(作品)の贋物でしかないからな。そういうのは。」

鼎「けど、中には本気で【この作品は、ここをこう変えるだけでもっと人気が出るはずなのにもったいない】と思える事もあるよね。そういう時は、どうすればいいのかな?」

逆沢「一番、無難なのは、作者(権利者)にそれを提案する事なんじゃないの? ゲームのバグを報告するみたいに。」

愛原「作者(権利者)が、カイゼンの意欲に満ちている人なら、ファンの意見をくんで、すぐにでもカイゼンやバージョンアップに取り組んでくれる可能性はあると思う。しかしプライドの高い作者なら、他人の意見には簡単に耳を傾けないだろうし、作者なりにポリシーをもってそういう仕様にしている場合も、提案に応じてもらえない可能性が高い。またシロートが思っている以上に、コストや手間のかかる仕様変更であれば、なお拒絶される可能性も高くなる。」

逆沢「ウチの作者に対して、絵を差し替えろとか、提案するようなものね。」

愛原「作者も作者なりに【ここをこう変えたら、もっとマシになるのに】と最初から分かっていても、技術やコストの問題から、それを断念せざるを得ない事も多いからな。これはメーカーの技術者なら、日常茶飯事に感じられる悩みでもあるだろうけど。」

逆沢「でも、だからってライバルの会社が、自分の会社の商品の弱点を克服した上位互換の模倣品を出してきたら、それはそれで怒り狂うんだろうけどねー。」

愛原「そりゃ、怒るだろ。特に特許権や著作権をあからさまに侵害された場合は。」

鼎「でも、そう考えると、カイゼンの意欲に乏しい個人や組織が、一次創作者であったり、権利者だと、すごく残念な事になるよね。カイゼンによって明らかに飛躍の可能性があっても、それが宝の持ち腐れになる可能性もある訳だから。」

逆沢「力のあるメーカーなら圧倒的な資金力で大量生産と積極宣伝も可能なのに、弱小メーカーが先に特許を取ってしまったおかげで、いい商品になれる素質を持ちながら中途半端な性能と知名度でマイナー扱いの商品とかも、世の中にはあるかもねー。」

愛原「うーん。その場合は、力のあるメーカーが、何らかの協力を申し出てくる可能性もあるだろうけどな。但し、条件次第では、拒否される可能性も十分あるが。ちなみに戦後間もなく、国際的知名度も無いに等しい頃のソニーに対し、アメリカの大手企業が【ソニーはいい商品を扱っているが、会社が無名なのでアメリカでは売れない。だからウチの名前で売らないか?】と申し出て来た事があるらしい。しかしそれを受け容れれば、ソニーはアメリカにおいてその大手企業の下請けとして活動せざるを得なくなる為、きっぱりと断ったそうだ。」

鼎「日本では、無名のメーカーは、生産力を持たないどこかの小売業のプライベートブランド作って、その小売り会社の名前で商品を売るケースも珍しくないけど、ソニーはそれを断ったんだよね?」

愛原「ただソニーの例はあくまで例外で、大抵は無名故の悲哀を味わうハメになるけどな。実際、どこかの有名人のゴーストやってた方が、余程カネになるという作家とかも多い。残念な話だけど。」

鼎「立場が弱小だと、カイゼンの余地が大きい事が分かっていても、資金面などで苦労しやすいし、とかいって安易に大手の傘下に入っても、やりたいような活動を続けさせてもらえるかどうか分からないし、すごく悩みどころだよ。」

逆沢「その話聞いて、桃太郎電鉄シリーズ思い出したわ。確か桃太郎電鉄シリーズは元々ハドソン社が製作してたけど経営難で、結局大手のコナミの傘下に入ったあげく吸収解体されて、桃太郎電鉄の権利もコナミに吸収されてしまったけど。」

鼎「けど現在の権利保有者であるコナミには、どうも次回作製作の意欲がなさげらしくて、それでさくまあきら氏が怒りのツイートして話題になってたよね。」

逆沢「そう。けど、仮にさくまあきら氏にどんな素晴らしい次回作のアイデアがあったとしても、現在権利を保有しているコナミが頭を縦に振らない事には、カイゼンどころか、製作自体も関われないだなとか。弱小の悲哀と、大手の傘下に入る悲哀の両方を感じてしまったわ。」

愛原「会社組織でも、珍しくない光景だな。若手社員がどれだけ素晴らしい改善案を出しても、面倒くさたがりの上司や、無難主義の上司に当たってしまうと、どんな素晴らしい改善案も拒否されてしまうというか。」

鼎「そういう時に、権利者に無断でカイゼンした作品を出したくなる人の気持ちも、少しは分からなくもないよ。」

愛原「ただ、権利者に無断でそういう真似をしてしまうと、権利者と戦争になってしまいかねないからな。特に軍記ものなどでは、そういうシーンはままみられる。」

逆沢「馬鹿な上司を無視して、独断で作戦行動に出たりするシーンは定番ね。で、そのおかげで戦況を有利に運んでも、上司に命令違反をとがめられてしまったり。」

愛原「権利者がカイゼンに前向きであれば、みんなが幸せになれるにも関わらず、権利者が愚鈍であるばかりに、カイゼンが実行されずに終わってしまう例は、世の中には珍しくない。ただそれでも個人的な思いとしては、独創的なクリエイターは、総じてカイゼンには前向きな人の方が多数派だとは思うんだけどな。最近でも聖闘士星矢とかド根性ガエルなどの多くの作品が、一次創作者の手を離れた場所でリメイクされたりしてるけど、ちゃんとカイゼンしてくれる限りなら、他人によって自分の作品がカイゼンされても、それに前向きなクリエイターの方が多数派だと思うんだ。」

逆沢「お前もそうか?」

愛原「まず、そんな事はありえないけど、もちろんそうだぞ。多分、ド根性ガエルや聖闘士星矢の原作者さんとかもそうだと思うが、自分自身にはもう最盛期と同レベルの人気漫画を描き続けるだけの発想力や気力が残ってないようにも思うんだ。でも、いや、だからこそ、もしも自分以外の他人が、自分が生んだ作品を育ててくれるなら、それはすごく渡りに船のような気もする。自分自身に自分の作品をさらに育てられるだけの力が既に無くても、他人がそれをしてくれるなら、こんな有り難い事はないから。」

逆沢「まー、漫画描くのも楽じゃないからねー。他人が代わりに漫画を描いてくれたり、テレビで売り出してくれるなら、こんな楽で有り難い話はないわ。」

鼎「日本で同人文化が発達した理由の一つでもあるよね。原作者の多くが二次創作に寛容なのは、自分が宣伝したりして盛り上げなくても、他人が勝手に名前を広めて盛り上げてくれるからというのは、大きいと思うし。」

愛原「どんな独創的な天才クリエイターでも、一生、気力やアイデアがもつ訳ではない。一発屋のクリエイターも世の中には多い。そんなクリエイターにとって、誰かが自分に変わって自分の作品を引き継いでくれたり、盛り上げてくれる事は、決してマイナスにはならないからな。だからもし、【俺ならこの作品をもっと面白く出来るのに】という思いに加えて、実際にそれを形に出来る企画力と技術力と実行力があるなら、原作者にその話を持ちかけるのは、双方にとってプラスになると思う。原作者に替わって、そいつがどんどん作品をカイゼンしてやればいい。」

逆沢「でも世の中では、残念な事に人のカイゼン案を握りつぶす人も多そうなんだけど、これはなんでかねー?」

愛原「権利者がクリエイターでなく、単なる管理者だと、そうなりやすいわな。先の桃太郎電鉄にしてもそうだが、桃太郎電鉄を元々作っていたのは、ハドソン社とさくまあきら氏らであり、コナミは権利を引き継いだ存在でしかない。つまり現在の桃太郎電鉄は、生み出したクリエイター自身以外の者が権利をもった状態なのだ。彼らにはクリエイターほどには特に作品に愛着を感じてないから、極めてビジネスライクに物事を考える。特に担当者が面倒くさたがりであったり、慎重な性格だと、彼らからゴーサインを引き出すのは簡単では無くなる。」

鼎「会社組織で、なかなかカイゼン案が通らないのは、彼らは単なる管理職であって、クリエイターでもなんでもないというのが大きいという事かな?」

愛原「自分自身が創業者・・・つまり会社のクリエイターであれば、自分の会社を大きくするカイゼンに前のめりになれそうだが、単なる組織員にそこまでの情熱や愛着は期待できないからな。」

鼎「ディズニー社が、あそこまで著作権に厳しいのも、単なる管理者でしか無くなっているからかなぁ?」

愛原「その可能性は否定できないな。たとえばかつて藤子・F・不二雄氏は、東南アジアでドラえもんの海賊品が多く出回っている事を指摘された際に、言葉も通じない海外でも自分の作品が読まれている事がまず嬉しいと感じたそうだ。その規模が大きすぎる事に対しての懸念はあったようだけど、海賊版そのものを全面否定せず、むしろ自分の作品が広まる事の喜びを先に感じたあたり、やはり根っからのクリエイターなんだなと感じさせられた。コミケ文化に多くの作者さんが寛容の姿勢をみせている日本の作者らしいというか。」

逆沢「ビジネスとして割り切るなら、本来、ディズニー社のように、二次創作には強い姿勢を示すべきなのかも知れないけど、たとえ二次創作品が出回っても自分の作品が広く評価される喜びを優先させてしまうというのが、クリエイターの性という事か?」

鼎「とすると、もしウォルト・ディズニーさんが今も存命なら、今のディズニー社のやり方には抵抗があったかも知れないね。」

愛原「管理を強化しすぎると、その創作物の飛躍の可能性ははるかに狭まる。あれもダメ、これもダメと言って、その作品のことを強く愛する有志が、カイゼンを企画しても、おそらく頭の固い管理者は、それを容易には認めないであろうし。」

逆沢「もちろん、カイゼンのつもりが、カイアクになる事もあるから、容易にそれを認めたくないというのも、あるだろうけどねー。」

鼎「同人界でも、本当に値打ちのある二次創作物を出しているサークルは、少数だと思うよ。でもそれでも私は、全然問題ないと思うけど。無数の凡作を世に出せる状態だからこそ、一欠片の秀作も世に出るのだと思うし。」

愛原「凡作を許さない世の中にすれば、仮にその作品が秀作でも、凡作と評価されるリスクを怖れて、誰も作品を世に出さなくなりかねないからな。芸能界でもスポーツ界でも同じだけど、一握りのトップでなくともそれなりには容認される余裕があってこそ、全体の裾野は伸びる。ピラミッドを高くしたければ、底辺の面積もそれなりに保つ必要があるのと同じ事だ。」

鼎「二次創作の作者さんの中で秀作を作り上げられるのは一握りかも知れないけど、それでもたくさんの人が二次創作に参加してくれれば、その中から秀作が出る確率も高まるよね。」

愛原「もちろん全てのオリジナルクリエイターに当てはまるとまでは言わないけど、基本的にクリエイターは、他者による自作品のカイゼンにも、本来は寛大だと思う。もちろん二次創作者が一次創作者に全く敬意を払っていなかったり、【自分こそがオリジナル】みたいな態度に出たら、どれだけ寛容なクリエイターでもカチンと来るだろうけど、そういう野暮な真似をしない限りは。」

鼎「もしも【俺なら、ここをこう変えてもっと面白くしてやるのに】みたいな思いが強くなって、どうしてもそれを形にしたくなったらば、元の作者さんに対する敬意だけは忘れないようにすれば、そう問題にはならないと思っていいという事かな?」

愛原「クリエイター魂のかけらもない連中に権利が譲渡されていない限りは、大丈夫な可能性は高いと思う。もちろん寛容度は人によるから例外もあるし、あと規模にもよるけどな。藤子・F・不二雄氏にしても、海賊版に対して無制限に寛大という訳では無い。」

鼎「カイゼンというのは、本来の権利者に対する敬意や信頼関係あって、成り立つものだよね。」

愛原「ちなみにトヨタ自動車のカイゼンは、本社などからのトップダウンではなく、末端の現場が自発的に改善案を出して改善していくシステムが、世界的に見て珍しく、かつ日本らしいという事で広まった用語らしいが、だからといって現場が本社や上層部の意向を無視して、やりたい放題やってる訳では無いからな。あくまで権利や決定権や資金を握っているのは上層部だし、上層部が現場のやってる事がおかしいと判断したなら、それはすぐにひっくり返されてもおかしくないものでしかない。カイゼンは、現場の者の好意と、上層部の信頼によって成り立っている概念でしか無い。現場は、カイゼンした方が自分達や会社の為になるからという思いで積極的にカイゼンしようとし、会社側もそれを信頼して、現場発案のカイゼンを容認している関係という事だな。」

逆沢「改善される事で、実用に足らなかったものが実用的になったり、あるいはより素晴らしいものになる事も多いだろうから、カイゼンに取り組んだ人の功績は功績で評価されるべきだろうけど、だからといって本来の権利者をないがしろにしていい訳では無いって事ね。」

愛原「そして権利者の方でも、権利の乱用はできれば慎みたい。権利者=クリエイター本人なら、そうひどい事にはならないだろうけど、クリエイターの気持ちが分からない人間や組織が権利者となった時に、クリエイターやファンの心をビジネスライクにあっさり踏みにじって不快な思いをさせる事になりがちなのは、はなはだ残念でならない。俺個人としては、本来クリエイターが持つべき権利は安易に売買されるべきでないと思うし、ましてクリエイター本人が死んでから何十年も、クリエイター本人以外の人間がいつまでも権利者ヅラする世の中はなんかおかしいとも、感じる。」

鼎「クリエイター本人の手から離れた作品は、できるだけ純粋なファンによって自由に羽ばたく形にして欲しいよ。特定の誰かの金儲けだけに使われるのではなく。」

逆沢「アメリカがTPP交渉で著作権保持期間が元々のクリエイターの死後70年とか、アホな事言ってるけど、カイゼン文化の日本としたら議論の余地すらないし、むしろ今の50年よりも短くする方向で話を進めて欲しいものね。」

愛原「クリエイターの心が分からない者が、ビジネス目的とか浅ましい目的で作品を支配して、作品が誰かの手によってさらに改善される余地まで制限されるような世の中にはなって欲しくないものだ。」





過去のたわごと 
8月14日 盗作・ゴースト
2015年 8月2日 表稼業 7月20日 正論を用いない説得工作
7月5日 ディストピア 6月21日 財政破綻
6月7日 防諜 5月24日 サイコパス
5月10日 戦犯 4月26日 ハト派とタカ派
4月12日 不遇な先駆者 3月29日 プロギャンブラー(バクチで生計を立てる人)
3月15日 世界の管理者という名のラスボス 3月3日 命令コマンド
2月15日 攻略本・攻略サイト 2月1日 お遊びコマンド
1月18日 精神異常状態 1月4日 NPCの選択判断ルーチン
2014年 12月14日 男女キャラクターの比率 11月30日 不安と安心の役割
11月16日 現実主義者の正体 11月3日 アイテムゲット
10月19日 真相にたどり着けない者 10月5日 挫折
9月14日 嫌いだけど素晴らしい人達 9月7日 売れている作品と面白い作品の違い
8月24日 援軍 8月3日 ブラゲとパケゲ
7月20日 根性論と科学的知見に基づいた肉体改造 7月6日 ディスリスペクト(軽蔑・disり)
6月22日 あやかり系主人公 6月8日 中毒
5月25日 箱庭ゲーム 5月11日 ダブルスタンダード
4月20日 偽りの理想郷 4月6日 防御力
3月23日 自分用ゲーム作り 3月9日 育成する指導者、選別する指導者
2月23日 忠誠 2月9日 変化するキャラクター
1月26日 一芸職人VS器用貧乏 1月11日 評判
2013年 12月23日 身分制度 12月8日 陰謀
11月24日 秘密 11月10日 努力が報われるゲーム
10月27日 ゲームの自由度について 10月13日 出来の悪い二代目
9月29日 怒り 9月15日 撤退戦術
8月30日 ヒール(悪役) 8月15日 覆水盆に返らず
7月28日 予知・予測 7月13日 かつてのヒーロー
6月30日 覚醒(新能力発現・急成長) 6月15日 犠牲
6月3日 単独開発 5月19日 ダメ人間
5月5日 悪徳宗教を必要とする人々 4月21日 悪の連帯責任
4月7日 3種類の立場からみた作品批評 3月24日 中立性を装った愚痴・悪口など(仮)
3月10日 人気対戦競技の条件 2月24日 幻想空間
2月10日 お金 1月27日 尊敬できる敵
1月13日 やる気・気合 12月29日 ルール
2012年 12月15日 厨二病 12月2日 売れ筋
11月17日 改心 11月4日 議論
10月21日 優秀な人材の起用・登用方法 10月7日 憎しみにとらわれた人達
9月22日 友情やコネによる人事起用の危うさ 9月8日 権力欲に取り憑かれた人達
8月19日 敗北の受け止め方〜捲土重来を期すために 8月5日 作者(表現者)が作品を通じて伝えたい思い
7月29日 人が自ら死(自殺)を決意するとき 7月15日 選択肢を選ぶことによる覚悟(リスク)
7月1日 選択肢があるということ 6月16日 宣伝と人気
6月2日 ホンネとタテマエ 5月19日 コンプガチャに学ぶ確率論とイカサマの話
5月6日 鑑識眼 4月30日 平等と競争
4月14日 公務員ヒーロー 4月1日 SF設定
3月18日 情報収集 3月3日 原発考察
2月19日 プライド 2月5日 お笑い
1月22日 ラスボスの処断方法 1月8日 創造→創作
2011年 12月30日 独裁者 12月9日 二次創作品
11月27日 万人向けからマニア向けの時代へ 11月13日 無敵能力の人たち
10月29日 正式名称 10月15日 利の人、情の人
10月3日 ポジティブ・ネガティブ 9月16日 利権
9月3日 借金 8月21日 何も変わらない事の恐怖
8月5日 発信したいオタクと共感したいオタク 7月25日 戦う地方、媚びる地方
7月17日 充電期間 7月10日 ひとそれのアンケート結果
7月2日 供給過剰気味のゲーム(&娯楽) 6月21日 東日本大震災3
6月5日 上司に反発 5月21日 修正する度量
5月14日 挑戦する勇気 5月1日 調子
4月17日 専門スキル 4月3日 東日本大震災2
3月18日 東日本大震災1 3月5日 ネトウヨと不良キャラの共通点
2月19日 信用ラインと警戒ライン 2月5日 信じられない者ばかりの世界観
1月23日 武器を交えない戦争 1月16日 しゃべらない主人公
1月7日 異世界に飛ばされた凡人 12月25日 後ろ向きな嫉妬心
2010年 12月19日no2 人それのゲーム難易度 12月19日no1 社会人型キャラ
12月11日 新作公開してから一週間 12月5日 新作ゲーム紹介
11月20日 理想と現実 10月29日 新作公開予定
10月18日 派閥 10月1日 仲間
9月19日 キャラクターイメージ 9月6日 理想を持った人間。そうでない人間
8月21日 革命後 8月8日 長編のオチのつけ方
7月24日 勇者は世直しができるか? 7月10日 全力集中プレイと長期戦略プレイ
6月27日 RPGのチームバトル 6月13日 傭兵団
5月29日 相手の思考をよんでみよう 5月14日 扇動する者、される者
5月7日 こっそりアンケート設置お知らせ、ほか 5月3日 地方を主人公の舞台にしてみよう
4月17日 コンピュータは人間を上回れるか? 4月2日 政権交代から6ヶ月が過ぎて
3月22日 フィクション 3月12日 困ったパーティメンバー
2月21日 責任 2月6日 教育
1月23日 トップダウン式製作とボトムアップ式製作 1月10日 ゲーム作成スタッフ
2009年 12月25日 政権交代から3ヶ月が過ぎて 12月12日 血液型
11月29日 編集日記・編集後記 11月14日 AVG(+SLG)制作中
10月31日 シナリオ 10月18日 ゲーム作りで完成までこぎ着けるためには2
10月3日 オリジナル 9月19日 ゲーム作りで完成までこぎ着けるためには
9月6日 実在モデルをどこまで採用できるか 8月24日 素材?
8月14日 今時の報道スタイル 8月8日 ユーザーサポートにメールを送ってみました
7月25日 恋愛シミュレーション2の魅力? 7月11日 人気と実力
6月27日 打ち切り 6月19日 エロゲ規制強化の流れからみるゲーム考
6月6日 貴族階級 5月23日 悪の戦闘員
5月10日 異なるキャラクターの視点でみてみよう 4月24日 強者がますます強くなる・・・
4月11日 ゲームエディタ 3月29日 愛郷心
3月22日 匿名ネット社会 3月6日 暗躍する超能力者たち
2月22日 信者キャラ 2月15日 必殺技
2月1日 アンチヒーロー(悪役型英雄) 1月23日 カタストロフィーを未然に阻止しよう
1月16日 フェアな戦い 1月3日 あれから幾年後
2008年 12月28日 国盗りSLGの景気対策 12月20日 現実世界をゲーム化してみよう
12月5日 内部対立 11月29日 推理もの??
11月22日 悪人とも言い切れない罪人 11月7日 正史
10月31日 萌えない女性キャラ 10月18日 関西弁
10月5日 大阪 9月21日 避けられない強大な敵
9月7日 人気・魅力・カリスマ 8月29日 黒幕
8月23日 運と実力 8月9日 COMの思考ルーチン
8月3日 新シナリオ「HeiseiNippon」公開 7月19日 軍師
7月5日 各国の思惑を構成するもの 6月21日 催眠術
6月7日 和解 5月24日 知恵者
5月16日 千年生きてみよう 5月3日 生き残ることと勝ち残ること
4月18日 冷酷な指導者 4月5日 お金の使い道
3月15日 若さ 3月7日 性能と運用
2月29日 アンケート現況発表(質問2について) 2月22日 広報戦略
2月10日 差別 1月27日 敵のスペック

1月13日 神の加護、神聖魔法 12月30日 フリーゲームのレビュー
2007年 12月16日 国盗りゲームのパターン 12月1日 謎について
11月16日 ゲーム世界での対人設定2(その他視点) 11月3日 ゲーム世界での対人設定1(味方視点)
10月20日 レジスタンス勢力 10月5日 終盤〜エンディング
9月21日 世襲について 9月8日 悪役(ヒデブ派5隊長など)
8月24日 確率について 8月10日 セーブ&ロード
7月27日 成長について 7月15日 SRPGにおける白兵部分のゲーム的処理
6月30日 SRPGのマップのシステム 6月17日 徴収と略奪
6月2日 兵科あれこれ 5月19日 理想の君臣関係
5月4日 経済力うんぬん 4月21日 戦略ゲームと戦術ゲーム
4月6日 公開情報と非公開情報 3月24日 個人戦用の武器等
3月9日 兵士の武器 2月25日 ゲーム作りとゲーム遊び
2月11日 少数派(属性持ち)向けゲーム 1月28日 バージョンアップ

1月13日 宮田軍にてこ入れ? 12月30日 フリーゲームの宣伝
2006年 12月15日 投票・アンケート 12月1日 最強の敵
11月18日 動かしやすいキャラと動かしにくいキャラ 11月4日 デバッグ
10月22日 現代・近未来ものについて 10月6日 趣味の社会人クリエイター
9月15日 新作?の状況について 9月8日 BGMについて
8月27日 登場人物の口語表現 8月12日 女性キャラ
7月28日 主人公選択式ゲーム 7月16日 マイサイトについて
7月2日 死について 6月17日 風刺について
6月2日 シナリオタイプあれこれ 5月19日 ゲーム作りの進め方について
5月5日 ゲーム作りを始める時について 4月21日 高能力キャラの表現方法
4月8日 悪い敵 3月31日 名前について
3月18日 伝え方と伝わり方 3月12日 キャラクターのプロフィールについて
3月5日 アマとプロによる基本プロット考 2月25日 自作CGについて
2月19日 著作権について 2月12日 バックグラウンドの設定について
2月5日 SRPG95の次回作に対する期待 1月29日 分岐と自由度について
1月22日 難易度について 1月15日 勢力別能力値考察
1月8日 主人公について 1月1日 ユニットの能力値をどういじるかについて
2005年  12月30日 12月23日 12月16日 12月9日 12月2日 11月25日 11月18日 11月11日 11月5日 10月31日













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